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介護保険の準備状況:塩尻市・松本市・三郷村の担当者に聞く
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介護かいご保険ほけん準備じゅんびじょうきょう
──塩尻しおじり松本まつもと三郷みさとむら担当たんとうしゃく──

赤羽あかはね 千恵ちえ小林こばやし 明子あきこ武田たけだ 育実いくみ
(1998信州大学医療技術短期大学しんしゅうだいがくいりょうぎじゅつたんきだいがく看護かんごねん
卒業そつぎょう研究けんきゅうレポート 19981225提出ていしゅつ



はじめに
 1997ねん平成へいせいねん)12月に介護かいご保険ほけんほう成立せいりつし、2000ねん平成へいせい12ねん)4がつから施行しこうされる。わたしたちは、その運営うんえい主体しゅたいである市町村しちょうそんおよ特別とくべつ)でどのように準備じゅんびすすめられているか、また、担当たんとうしゃ方々かたがた介護かいご保険ほけんをどうめ、なにかんがえているのかをりたいとおもった。
 そこで、まずほん雑誌ざっし新聞しんぶんとう資料しりょうもちいて介護かいご保険ほけん概要がいようり、りたいことや疑問ぎもんてんあきらかにすることにした。それをもとに、インタビュー調査ちょうさ質問しつもんする項目こうもくげ、整理せいりした。
 そして、1998ねんがつまつから12がつにかけて、松本まつもと塩尻しおじり三郷みさとむら介護かいご保険ほけん担当たんとうされている方々かたがた訪問ほうもんし、制度せいど導入どうにゅう運営うんえい準備じゅんびじょうきょうについておはなしをうかがった(8がつ28にち塩尻しおじり市民しみん生部いけぶ介護かいご保険ほけん準備じゅんびしつ9月くがつにち:三郷村保健福祉課高齢者福祉係、9月くがつ25にち松本まつもと社会しゃかい福祉ふくし計画けいかくどう高齢こうれいしゃ福祉ふくし)。また、訪問ほうもんした3市町村しちょうそんふく松本まつもと地域ちいき広域こういき行政ぎょうせい事務じむ組合くみあい介護かいご認定にんてい審査しんさかいについておはなしをうかがった(12月8にち事務じむきょく総務そうむ)。この調査ちょうさ整理せいりしさらに疑問ぎもんがあったてんをまとめ、11月9にち質問しつもん郵便ゆうびんおく回答かいとうをいただいた(松本まつもと:11月25にち塩尻しおじり:12月1にち)。

  <市町村しちょうそんべつ人口じんこう(1998ねんがつにち)>
そう人口じんこう 65さい人口じんこう 65さい人口じんこう
 (ひと) (ひと割合わりあい(%)
長野ながのけん 2,209,155  450,106 20.4
松本まつもと  205,805  36,113   17.5
塩尻しおじり   62,084  10,544   17.0
三郷みさとむら   16,519   3,167   19.2
     (長野ながのけんホームページより)

 以下いか、それをまとめて報告ほうこくする。なお、「」でくくった部分ぶぶんがあるが、これは発言はつげんそのままではなくわたしたちがメモにもとづいて構成こうせいしたものであること、また、「」(松本まつもと)などとしるすことがあるが、それは松本まつもと担当たんとうしゃとき個人こじんてき見解けんかいとしてべたことをしるしたものであり、代表だいひょうする「公式こうしき発言はつげん」ではないことをおことわりしておく。

1 システムの変更へんこうはどうめられているか
 介護かいご保険ほけん導入どうにゅうというおおきなシステムの変更へんこうはどのようにめられているか。
 公的こうてき介護かいご保険ほけん新設しんせつ背景はいけいとして一般いっぱんにあげられるのは、だいいちに、よう介護かいご老人ろうじん増加ぞうかによる介護かいご負担ふたん増加ぞうかであり、だいに、家族かぞく介護かいごりょく低下ていかである。つぎにこうした状況じょうきょう変化へんかにも関係かんけいし、従来じゅうらいのシステムの問題もんだいてんである。
 それはひとつに、社会しゃかい資源しげん配分はいぶんのありかたである。資源しげん医療いりょうかたよって分配ぶんぱいされてきたことや負担ふたんのありかた問題もんだいにされる。「いままで医療いりょう保険ほけん依存いぞんしてきたが、医療いりょう保険ほけんだけでは赤字あかじになってしまう。そこで医療いりょうなかから介護かいごはなした。高齢こうれい少子化しょうしか生産せいさんしゃ減少げんしょうによって財政ざいせいてきささえられない。現状げんじょうのままでは破綻はたんじょうきょうになる。そこで介護かいご保険ほけん導入どうにゅうになった。介護かいご保険ほけんによってすくなくとも破綻はたんけられる。」(松本まつもと)「平等びょうどうに1わり負担ふたんでサービスがけられる。このままわか世代せだいだけでは高齢こうれいしゃささえきれない。」(塩尻しおじり
 もうひとつが、福祉ふくしサービスのありかたしつ問題もんだいである。現在げんざい福祉ふくしサービスの供給きょうきゅうシステムには問題もんだいがあり、それがサービスのしつ影響えいきょうしている、これとくらべた場合ばあい介護かいご保険ほけんはよりのぞましいという。今回こんかい調査ちょうさでもこのてん強調きょうちょうされた。
 しんゴールドプランは今回こんかい調査ちょうさしたいずれの市町村しちょうそんもほぼ 100%達成たっせいしている。現在げんざい問題もんだいてんとしては以下いかがあげられた。
 「サービスをけるがわ心理しんりてき圧迫あっぱくかん所得しょとく調しらべられるなど)をあたえる。措置そち制度せいどではサービスの選択せんたくができない。」(松本まつもと)「措置そち制度せいどであるため、地区ちく担当たんとうケースワーカーをえらべない、デイサービスセンターや特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームなどをえらべないひとし利用りようしゃ希望きぼうをすべてれることができない。ケースワーカーのセンスで計画けいかくされているため、選択せんたく余地よちがない。措置そち制度せいど事業じぎょう実施じっし主体しゅたいであり、行政ぎょうせいによる直営ちょくえい社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんとう事業じぎょう委託いたくしてサービスを提供ていきょうしている。したがって、サービス提供ていきょうりょうしつによる実績じっせきたいしての経費けいひではなく、人件じんけん需要じゅようなどの積算せきさんにより総額そうがく委託料いたくりょうとしているため、市場いちば原理げんりはたらかず事業じぎょうしゃあいだ競争きょうそうがなくこうコスト体質たいしつになっている。満足まんぞくなサービスを提供ていきょうされているかどうかをはか物差ものさしがない。」(塩尻しおじり
 介護かいご保険ほけん導入どうにゅうにより、現在げんざい介護かいごサービスのマイナスめんけることが指摘してきされた。
 「いままで市町村しちょうそん権限けんげんで、措置そち制度せいどおこなわれてきたサービスが介護かいご保険ほけん導入どうにゅうによって個人こじん選択せんたくできるようになる。人格じんかく尊重そんちょうされる。」(三郷みさとむら)「サービスをけにくいひとけやすくなる。おな種類しゅるいのサービスでもみずからの選択せんたくでサービス(機関きかん)がえらべる。自分じぶんにあったスケジュールがつくれる。だい多数たすう一般いっぱんてき国民こくみんにメリットがある。いままでの措置そち制度せいど貧者ひんじゃ救済きゅうさいという色合いろあいがつよかったが、自由じゆう選択せんたくになる。市場いちば原理げんりはたらく。行政ぎょうせいささえられるより自己じこ負担ふたんにすることでサービスをけやすくなるのではないか。これまでサービスをけにくかったひと福祉ふくしのお世話せわになるのははじおもいこんでいるひと行政ぎょうせいのお世話せわにはなりたくないとおもっているひとなども心理しんりてきけやすくなる。保険ほけんりょうはらうのだからサービスを必要ひつようになったときけるのは当然とうぜんだとかんがえてほしい。」(塩尻しおじり)「措置そち制度せいどのマイナスをける。サービスが選択せんたくできる。メニューがおおい。国民こくみん全体ぜんたい制度せいどという認識にんしきたかまる。」(松本まつもと
 このように介護かいご保険ほけん方式ほうしき基本きほんてきには肯定こうていてきめられている。同時どうじにずっと行政ぎょうせいおこなってきたシステムが批判ひはん否定ひていされている。それは介護かいご保険ほけん導入どうにゅうにあたって頻繁ひんぱんわれたこととおなじであるのだが、批判ひはんされる対象たいしょうでもある行政ぎょうせいなかにいるひとにとってはどんな意味いみをもつのか。行政ぎょうせいがわにいての実感じっかんなのか、あるいは行政ぎょうせいがわにいるといってもいままでのシステム自体じたいにそう執着しゅうちゃくする立場たちばにいない、ともかく推進すいしんする立場たちば仕事しごとをしているひとであるということなのだろうか。ともかく現状げんじょう問題もんだいがあることをはっきりとみとめ、その改革かいかくとして基本きほんてきにプラスに評価ひょうかしている。
 ではこのシステム導入どうにゅう具体ぐたいてき準備じゅんびじょうきょうはどうなっているだろうか。

2 いそぎの準備じゅんびいそいでおこなえない
 厚生省こうせいしょうのホームページには「施行しこうたっては十分じゅうぶん準備じゅんび期間きかんくこととし、しんゴールドプランの達成たっせいじょうきょうとう見極みきわめ、平成へいせい12年度ねんどから在宅ざいたく施設しせつ同時どうじ実施じっしする」とある。
 たとえば松本まつもとでは現在げんざいにん専任せんにんで、塩尻しおじりでは専任せんにんにん兼任けんにんにんで、準備じゅんび作業さぎょうにあたっている。けれども介護かいご報酬ほうしゅうなどについてのくにからの指示しじおくれているというのがいま現状げんじょうだ。
 「くにがやるとえばやらざるをえないが、くにからの指示しじおくれている。」(松本まつもと地域ちいき広域こういき行政ぎょうせい事務じむ組合くみあい)「みじか時間じかんなかでやることがおおすぎる。準備じゅんび期間きかんねんはんあいだでやるしかない。どこの市町村しちょうそん大変たいへん。」(松本まつもと
 りない情報じょうほうなか市町村しちょうそん準備じゅんびをすすめている。市町村しちょうそん主体しゅたい制度せいどであり、おおきな制度せいど改革かいかくだから、十分じゅうぶん時間じかんをかけて準備じゅんびをしたい。しかしさまざまな具体ぐたいてきてんについてはくに方針ほうしんさだめることになっていて、これがまだまらない。準備じゅんびできるところから準備じゅんびしつつ、まった時点じてん短期間たんきかんおおくのことをめていかなくてはならない。
 9月くがつ段階だんかいでは、くにからの介護かいご報酬ほうしゅう提示ていじがないので、どの市町村しちょうそんでも見込みこみがたない。介護かいご報酬ほうしゅうまった時点じてんから介護かいご保険ほけん事業じぎょう計画けいかく具体ぐたいしていくとおもわれる。「来年らいねん(1999ねん)1ねんかけて事業じぎょう計画けいかくつくる。」(松本まつもと)9がつ塩尻しおじり松本まつもといたはなしでは1999ねんがつがつ介護かいご報酬ほうしゅう骨格こっかく提示ていじされる予定よていであり、具体ぐたいてきがくは1999年度ねんどまつということだったが、12月に広域こういき行政ぎょうせい事務じむ組合くみあいいたはなしでは、1999ねんがつまる予定よていということだった。くにからの提示ていじはやまれば、市町村しちょうそん業務ぎょうむがそれだけすすむことになるだろう。

3 進行しんこうちゅう実態じったい調査ちょうさ
 単価たんかまっても、需要じゅようがどれだけあるかわからなければ、供給きょうきゅうりょう支出ししゅつがくはわからない。調査ちょうさ施行しこうまで1ねんはんった時期じきおこなわれている。
 「サービス基盤きばん整備せいび計画けいかくてきすすめるため、くに策定さくていした基本きほん指針ししんもとづき、市町村しちょうそん都道府県とどうふけんがそれぞれ市町村しちょうそん保険ほけん事業じぎょう計画けいかく都道府県とどうふけん保険ほけん事業じぎょう支援しえん計画けいかく策定さくてい」することになっている(厚生省こうせいしょうホームページ)。
 この計画けいかくは、介護かいご保険ほけんによる様々さまざま在宅ざいたくサービスや施設しせつサービスのりょうめるもので、くに都道府県とどうふけんからの指針ししんとうをもとに作成さくせいされ、制度せいど施行しこう継続けいぞくてきつくなおされる。計画けいかくをたてるには、かく地域ちいきにおけるよう介護かいごしゃとう人数にんずう程度ていど介護かいごサービス利用りよう意向いこうとう把握はあくすることが重要じゅうようである。そのためにかく地域ちいきで「高齢こうれいしゃ実態じったい調査ちょうさ」がおこなわれる。わたしたちが訪問ほうもんした市町村しちょうそんは1998ねんがつ時点じてんでは実態じったい調査ちょうさおこなっている段階だんかいで、12月までに調査ちょうさ結果けっか集計しゅうけいけん提出ていしゅつする予定よていである。
 @現在げんざい在宅ざいたくでサービスをけている老人ろうじんたいするよう援護えんご高齢こうれいしゃ実態じったい調査ちょうさ、A健常けんじょう高齢こうれいしゃたいしておこなわれる一般いっぱん調査ちょうさ、B施設しせつ特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホーム、老人ろうじん保健ほけん施設しせつ)にはいっている高齢こうれいしゃたいする調査ちょうさみっつがある。
 @のよう援護えんご高齢こうれいしゃ実態じったい調査ちょうさ、Aの一般いっぱん調査ちょうさ内容ないようくにからしめされるが、さらにけんかく市町村しちょうそんつくなおされる。調査ちょうさによりニーズ(介護かいごをどこでけたいか、だれけたいか)とサービスりょう把握はあくする。年齢ねんれい状態じょうたい・ADL・痴呆ちほう現在げんざいけているサービスの種類しゅるい今後こんごけたいサービスの種類しゅるい回数かいすう家族かぞく構成こうせい介護かいごしゃ状態じょうたいこまったときの相談そうだん相手あいてなどの調査ちょうさ項目こうもくがある。Bの施設しせつ入所にゅうしょ高齢こうれいしゃたいしては、けん調査ちょうさおこない、その結果けっかがそれぞれの高齢こうれいしゃ在住ざいじゅう市町村しちょうそんおくられる。
 わたしたちが訪問ほうもんした3市町村しちょうそんともに、現在げんざい調査ちょうさおこなっているところだった。
 @「よう援護えんご高齢こうれいしゃ実態じったい調査ちょうさ」「在宅ざいたくよう援護えんご老人ろうじん3000にんたいし、ケースワーカー・保健ほけん在宅ざいたく介護かいごしょくが1あいだ30ふんかけてアンケートを面接めんせつ調査ちょうさしている。」(松本まつもと)「住民じゅうみん2500にんにアンケートを民生みんせい委員いいん配布はいふ回収かいしゅうする。在宅ざいたくでサービスをけているひとには保健ほけん・ケースワーカー・OT・PTなどが自宅じたく訪問ほうもん実態じったいてくる。」(塩尻しおじり)「保健ほけん民生みんせい委員いいんからげられたよう援護えんご老人ろうじん 256にんには保健ほけん面接めんせつをし、アンケートをとる。」(三郷みさとむら
 A「一般いっぱん調査ちょうさ」「無作為むさくい抽出ちゅうしゅつした健常けんじょうしゃ5000にんたいして実施じっし民生みんせい委員いいん直接ちょくせつ配布はいふし、回収かいしゅうしている。アンケートの結果けっかにより再度さいどよう援護えんご老人ろうじんとして面接めんせつおこなう。ほかにとくやしなえ待機たいきしゃたいしても調査ちょうさ。」(松本まつもと)「65さい以上いじょう3000にん対象たいしょう(65さい以上いじょう75さい未満みまん郵送ゆうそう、75さい以上いじょう民生みんせい委員いいん配布はいふする)にアンケートを配布はいふし、民生みんせい委員いいん回収かいしゅうする。」(三郷みさとむら
 「利用りようしゃ予想よそう人数にんずうは、実態じったい調査ちょうさ増加ぞうかりつてからなので、まだわからない。」(松本まつもと
 ただ、「たきり老人ろうじん1542にん在宅ざいたく1151にん施設しせつ391にん)、独居どっきょ老人ろうじん2954にん痴呆ちほう老人ろうじん428にん在宅ざいたく 357にん施設しせつ71にん)」(松本まつもと)、「たきり老人ろうじん104にん独居どっきょ老人ろうじん121にん」(三郷みさとむら)、「たきりろう人数にんずう206にん(1997ねん10がつ)、独居どっきょろう人数にんずう552にん(1997ねんがつ)」(塩尻しおじり)というように、サービスに関係かんけいするひとかず把握はあくされており、それをもとにしておおよその予測よそくてているようである。たとえばよう介護かいご判定はんてい(→8)の対象たいしょうとしては19市町村しちょうそん年間ねんかんやく 16000にん半年はんとしごとさい判定はんていされるひとかずふくむ)が見込みこまれており、塩尻しおじりでは利用りようしゃすうとして1400〜1500にんほどをかんがえている。

4 保険ほけんりょう財政ざいせい
 調査ちょうさによってニーズとサービスりょうよう支援しえんしゃよう介護かいごしゃすう把握はあくされる。「そこから保険ほけんりょう試算しさん計画けいかくつくげていく。」(塩尻しおじり
 ただ介護かいごにどれだけのおかねすかとも相関そうかんして保険ほけんりょうまる。先日せんじつ厚生省こうせいしょう発表はっぴょうした1998年度ねんど介護かいご利用りようがく試算しさんは1995年度ねんど試算しさんくら全体ぜんたいてき増額ぞうがくされている(最高さいこうで12まんえんし)。保険ほけんりょうも、1995年度ねんど価格かかくをもとに推計すいけいした保険ほけんりょう月額げつがくは2500えんだったが、それより増額ぞうがくされることになるかもしれない。(『信濃毎日新聞しなのまいにちしんぶん』1998.12.3)
 保険ほけんりょう塩尻しおじりは1999ねん12がつごろまでにめたいとかんがえており、松本まつもとでは「ぎりぎりの1999ねん12がつ」、三郷みさとむらでは2000ねんがつまるとしている。それまでは、ほぼこのせんという想定そうてい作業さぎょうおこなわれていくだろうし、説明せつめいされる。「保険ほけんりょうがいくらくらいになるかというわせには、くに基準きじゅんがくは2500えんになっているので、だいたいそのくらいになるだろうとこたえている。」(塩尻しおじり
 こうしたおかねにかかわる様々さまざまなことがまらないと、この保険ほけん制度せいど財政ざいせいてきにうまく機能きのうするかどうかはっきりはしない。また、保険ほけんりょう設定せっていされたとしてその徴収ちょうしゅうがうまくいくかどうかという問題もんだいもある。そしてこの保険ほけん保険ほけんりょうだけで運営うんえいされるのではない。
 「保険ほけんしゃ市町村しちょうそん。これをくに都道府県とどうふけん医療いりょう保険ほけんしゃ年金ねんきん保険ほけんしゃ重層じゅうそうてきささう」制度せいどとするとされている。介護かいご保険ほけん財源ざいげんは、「高齢こうれいしゃ介護かいごたいする公的こうてき責任せきにんまえ、公費こうひ負担ふたんそう給付きゅうふの2ぶんの1とする。くに都道府県とどうふけん市町村しちょうそん負担ふたん割合わりあいは、2:1:1である。」(厚生省こうせいしょうのホームページ)また、市町村しちょうそんにおける保険ほけん財政ざいせい安定あんてい保険ほけんしゃ事務じむ円滑えんかつ実施じっし確保かくほするため、国費こくひによる財政ざいせい調整ちょうせいのほか、都道府県とどうふけんにおいて財政ざいせい支援しえん事務じむとう実施じっしするとされる。実際じっさいにはどうなるだろうか。
 実施じっし主体しゅたい保険ほけんしゃ)が市町村しちょうそんであることで、市町村しちょうそんによって財政ざいせいりょくる。国民こくみん健康けんこう保険ほけんは6わり市町村しちょうそん赤字あかじであり、介護かいご保険ほけんでも赤字あかじになる可能かのうせいがある。こうした懸念けねんがあることから、おおくの市町村しちょうそん首長しゅちょうたちは、げん在国ざいこくからしめされている介護かいご保険ほけん導入どうにゅうについて慎重しんちょうあるいは反対はんたいである。ただ、わたしたちがおはなしをうかがった担当たんとうしゃ方々かたがた制度せいど導入どうにゅう前提ぜんていとし、その実施じっしのための仕事しごとをしているのだから当然とうぜんえば当然とうぜんだが、自治体じちたい対処たいしょできる範囲はんいで、しょうじうる問題もんだい実際じっさいしょうじたらそれに対処たいしょしていく、また対処たいしょしていくしかないという姿勢しせいである。

5 どのようなサービスがおこなわれるのか
 介護かいご保険ほけんによっておこなわれるサービスがうまでもなく介護かいごサービスであり、それに在宅ざいたくサービスと施設しせつサービスがあることはられているが、介護かいご保険ほけん制度せいどしたおこなわれるサービスの類型るいけいには、じつ以下いかみっつがある。
 @「介護かいご給付きゅうふ」と「予防よぼう給付きゅうふ」:すべての市町村しちょうそんおこなわれる介護かいご保険ほけん給付きゅうふとしてのサービス。上記じょうき介護かいごサービスはこれにふくまれる。
 A「市町村しちょうそん特別とくべつ給付きゅうふ」:市町村しちょうそん条例じょうれいにより、認定にんていけた保険ほけんしゃたいしておこなうサービス。
 B「保健ほけん福祉ふくし事業じぎょう」:市町村しちょうそん保険ほけんしゃ保険ほけんしゃ介護かいごする家族かぞくとうたいしておこなうサービス。想定そうていされる事業じぎょうには、介護かいご教室きょうしつなど介護かいごしゃ支援しえん事業じぎょう健康けんこう教育きょういく健康けんこう相談そうだんなどよう介護かいご状態じょうたい予防よぼうのための事業じぎょう訪問ほうもん介護かいごサービスなどの直営ちょくえい事業じぎょう高額こうがくサービス費用ひようなどの資金しきん貸付かしつけ事業じぎょうがある。
 ABをおこなうかかの判断はんだんかく市町村しちょうそんおこなう。「具体ぐたいしていない。これから意見いけんきながらめていく。」(三郷みさとむら)「介護かいご保険ほけん本体ほんたい見極みきわめている段階だんかいなので、まだまっていない。」(松本まつもと)ただ、3むらともいままでのサービスが低下ていかしないようにとかんがえている。
 「いままでのサービスは介護かいご保険ほけん合致がっちするものはそちらに移行いこうし、合致がっちしないものはそのまま実施じっしすることになるとおもわれる。介護かいご保険ほけんができていく段階だんかいれられる状態じょうたいか(使つかえるか、なに必要ひつようか、塩尻しおじり市民しみんにとってどこまでれたらプラスになるかなど)かんがえる必要ひつようがある。市町村しちょうそん特別とくべつ給付きゅうふめるものはんでいく。いままでのサービスが低下ていかしないようにし、一般いっぱん会計かいけいあつかいのなかでもっていく。在宅ざいたく重視じゅうしし、よう介護かいごよう支援しえんにならないように予防よぼうちかられる。老人ろうじんのみでなく、どもから大人おとなまでを長期ちょうきにわたりていく必要ひつようがある。」(塩尻しおじり現在げんざいおこなっているサービスには、寝具しんぐ乾燥かんそうサービスや福祉ふくし理容りようけん、タクシー利用りようりょう助成じょせいなどがある。実態じったい調査ちょうさによって本当ほんとう需要じゅようがあるのかどうか把握はあくしたうえでこうしたサービスは介護かいご保険ほけん導入どうにゅうおこなわれることになる。

6 どこまでがカバーされるか
 この制度せいどのもとでサービスを利用りようできないひとてこないか、またサービス水準すいじゅん低下ていかしないかという問題もんだいがある。
 ひとつは、申請しんせいをまって判定はんてい開始かいしされることになっているため、申請しんせいおこなわれずサービスをけられないひとてこないかという問題もんだいである。これについて松本まつもと担当たんとうしゃは、「いま従来じゅうらい福祉ふくしわくないで、保健ほけん民生みんせい委員いいん・ケースワーカー・在宅ざいたく介護かいご支援しえんセンターの職員しょくいんですくいあげている。介護かいご保険ほけん自己じこ申請しんせいなのでもうがないと審査しんさもされずそのままになってしまう。しかし基本きほんてき現在げんざい在宅ざいたくサービスをけているひと審査しんさにもれることはない。」とう。現在げんざい制度せいど申請しんせい主義しゅぎで、介護かいご保険ほけんになってもこのてん変更へんこうはない。現在げんざいサービスをけているひとは、そのまま介護かいご保険ほけんによるサービスにがれるだろう。また、これまでもサービス受給じゅきゅううなが活動かつどうおこなわれてきたのだから、介護かいご保険ほけん制度せいどでも同様どうようにすれば、このめん現在げんざいよりも水準すいじゅん低下ていかすることはないだろう。
 もっとおおきな問題もんだいは、介護かいご認定にんていからもれた(が介護かいご必要ひつようかんがえられる)にん、また十分じゅうぶん水準すいじゅんのサービスをけられてないひとてこないか、場合ばあいにどうするかである。「介護かいご認定にんていにもれたひと市町村しちょうそんかんがえなければいけない。」(三郷みさとむら)「認定にんていにもれたひと介護かいご必要ひつようかどうかを見定みさだめたうえで、なんらかのサービスが必要ひつようであれば介護かいご保険ほけん以外いがい独自どくじ福祉ふくしサービスで対応たいおうすることになるとかんがえている」(塩尻しおじり)。市町村しちょうそんのまったくの独自どくじ事業じぎょうべつだが、くに法律ほうりつもとづく事業じぎょうにはくに都道府県とどうふけんからの予算よさん配分はいぶんがある。たとえば現在げんざいのホームヘルプサービスは、くに半分はんぶん都道府県とどうふけんが4ぶんの1を負担ふたんのこりの4ぶんの1を市町村しちょうそん負担ふたんしている。(さらに市町村しちょうそん独自どくじ上乗うわのせをし、自己じこ負担ふたんぶんらしたりなくしているところもある。)
 「現在げんざいはサービスの上限じょうげんがく設置せっちされていない。ケースワーカーは必要ひつようみと上司じょうし決裁けっさいけられれば、金額きんがく上限じょうげんめはない。」(塩尻しおじり介護かいご保険ほけんによる支給しきゅうがく上限じょうげん以上いじょう在宅ざいたく福祉ふくしサービスをおこなっている自治体じちたいも、おおくはないものの、全国ぜんこくにはある。そして現在げんざいでは自治体じちたい実施じっしおうじてくに自動的じどうてき半額はんがく負担ふたんするシステムになっている。しかし、介護かいご保険ほけん導入どうにゅう介護かいご保険ほけんでカバーされない介護かいごサービスを地方自治体ちほうじちたい独自どくじおこなおうとし、そしてくに介護かいご保険ほけん以外いがいからはくとなると、独自どくじ予算よさん上乗うわのせをおこなわざるをえない。このときに、どこまでサービスをおこなおうとするか、懸念けねんされる。
 施設しせつでのサービスも影響えいきょうけるだろう。施設しせつサービスが従来じゅうらいより低下ていかするのではないかという指摘してきがこれまでなされてきたが、インタビューでつぎのような指摘してきもあった。「特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームはよう介護かいご以上いじょう(4は痴呆ちほうたきりのひと、5は嚥下えんか障害しょうがいのある老人ろうじんなど)の相当そうとう重度じゅうど老人ろうじんでなければ入所にゅうしょできなくなる。それ以外いがい現在げんざい入所にゅうしょしている老人ろうじんは5ねんをめどに退すさところすることになる。」(松本まつもと)「希望きぼう施設しせつ入所にゅうしょできるのかという問合といあわせにたいしては、できるだけ在宅ざいたくでとすすめるが、納得なっとくしないひともいる。実際じっさいには施設しせつりていない。」とある担当たんとうしゃかたっていた。施設しせつではなくれたいえらすことは基本きほんてきにはこのましいことだろう。しかし、問題もんだいは、在宅ざいたくサービスが施設しせつでのサービスと同等どうとうにまたそれ以上いじょうじゅうふんになされるかどうかである。

7 自己じこ負担ふたん家族かぞく負担ふたん)について
 いままでは税金ぜいきん自己じこ負担ふたん家族かぞく負担ふたん)でサービスを運営うんえいしていたが、公的こうてき介護かいご保険ほけんでは利用りようしゃがほぼ一律いちりつ保険ほけん給付きゅうふ対象たいしょう費用ひようの1わり負担ふたんする。
 現在げんざい老人ろうじん福祉ふくしサービスでは、生計せいけい中心ちゅうしんしゃ所得しょとく税額ぜいがくおうじて負担ふたんがく決定けっていされるため、中高なかだか所得しょとくしゃとサービスをける高齢こうれいしゃ同居どうきょしている場合ばあいおも負担ふたんとなることが指摘してきされている(『医療いりょう白書はくしょ1997』p.319、ひとし)。このことはききとりのなかでも指摘してきされた。「現在げんざい制度せいどでは、負担ふたんがく生計せいけい中心ちゅうしんしゃ所得しょとく税額ぜいがくにより決定けっていされる。ホームヘルパーは個人こじん負担ふたん0〜 940えん(6段階だんかい)。本質ほんしつてきには公平こうへいではない。資産しさんはあるが所得しょとくすくない老人ろうじん世帯せたい負担ふたんがないが、どもと同居どうきょしている所得しょとくすくない老人ろうじん負担ふたんがかかる。」(塩尻しおじり
 介護かいご保険ほけん導入どうにゅうによって、こうした世帯せたい負担ふたんるだろう。だが他方たほう自己じこ負担ふたんがくたかくなるひとてくる。このことはおはなしをうかがったかく市町村しちょうそん担当たんとうしゃたちも指摘してきしていた。ホームヘルプサービスは三郷みさとむらふく南安曇みなみあずみぐんでは現在げんざい無料むりょうになっている(デイサービスは一律いちりつ負担ふたん)。前年度ぜんねんど所得しょとくぜい納入のうにゅうがくによって費用ひよう負担ふたんのある松本まつもとでも利用りようしゃの8わり無料むりょう世帯せたいである(デイサービスは一律いちりつ 500えん)。生活せいかつ保護ほご受給じゅきゅう世帯せたいについては生活せいかつ保護ほごなか介護かいご扶助ふじょあらたにつくられることで対応たいおうがなされるが、問題もんだい生活せいかつ保護ほご受給じゅきゅうにはいたらない場合ばあいである。そしてそれは施設しせつでのサービスについての自己じこ負担ふたんについても同様どうようである。
 「現在げんざい特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームの自己じこ負担ふたんは0〜24まんえん所得しょとくおうじてはらっていたが、これからはてい所得しょとくしゃ負担ふたんおおきく、こう所得しょとくしゃ負担ふたんすくなくなる。それはこれからの課題かだいである。生活せいかつ保護ほごひと自己じこ負担ふたんぶん上乗うわのせできるが、かえってちゅうあいだそうひとほうきびしい。」(松本まつもと

8 広域こういき連合れんごう介護かいご認定にんてい審査しんさかい運営うんえいする
 保険ほけんしゃはまず市町村しちょうそん保険ほけんしゃ)に認定にんていけるための申請しんせいおこなう。市町村しちょうそんはこの申請しんせいもとづき、保険ほけんしゃ心身しんしん状況じょうきょうやそのかれている環境かんきょうとうについて訪問ほうもん調査ちょうさ実施じっしし、調査ちょうさひょう作成さくせいする。あわせてかかりつけとうたいして身体しんたいじょうまたは精神せいしんじょう障害しょうがい原因げんいんである疾病しっぺいまたは負傷ふしょう状況じょうきょうとうかんする意見いけん聴取ちょうしゅし、これらの情報じょうほう介護かいご認定にんてい審査しんさかい通知つうち審査しんさ判定はんてい依頼いらい)する。
 審査しんさかいが、申請しんせいのあった保険ほけんしゃよう介護かいご状態じょうたいにある、またはそのおそれがある状態じょうたい審査しんさ判定はんていした場合ばあいには、それぞれよう介護かいごしゃまたはよう支援しえんしゃ認定にんていする(認定にんていとなる場合ばあいもある)。介護かいご認定にんてい審査しんさかい市町村しちょうそん設置せっちするが、都道府県とどうふけん市町村しちょうそん共同きょうどう広域こういき連合れんごう)で設置せっちすることもできる。審査しんさかいではよう介護かいご状態じょうたいについて「おもい」「かるい」を判定はんていし、「居宅きょたく」「施設しせつ」の認定にんていおこなわない。
 わたしたちが調査ちょうさおこなった市町村しちょうそん地域ちいきでは介護かいご認定にんてい審査しんさかい広域こういき(217町村ちょうそん=19市町村しちょうそん)でおこなうことになっており、広域こういき連合れんごう介護かいご認定にんてい審査しんさかい設置せっちおよ運営うんえいおこなう。
 現在げんざいあるのは「松本まつもと地域ちいき広域こういき行政ぎょうせい事務じむ組合くみあい」である。松本まつもと広域こういきけん19市町村しちょうそんけんいき一体いったいてき発展はってんはかるため、消防しょうぼうかんする事務じむなどをおこな組織そしきであり、松本まつもと市役所しやくしょかいかれている。そして1999ねんがつにちには、介護かいご保険ほけん認定にんてい審査しんさかい広域こういきおこなうにあたり、事務じむ組合くみあい発展はってんてき解消かいしょうし、あらたな広域こういき行政ぎょうせい組織そしきである「広域こういき連合れんごう」に移行いこうすることになっている。広域こういき連合れんごうでは事務じむ組合くみあい事務じむ継承けいしょうしながら、新規しんき事務じむとして介護かいご保険ほけん認定にんてい審査しんさかい設置せっちおよ運営うんえい広域こういきてきなゴミ処理しょり職員しょくいん共同きょうどう研修けんしゅう広域こういきてき重要じゅうよう課題かだい調査ちょうさ研究けんきゅうかんがえている。この広域こういき連合れんごう事務じむ作業さぎょうやくぶんの1が介護かいご保険ほけんにかかわる作業さぎょうになるだろうという。
 この地区ちくでは、審査しんさかいは8チーム、5にん構成こうせいされる。かくチーム、つきかい審査しんさかい開催かいさいするので、べ32かい開催かいさいされる。1かいあいだ、45けん審査しんさおこなう(1けんにつきやくぶん審査しんさ)。審査しんさおこなわれる場所ばしょは3ヵ所かしょ医師いしかい予定よていである。
 19市町村しちょうそん審査しんさすうは、6ヵ月かげつごとおこなわれるさい審査しんさぶんふく年間ねんかん 16000けん見込みこまれている。1999ねん10がつにちから審査しんさはじめる予定よていとなっている。
 広域こういき審査しんさかいおこなうことの長所ちょうしょとしては以下いかがあげられた。
 @コストがやすくなる。(かく市町村しちょうそん審査しんさかい設置せっちするよりも人数にんずう半分はんぶんみ、人件じんけん節減せつげんできる。認定にんていしょをまとめて作成さくせい印刷いんさつできるなど。)必要ひつよう最低限さいていげん職員しょくいん審査しんさかい運営うんえいできることにより、経費けいひ節減せつげんはかれる。いち判定はんてい市町村しちょうそんおこなうことだが、コンピューターの購入こうにゅうにコストがかかるので、広域こういき連合れんごうで2だい購入こうにゅうして判定はんていおこなう予定よていもあるそうだ。
 Aかく市町村しちょうそん審査しんさおこなうと、しゅうに1かいしかおこなわないことになるが、広域こういきおこなうとほぼ毎日まいにち審査しんさおこなわれることになり、よう介護かいごしゃ立場たちば配慮はいりょした素早すばや対応たいおうができ、効率こうりつがよい。
 B審査しんさ対象たいしょうがわかっていると感情かんじょうてき左右さゆうてくる可能かのうせいがあるが、対象たいしょうしゃ名前なまえなどをわからなくする(れんばんにする)ことによりすべてのけんいき住民じゅうみん公平こうへい認定にんてい審査しんさおこなうことができる。
 C精神せいしんなどの専門せんもん委員いいん確保かくほすることが比較的ひかくてき容易よういとなる。

9 ケア・マネージャー
 よう介護かいご支援しえん認定にんてい在宅ざいたくサービスを利用りようする場合ばあいは、通常つうじょう居宅きょたく介護かいご支援しえん事業じぎょうしゃのケアマネージャーによって作成さくせいされるケアプランによりサービスをける。施設しせつサービスを利用りようする場合ばあいは、入所にゅうしょする施設しせつ所属しょぞくするケアマネージャーがケアプランを作成さくせいし、それにもとづくサービスをける。
 わたしたちが調査ちょうさおこなったのは、はじめてのケアマネージャー(介護かいご相談そうだんいん)の試験しけん実務じつむ研修けんしゅう受講じゅこう資格しかく試験しけん=ケアマネージャーを養成ようせいする講習こうしゅうけるための資格しかく試験しけん)がおこなわれる前後ぜんごで、まだ結果けっかてていなかった。くにとしては16まんにん資格しかくち、4まんにん実際じっさいにこの仕事しごと従事じゅうじすることを見込みこんでいる。よう援護えんご老人ろうじん50にんたいしてケアマネージャー1にんともわれる。
 三郷みさとむらでは保健ほけんにん試験しけんけることになっていた。まずケアマネージャー1にんそいを1にんく。1人ひとりりない場合ばあい保健ほけん補助ほじょする。松本まつもとでは、受験じゅけんしゃすうは、職員しょくいんでは保健ほけん12にん。ケアマネージャーの人数にんずう資格しかく試験しけん合格ごうかく受講じゅこう修了しゅうりょうしたひと人数にんずうとなるということだった。職員しょくいん受験じゅけんしゃは12にん塩尻しおじりではやく90にん申込もうしこみ用紙ようしりにており、受験じゅけんするのはそのうち50にんくらいだろうという。職員しょくいんでは5にん受験じゅけん、このうちゆう資格しかくしゃ保健ほけんかったとしてケアマネージャーになるかどうかは未定みてい
 一人ひとりいちにんちがったケアプランを作成さくせいするので「自分じぶんにあったスケジュールがつくれる。民間みんかん事業じぎょうしゃがケアマネージャーをおいて、よりよいケアプランを作成さくせいすることもできるようになる。」(塩尻しおじり)「ケアマネジャーがサービス計画けいかくつくさい民間みんかん事業じぎょうしゃ紹介しょうかいし、利用りようしゃがどの事業じぎょうしゃのサービスを利用りようするか選択せんたくする。」(三郷みさとむら)と、肯定こうていてきけとめられている。ただ、具体ぐたいてき陣容じんようはまださだまらず、そしてまだおこなわれていないから当然とうぜんえば当然とうぜんなのだが、具体ぐたいてきぞうはよくみえない。

10 サービスへの民間みんかん参入さんにゅう
 これまでの福祉ふくしサービスのおおくは、社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいなど単一たんいつ組織そしき委託いたくしておこなわれてきた。これが、公的こうてき介護かいご保険ほけんでは複数ふくすう事業じぎょうしゃがサービスを提供ていきょうすることが可能かのうになる。1にべたように担当たんとうしゃたちはこのことに基本きほんてき肯定こうていてきだった。
 「最大さいだいのメリットは、価格かかくめんでの競争きょうそうはない競争きょうそうこるので、しつ向上こうじょうはかれる。」(松本まつもと)「競争きょうそう原理げんりによってサービスが向上こうじょうする。」(三郷みさとむら)「競争きょうそうによるサービスの向上こうじょう行政ぎょうせいおこなっているとパターンしてしまう。」(塩尻しおじり)サービス価格かかくくに介護かいご報酬ほうしゅうとして設定せっていされるため、サービスの価格かかく競争きょうそうはできず──「医療いりょう保険ほけんおなかんがかた利用りようりょう一律いちりつ安売やすうりはない。」(三郷みさとむら)──競争きょうそう原理げんりはサービスのしつ向上こうじょうとしてはたらく。「社協しゃきょう民間みんかんされてしまうため社協しゃきょうもサービス向上こうじょう必要ひつようとなる。」(三郷みさとむら
 すでにホームヘルプサービスとう在宅ざいたく福祉ふくしサービスは営利えいり営利えいり民間みんかん団体だんたい事業じぎょう委託いたくしておこなわれている。「ホームヘルパーは社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいめぐみしんかい、JA、訪問ほうもん入浴にゅうよくはツクイ産業さんぎょう全国ぜんこく)、エイジン。」(松本まつもと介護かいご保険ほけんではそれがえる可能かのうせいがある。介護かいご保険ほけんでは、長野ながのけん登録とうろくした法人ほうじん県内けんないどこでも営業えいぎょうができる。「社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかい社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじん、JA(あずみ農協のうきょう福祉ふくし今年ことしからホームヘルパー業務ぎょうむはじめた)にくわえ、介護かいご保険ほけん導入どうにゅう参入さんにゅうする可能かのうせいのある業者ぎょうしゃはダスキンほか3しゃ。」(三郷みさとむら
 これから参入さんにゅうする予定よていのある民間みんかん事業じぎょうしゃは「たくさんあるだろう。損害そんがい保険ほけん会社かいしゃ生命せいめい保険ほけん会社かいしゃ運送うんそう会社かいしゃなどの参入さんにゅうかんがえられる。運送うんそう会社かいしゃくるまやステーションをっているから。」(松本まつもと
 しかし、とく営利えいり企業きぎょうについては、どれだけの参入さんにゅうがあるか、市町村しちょうそんがわでもまだ正確せいかくにはつかめていない。それは、介護かいご報酬ほうしゅうまっていないため、収入しゅうにゅう見積みつもりにくいことによる。「経営けいえい分析ぶんせきをしてから参入さんにゅうかんがえるはずだ。」(松本まつもと)「介護かいご報酬ほうしゅうまっていないので、企業きぎょう収入しゅうにゅう見積みつもれず参入さんにゅうしてこれない。行政ぎょうせいでも見込みこみがない。」(塩尻しおじり
 そのため、すくなくとも当初とうしょ行政ぎょうせい社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいとうのサービスがかなりの部分ぶぶんめるので、「開始かいししばらくは、実際じっさいには自由じゆう選択せんたくできないとおもわれる」(塩尻しおじり)といった指摘してきもあった。報道ほうどうとうでも、とく営利えいり民間みんかん事業じぎょうしゃ参入さんにゅう大都市だいとし集中しゅうちゅうするおそれがあり、地域ちいきにばらつきがてしまうのではないかという指摘してきがある。民間みんかん参入さんにゅうがどの程度ていどあるかについてはれていないようであり、また、担当たんとうしゃあいだ予測よそくもかならずしも一致いっちしていないようである。
 そして担当たんとうしゃたちは、民間みんかん参入さんにゅう利点りてんだけをているのでもない。「わりわりに業者ぎょうしゃ出入でいりするひとし過剰かじょう競争きょうそう利用りようしゃにとってマイナスになる。」(松本まつもと)「サービス事業じぎょうしゃ確保かくほできるか。経営けいえいつづかず撤退てったいされるとサービス提供ていきょうあながあく。業者ぎょうしゃによりサービス計画けいかくしつことなる。民間みんかん参入さんにゅうがそのまま短所たんしょにつながるとはかぎらないが、はじめは混乱こんらんするだろう。悪徳あくとく業者ぎょうしゃにより被害ひがいけることもあるかもしれないが、自然しぜん淘汰とうたされていく。民間みんかん企業きぎょう軌道きどうってくるのは5ねんくらいだろう。」(塩尻しおじり
こうしたところにもやってみないとわからない部分ぶぶんがあるということだろう。ただ、以上いじょう想定そうていされているのは営利えいり比較的ひかくてき規模きぼおおきい「企業きぎょう」であるようにもえる。とく大都市だいとしけんにおいて、これまで福祉ふくし制度せいど外側そとがわ在宅ざいたく福祉ふくし相当そうとう部分ぶぶんになってきたのは、「住民じゅうみん参加さんかがた」としょうされる営利えいり比較的ひかくてき規模きぼちいさい組織そしきである。こうした組織そしきは、介護かいご保険ほけんというシステムのなかでは地歩ちほめにくいということだろうか。そしてまた、長野ながのけんのこの地域ちいきではそう期待きたいできないということだろうか。
おわりに
 介護かいご保険ほけん導入どうにゅう自体じたいは、「措置そちから契約けいやくへ」という変化へんかとして、おおむね肯定こうていてきめられている。だが介護かいご報酬ほうしゅうなど具体ぐたいてきなところについてくにからの指示しじおくれており、りない情報じょうほうなか市町村しちょうそん準備じゅんびをすすめている。十分じゅうぶん時間じかんをかけて準備じゅんびおこないたいのだが、これから短期間たんきかんおおくのことをめていかなくてはならない。そういうなか担当たんとうしゃ方々かたがた仕事しごとをしている。
 保険ほけん主体しゅたいくにけんではなく住民じゅうみんちか存在そんざいである市町村しちょうそんであることで、より住民じゅうみん意向いこう反映はんえいされやすいのではないか。市町村しちょうそん次第しだいでよしあしがまるので、サービスを充実じゅうじつさせていかないと不満ふまん市町村しちょうそん直接ちょくせつく。いままで福祉ふくしすすんでいなかった市町村しちょうそん充実じゅうじつさせざるをえない。短所たんしょおお指摘してきされる介護かいご保険ほけんだが、わたしたち訪問ほうもんした市町村しちょうそん広域こういき連合れんごう市町しちょう村民そんみんのために介護かいご保険ほけんかせるようにかんがえている。市町村しちょうそん責任せきにんおもい。
 予定よていどおりにけば1ねんがつ実施じっしである。このみじかあいだなにがどうまり、制度せいどがっていくのか、関心かんしんをもってていきたいとおもう。

 「自信じしんはないがやるしかない。がんばらなければいけない。」(三郷みさとむらで)
 「1999ねん10がつには介護かいご認定にんてい基本きほんてき方針ほうしんしておきたい。さきていないとおくれてしまう。住民じゅうみんのためにまった介護かいご保険ほけんは、どんなことがあってもやらざるをえない。不安ふあんでもやらなければならない。やるべきものである。」(塩尻しおじりで)
 「がんばる。さきめない。」(松本まつもとで)

 この調査ちょうさ研究けんきゅうおこなうにあたり、情報じょうほう提供ていきょうしてくださいました松本まつもと市役所しやくしょ塩尻しおじり市役所しやくしょ三郷みさとむら役場やくば介護かいご保険ほけん担当たんとうしゃ皆様みなさま松本まつもと地域ちいき広域こういき行政ぎょうせい事務じむ組合くみあい皆様みなさまおおくのご指導しどうをいただきました立岩たていわ教官きょうかん阪口さかぐち教官きょうかんふか感謝かんしゃいたします。

※ http://ehrlich.shinshu-u.ac.jp:76/TATEIWA/1.htmの「全文ぜんぶん掲載けいさい」や「社会しゃかい福祉ふくし」のコーナーにほん報告ほうこく制度せいど解説かいせつなどを掲載けいさいしました。


  cf.
  ◆介助かいじょ介護かいご   ◆信州大学医療技術短期大学しんしゅうだいがくいりょうぎじゅつたんきだいがく


REV: 20170127
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