高木たかぎ浩光ひろみつ＠自宅じたくの日記にっき

■ あるある大だい事典じてんが「一切いっさいリンクお断ことわり」としていた心境しんきょうを推察すいさつすると見みえてくるもの

恥はずかしながら、私わたしの勤務きんむする研究所けんきゅうじょも、何なん年ねんか前まえは、研究所けんきゅうじょWebサイトへのリンクについて、公序良俗こうじょりょうぞくに反はんするサイトからのリンクを「お断ことわりします」としていた。その理由りゆうというのはどうやら、研究けんきゅう成果せいかなどに対たいしていかがわしい会社かいしゃからリンクされることが、ある種しゅの人ひとたちには懸念けねんされる事柄ことがらと思おもわれているためのようだった。

だが考かんがえてみて欲ほしい。たとえば、研究所けんきゅうじょの研究けんきゅう員いんの発表はっぴょう論文ろんぶんやテクニカルレポートが、食材しょくざい販売はんばい業者ぎょうしゃのチラシやWebサイトで、参考さんこう文献ぶんけんとして挙あげられているときに、私わたしたちはそれを止とめさせる立場たちばにあるだろうか？

論文ろんぶんの参考さんこう文献ぶんけんリストへの掲載けいさいについて

以下いかのいずれかに該当がいとうする出版しゅっぱん物ぶつ、Webサイトその他たにおいては、○○研究所けんきゅうじょの職員しょくいんが発表はっぴょうした論文ろんぶんを参考さんこう文献ぶんけんリスト等とうに無断むだんで掲載けいさいすることをお断ことわりします。

(1) 公序良俗こうじょりょうぞくに反はんするもの
(2) 信用しんよう性せいが著いちじるしく疑うたがわれるもの
(3) 法律ほうりつ、法令ほうれい等とうに違反いはんし又または違反いはんするおそれがある内容ないようを含ふくむもの

こんな主張しゅちょうをしたらアカデミアで物笑ものわらいの種たねにされてしまう。

学術がくじゅつ論文ろんぶんは誰だれにどのように使用しようされても問題もんだいのないように書かくのが当然とうぜんであって、そのスキルを身みにつけることが学位がくい取得しゅとくの要件ようけんであろう。いかがわしい業者ぎょうしゃが論文ろんぶんタイトルと著者ちょしゃの所属しょぞくを挙あげてインチキ商売しょうばいをすることがあっても、論文ろんぶんに書かいてないことを業者ぎょうしゃが主張しゅちょうしているなら、業者ぎょうしゃが虚偽きょぎの宣伝せんでんをしているということにすぎないし、読よめば業者ぎょうしゃが嘘うそを言いっていると検証けんしょうできるように論文ろんぶんが書かかれていればそれでよい。怪あやしい業者ぎょうしゃに紹介しょうかいされて困こまるような論文ろんぶんというのは、要ようするに、その論文ろんぶん自体じたいがいかがわしい内容ないようだということだ。

Webサイトにおけるリンクもこれと共通きょうつうする。Webサイトで公表こうひょうするからには、どこから参照さんしょうされても問題もんだいがないものを書かかなければならない。組織そしきの信用しんようが損そこなわれるようないかがわしい内容ないようのWebページがあってはならないし、組織そしきの信用しんようを悪用あくようされかねないような紛まぎらわしいWebページを公表こうひょうしてはいけない。

管理かんり部門ぶもんは、そのようなことが起おきないように管理かんりするのが仕事しごとだが、担当たんとう者しゃに何なにが良よくて何なにが悪わるいかを判断はんだんする能力のうりょくがないからといって、リンクを禁止きんしにしてしまえというのでは、職務しょくむ放棄ほうきも甚はなはだしい。このことは、研究所けんきゅうじょに限かぎらず、世間せけんから信頼しんらいされているはずの会社かいしゃや団体だんたいにおいても同様どうようであろう。

さて、先さきごろ内容ないよう捏造ねつぞうで打うち切きりが決きまった関西かんさいテレビの「発掘はっくつ！あるある大だい事典じてんII」という番組ばんぐみだが、番組ばんぐみのWebサイトは、「当とうHPへのリンクについては、一切いっさいお断ことわりしておりますのでご了承りょうしょうください」と、他たに類るいを見みない勢いきおいでリンク禁止きんしを主張しゅちょうしていた（図ず1）。（「無断むだんリンク禁止きんし」ではなく、許可きょかを求もとめても誰だれにも認みとめられることがないというのは、まともな組織そしきでは他たに見みたことがない。）

図ず1: あるある大だい事典じてんのWebサイトにアクセスしたときの様子ようす
（いきなりポップアップウィンドウが現あらわれる）

この事例じれいの存在そんざいは反はん無断むだんリンク禁止きんし派はの間あいだでは以前いぜんから知しられていたのだが、ときどきぼそぼそと話題わだいに上のぼることはあっても、大おおきく取とり上あげて批判ひはんするような人ひとはいなかった。

それはなぜか。「この番組ばんぐみならしかたないよね」と、皆みな、うすうす感かんじていたからではないか。

つまり、これほどいかがわしい内容ないようであれば業者ぎょうしゃに悪用あくようされてさぞかし困こまるんだろうなと、リンクを禁止きんししたがるその気持きもちを察さっすることができていた。

実際じっさい、捏造ねつぞうが話題わだいになった先日せんじつの日曜日にちようびに、関西かんさいテレビの視聴しちょう者しゃ情報じょうほう部ぶに電話でんわしてリンク拒否きょひの理由りゆうを尋たずねてみたところ、あるある大だい事典じてんにリンクして商品しょうひんを売うるような行為こういが困こまるからとのことだった。

たしかに適当てきとうに検索けんさくしてみると、健康けんこう食品しょくひんなどの販売はんばいサイトで「あるある大だい事典じてん」という文字もじ列れつが書かかれているところがある。そういうところからリンクされては困こまるという。

だが、まっとうな店みせが食材しょくざいを販売はんばいする際さいに、「あるある大だい事典じてんで話題わだいの納豆なっとう」という商品しょうひん紹介しょうかいをして何なにが悪わるいというのだ？ 番組ばんぐみの情報じょうほうが真実しんじつであるのなら何なんら問題もんだいなかろう。困こまるのは、真実しんじつを超こえた印象いんしょうで不当ふとうな宣伝せんでんをされることであるはずだ。

インチキな会社かいしゃがインチキな内容ないようを公開こうかいするときは、リンクは大だい歓迎かんげいに違ちがいない。だが、世間せけんから信頼しんらいされているはずのテレビ局てれびきょくであるからこそ、インチキな内容ないようを公開こうかいするときはリンクされては困こまるということになる。

ここで、地方ちほう警察けいさつが「無断むだんリンクは禁止きんしとします」としていた事例じれい（栃木とちぎ県警けんけい、岡山おかやま県警けんけい）と対比たいひしてみる。

岡山おかやま県警けんけいは、「無断むだんリンクは禁止きんしとします」としていた理由りゆうについて、警察けいさつは常つねに公正こうせいかつ中立ちゅうりつでなければならないからだといい、栃木とちぎ県警けんけいは、業者ぎょうしゃに悪用あくようされることがあるのが困こまるという。それはテレビ局てれびきょくにも共通きょうつうする。テレビ局てれびきょくは公正こうせいかつ中立ちゅうりつでなければならないと考かんがえられているだろう。

だが、警察けいさつのWebサイトに後うしろめたい情報じょうほうなど載のっていないのではないか？ 警察けいさつは警察けいさつであって、それ以上いじょうでもそれ以下いかでもないはずだ。きちんと管理かんりされた真まっ当とうなWebコンテンツであるなら、岡山おかやま県警けんけいも栃木とちぎ県警けんけいも、堂々どうどうと胸むねを張はって公開こうかいしたらいい。どうやっても警察けいさつが「あるある大だい事典じてん」のようなことになるはずがないのだから。もっと自分じぶん達たちのWebサイトに自信じしんを持もってもらいたいものだ。

ところで話はなしは変かわるが、かつてテレビ業界ぎょうかいにいらした池田いけだ信夫しのぶさんが、次つぎのことをおっしゃっている。

実験じっけんデータの捏造ねつぞうも、それほど深刻しんこくなものではない。もともとテレビ番組ばんぐみの実験じっけんなんて学問がくもん的てきに厳密げんみつなものではないし、大事だいじなポリアミンの実験じっけんデータの解析かいせきだけはしていたようだから、100％捏造ねつぞうというわけではない。これがだめなら、「超ちょう能力のうりょく」と称しょうしてやっているいかがわしい「実験じっけん」や、占うらない師しのおばさんが2 時じ間あいだにわたって根拠こんきょ不明ふめいの「予言よげん」をする番組ばんぐみはどうなるのか。

納豆なっとうダイエット捏造ねつぞうはなぜ起おきたのか, 池田いけだ信夫しのぶ blog, 2007年ねん1月がつ23日にち

そうおっしゃいますが、問題もんだいとされているのは、科学かがく的てきな裏うらづけがあるかのように装よそおっていることでしょう？

先月せんげつのNHK「視点してん・論点ろんてん」で大阪大おおさかだいの菊池きくち誠まこと教授きょうじゅが次つぎのように述のべていました。

さて、ニセ科学かがくが受うけ入いれられるのは、科学かがくに見みえるからです。つまり、ニセ科学かがくを信しんじる人ひとたちは、科学かがくが嫌きらいなのでも、科学かがくに不審ふしんを抱だいているのでもない、むしろ、科学かがくを信頼しんらいしているからこそ、信しんじるわけです。

（略りゃく）

ところがニセ科学かがくは断言だんげんしてくれます。

マイナスは良よいといったら良よいし、プラスは悪わるいといったら悪わるいのです。また、ゲームをし過すぎるとなぜ良よくないのかといえば、脳のうが壊こわれるからです。ありがとうは、水みずがきれいな結晶けっしょうを作つくるから、良よい言葉ことばなのです。

このように、ニセ科学かがくは実じつに小気味こきみよく、物事ものごとに白黒しろくろを付つけてくれます。この思おもい切きりの良よさは、本当ほんとうの科学かがくには決けっして期待きたいできないものです。

しかし、パブリックイメージとしての科学かがくは、むしろ、こちらなのかもしれません。科学かがくとは、様々さまざまな問題もんだいに対たいして、曖昧あいまいさなく白黒しろくろはっきりつけるもの。科学かがくにはそういうイメージが浸透しんとうしているのではないでしょうか。

（略りゃく）

ニセ科学かがくに限かぎらず、良よいのか悪わるいのかといった二分にぶん法的ほうてき思考しこうで、結論けつろんだけを求もとめる風潮ふうちょうが、社会しゃかいに蔓延まんえんしつつあるように思おもいます。そうではなく、私わたしたちは、「合理ごうり的てきな思考しこうのプロセス」、それを大事だいじにするべきなのです。

まん延えんするニセ科学かがく, 菊池きくち誠まこと, NHK 視点してん・論点ろんてん, 2006年ねん12月がつ20日はつか

そのような「パブリックイメージ」が出来上できあがってきた原因げんいんには、テレビがあるのではないですか。

ネタならネタとわかるように、占うらない師しに食材しょくざいを紹介しょうかいさせるとか、今週こんしゅうのカウントダウン食材しょくざいランキングとかやってはどうですか。

いまやNHKでさえ、印象いんしょう操作そうさの捏造ねつぞう棒ぼうグラフ*1がしょっちゅう出でてきます。グラフの正ただしい書かき方かたは小学校しょうがっこうの算数さんすうで習ならうはずですが、テレビ局てれびきょくの人ひとたちは算数さんすう嫌きらいだった人ひとたちばかりなのでしょうか。算数さんすうというのは計算けいさんの練習れんしゅうではないのですが。