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青木千帆子・渥美公秀「障害者の就労場面を通して見る「普通」の仕事」
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障害しょうがいしゃ就労しゅうろう場面ばめんとおしてる「普通ふつう」の仕事しごと

青木あおき 千帆ちほ渥美あつみ 公秀きんひで
障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい 20070916-17 於:立命館大学りつめいかんだいがく

last update: 20151224

要旨ようし
報告ほうこく原稿げんこう

要旨ようし

研究けんきゅう背景はいけい
 障害しょうがいしゃ雇用こよう就労しゅうろうかんする方策ほうさく検討けんとうすることが、発表はっぴょうしゃ研究けんきゅう目的もくてきである。発表はっぴょうしゃは、これまで職場しょくば適応てきおう援助えんじょしゃ(ジョブコーチ)にたいするインタビューを実施じっしし、その役割やくわりが、援助えんじょ対象たいしょうしゃである障害しょうがいしゃを「障害しょうがいしゃ」というカテゴリーから「普通ふつう」のカテゴリーにうつ作業さぎょうであることを見出みいだした(青木あおき渥美あつみ, 2007)。また、Reid & Bray (1998)によると、障害しょうがいしゃ労働ろうどう周囲しゅうい労働ろうどうしゃっている「仕事しごと」にたいするイメージをるがす、と指摘してきしている。
 では、障害しょうがいしゃ事業じぎょうしょにおいて「普通ふつう仕事しごと」はどのようにとらえられ、障害しょうがいしゃとともにはたらくことでどのように変化へんかしていくのであろうか。発表はっぴょうしゃ障害しょうがいしゃ雇用こようしている事業じぎょうしょにてフィールドワークをおこない、かく事業じぎょうしょ共有きょうゆうされている「普通ふつう仕事しごと」とはなにかを確認かくにんした。

研究けんきゅう方法ほうほう
 関西かんさいけんにある障害しょうがいしゃ受入うけいれ事業じぎょうしょ5ヶ所かしょ在籍ざいせきする、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん10めい障害しょうがいしゃ手帳てちょう所有しょゆうする従業じゅうぎょういん7めい対象たいしょうに、個別こべつ/グループインタビューを実施じっしした。また、合意ごういれた事業じぎょうしょかんしては、参与さんよ観察かんさつ実施じっしした。
 そして、障害しょうがいしゃとともにはたら健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん傾向けいこうおよびこの傾向けいこう背景はいけいにあると推測すいそくされる前提ぜんてい、つまり「仕事しごとにおける普通ふつう」とそうでないものをけるルールをじくに、障害しょうがい当事とうじしゃおよび周囲しゅうい従業じゅうぎょういんによるかたりを分析ぶんせきした。

結果けっか
 障害しょうがいしゃ受入うけいれ事業じぎょうしょでは、当初とうしょ障害しょうがいしゃをどう戦力せんりょくするのかが問題もんだいとなる。この時点じてんにおいては、「あらかじめ一定いってい能力のうりょく兼備かねそな仕事しごと出来できることが普通ふつう」という前提ぜんていはたらいていると推測すいそくされ、「一定いってい能力のうりょくそなえていない」とかんがえられている障害しょうがいしゃには、仕事しごととして作業さぎょうあたえられる。この部分ぶぶんにおいて、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん仕事しごと周囲しゅうい健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんによって決定けっていされるため、依存いぞんてきなものとなる。そして、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんによる障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん管理かんりが、その従業じゅうぎょういん力量りきりょうえるようになると、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん能力のうりょくをあきらめる傾向けいこうられるようになる。
 しかし、周囲しゅうい従業じゅうぎょういん仕事しごとおしかた心得こころえていくと、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんたいするかかわりかた変化へんかする。ここでは、「おしえられること仕事しごとにつけることが普通ふつう」となるため、障害しょうがいしゃ健常けんじょうしゃさかいがあいまいになっていく。やがて、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんおしかた上達じょうたつし、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん技術ぎじゅつがるにともなって、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん作業さぎょう障害しょうがいしゃによる自己じこ決定けっていくわえられていく。
 障害しょうがいしゃ技術ぎじゅつ向上こうじょうするにしたがい、徐々じょじょ周囲しゅうい健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんはたらきにささえられながら仕事しごとをするようになる。この時点じてんで、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんあたえられる仕事しごとは、もはや作業さぎょうではなく、周囲しゅうい管理かんり依存いぞんするものでもなくなる。周囲しゅうい健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんは、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん責任せきにんたせることをおぼえていき、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん本人ほんにん責任せきにんこたえようとする。このような状況じょうきょう事業じぎょうしょには、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんたがいに協力きょうりょくもとめる傾向けいこうられ、そこでは「健常けんじょうしゃ障害しょうがいしゃかかわらず限界げんかい開示かいじし、ささうことが普通ふつう」という前提ぜんてい成立せいりつしているように推測すいそくされる。同時どうじに、「責任せきにんこたえようとすることが普通ふつう」という前提ぜんてい存在そんざいしているとかんがえられる。
 やがて、障害しょうがいしゃ受入うけいれ事業じぎょうしょにおいて健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん成長せいちょう確信かくしんする傾向けいこうられるようになり、普通ふつうとそうでないものをける前提ぜんていは、成長せいちょうたいするみの有無うむのみになる。

考察こうさつ
 障害しょうがいった従業じゅうぎょういんが、障害しょうがいしゃ雇用こようりつ影響えいきょうおよぼすこと以上いじょう意味いみ就労しゅうろう見出みいだすためには、なに必要ひつようであろうか。ほん発表はっぴょうにおいては、以上いじょうべた結果けっかまえ、ベイトソン(1972)のあそびと空想くうそう理論りろんとおして考察こうさつする。

引用いんよう文献ぶんけん
青木あおき千帆ちほ渥美あつみ公秀きんひで(2007)職場しょくば適応てきおう援助えんじょしゃ事業じぎょうかんするいち考察こうさつ 大阪大学おおさかだいがく人間にんげん科学かがく研究けんきゅう紀要きよう, 33, 113-128.
Bateson 1972 Steps to an ecology of mind. (ベイトソン〔佐藤さとう義明よしあきやく精神せいしん生態せいたいがく しん思索しさくしゃ 2000)
Reid, P. M. & Bray, A. (1998) Real Jobs: the perspectives of workers with learning difficulties. Disability & Society, 13 (2), 229-239.

 
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報告ほうこく原稿げんこう

 障害しょうがいしゃ就労しゅうろう場面ばめんとおして仕事しごとにおける「普通ふつう
 青木あおき千帆ちほ 渥美あつみ公秀きんひで
 大阪大学おおさかだいがく人間にんげん科学かがく研究けんきゅう 大阪大学おおさかだいがくコミュニケーションデザインセンター

1.序論じょろん

  1.1.目的もくてき
  本稿ほんこう目的もくてきは、障害しょうがいしゃ雇用こようしている事業じぎょうしょにおいて「普通ふつう仕事しごと」もしくは「仕事しごと」の枠組わくぐみがどのようにとらえられており、「普通ふつう仕事しごと」が障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんとともにはたらくことでどのように変化へんかしていくのかを把握はあくすることである。筆者ひっしゃらは障害しょうがいしゃ雇用こようしている事業じぎょうしょにてフィールドワークをおこない、かく事業じぎょうしょ共有きょうゆうされている普通ふつう仕事しごととはなにかを調しらべる。そして調査ちょうさ結果けっかを、「仕事しごと」と「あそび」にかんする議論ぎろんとおして考察こうさつする。
  
  1.2.背景はいけい
  障害しょうがいしゃ雇用こようは、日本にっぽんにおいておおきな問題もんだいである。筆者ひっしゃらは、職場しょくば適応てきおう援助えんじょしゃ(ジョブコーチ)にたいするインタビュー調査ちょうさ実施じっしした。この調査ちょうさにてられた職場しょくば適応てきおう援助えんじょしゃかたりからは、その仲介ちゅうかいしゃとしての役割やくわりが、障害しょうがいしゃ事業じぎょうしょたいするたんなる技術ぎじゅつ指導しどうだけではなく、「障害しょうがいしゃ」というカテゴリーに疎外そがいされていた存在そんざいを「普通ふつう」のカテゴリーにもどすことであったというてん指摘してきされた。
  この結果けっかから、「障害しょうがいしゃ」とうイメージが障壁しょうへきとなり、障害しょうがいしゃ就労しゅうろう困難こんなんにしていると筆者ひっしゃらはかんがえた。しかし、その調査ちょうさ過程かていで、障害しょうがいしゃ就労しゅうろうおおきな障壁しょうへきとなっているものは「普通ふつう仕事しごと」というイメージであることが推測すいそくされた(青木あおき渥美あつみ, 2007b)。この推測すいそくは、障害しょうがいしゃ就労しゅうろうが、周囲しゅうい労働ろうどうしゃつ「普通ふつう仕事しごと」にかんするイメージをるがす(Reid & Bray, 1998)という指摘してき一致いっちするものである。
  「普通ふつう」とは、絶対ぜったいてきなものではなく相対そうたいてきなものである(倉本くらもと, 2006)。筆者ひっしゃらの調査ちょうさおよび「普通ふつう」にかんする議論ぎろんなどから、筆者ひっしゃらは障害しょうがいしゃ雇用こようしている事業じぎょうしょにおいて、普通ふつう仕事しごとはどのようにとらえられており、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんとともにはたらくことでどのように変化へんかしていくのか、という疑問ぎもんいた。本稿ほんこうでは、このてん注目ちゅうもく実施じっしした調査ちょうさ報告ほうこくする。
  
2.調査ちょうさ
  
  2.1.方法ほうほう
  インタビュー対象たいしょうしゃは、関西かんさいけんにある5つの障害しょうがいしゃ雇用こようしている事業じぎょうしょはたら従業じゅうぎょういん17めいである。うち10めい(C1〜C7)は健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんであり、7めい(D1〜D7)は知的ちてき(D1)もしくは身体しんたい(D2〜D7)障害しょうがいしゃ手帳てちょう所持しょじする障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんであった。平成へいせい18ねん9がつ
  ひょう1 調査ちょうさ事業じぎょうしょおよ対象たいしょうしゃ概要がいよう
  事業じぎょうしょ事業じぎょう形態けいたい対象たいしょうしゃ(C1〜C10は健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん、D1〜D7は障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん
  Aだい企業きぎょうC1
  Bだい企業きぎょうC2, C3, C4
  Cだい企業きぎょうC5, C6, D1, D2
  Dしょう企業きぎょうC7, C8, D3
  E社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんC9, C10, D4, D5, D6, D7
  
  ひょう2 インタビュー対象たいしょうしゃ事前じぜん送付そうふした質問しつもん項目こうもく
  1. インタビュー対象たいしょうしゃにとってご自身じしんはたら意義いぎなにですか?
  2. 障害しょうがいったほうはたらくことについて、どうおもわれますか?
  3. 障害しょうがいったほう一緒いっしょにお仕事しごとをする感想かんそうは?
  4. 障害しょうがいったほう一緒いっしょにお仕事しごとをする前後ぜんごで「障害しょうがいしゃ」のイメージはわりましたか?
  5. 障害しょうがいったほう一緒いっしょにお仕事しごとをする前後ぜんごで「仕事しごと」のイメージはわりましたか?
  6. インタビュー対象たいしょうしゃにとって「自立じりつ」とはどういうことですか?
  7. インタビュー対象たいしょうしゃにとって「共生きょうせい」とはどういうことですか?
  8. インタビュー対象たいしょうしゃにとって「健常けんじょうしゃ」とはどういうことですか?
  
  ら平成へいせい19ねん2がつあいだ、それぞれの事業じぎょうしょを2かいから18かい訪問ほうもんし、1あいだから2あいだ程度ていどのインタビューを実施じっしした。また、合意ごういれた事業じぎょうしょいては参与さんよ観察かんさつ実施じっしした。
  分析ぶんせきは、まず文書ぶんしょしたインタビュー内容ないようを、質問しつもん項目こうもくごとに分類ぶんるいした。複数ふくすうめいたいするインタビューを質問しつもん項目こうもくべつ編集へんしゅうしたのち回答かいとう内容ないよう特性とくせいみちびした。(なお編集へんしゅう作業さぎょうは、あくまでも筆者ひっしゃらの主観しゅかんもとづいた作業さぎょうである。主観しゅかん過度かどかたよりをけるため、ほん調査ちょうさにおいては筆者ひっしゃあいだ議論ぎろんし、相互そうご納得なっとくできるまで、上記じょうき分析ぶんせき作業さぎょうかえした。)
  
  2.2.結果けっか
  フィールドワークからられた健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんかたりを、@従業じゅうぎょういん傾向けいこうおよびAこの傾向けいこう背景はいけいにあると推測すいそくされる前提ぜんてい、つまり仕事しごとにおける「普通ふつう」とそうでないものをけるルールをじく分析ぶんせきした結果けっか、5つの特徴とくちょう見出みいだされた。なお、この5つの分類ぶんるいは、調査ちょうささきの5つの事業じぎょうしょ対応たいおうしているのではなく、すべての事業じぎょうしょたいする調査ちょうさ結果けっかわせた結果けっか、5つの特徴とくちょう見出みいだされたということである。また、仕事しごとにおける「普通ふつう」ルールという言葉ことばを、倉本くらもと(2006)が普通ふつう説明せつめいもちいていた「ルール」という言葉ことば対応たいおうさせ、ひとひととのめが、ひいては普通ふつうとそうでないものをけてしまうことになる規則きそくという意味いみもちいる。
  
  【従業じゅうぎょういん傾向けいこうT】障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん能力のうりょくをあきらめる
  【仕事しごとにおける「普通ふつう」ルールT】あらかじめ一定いってい能力のうりょく兼備かねそな仕事しごと出来できることが普通ふつう
  障害しょうがいしゃ受入うけいれ事業じぎょうしょでは、当初とうしょ障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんをどう戦力せんりょくするかが問題もんだいとなる。この時点じてんにおいては、「あらかじめ一定いってい能力のうりょく兼備かねそな仕事しごと出来できることが普通ふつう」というルールがはたらいていると推測すいそくされ、「一定いってい能力のうりょくそなえていない」と想定そうていされている障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんには、仕事しごととして作業さぎょうあたえられる。障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん仕事しごと作業さぎょうとされた時点じてんで、「仕事しごと」の枠組わくぐみからは「あそび」が排除はいじょされてしまう。障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん作業さぎょう周囲しゅうい健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんによって管理かんりされるため、ぎゃく視点してんかられば、周囲しゅうい従業じゅうぎょういん指示しじ依存いぞんするものとなる。
  そして、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんによる障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん管理かんりが、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん本来ほんらい業務ぎょうむ支障ししょうきたすようになると「迷惑めいわく」「操作そうさ不可能ふかのう」というめん前面ぜんめんされ、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん能力のうりょくをあきらめる傾向けいこうが、周囲しゅうい従業じゅうぎょういんかたりのなかからられるようになる。
  ・現実げんじつはそうはうまくいかない。結局けっきょく障害しょうがいった従業じゅうぎょういん社会しゃかいてきってうよりも隔離かくりされたかたちはたらいているんですよね。あまり連携れんけいするような仕事しごとではなく。(C7)
  ・(障害しょうがいしゃほう仕事しごと出来できなくても)仕方しかたないとおもっているとおもいます。もうできなくて当然とうぜんといっては失礼しつれいやけど。(C9)
  みずからのこなす仕事しごとたいする期待きたいや、現在げんざいおこなっている作業さぎょう発展はってんする可能かのうせい存在そんざいしないことをかんじた障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんつぎのようにかたっている。
  ・(いままでやってたのは仕事しごと?)作業さぎょう。ただのてだけ。(D1)
  ・ええようにおもってなかったから。いつかやめようと毎日まいにちおもいながらっとったから。(D1)
  ・(障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんとのはないでは、上手うまくいかないのか?)そうちゃうかな。(自分じぶんのことを)信用しんようしていない。(D7)
  
  【従業じゅうぎょういん傾向けいこうU】障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんへの仕事しごとおしかた工夫くふうする
  【仕事しごとにおける「普通ふつう」ルールU】おしえられること仕事しごとにつけることが普通ふつう
  しかし、周囲しゅうい健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん仕事しごとおしかた心得こころえてくると、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんたいするかかわりかた変化へんかする。おしかた発見はっけんかかわりかた発見はっけんは、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん双方そうほうにとっておおきな変化へんかである。
  健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんは、これまでの就労しゅうろう経験けいけんにおいて自分じぶんがどれほど必要ひつよう情報じょうほう省略しょうりゃくしていたのか、必要ひつよう情報じょうほうれないまま作業さぎょうをすることが障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんにとってどれほどはたらからかったか、などにかんする想像そうぞうはたらはじめる。このような状況じょうきょうにいる健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんつぎのようにかたる。
  ・言葉ことばって抽象ちゅうしょうてきでも一般いっぱんひとやったらつうじるやろ。「ここきたないからちょっと整理せいりしとけ」って。ここでそんないってもからんばっかりや。なにをどう整理せいりしろって(ちゃんと説明せつめいする必要ひつようがある)。本当ほんとう本社ほんしゃでも必要ひつようなことやったんや。(C5)
  ・(仕事しごとの)指導しどうするひと複数ふくすうおって、指導しどうするひとによってまたちがうとなったら、それはもうぐちゃぐちゃになる。可哀想かわいそうですよね、いまおもうと。手順てじゅんぐちゃぐちゃやった。(C9)
  健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんおしかた把握はあくしているかかは、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんにとって、仕事しごとつづけるかめるかにもかかわる重要じゅうよう問題もんだいである。
  ・つづいているポイント…上司じょうしひととかが、からんときにはかるまでちゃんと説明せつめいしてくれるっていう。それと、気楽きらくにこうやってはなしかけててくれるっていうことかな。(D2)
  健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんおしかた工夫くふうはじめると、「おしえられること仕事しごとにつけることが普通ふつう」となるため、障害しょうがいしゃ健常けんじょうしゃさかいがあいまいになっていく。そして、おしかた上達じょうたつし、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん本人ほんにん技術ぎじゅつがるにともなって、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん作業さぎょう障害しょうがいしゃ本人ほんにんによる自己じこ決定けっていくわえられていく。
  ・(やりがい)はありますね。にできるじんがいないから。(フォーク)リフトはほとん聴覚ちょうかく障害しょうがいひとっておったので。知的ちてきではぼく一人ひとり。(D2)
  ・筆者ひっしゃ:たくさんの洗濯せんたくぶつだなー。これ全部ぜんぶたたみわるのはなんくらいですか?     …5
  D6:(くびる)
  筆者ひっしゃ:…4
  D6:(くびる)
  筆者ひっしゃ:2
  D6:(うなずく)
  筆者ひっしゃ:…え、いまですよ。
  (しかし実際じっさいに2わった。あまった時間じかんは、人形にんぎょう会話かいわしながら休憩きゅうけい。)(D6)
  
  【従業じゅうぎょういん傾向けいこうV】たがいに協力きょうりょくもとめる
  【仕事しごとにおける「普通ふつう」ルールV】弱点じゃくてんがあり、その限界げんかいささうことが普通ふつう
   障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん技術ぎじゅつ向上こうじょうするにしたがい、徐々じょじょ周囲しゅうい従業じゅうぎょういん障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんはたらきにささえられながら仕事しごとをするようになる。このような状況じょうきょうを、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんつぎのようにかたる。
  ・障害しょうがいしゃだからといって特別とくべつなにかをしてあげなくてはいけないと気持きもちではなくて、おたがいに一緒いっしょに。協力きょうりょくしてしいときはそうって、反対はんたいにこっちもたすけてしいときはそううし、たがいに協力きょうりょくいながら仕事しごとをしていく。(C4)
  また、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんは、つぎのようにかたる。
  ・授産じゅさん施設しせつなかでやったことといま会社かいしゃって、どういったらいいんやろう?…おれ会社かいしゃて、リーダーが・・・絶対ぜったいリーダーのほうはやいんですよ、会社かいしゃるの。会社かいしゃてリーダーがなにかやっているな、とおもったら、となりって一緒いっしょての準備じゅんびしたりしてますね。(授産じゅさん施設しせつにいたころは?)ないですね、自分じぶんからおこなったっていうのは。で、自分じぶんのところががってて、明日あした注文ちゅうもんていなくて、わっていないってうところがあったら、相談そうだんして(手伝てつだいに)はいったり。「あー、こんなんもええんや」って。(D2)
  
  【従業じゅうぎょういん傾向けいこうW】障害しょうがいしゃ責任せきにんたせる
  【仕事しごとにおける「普通ふつう」ルールW】責任せきにんこたえようとすることが普通ふつう
  障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん技術ぎじゅつ向上こうじょうすると、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんあたえられる仕事しごとは、もはや作業さぎょうではなく、周囲しゅうい管理かんり依存いぞんするものでもなくなる。周囲しゅうい従業じゅうぎょういんは、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん責任せきにんたせることをおぼえていき、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん本人ほんにん責任せきにんこたえようとする。
  このような状況じょうきょうを、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんつぎのように説明せつめいする。
  ・職場しょくばなかにはあまいところがおおいです。「障害しょうがいやからしゃあないな」「こえないんやからしゃあないな」うのがありますけど、基本きほんてきにはその部分ぶぶんだけ。こえないのであれば情報じょうほうあたえる。しっかり情報じょうほうあたえれば、もし失敗しっぱいすれば失敗しっぱい。(C1)
  ・じゃあ障害しょうがいしゃ安全あんぜんまもれないかっていう裏返うらがえしになるやろ、そんなんいわ。(C5)
  また、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんつぎのようにかたる。
  ・まあ、ようわれるけどね、「おまえはまだまだや」。へへへ、そうですね、頑張がんばりまっさって…。そうやってうてくれるのがうれしいし、おこってくれるうちがはなやからね。(D1)
  
  【従業じゅうぎょういん傾向けいこうX】障害しょうがいしゃ成長せいちょう確信かくしんする
  【仕事しごとにおける[普通ふつう]ルールX】成長せいちょうすることが普通ふつう
   やがて、障害しょうがいしゃ事業じぎょうしょにおいて普通ふつうとそうでないものをけるルールは、成長せいちょうたいするみの有無うむのみになる。このような状況じょうきょうを、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんつぎのようにかたる。
  ・意欲いよくとかやるとか、持続じぞくりょくとかね。うようなところはきちっとってもらわんとアカン。だけど現状げんじょうなに出来できるかどうかうのはアバウトでええやないかと。…いま状態じょうたいは、やっていくうちに進歩しんぽする。気持きもちさえあれば。(C6)
  そして、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんつぎのようにかたる。
  ・仕事しごとをしていく理由りゆう?・・・やっぱり、この会社かいしゃたのしい。この会社かいしゃまなんだことがいっぱいあるので…社会しゃかいてこんなことがあるんや、こんなきびしさがあるんや。(D2)
  
3.考察こうさつ
  
  3.1.「仕事しごと」と「あそび」
  仕事しごとにおける「普通ふつう」のイメージについて考察こうさつするまえに、「仕事しごと」と「あそび」にかんする議論ぎろん確認かくにんしたい。
  「仕事しごと」をかんがえることは、「近代きんだい」をかんがえることにもつながっている。労働ろうどう職業しょくぎょうのぞましいありかた基準きじゅんにおき、いまだそれが達成たっせいされざるものとして、<近代きんだいゆがみ>がわれてきた。マルクス、ウェーバー、デュルケームらによる労働ろうどうかかわるいずれの大著たいちょにおいても、アイデンティティをささえる意義いぎあるものとして、仕事しごと意味いみたか位置付いちづけられている(藤村ふじむら, 1995)。
  これにたいし、「あそび」をかんがえることは、文化ぶんか根源こんげんあそびにあるとしたホイジンガ(Huizinga, 1938)、文化ぶんかあそびは同時どうじ並列へいれつてき促進そくしんされていくとしたカイヨワ(Caillois, 1958)をベースに、あそびに反映はんえいされた<近代きんだいゆがみ>をとらえていこうとするこころみであるといえる(井上いのうえ, 1995; 井上いのうえ, 1998; 西村にしむら, 1998; 小川おがわ, 2001)
  しかし、「近代きんだい」が「仕事しごと」の比重ひじゅうたかめてくるにしたがって、「あそび」はその領域りょういきとしてだけでなく、パースペクティブとしての意味いみつよすようになった(藤村ふじむら, 1995)。ここでいう「パースペクティブとしてのあそび」とは、物事ものごと姿勢しせい心構こころがまえとしての「あそび」である。
  ベイトソン(Bateson, 1972)による「あそび」にかんする議論ぎろんは、藤村ふじむら指摘してきする「パースペクティブとしてのあそび」に重点じゅうてんいた見方みかたである。ホイジンガやカイヨワの指摘してきした「あそび」とおなじく、「パースペクティブとしてのあそび」も、変化へんか文化ぶんかてき創造そうぞう促進そくしんするものであるとベイトソンは指摘してきしている。
  我々われわれのプロジェクトの中心ちゅうしんテーマは、抽象ちゅうしょうのパラドックスがこる必然ひつぜんさぐることだとっていだろう。人間にんげんはパラドックスをはいし、論理ろんりかいがた理論りろんしたがったコミュニケーションを遵守じゅんしゅすべきだとするかんがかたがあるが、これは人間にんげん精神せいしん特徴とくちょうまったくそぐわないかんがえである。論理ろんりかいがた遵守じゅんしゅされないのは、たん無知むち注意ちゅういによるものではない。我々われわれしんじるところによれば、たんなるムード・シグナルのやりりより複雑ふくざつすべてのコミュニケーションで、抽象ちゅうしょうのパラドックスが必然ひつぜんてき姿すがたあらわすのである。パラドックスがしょうじないようなコミュニケーションは、進化しんかあゆみをめてしまうのだと我々われわれかんがえる。明確めいかくかたどられたメッセージが整然せいぜんきかうだけのなまには、変化へんかもユーモアもこりえない。それは厳格げんかく規則きそくしばけられたゲームとわるところのないものである。(pp. 276)
  このようなあそびの観点かんてんから、藤村ふじむら(1995)は日本にっぽん文化ぶんか概観がいかんした。藤村ふじむらによると、かつての日本にっぽんには日本にっぽん社会しゃかいわらうことをとおして、自分じぶんわらうというひねりがあったという。しかし、パロディなどが流行りゅうこう普及ふきゅうすることで、距離きょりをとるということ自身じしん資本しほん主義しゅぎ作動さどうまれてしまい、じつはそれらが普及ふきゅうしたかにえる現代げんだいこそ、「あそび」の精神せいしん衰退すいたいしている。現在げんざい日本にっぽんでの余暇よか志向しこうは、「労働ろうどう時間じかん」にたいして、「労働ろうどう時間じかん」として定義ていぎされるかたちでしか余暇よか享受きょうじゅできない段階だんかいにとどまる。
  これは、余暇よかそのものが社会しゃかいシステムの一翼いちよくとなりつつある現在げんざい余暇よか精力せいりょくむことがかならずしも自由じゆう意味いみしなくなってきていることに起因きいんするという。「なまける」ことがゆるされず、「ひま」そのものが価値かちけられない現代げんだい日本にっぽん社会しゃかいでは、「あそび」さえ真剣しんけんにしなければならなくなっているのである。藤村ふじむらは、「『仕事しごと』が包囲ほういされただけでなく、『あそび』さえも包囲ほういされる日本にっぽん社会しゃかいにおいて、わたしたちのみちはどこにのこされているのであろう」といういをはっしたうえで、そのかいの1つとして以下いかのようにべる。
   「計算けいさん可能かのうせい」にちてしまった社会しゃかいにおいて、「計算けいさん不可能ふかのう」な「可能かのうせい」としてたのしむ方向ほうこう評価ひょうかしようとするのが近年きんねん動向どうこうである。それは、ジンメルふうにう「関係かんけい」を「あそぶ」ことの現代げんだいてき形態けいたいなのかもしれない。(pp. 198)
  「仕事しごと」と「あそび」のちがいは、内容ないよう区別くべつでも時間じかん区別くべつでもなく、意味いみてき付与ふよちがいなのだともえる。「あそび」の精神せいしん距離きょりをとろうとすればするほど差異さいメカニズムにからめとられ、距離きょりがとれなくなる。むしろ、「仕事しごと」のがわ従来じゅうらいの「仕事しごと」とはことなるかたちんでいくとき、現代げんだい社会しゃかい差異さいメカニズムからのみち用意よういされる。(pp. 199)
  
  3.2.障害しょうがいしゃ就労しゅうろう場面ばめんからえる「仕事しごと」と「あそび」
  以上いじょう議論ぎろんまえ、ほん調査ちょうさのデータをかえってみると、仕事しごとにおける「普通ふつう」イメージが、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういんにとって障壁しょうへきとなるかかは、かく職場しょくば仕事しごと枠組わくぐみに「パースペクティブとしてのあそび」がふくまれているかかのちがいであるとかんがえることが出来できる。もちろん、「あそび」の内容ないようは、けっして言葉ことばどおりに仕事しごと放棄ほうきしてあそんでしまうことではなく、時間じかん配分はいぶん作業さぎょうかた作業さぎょうペースの調整ちょうせいなどにおいてみずか決定けっていすることが出来できるというような「機械きかい部分ぶぶん部分ぶぶんとが密着みっちゃくせず、そのあいだある程度ていどうごきうる余裕よゆうのあること(広辞苑こうじえんだいはん)」という意味いみでの「あそび」、周囲しゅうい従業じゅうぎょういん顧客こきゃく作業さぎょうちゅう休憩きゅうけいちゅう冗談じょうだんやおしゃべりをするような「あそび」である。
  ベイトソンは「あそびと空想くうそう理論りろん」のなかで、分裂ぶんれつしょう患者かんじゃ特徴とくちょうとして、メタ・コミュニケーションてき枠組わくぐみの設定せっていがままならず、基本きほんてき直接的ちょくせつてきなメッセージをうまくあつかえないとてん報告ほうこくしている。このような特徴とくちょうは、知的ちてき精神せいしん障害しょうがいしゃおおみとめられる現象げんしょうであり、この特徴とくちょうゆえに障害しょうがいしゃ雇用こようする事業じぎょうしょにおいては、健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんによる障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん徹底的てっていてき管理かんり傾向けいこうがある。
  つまり、職場しょくばにおいて傾向けいこう・ルールTが支配しはいてきである場合ばあい、そこにある「仕事しごと」の枠組わくぐみがあまりに純化じゅんかされてしまい、あそびを排除はいじょした作業さぎょうのみになってしまっている。そこには整然せいぜん分析ぶんせきされつくした仕事しごとのルールがあり、パラドックスは一切いっさいしょうじないが、一方いっぽう障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん就労しゅうろうたのしみやきがいを見出みいだしたり、自主じしゅせいなどを発揮はっきする余地よちもなくなる。結果けっかてきに、健常けんじょうしゃ障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん双方そうほうにとって居心地いごこちわる空間くうかんとなってしまう。
  ・結局けっきょく障害しょうがいった従業じゅうぎょういん社会しゃかいてきってうよりも隔離かくりされたかたちはたらいているんですよね。(C7)
  ・(健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういんは、自分じぶんのことを)信用しんようしていない(D7)
  これにたいし、傾向けいこう・ルールXが職場しょくばにおいて支配しはいてきである場合ばあい作業さぎょうたいするまじめさや、「仕事しごとをしたい」という意思いしのみという、非常ひじょうにゆるい「仕事しごと」の枠組わくぐみがみられた。そしてこのような状況じょうきょうにおいては、当然とうぜんながら現行げんこうのままでは経済けいざい合理ごうりてきでない、自由じゆう競争きょうそうてない、などのパラドクスがしょうじていた。しかし、このような職場しょくばはたら従業じゅうぎょういん健常けんじょうしゃであれ、障害しょうがいしゃであれ、そこにしょうじるパラドクス明記めいき肯定こうていしている。そこには「計算けいさん不可能ふかのう」な「可能かのうせい」をたのしむ姿勢しせい見受みうけられる。
  ・現状げんじょうなに出来できるかどうかうのはアバウトでええやないか (C6)
  ・『おまえはまだまだや』。そうやってうてくれるのがうれしいし、おこってくれるうちがはなやからね。(D1)
  実際じっさいにはどのような就労しゅうろう場面ばめんにおいても、パラドクス、つまり「計算けいさん不可能ふかのう」な非合理ひごうりてき現実げんじつ存在そんざいしているのであろう。しかし、ほん調査ちょうさにおいてはこれを肯定こうていてきかたるのか、否定ひていてきかたるのか、がおおきなちがいであった。障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん仕事しごとが、計算けいさん不可能ふかのうな「あそび」であると位置いちづけているわけではない。「仕事しごと」には本来ほんらいパラドクスの可能かのうせい存在そんざいする、とかんがえているのである。そして、これを肯定こうていしたうえで「普通ふつう仕事しごと」とするか、否定ひていしたうえで「普通ふつう仕事しごと」とするかによって、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん状況じょうきょうことなるのではないだろうか。
  ほん調査ちょうさ結果けっかから、「障害しょうがいしゃ就労しゅうろうはかくあるべき」といったことをうことは出来できないだろう。しかし、確認かくにんできたことは、一体いったいいつ・だれのために生成せいせいされたのかすらあきらかでない「普通ふつう」という感覚かんかくによって過度かどにパラドクスを排除はいじょし、従業じゅうぎょういんたいして純粋じゅんすい仕事しごと、つまり作業さぎょう遂行すいこうもとめることは、障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん健常けんじょうしゃ従業じゅうぎょういん双方そうほうにとって不利益ふりえきをもたらすとうことである。重要じゅうようなのは、パラドクスを肯定こうていしたうえで、「そもそも『普通ふつう』とは、多様たよう人間にんげん共存きょうぞんするためのルールをめることによってかりげんする(倉本くらもと, 2007)」ものであるから、それぞれの集団しゅうだんにおいて居心地いごこちのいい仕事しごとにおける「普通ふつう」ルールをめること、そして「仕事しごと」のがわ従来じゅうらいの「仕事しごと」とはことなるかたちんでいくことなのであろう。
  
4.引用いんよう文献ぶんけん

  青木あおき千帆ちほ渥美あつみ公秀きんひで(2007a)職場しょくば適応てきおう援助えんじょしゃ事業じぎょうかんするいち考察こうさつ大阪大学おおさかだいがく人間にんげん科学かがく研究けんきゅう紀要きよう. 33, 113-128.
  青木あおき千帆ちほ(2006b)渥美あつみ公秀きんひで ジョブコーチ事業じぎょうにみるグループダイナミックスのきっかけ 国際こくさいボランティア学会がっかいだい7かい大会たいかい発表はっぴょうろん文集ぶんしゅう.
  Bateson, G. (1972) Steps to ecology of mind. University of Chicago Press.
  Brown, H. & Smith, H. (1989) Whose 'Ordinary life' is it anyway? Disability, Handicap & Society, 4 (2) 105-119.
  Caillois, R. 1958 Les jeux et les hommes, Gallimard.(カイヨワ〔清水しみず幾太郎いくたろう霧生きりゅう和夫かずおやくあそびと人間にんげん 岩波書店いわなみしょてん 1970)
  Huizinga, J. 1938 Homo Ludens: Proeve eener bepaling van het spel-element der cultuur, Tjeenk Willink & Zoon. (ホイジンガ〔里見さとみ元一げんいちろうやく〕ホモ・ルーデンス 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 1971)
  藤村ふじむら正之まさゆき 1995 Overview 仕事しごとあそびの社会しゃかいがく 岩波いわなみ講座こうざ現代げんだい社会しゃかいがく20 仕事しごとあそびの社会しゃかいがく 岩波書店いわなみしょてん
  井上いのうえしゅん 1995 生活せいかつなかあそび 岩波いわなみ講座こうざ現代げんだい社会しゃかいがく20 仕事しごとあそびの社会しゃかいがく 岩波書店いわなみしょてん
  倉本くらもと智明ともあき 2006 だれか、ふつうをおしえてくれ! 理論りろんしゃ
  小川おがわ純生すみお 2001 カイヨワのあそ概念がいねん消費しょうひしゃ行動こうどう 経営けいえい研究所けんきゅうじょ論集ろんしゅう 24, 293-311.
  Reid, P. M. & Bray, A. (1998) Real Jobs: the perspectives of workers with learning difficulties. Disability & Society, 13 (2), 229-239.

5.謝辞しゃじ

  ほん調査ちょうさ協力きょうりょくいただきました皆様みなさまに、しんから御礼おれいもうげます。また、ほん調査ちょうさ平成へいせい18年度ねんど大阪大学おおさかだいがくフィールドワーク支援しえん基金ききん支援しえんけて実施じっしされました。


UP:20070808 REV:20070905
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