親が食べものを与えてしまう傾向も……(shutterstock.com)
親が「子どもの体重」に対していだく印象(=認識)と、その実状の間には微妙にして複雑な隔たりが存在するようだ。
過日、スウェーデンで開催された「欧州肥満サミット」で、興味ぶかい2つの報告が行なわれた。その似て非なる研究成果を紹介しよう。
いずれも児童の肥満問題に取り組んだもので、ひとつめは着手時点で「4~5歳」だったオーストラリアの小児3500人強を対象に解析を行なった研究だ。
内訳は、小児らの75%以上が「適正体重」で、「過体重~肥満」の子が20%近くいたという。
一方、じぶんの子どもが「過体重である」と認識している親の比率も、20%に過ぎない実態も解析で明かされた。
そこで、注目すべきなのは、(それが正しい認識かどうかは別として)親が子どもの体重をそれなりに意識している家庭同士でも、子どもへの接し方次第で“差”が生じるという意外な結果だ。
具体的にはこうだ。親から「わが子は過体重だ」と思われている子ども群と、親が「ウチの子は適正体重だ」と思っている子ども群とを較べると、<13歳までの体重増加幅>において、前者が明らかに大きいことがわかった。
「太り過ぎ」の警告が過食に走らせる?
その結果について、研究著者である英国・リバプール大学のEric Robinson氏はこう語る。
「世間の一般的な印象からすれば、わが子を“過体重”と認識している親のほうが(策を講じるなどして)体重増加を阻止できると考えがちだ。ところが現実はその反対で、阻止するどころか、そんな親のほうがかえって太らせてしまう可能性が読み取れた」
ふだんからわが子の過体重を気にかけている親の場合、なにげない会話の際にも「肥満気味」や「太り過ぎ」などの警告的な表現を差し挟みがちではないだろうか。
Eric氏らによれば、こういう言葉こそ逆効果、子どもが「過食」に走る原因になりかねないのだとか。あるいは、身びいきな同情心の裏返しなのか、わが子を「慰める手段」としてむしろ親のほうから食べものを与えてしまう傾向もあるという。
「このての報告は従来から多く寄せられているが、それらと今回の研究の関連性については今後の課題」(Eric氏)。
彼らの興味深い知見は、5月31日の『Pediatrics』(オンライン版)にも掲載されて耳目を集めている。