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10月31日にちの日本にっぽん民話みんわ



幽霊ゆうれいの足あしあと
大阪おおさか府ふの民話みんわ → 大阪おおさか府ふ情報じょうほう

　むかしむかし、ある大おおきなお寺てらに、徳とく(とく)の高たかいお坊ぼうさんがいました。
　いつものように夕方ゆうがたのおつとめをしていると、一人ひとりの女性じょせいが本堂ほんどう(ほんどう)に現あらわれて、お経けい(きょう)がおわるのをまってから、足音あしおとをしのばせてお坊ぼうさんに近ちかづくと、女おんなの人ひとはぜひ自分じぶんのためにお経けいをあげてほしいというのでした。
　この女性じょせいはお石いし(いし)という名なで、江戸えどの町まちにすむ大工だいくの奥おくさんでした。
　そして、
「実じつは、わたしは死しんでいます。死しんでから、まだこの世よをさまよっているのです」
と、いうのです。
　お坊ぼうさんは、「江戸えどの女おんな」ときいて、ビックリ。
　じつは一いち年ねんほど前まえに、お寺てらのご本尊ほんぞんを江戸えどへ運はこんで江戸えどの信者しんじゃ(しんじゃ)たちにお参まいりさせたのです。
　この女性じょせいはそのとき、お経けいを読よんだお坊ぼうさんの姿すがたにふかく感動かんどうしたというのでした。
「あれからしばらくすると、わたしは病気びょうきになって、ずっとふせっていました。お金かねなどありませんから、お医者いしゃにかかることもできません。夫おっとは家いえをあけたまま、どこで遊あそんでいるのかいっこうに帰かえってきません。そのうちに病気びょうきはおもくなり、だれにもみとられることなく、わたしは死しんだのです。ですからわたしは、まだ成仏じょうぶつできません。ぜひ、お坊ぼうさまにお経けいを読よんでいただこうと箱根山はこねやま(はこねやま)をこえ、やっとの思おもいでここまでやってきたのです」
　お石いしの話はなしに、お坊ぼうさんは胸むねをうたれました。
　そしてお石いしの身みの上うえをあわれに思おもい、ご本尊ほんぞんにむかうと一心いっしんにお石いしのために祈いのりました。
　お石いしの幽霊ゆうれい(ゆうれい)は、お坊ぼうさんのうしろにしずかにすわっていました。
　供養くよう(くよう)がおわると、お石いしは成仏じょうぶつしたのか、姿すがたが消きえていました。
　そして、お石いしが立たったときについたのか、ざぶとんの上うえに土どによごれたはだしの足あしあとが、はっきりと残のこっていました。
　その足あしあとはいまも額がくにおさめられて、そのお寺てらにつたえられているという事ことです。

おしまい