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「人権擁護法案に関する障害者団体からの意見書」
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人権じんけん擁護ようご法案ほうあんかんする障害しょうがいしゃ団体だんたいからの意見いけんしょ


last update: 20160125


2002ねんがつ 

       政党せいとうめい
       代表だいひょうしゃめい           さま

               DPI(障害しょうがいしゃインターナショナル)日本にっぽん会議かいぎ
                       議長ぎちょう 山田やまだ 昭義あきよし
               全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい(JIL)
                       代表だいひょう 中西なかにし 正司しょうじ
               リーガルアドボカシー 障害しょうがいをもつひと権利けんり
                       代表だいひょう 川内せんだい 美彦よしひこ

           連絡れんらくさき東京とうきょうアドヴォカシー法律ほうりつ事務所じむしょ 03−3816−2063
                    担当たんとう池原いけはらあつし(いけはら・よしかず)
     DPI(障害しょうがいしゃインターナショナル)権利けんり擁護ようごセンター 03-5297-4675
                    担当たんとうきむまさしだま(キム・ジョンオク)


人権じんけん擁護ようご法案ほうあんかんする障害しょうがいしゃ団体だんたいからの意見いけんしょ

 日頃ひごろ人権じんけん確立かくりつ障害しょうがいしゃ施策しさく充実じゅうじつにむけたご尽力じんりょくしんよりの敬意けいいあらわします。
さて、ご承知しょうちのとおり、政府せいふ人権じんけん擁護ようご法案ほうあん審議しんぎ参議院さんぎいん法務ほうむ委員いいんかいでいよいよはじめ
まろうとしています。この法案ほうあんは1996ねん制定せいていされた「人権じんけん擁護ようご施策しさく推進すいしんほう」の付帯ふたい
決議けつぎにもとづき、制定せいていされ、包括ほうかつてき人権じんけんほうであるという位置いちづけにあるようです。
けれどもわたしたち、障害しょうがいをもつ当事とうじしゃ団体だんたいからすれば、おおいに懸念けねんせざるをないこう
ほう内容ないようとなっています。とくに、@人権じんけん侵害しんがい救済きゅうさい実効じっこうせいがない、A障害しょうがい定義ていぎ
せまい、B人権じんけん侵害しんがいける立場たちばにたった視点してん反映はんえいされていない、Cパリ原則げんそくを遵
もりしていない、Dしん制度せいど現行げんこう制度せいどなおしにすぎず、独立どくりつせい担保たんぽうたがわしいE
公権力こうけんりょくほう制度せいどそのものの人権じんけん侵害しんがい救済きゅうさいできるしくみがない、というむっつのてん
ら、抜本ばっぽんてき見直みなおしが必要ひつようです。
 わたしたちは、このような中途半端ちゅうとはんぱ法律ほうりつではなく、障害しょうがいしゃたいする生活せいかつじょうのあらゆる
人権じんけん侵害しんがい差別さべつ明確めいかくかつ具体ぐたいてき禁止きんしし、裁判さいばん規範きはんとして十分じゅうぶん機能きのうする障害しょうがいしゃ差別さべつ
禁止きんしほう策定さくてい作業さぎょう開始かいしせつ要望ようぼういたします。
 以下いかむっつの問題もんだいてんかんする説明せつめいをおみいただき、法案ほうあん審議しんぎ視点してんとしてぜひご
活用かつようください。
海外かいがいでは、過去かこ10ねんあいだにすでに40カ国かこく以上いじょうで、障害しょうがいしゃたいする差別さべつ禁止きんし明確めいかくにし
ほう整備せいびがすすみました。国連こくれんでも、昨年さくねんまつ障害しょうがいしゃたいする差別さべつ禁止きんし規定きていするけん
条約じょうやく策定さくていのための特別とくべつ委員いいんかい設置せっち採択さいたくされました。さらに日本にっぽん国内こくないでは、日本にっぽんべん
まもる連合れんごうかい昨年さくねんまつ障害しょうがいしゃ差別さべつ禁止きんしほう大綱たいこう発表はっぴょうしましたし、わたしたち当事とうじしゃ障害しょうがい
もの政策せいさく研究けんきゅう集会しゅうかいでも7がつ目処めどに、障害しょうがいしゃ差別さべつ禁止きんし法案ほうあん要綱ようこう発表はっぴょう予定よていしています。
 これらの国内外こくないがい潮流ちょうりゅうは、障害しょうがいしゃを、保護ほごから権利けんり主体しゅたいとしてらえて包括ほうかつする
人権じんけんほう位置いちづけを反映はんえいするものであります。
 ぜひともこのむっつの問題もんだいてんかんする説明せつめい解釈かいしゃくをご検討けんとういただきたく、かさねておねがい
もうげます。ご不明ふめいてん説明せつめい不十分ふじゅうぶんてんにつきましては、上記じょうきまでご連絡れんらく
ださい。何卒なにとぞよろしくおねがもうげます。



@人権じんけん侵害しんがい救済きゅうさい実効じっこうせいがない
ほん法案ほうあんさんじょうおよびよんじゅうじょうで、人権じんけん侵害しんがい内容ないよう(「不当ふとうな」あつかい・差別さべつてき言動げんどう
虐待ぎゃくたい)が規定きていされ、人権じんけん委員いいん事務じむきょく職員しょくいん人権じんけん侵害しんがい相談そうだんおうじることになってい
ますが(だいさんじゅうななじょう)、これだけでは具体ぐたいてき紛争ふんそう解決かいけつする場合ばあいなに人権じんけん侵害しんがいとう
であるかないかの判断はんだん基準きじゅんとしてあいまいです。
たとえば車椅子くるまいす利用りようしゃがスロープなどがないためにレストランを利用りようできないという
場合ばあいや、アパートをりようとしたところ、貸主かしぬしからたたみ建具たてぐがいたむからすこと
ができないといわれた場合ばあい精神せいしん障害しょうがいしゃ公営こうえい施設しせつ利用りよう拒否きょひされた場合ばあい、うつびょう
ひとが、9〜5でなく11〜7なら会社かいしゃかよえるという配慮はいりょもとめたのにたい
してそれはできないので採用さいようしないとした場合ばあいなど、法案ほうあんのようなあいまいな規定きてい
仕方しかたでは当事とうじしゃ解決かいけつ指針ししんあたえるものにはなりません。おな理由りゆうで、これらのぶんまわし
じょうは、裁判さいばん規範きはんとして有効ゆうこう機能きのうできないとおもわれます。
障害しょうがいをもつアメリカじんほう略称りゃくしょうADA)は、雇用こよう公共こうきょうせいのある施設しせつおよびサービス・
通信つうしん領域りょういきについての差別さべつ禁止きんしししています。たとえば、障害しょうがいがあるというだけで
えきやレストラン、映画えいがかんなど、公共こうきょうせいをもつ施設しせつ障害しょうがいしゃ利用りよう拒否きょひすること、こ
れらの施設しせつ障害しょうがいしゃにとって利用りようしやすいようにととのえていないこと、つまり配慮はいりょ義務ぎむ
たしていないこと自体じたい差別さべつとしています。したがって差別さべつであるとされたとき
には、スロープ設置せっちなどの作為さくい命令めいれいすことができます。
 日本にっぽんおおくの障害しょうがいしゃ日常にちじょう生活せいかつは、このような作為さくい義務ぎむまでんだ解決かいけつがなさ
れなければ完全かんぜん参加さんか平等びょうどう獲得かくとくできません。そのためにはたん不当ふとう差別さべつ禁止きんし
るだけでなく、積極せっきょくてき差別さべつ是正ぜせいする作為さくいめいじる権限けんげんさだめておく必要ひつようがありま
す。
水戸みと事件じけんほか各地かくち発生はっせいしている雇用こようにおける虐待ぎゃくたいがこの法律ほうりつよんじゅうじょうろくじゅう
ろくじょう参照さんしょう)の対象たいしょうになっていないことも、現実げんじつ発生はっせいしている障害しょうがいしゃ人権じんけん救済きゅうさいのた
めに機能きのうしない側面そくめんのあることをしめしています。

A障害しょうがい定義ていぎがせまい
 ほん法案ほうあんにおける障害しょうがい定義ていぎじょうさんこう)は障害しょうがいしゃ基本きほんほう同様どうようです。障害しょうがいしゃ基本きほんほう
による障害しょうがいしゃ以外いがい障害しょうがいをもっているとみなされるひと過去かこ障害しょうがいをもっていたひと
これからそのような可能かのうせいがあるひとなどの救済きゅうさいはされないのでしょうか。
障害しょうがいしゃ基本きほんほう障害しょうがいしゃたいする福祉ふくし施策しさくとう基本きほんさだめる法律ほうりつであるのにたいして、こ
法案ほうあん社会しゃかいにおける差別さべつをなくし、人権じんけん擁護ようごすることを目的もくてきとする法律ほうりつですか
ら、障害しょうがい医学いがくてき視点してん医学いがくモデル)からではなく、社会しゃかいのありかたとの関係かんけい重点じゅうてん
をおいて、社会しゃかいてき観点かんてん社会しゃかいモデル)から定義ていぎしなおす必要ひつようがあります。

B人権じんけん侵害しんがいけるもの立場たちばにたった視点してん反映はんえいされていない―
主役しゅやくだれなのか?
そもそも、人権じんけん侵害しんがいけているということは社会しゃかいてき不利ふり立場たちばにあることであ
り、本来ほんらい憲法けんぽう14じょう保障ほしょうされているような平等びょうどうせいと、人間にんげんとしての尊厳そんげん憲法けんぽう13
じょう)を回復かいふくしなければならないということです。したがって、人権じんけん侵害しんがいけている
判断はんだんされた場合ばあい、その権利けんり回復かいふくするのがさい優先ゆうせんされるべきであり、相手あいて人権じんけん
配慮はいりょしすぎては本来ほんらい回復かいふくされるべき権利けんり回復かいふくできません。また、人権じんけん侵害しんがいけて
いるものは、通常つうじょう、その事実じじつ大変たいへんいいにくい社会しゃかいてき状況じょうきょうにあり、心理しんり状態じょうたいにありま
す。けれどもだいはちじゅうじょうでは「救済きゅうさい対象たいしょうとなるもの人権じんけんとそうでないもの人権じんけんとの
関係かんけい十分じゅうぶん配慮はいりょしなければならない」とし、本末転倒ほんまつてんとうともいえる事項じこうんで
います。たとえば法務省ほうむしょうによる人権じんけん侵害しんがい相談そうだんされているとき、法務省ほうむしょう人権じんけんにどの
程度ていど配慮はいりょすべきなのでしょうか?
また、さんじゅうななじょうからろくじゅうじょうまで一般いっぱん救済きゅうさい特別とくべつ救済きゅうさい内容ないようとうまれています
が、施設しせつ病院びょういんらしているさまざまな障害しょうがいしゃがどのようなかたち相談そうだんできるのか、
相談そうだん手続てつづきや一般いっぱん救済きゅうさい特別とくべつ救済きゅうさいちがいなどが知的ちてき障害しょうがいしゃにもわかりやすい言葉ことば
つたえられる媒体ばいたい確保かくほされるのかどうかなどまった不明ふめいです。さらに人権じんけん委員いいんかい対応たいおう
たいする不服ふふくもうての手続てつづきもまれていないし、不利益ふりえきあつかいがおきた
場合ばあい救済きゅうさい措置そちもない(はちじゅうよんじょう関連かんれん)。人権じんけん擁護ようご委員いいん表彰ひょうしょうなどは明記めいきされている
のに、これらの事柄ことがら欠如けつじょしているのではこの法律ほうりつ主役しゅやく一体いったいだれなのかうたがわざるを
ません。

Cパリ原則げんそく遵守じゅんしゅしていない
パリ原則げんそく(1993ねん国連こくれん決議けつぎ日本にっぽん政府せいふ賛成さんせい)では、国内こくない人権じんけん機関きかん構成こうせいにおいて、ひと
けん促進そくしん保護ほごかかわる市民しみん社会しゃかい多元的たげんてき代表だいひょう確保かくほ活動かつどう全体ぜんたいにおける人権じんけんNGO
重要じゅうようせい明記めいきしています。しかしながらほん法案ほうあんにおける人権じんけん委員いいんかい構成こうせいや、委員いいん
任命にんめい事務じむきょく地方ちほう事務所じむしょ配置はいち人権じんけん擁護ようご委員いいん人権じんけん調整ちょうせい委員いいん任命にんめい事項じこうをみる
と、これらの原則げんそく反映はんえいされているとはえません。障害しょうがいしゃ権利けんり擁護ようご活動かつどうにおいて
も、既存きそん人権じんけん擁護ようご委員いいん相談そうだんするより、当事とうじしゃ運営うんえいしている権利けんり擁護ようごNGOのほう
相談そうだんしやすいというこえだい多数たすうです。パリ原則げんそく最大限さいだいげん尊重そんちょうし、障害しょうがいしゃ立場たちばにたっ
権利けんり擁護ようごしてくれるしくみや人材じんざい確保かくほ必要ひつようです。
    
Dしん制度せいど現行げんこう制度せいどなおしにすぎず、独立どくりつせい担保たんぽうたがわしい
おなじくパリ原則げんそくでは、国内こくない人権じんけん機関きかん人事じんじ予算よさんにおける独立どくりつせいをうたっています
が、ほん法案ほうあん人権じんけん委員いいんかい法務省ほうむしょう外局がいきょく設置せっちしているだけでなく、相談そうだん業務ぎょうむにな
事務じむきょく地方ちほう事務所じむしょ実質じっしつてき法務省ほうむしょう人権じんけん擁護ようごきょく関係かんけいしゃ地方ちほう法務局ほうむきょくで、かなりほう
つとむしょう依存いぞんしています(だいじゅうじょうじゅうろくじょう)。また、既存きそん人権じんけん擁護ようご委員いいん制度せいどもほぼ
そのままこの法案ほうあんまれていて(擁護ようご委員いいん国籍こくせき条項じょうこう廃止はいし評価ひょうかするが)、こ
制度せいどたいする批判ひはんてき検討けんとうがないままの制度せいど残留ざんりゅう既存きそん委員いいん移行いこうてき残留ざんりゅう附則ふそくだい
じょう)は、人権じんけん侵害しんがい真剣しんけんもうという意思いしがあるのかとおもわせます。

E公権力こうけんりょくほう制度せいどそのものの人権じんけん侵害しんがい救済きゅうさいできるしくみがない
障害しょうがいしゃをめぐる差別さべつには現行げんこう法律ほうりつ制度せいどそのものが差別さべつてきであることからしょうじてい
場合ばあいすくなくありません。見直みなおされてはいますがまだまだ問題もんだいのある障害しょうがいしゃ欠格けっかくじょう
こうや、就業しゅうぎょう規則きそく解雇かいこ要件ようけん航空こうくう会社かいしゃ約款やっかんにもとづいた障害しょうがいしゃ乗車じょうしゃ拒否きょひ制限せいげん
どがそのれいとしてあげられます。さらには障害しょうがいしゃ分離ぶんり教育きょういく基本きほんとする現行げんこうほう自体じたい
差別さべつであるというかんがかたもあり、これを国際こくさいてき支援しえんするサラマンカ文書ぶんしょ海外かいがい
法律ほうりつなどもあります。これらについてのみもなされなければ実効じっこうせいある人権じんけんおかせ
がい予防よぼう救済きゅうさいはできないとおもわれます。パリ原則げんそくでも人権じんけん委員いいんかい現行げんこう立法りっぽうこう
せいじょう規定きてい、ならびにほう立案りつあんおよ法律ほうりつ提案ていあん人権じんけん基本きほん原則げんそく合致がっちしているか勧告かんこく
おこなうことをあげています。ほん法案ほうあんはこの立場たちばからの人権じんけん委員いいんかい所掌しょしょう事務じむ欠如けつじょして
います。

以上いじょう

REV: 20160125
DPI日本にっぽん会議かいぎ ◇全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい(JIL) ◇リーガルアドボカシー 障害しょうがいをもつひと権利けんり  ◇全文ぜんぶん掲載けいさい
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