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優生保護法改正に関する日本人類遺伝学会理事会声明
優生保護法改正に関する日本人類遺伝学会理事会声明
last update: 20170427
■優生保護法改正に関する日本人類遺伝学会理事会声明
生殖医学,出生前診断,遺伝子診断,遺伝子治療などの先端医療技術が,今後も
益々医療の中で益々重要な位置を占めていくことは間違いない。先進諸国の中には,
先端医療技術全般を共通の倫理原則に基づいて包括的に規制する法律を既に制定し
ている国もある。
わが国でもこうした医療技術の持つ倫理的,法的,社会的問題点については当学
会並びに関連学会においてしばしば討議を重ねてきたが,その法的な対応に関して
は他の先進諸国に比べて立ち遅れが指摘されている。
わが国の,人工妊娠中絶,不妊手術に関する法律(優生保護法)は,昭和23年に
制定されたもので,そこに示された優生思想に基づく目的・適応などは,現在の生
命倫理の立場から見て容認し難いものであった。
したがって,今回,優生保護法の一部を改正し,優生思想を排し,それに伴う諸
条項を撤廃したことは,長年に亘り改正の必要性が提起されてきた歴史を鑑みる時,
評価できる。
しかしながら,現在求められているのは,優生思想の排除のみでなく,生命倫理
の立場から見た先端医療技術の適用基準の設定であり,その法的な対応である。そ
の観点に立てば,積み残した課題が多々あり,参議院に於いて付帯決議がなされた
ことは当然であろう。また今回,医療の場で普及しつつある出生前診断,遺伝子診
断などへの配慮や,遺伝医学,生殖医学,生命倫理の専門家などからの公的な意見
の聴取や,国会における十分な審議なしに,法改正を施行したことについては大き
な疑問が残る。付帯決議による継続審議に於いては,この点,格別の配慮がなされ
ることを強く要望する。
REV: 20170427