福ぶく娘むすめ童話どうわ集しゅう > きょうの江戸えど小話こばなし > ３月さんがつの江戸えど小話こばなし > 目めを覚さます

３月さんがつ１日にちの小話こばなし

目めを覚さます

　あるところに、ひまさえあれば、いねむりばかりしている亭主ていしゅがいました。
　今日きょうも店先みせさきでひなたぼっこをしながら、コックリ、コックリと、気持きもち良よさそうにいねむりをしています。
「あれっ、またいねむりが始はじまったよ。ねえ、お前まえさん。みっともないから中なかに入はいって、奥おくの部屋へやで休やすみなさいな」
　女房にょうぼうが見みかねて、店みせの中なかから声こえをかけました。
　すると亭主ていしゅが目めをつぶったまま、手てさぐりで家いえの中なかに入はいって行いこうとしています。
　女房にょうぼうが驚おどろいて、
「お前まえさん！　目めをちゃんと開あけて歩あるきなされ。物ものに当あたって怪我けがをするではありませんか」
と、注意ちゅういをすると、亭主ていしゅは、
「しーっ！　そんな大おおきな声こえを出だすな！　せっかく寝ねているのに、おれが目めを覚さましてしまうではないか！」
と、寝言ねごとで答こたえたそうです。

♪ちゃんちゃん
(おしまい)