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児玉 真美「米国 精神障害医療の危機機動チーム」
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米国べいこく 精神せいしん障害しょうがい医療いりょう危機きき機動きどうチーム」

児玉こだま 真美まみ 200803 介護かいご保険ほけん情報じょうほう 2008ねん3がつごう

last update: 20110517

米国べいこく 警察けいさつによる少年しょうねん射殺しゃさつ事件じけん注目ちゅうもくされる機動きどう危機ききチーム
 去年きょねん11がつ米国べいこくのブルックリンで精神せいしん障害しょうがいのある少年しょうねん警察けいさつ銃撃じゅうげきされて死亡しぼうするという不幸ふこう事件じけんこった。
 Khiel Coppin(18)は当時とうじ処方しょほうされていたこう精神病せいしんびょうやくなどをまなくなったために、行動こうどう不安定ふあんていになっていた。事件じけんのあった母親ははおやめ、極度きょくど興奮こうふん状態じょうたいだったようだ。母親ははおやが911に通報つうほうしたさい会話かいわ(Daily News, 2007/11/21)でも、背後はいごに「じゅうっているんだぞ!」となんもわめくこえこえている。Khielがけつけた警官けいかんらの制止せいしかず、玄関げんかんさきでシャツのしたかくしたじゅう警官けいかんけたのでった、というのが警察けいさつ説明せつめい。しかしたおれた少年しょうねんにしていたのはくろいヘア・ブラシだった。
 ブルックリンという土地とちがら少年しょうねん黒人こくじんであったことからも警察けいさつ対応たいおう沙汰ざたされたのはもちろんだが、もうひとつこの事件じけんでクローズアップされたのは、精神せいしん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえんのための機動きどう危機ききチームの存在そんざい。Khielの母親ははおやは911通報つうほうするまえに、近郊きんこうのInterfaith医療いりょうセンターから機動きどう危機ききチームをんでいたのである。チームの危機きき対応たいおうカウンセラーらが訪問ほうもんしたさいにたまたま本人ほんにん不在ふざいだったのだけれど、もしもえていたらかれなずにすんだかもしれない。

目的もくてき精神せいしん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえん
 この事件じけんげたNew York Timesの記事きじ(11/15)によると、ニューヨークには現在げんざいこのようなチームが23存在そんざいし、ほとんどが病院びょういん提携ていけいして活動かつどうしている。費用ひよう全額ぜんがく保健ほけん精神せいしん衛生局えいせいきょく負担ふたん。Khiel事件じけん召集しょうしゅうされたInterfaith医療いりょうセンターの機動きどう危機ききチームの患者かんじゃ訪問ほうもん年間ねんかんで16000かいえるとのこと。以前いぜんこのチームの責任せきにんしゃつとめ、現在げんざい全国ぜんこくてき自殺じさつ予防よぼうライフラインの運営うんえいたずさわるJohn D. Draper医師いしつぎのようにかたる。
患者かんじゃさんたちが病院びょういんから地域ちいき安定あんていしたらしができるように、とつくられたサービスです。すすんで治療ちりょうけるひとばかりではないし、治療ちりょうもとめることができないひともいますからね。本当ほんとうにひどいウツや精神せいしん症状しょうじょうだと外来がいらい受診じゅしんすらむずかしいでしょう」
 どう医療いりょうセンターHPによるとチームの活動かつどう時間じかんあさ9からよる10
 NY関連かんれんHP情報じょうほう上記じょうき記事きじから詳細しょうさいながめてみると、チームにはいるのは心理しんり学者がくしゃ精神せいしん看護かんご、ソーシャルワーカー、中毒ちゅうどく専門せんもんやピア・カウンセラーなど。ニューヨーク在住ざいじゅう精神せいしんてき危機ききただちゅうにあるひと危機きき直面ちょくめんしているひとならだれでも利用りようできる。電話でんわ訪問ほうもん要請ようせいするのも家族かぞく近所きんじょひと友人ゆうじん家主やぬしなど様々さまざまだ。
 電話でんわけるとチームは患者かんじゃいえってストレス反応はんのう評価ひょうかし、必要ひつよう場合ばあい外来がいらい受診じゅしん可能かのうとなるまでサポートする。各種かくしゅサービスや施設しせつへの紹介しょうかい投薬とうやく可能かのうだ。フォローアップもおこなう。強制きょうせいてき入院にゅういん必要ひつよう場合ばあいには機動きどう危機ききチームの判断はんだん警察けいさつ協力きょうりょくあおぐこともできる。

模索もさくされる専門せんもん警察けいさつ連携れんけい
 同種どうしゅのチームをインターネットで検索けんさくしてみたところ、現在げんざいこのような機動きどう危機ききチームは整備せいび途上とじょう様子ようすで、地域ちいきによって名称めいしょう様々さまざまなら、整備せいびじょうきょう形態けいたい受付うけつけ時間じかん様々さまざまなようだ。精神せいしん医療いりょう危機きき介入かいにゅう警察けいさつ行政ぎょうせい危機きき管理かんり体制たいせい一貫いっかんとしのみ位置いちづけられている地域ちいきもあるとおもわれ、強制きょうせい入院にゅういん権限けんげんをもつ機動きどう危機ききチームが過剰かじょう公安こうあんてき危機きき管理かんり対応たいおうまね可能かのうせいはないのか、非常ひじょうになるてんではある。
 しかしthe Journal of Addiction and Mental Healthで、米国べいこくとカナダの機動きどう危機ききチームの実態じったいをまとめた論文ろんぶんMobile crisis teams partner police with mental health workers (Anita Dubey, Spring, 2006)によると、基本きほんてきには精神せいしん障害しょうがいしゃ施設しせつから地域ちいきそうとのうごきにともなってまれてきたサービスとのこと。従来じゅうらい警察けいさつのみで危機きき対応たいおうしていたために、精神せいしん障害しょうがいへの配慮はいりょいたまま患者かんじゃ刑法けいほうのシステムにせられてしまっていた。現場げんば精神せいしん医療いりょう専門せんもんけつけ、そのでアセスメントや対応たいおうができる機動きどうチームや、警察けいさつがいつでも電話でんわ専門せんもんてき判断はんだんやアドバイスをあおげるシステムがあると、そうした事態じたい回避かいひ治療ちりょうむすびつけることができるメリットがおおきいという。
 日本にっぽんでも、適切てきせつ医療いりょうケアや福祉ふくしサービスをけられないままつみおか収監しゅうかんされる累犯るいはん障害しょうがいしゃ問題もんだいがクローズアップされる一方いっぽうで、障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほうでは精神せいしん障害しょうがいしゃ退院たいいん促進そくしん方針ほうしんされている。地域ちいき支援しえん体制たいせいがどのように整備せいびされていくか、おおいにになるところである。


作成さくせい堀田ほった 義太郎よしたろう
UP:20100212 REV: 20110517
全文ぜんぶん掲載けいさい  ◇児玉こだま 真美まみ
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