国広山

前回ぜんかいの四よん天蓋山てんがいさんで、梢こずえ越ごしに見みえたのですが、あれはアンテナではなかろうか。次つぎは、あそこに行いってみよう。
地図ちずを開ひらいて、探さがしてみると、国広くにひろ山さんというのがそうらしい。放送ほうそうアンテナでネット検索けんさくすると、国広くにひろ山さんは一覧いちらん表ひょうに入はいっている。
庄原しょうばらを越こえて、県道けんどう２３号線ごうせんを東城とうじょうへの道みちへ、日本にっぽんピラミッド、葦あし嶽山たけやまへの分岐ぶんきを見送みおくって、中山峠なかやまとうげを越こえて、東城とうじょう区域くいきへ入はいりました。
中国ちゅうごく道どうの高速こうそくバスで、バス停ばすてい帝釈峡たいしゃくきょうがある。ここの分岐ぶんきから高速こうそくのガードを潜くぐると御神山おんがみやまへの道みちなんですよ。
次つぎの交差点こうさてんが県道けんどう２６号線ごうせんへの分岐ぶんき、これを末端まったんまで走はしり抜ぬけると、四よん天蓋山てんがいさんの麓ふもとに出でて、西城にししろへの道みちへ届とどくのです。
交差点こうさてんからすぐにアンテナの刺ささった山やまが見みえる。なんだ、こんなに近ちかいのかい。ふぅん、思おもった以上いじょうに低ひくい山やまだね。

駐車ちゅうしゃできそうな膨ふくらみがないね。山やまに入はいる分岐ぶんきを走はしり抜ぬけて、寺てらの門前もんぜん、ここならじゅうぶん膨ふくらんでいる、止とめても迷惑めいわくがかけることはないだろう。
門前もんぜんの石柱せきちゅうに、曹洞宗そうとうしゅう国広くにひろ城跡じょうせき、御神山おんがみやま広こう国くに院いん、と刻きざんである。
国広くにひろ山さんの名前なまえを反対はんたいにひっくり返かえして命名めいめいしたのかい。○○寺てらというのではないのだね。
門もんの後うしろに御神山おんがみやまの山容さんようが見みえる、山号さんごうを御神山おんがみやまと付つけたのは借景しゃっけいの感覚かんかくなんだろうね。
ごめん、わたしは寺てらに参詣さんけいに来きたのではない。寺てらに行いかずに、道みちを下くだって、さっきの分岐ぶんきへ向むかおう。
バス停ばすていがあって、林道りんどうが谷たにの奥おくに続つづいている。電線でんせんが道みちと並行へいこうしている、これは通信つうしん塔とうへの電力でんりょく供給きょうきゅう線せんだろう。この道みちで間違まちがいない証拠しょうこだよ。
道みちはすぐに地道じみちに変かわる。いやぁ、このほうがええよ。ずっと舗装ほそう路ろだったらかなわんな、と気きがかりだったんだよ。
道端みちばたにミツマタが群生ぐんせいしているとネットで出でていた。これがそうなんだろうな。谷たにに沿そって密集みっしゅうしている、裸はだかの枝えだ先さきにつぼみがある。枝えだ先さきがみっつに分わかれて、その先さきにそれぞれつぼみがある。

へぇぇ、ミツマタという植物しょくぶつを始はじめて認識にんしきした。これがそうなのか。いったん覚おぼえたら忘わすれはしないよ。
池いけがある。昔むかしながらの築堤ちくていではなく、近代きんだい工法こうほうで築きずいてあるよ。地図ちずをながめると、ざっと半分はんぶんほど来きたことになるな。
ここの植林しょくりんは几帳面きちょうめんだね。定規じょうぎで測はかったようにピシッと直線ちょくせんを出だしてある。こんな四角四面しかくしめんな人ひととはお近ちかづきにはなりたくないね。
電線でんせんが道みちから逸はぐれて、山やまの中なかに入はいって行いく。
自動車じどうしゃ道どうだもの、道みちは傾斜けいしゃを緩ゆるく取とらないと登のぼれるはずがない。資材しざいの節約せつやくなんだろうね。ジグザグ道どうに合あわせて電線でんせんを引ひいたのでは、コストが嵩かさんでしょうがないもの。
頂上ちょうじょうのアンテナが見みえてきた。もう近ちかいということだね。
ここからが道みちはジグザグ、何なん度ども切きり替かえながら登のぼっていく。地面じめんにタイヤの跡あとがある。ここ数日すうじつのうちに登のぼったものだろうな。タイヤ跡あとが新鮮しんせんだもの。

さぁて到着とうちゃくしたよ、国広くにひろ山さんの頂上ちょうじょうには、まず、DoCoMoの通信つうしん塔とう。あれ、車くるまがあるよ、４台だいある。タイヤの跡あとはこの車くるまだったのか。
一番いちばん高たかいところに三角さんかく点てん、横よこにＮＨＫのＴＶてれびアンテナ、その向むこうに別べつの携帯けいたい電話でんわのアンテナがある。作業さぎょう員いんが電池でんちを引ひき出だして並ならべているよ。
ご苦労くろうさんでぇす、どこの携帯けいたい電話でんわですかぁ、ほぉ、ソフトバンク、車くるまで登のぼるのも楽らくなこっちゃないよねぇ。では、では。
電線でんせんを敷設ふせつするのに切きり開ひらいてある、この切きれ目めから見晴みはらしが効きくぞ。狭せまい範囲はんいだが、右みぎへ左ひだりへと動うごいて視野しやを得えなきゃね。
切きり開びらきの真下ましたに池いけが見みえる、谷たにの出口でぐちがあそこ、電線でんせんが邪魔じゃまだけれども、御神山おんがみやまが見みえる。
切きり開びらきの線せんに沿そって視線しせんを伸のばすと、府中ふちゅうの岳山たけやまだろうなぁ。広島ひろしま県けん備後びんごで山やま座ざ同定どうていするには、岳山たけやまは、完全かんぜんに基軸きじくの山やまになったよ。それだけ際立きわだって周囲しゅういと隔絶かくぜつしているということなんだね。

東ひがしの岡山おかやま県境けんきょうのほうを眺ながめると、ぴょんと三角形さんかっけいが飛とび出だした山やまがある。行いってみて、山頂さんちょうを踏査とうさして、猪辻山いのつじやまだと思おもっているんだが、異議いぎでも同意どういでも、ご意見いけんはありませんか。
四よん天蓋山てんがいさんの方向ほうこうを眺ながめるのだが、そっちは梢こずえが邪魔じゃましてよく見みえない。
放送ほうそうアンテナの山やまだから、もっと視界しかいが広ひろがるかと思おもったが、そうは問屋とんやが卸おろさない、北きたと西にしは諦あきらめてちょうだい。
さて、下おりようか。ところどころ、ピンクのテープが結むすんである。登山とざん者しゃの標識ひょうしきかと思おもったが、テープに活字かつじがある、国土こくど調査ちょうさ。見渡みわたすと、稜線りょうせんだけじゃない、斜面しゃめんにもどこにも沢山さわやまシルシがある。測量そくりょうのメジルシなのだ。
あっと言いう間まに下おりてしまった。９時じ２０分ふんから歩あるき始はじめて、今いま、１０時じ５０分ふん、これで帰かえってしまうのはさびしいね。
帝釈峡たいしゃくきょうを歩あるこうよ。帝釈峡たいしゃくきょうの主要しゅような部分ぶぶんはよく知しっている。そこから外はずれた上うえ帝釈峡たいしゃくきょうを歩あるいてみようよ。

谷たにに沿そってどんどん歩あるいて行いく、舗装ほそうされた広ひろい道みちでちゃんとしたもんだよ。前まえに壁かべが立たちはだかって、それが高速こうそく中国ちゅうごく道どうなんですよ。
しばらくは、中国ちゅうごく道どうと並行へいこうして歩あるいて行いく、ここで高速こうそく道路どうろの下したを潜くぐる、橋はしの下したを潜くぐるのだが、谷たに底そこと橋はしの上うえ、けっして交差こうさすることがない無関係むかんけいな状態じょうたいなんだね。
谷たには別べつの谷たにと合流ごうりゅうする。帝釈川たいしゃくがわ本流ほんりゅうなんだよ。バス停ばすていがあって畑はたけ橋きょうと書かいてある。
看板かんばんがあって、このあたりが上うえ帝釈峡たいしゃくきょうなんだそうだ。断崖だんがいがあって、白しろい岩肌いわはだだ。石灰岩せっかいがんだよね。
岩肌いわはだには、長ながい年月としつきをかけて水みずが溶とかして、穴あな、凹へこみを作つくっているのが見みえる、なるほど、帝釈峡たいしゃくきょうだ。帝釈峡たいしゃくきょうの特徴とくちょうだ。
ふたたび、高速こうそく道どうのアーチ橋きょうを潜くぐる。高速こうそく道どうを通とおるとき、毎度まいど必かならず、谷たにの上下じょうげを大急おおいそぎでパパッと見渡みわたしたもんだ。この下したを歩あるくとは思おもわなかったな。
谷たにの流ながれはとうとうと流ながれている、川底かわぞこの石いしが白しろいのですよ。白しろいのは石灰岩せっかいがん、大理石だいりせき、その欠片かけらが累々るいるいと転ころがっている。

川幅かわはばが広ひろがって、瀞とろ、淵ふちになっている。あれ、眼めの錯覚さっかくかな、水みずが上流じょうりゅうに流ながれている。
よぅく見みると、反転はんてんして渦うずを巻まいているのだ。へぇぇ、ええもの見みたな、ここで泳およいでいたら、予想よそうと違ちがって、パニックになるかもしれないね。
谷たにが別わかれている、左ひだりの谷たにへ向むかうのだな。橋はしを渡わたって、橋はしの名前なまえが落合おちあい橋きょう、決きまり通どおりの名前なまえだね。
またまた、断崖だんがいの岩場いわばがそびえているぞ。看板かんばんがある、なになに、鬼おにの岩屋いわや
昔むかしこの岩屋いわやに多おおくの鬼おにが住すんでいました。みな心しんの優やさしい鬼おにで、道みちに落おちた石いしを取とり除のぞいたり、岩屋いわやの広場ひろばで踊おどりをするのを楽たのしみにしていました。
へぇぇ、いかにも創作そうさく民話みんわ、伝承でんしょうの書かき換かえのように見みえるねぇ。異議いぎありなんだが、ほんまかいな、とチェックを入いれるに留とめておこうか。
登のぼってみよう。なるほど、岩いわの裂さけ目めがある、入いり口くちは狭せまいが、20～30メートル入はいると、奥行おくゆき20メートル幅はば20メートル高たかさ30メートルの空洞くうどうがあるのだそうな。

入口いりくちには鉄てつの柵しがらみがある。たったひとりで入はいるのは怖こわいもの、柵しがらみがあって通とおれないので、ほっとしたよ。入はいるの止とめぁめた。
奥おくから水みずがどんどん流ながれ出でている、この水みずが洞窟どうくつを造つくり出だして、さらに奥おくの小しょう洞窟どうくつを穿うがっているのだね。
なるほど、これが上うえ帝釈峡たいしゃくきょうのハイライトなのか。こんなものがあるとは、ここへ来くるまで知しらなかったよ。
あとは惰性だせいだね。舗装ほそう路ろばっかりなんだが、車くるまが通とおる気配けはいも無ない。ぽくぽく歩あるいて行いかずばなるまい。
崖がけ鼻はなを曲まがると、集落しゅうらくが見みえて来きた。帝釈たいしゃく始終しじゅうししゅうの集落しゅうらくなのだ。普通ふつうに読よむとしじゅうなのだが、ここではししゅうと読よむのだそうな。
小学校しょうがっこうがあるが、廃校はいこうになっている。創立そうりつ百ひゃく年ねんの石碑せきひがあるが、これ以上いじょうは維持いじできなかったんだね。遠とおくまで通学つうがくしているのだろうな。
国広くにひろ山さんのアンテナが見みえる、アンテナの先さきが見みえるだけなのだ。つまり、アンテナの足許あしもとからここが見みえる訳わけがないのだ。

大おおきく谷たに底そこを一いち回まわりして、反対はんたい側がわの山腹さんぷくの道みちに取とり付つく、見下みおろすと、歩あるいてきた谷たに沿ぞいの道みちが見みえる。
帝釈峡たいしゃくきょうと合流ごうりゅうしたあたりから、中国ちゅうごく自然しぜん歩道ほどうの標識ひょうしきが出でていたもんだが、いつの間まにか、姿すがたを消けしてしまった。
案内あんないがばらばらまちまちで、魅力みりょくに欠かける、自然しぜん歩道ほどうというのは役割やくわりを終おえたのかもしれないね。多おおくを期待きたいしないでおこう。
舗装ほそう路ろの最高さいこう地点ちてんがここ、ここまでが帝釈たいしゃく始終しじゅうししゅう、これから先さきは帝釈未渡たいしゃくみど。
電柱でんちゅうにミトカンとプレートがあるんですがね、地図ちずを眺ながめて未み渡わたりの地名ちめいを見みつけた。ははぁん、ミトカンとは未み渡わたり幹線かんせんのことなのか。納得なっとく。
さて、寺てらの門前もんぜん、駐車ちゅうしゃ場所ばしょまで戻もどってきました。
国広くにひろ山さん単独たんどくではあまりにショート過すぎるね。帝釈峡たいしゃくきょう上流じょうりゅう部ぶをぐるっと周回しゅうかいしてきたが、舗装ほそう路ろ歩あるきばっかりだったのに、そんなに草臥くたびれたとは思おもわない。
絵巻物えまきものを広ひろげるように、場面ばめん、場面ばめんに変化へんかがあって、それぞれの発見はっけんがあったからだろうね、かなり得えした思おもいがするよ。

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