猫山

急斜面きゅうしゃめん、霧きりの山頂さんちょう、猫山ねこやまの道みち

同おなじような天気てんき予報よほうだね。はっきりしない気配けはいだが、いつまで待まっても安定あんていしないから出でかけようか。
行ゆく先さきは、猫山ねこやま。先々さきざき週しゅう、比婆ひば山さんの毛無山けなしざんに行いったが、あれは本来ほんらい、猫山ねこやまに行いく予定よていで出でかけたんだよね。雨あめが降ふり出だしたので、行ゆく先さきを変更へんこうしたのだった。
ねぇ、近ちかづくにつれてポツポツと雨あめが降ふってきたよ。天気てんき予報よほうでは、降ふるとは言いっていなかったよね。
え、松江まつえは雨あめの予報よほう？そうか、ここは県境けんきょうだものね。山陰さんいんの天気てんき予報よほうも考慮こうりょしなきゃならんのか。
道後山どうごやまに別わかれる道みちの手前てまえを右折うせつ、猫山ねこやまスキー場じょうの全貌ぜんぼうは見みえるが、猫山ねこやまの上うえ半分はんぶんは霧きりに覆おおわれて見みえないよ。

広ひろい駐車ちゅうしゃ場じょうがあって、猫山ねこやま登山とざん口こうと看板かんばんが出でている、ここは無料むりょう駐車ちゅうしゃ場じょうと書かいてある、ここに駐車ちゅうしゃさせてもらおうぜ。
雨あめも霧雨きりさめ程度ていどね、これならたいしたことはないわね。
まずは、別荘べっそうの方向ほうこうへ歩あるいて行いくんだろうな、私有地しゆうちと看板かんばんがあるが、そっちへは行いかないさ、道みちはその反対はんたい方向ほうこうに向むかっている。
すぐに石像せきぞうに出会であったよ、二に体たいの石像せきぞう、行者ぎょうじゃ道どう、安永やすなが六ろく年ねん、と彫ほってあるのだろうな。この道みちは、昔むかしながらの信仰しんこうの道みちなんだろうね。
立たち木ぎの左ひだりに建物たてものが透すけて見みえる、スキー場じょうの施設しせつなんだろうな。スキー場じょうはすぐ隣となりにあるんだが、この先さきでも、ゲレンデに入はいることはなかった。

ゲレンデとは反対はんたいの、右側みぎがわには谷たにが流ながれている。
最初さいしょは涸かれ谷たにだったんですよ、はぁん、ただ、窪地くぼちが連続れんぞくしているんだと、気きにも留とめなかったのに、いつのまにかちょろちょろと水音みずおとが聞きこえる。
ここで谷たにを渡わたるのか、飛とび石いしを踏ふんで渡渉としょうしなきゃならない。
渡わたれば、スキー場じょうのほんの近ちかくまで近きんよっている。あの白しろいものは何なにだろう。ははぁ、氷こおりを作つくっているのだ。人工じんこう雪ゆきを作つくっているのだ。
リフト終点しゅうてんの巻上まきあげ機きのところまできたぞ。スフィンクスコース、初心者しょしんしゃ向むき、と看板かんばんが出でている。へぇぇ、けっこう傾斜けいしゃがあるんだが、これで初心者しょしんしゃ向むきなのかい。

ベテラン向むけのほうはただごとじゃない傾斜けいしゃになっているんだろうね。
スキー場じょうから離はなれて、道みちは真まっ直すぐに上うえへ向むかっているよ。なかなかの傾斜けいしゃで、登のぼり堪こたえがあるよ。
ちょっと待まって、一いち枚まい脱ぬぐからさ。
シャツのした、汗あせで(れ)濡ぬれて(れ)はいないかい。汗あせが(ら)冷さめると風邪かぜ(かれ)をひくよ。
何なにを言いっているの、舌したが回まわっていないのね、判わかるけどさ。

未来みらいの日本語にほんごはこんな姿すがたになっていくのさ、唇くちびると舌したをなるべく動うごかさないようにする傾向けいこうがあるんだよ、唇くちびる、舌した、咽喉いんこう、動うごきを省しょうエネにするんだよ。
和歌山わかやま弁べんみたいね、和歌山わかやま弁べん、河内かわち弁べんが日本語にほんごの先行せんこう指標しひょうなのか。
矢印やじるしの標識ひょうしきよ、今度こんどは横よこ巻まきの道みちを歩あるいて行いくようになるんだって。水平すいへいな道みちなのね。
岩場いわばに出でたよ、谷たにの源みなもと頭部とうぶを渉わたるって行いくのね、谷たにの水みずで岩いわが濡ぬれているから注意ちゅういしなきゃね。
向むこうに何なにか小屋こやが見みえる。近寄ちかよると、山上さんじょう(さんじょう)さん、三坂みさか小学校しょうがっこう、と看板かんばんが出でている。

役やくの行者ぎょうじゃと不動明王ふどうみょうおうの石像せきぞう三さん体たいがある。小屋こやはこもり堂どうだったんだ。岩場いわばが立たち上あがって、深ふかく割われているのに霊れい性せいを感かんじて、祭まつったんだろうね。
ここへお参まいりする信仰しんこうの道みちだから、この先さきの道みちは荒あれているだろうと期待きたいしていなかったんですよ。そんなことない、確たしかな道みちだよ。
横よこへ、横よこへと続つづいていくが、ここまでかい。ここからは、左ひだりに折おれて稜線りょうせんを歩あるくんだね。
霧きりの中なかでなんにも見みえなくなったわねぇ。この尾根おね道どうはずいぶん傾斜けいしゃが急きゅうなのね。一歩一歩いっぽいっぽの踏ふみ代だいが高たかいよ。
さっきのところ、傾斜けいしゃがゆるんだので頂上ちょうじょうも近ちかいと錯覚さっかくしたよ、幻まぼろしだった、またまた、急きゅうな斜面しゃめんを進すすみ続つづけなきゃならんのね。

ねぇねぇ、猫山ねこやまとは山やまが猫ねこみたいに見みえるからなの。
猫ねこ伝説でんせつの山やまなんだとさ、子こ牛うしほども大おおきい化ばけ猫ねこが出でたお話はなしし、おばあさんを噛かみ殺ころした猫ねこを猟師りょうしがしとめるお話はなし。
どうなんだろうね、伝説でんせつから山やまの名前なまえがついたのやら、山やまの名前なまえから誘導ゆうどうされて伝説でんせつが誕生たんじょうしたのやら、どっちがどっちとも言いえないね。
このへんの木きは落おち葉ばを全ぜん部落ぶらくとして裸はだか木きになってしまっているね。裸はだかになっては何なんの木きなのか、見当けんとうもつかなくなるね。
笹ささが目立めだつようになってきた、もう頂上ちょうじょうも近ちかいのじゃないかね。あそこのこぶは一段いちだんと高たかいね。

ここが頂上ちょうじょうよぉ、猫山ねこやまだぁ、広場ひろばがあって、岩いわがあってその岩いわに三角さんかく点てんが埋うめ込こまれてあるのね。
登頂とうちょう記念きねん、三坂みさか小学校しょうがっこう、2002.5.13、と札さつがあるよ。色褪いろあせた写真しゃしんも一緒いっしょに付ついている、小学校しょうがっこうの遠足えんそくにしては頑張がんばったもんだよ。
そうか、それでＰＴＡが道みちの修理しゅうりをしたり、倒木とうぼくを片付かたづけたりで、われわれも安心あんしんして登のぼれたということなんだな。
頂上ちょうじょうの立たち木ぎを見渡みわたすと、ブナが見みえるね、クヌギの木きのほうが数かずが多おおいみたいだな。
この先さきの道みちをもう少すこし進すすむと、展望てんぼうが開あけるそうなんだが、今日きょうは無理むりだろ、霧きりの中なかだもの。行いかずに、このまま引ひきかえそうよ。

ポツポツと降ふる雨あめなんだけど、みぞれみたいよ、ほら、てのひらですぐに融とけるんだけど、これは雪ゆきなのよ。
もう、雪ゆきの季き節ぶしになるんだねぇ。
うわぁ、下くだりの道みちほうが大変たいへんよ。落おち葉ばが積つもって、足あしを下おろしたところが固かたいのか滑すべるのか、わけが判わからないもの。
傾斜けいしゃが急きゅうで、一歩一歩いっぽいっぽの段差だんさが深ふかいなぁ。ストックで支ささえながら慌あわてずに降おりて行いくしか方法ほうほうがないね。
近ちかくの道後山どうごやまのほうが標高ひょうこうが高たかいが、道後山どうごやまは車道しゃどうがずいぶん上じょうまで上あがっている、実質じっしつ的てきな高度こうど差さは猫山ねこやまのほうが勝かっているね。
せっかく登のぼったけど、展望てんぼうは無なかったよね、展望てんぼうを求もとめて、また、春先はるさきにでももう一いち回かい来こなきゃね。

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