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「胎児条項」導入を求める見解への抗議文
「『胎児条項』導入を求める見解への抗議文」
last update: 20151221
「胎児条項」導入を求める見解への抗議文
日本母性保護産婦人科医会御中
会長・副会長、理事・監事・顧問 各位
私たちは、女性のからだ、産む/産まないの機能が、人口政策の道具にされ
ることに反対する立場から、堕胎罪・優生保護法の廃止を求めて1982年から活
動してきたグループです。貴会法制検討委員会が母体保護法への「胎児条項」
導入などを求める見解をまとめたという新聞報道に接し、失望と怒りを感じて
います。来たる代議員会において、「胎児条項」導入などを認める決定をしな
いよう、強く求めます。
子どもを産むか、産まないかを最終的に決めるのは、女性であると私たちは
考えます。そのために、入手しやすくて安全な避妊手段の確保が必要ですし、
避妊に失敗したときのための人工妊娠中絶は、合法的で安全な医療のもとで受
けられるべきです。
産みたい女性には、障害のあるなし/性別などにかかわらず、安心して産み
育てられる支援が必要です。また、子どものいる/いないで、女性を価値づけ
ることがあってはなりません。そして、産む/産まないの選択に、法律や制度
を通して何らかの圧力がかけられるべきではありません。
わが国では、女性が産む/産まないを決めることを、堕胎罪・優生保護法が
阻害してきました。優生保護法はまた、「不良な子孫の出生を防止する」とい
う目的のもとで「生まれるべき人間」と「生まれるべきではない人間」をわけ
る優生思想に基づいた差別的な法律でもありました。1996年にやっと優生の条
項は削除されましたが、堕胎罪で基本的に中絶を禁止し、母体保護法で適用除
外を規定するという構造そのものは変わっていません。
ここに「胎児条項」を導入すれば、ふたたび法律で「生まれるべき人間」と
「そうではない人間」を規定することになります。しかも、その「分別」を当
の妊娠した女性に「選ばせる」という残酷な状況を生み出します。
私たちは、人工妊娠中絶は女性の自己決定のために必要なものだと考えま
す。しかし、障害のあるなしによって胎児を選別することは、女性の自己決定
とは言えないし、ましてや「母親の幸福追求権」などとは到底言えないと思い
ます。私たちは貴会に対し、これらのことを再三にわたって申し入れてきまし
た。しかし、私たちの声に耳を傾けられないばかりか、私たちの主張――産む
/産まないに関する女性の自己決定――を捻じ曲げて、優生思想を強める根拠
として利用しようとしています。女性に信頼されるべき医療者として、「胎児
条項」の導入を含む見解を撤回されるよう求めます。
1999年3月24日
東京都新宿区富久町8-27 ニューライフ新宿東305
電話&ファックス 03(3353)4474
SOSHIREN 女(わたし)のからだから