「感染かんせん症しょう法ほう等とうの改正かいせい案あんに強つよく反対はんたいする弁護べんご団だん・ハンセン病はんせんびょう家族かぞく訴訟そしょう弁護べんご団だん声明せいめい」

■本文ほんぶん

政府せいふは、本日ほんじつ、新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょうの感染かんせん拡大かくだいをうけ、「感染かんせん症しょうの予防よぼう及および感染かんせん症しょうの患者かんじゃに対たいする医療いりょうに関かんする法律ほうりつ」（以下いか、「感染かんせん症しょう法ほう」という。）等とうの改正かいせい案あんを閣議かくぎ決定けっていして国会こっかいに提出ていしゅつする予定よていであり、同どう感染かんせん症しょう法ほう改正かいせい案あんでは、患者かんじゃ等とうが入院にゅういん措置そちに応おうじない場合ばあい・入院にゅういん先さきから逃にげた場合ばあいの懲役ちょうえき刑けい・罰金ばっきん刑けい、及および積極せっきょく的てき疫学えきがく調査ちょうさでの虚偽きょぎ答弁とうべんや調査ちょうさ拒否きょひ等とうをした場合ばあいの罰金ばっきん刑けいの新設しんせつが盛もり込こまれている。

しかし、入院にゅういんや行動こうどう報告ほうこく等とうの強制きょうせいは、いうまでもなく人身じんしんの自由じゆう・自己じこ決定けってい権けん・プライバシー権けんに対たいする強度きょうどな人権じんけん制約せいやくであり、昨今さっこんの国くに・地方ちほう公共こうきょう団体だんたいによる医療いりょう体制たいせい整備せいび等とうの遅おくれにも起因きいんする医療いりょう崩壊ほうかい危機ききの状況じょうきょうに鑑かんがみれば、罰則ばっそくによる一方いっぽう的てきな入院にゅういん・調査ちょうさ等とうの強制きょうせいは、患者かんじゃ等とうの人権じんけんを不当ふとうに侵害しんがいするものであって、憲法けんぽう違反いはんと言いわざるを得えない。
　さらに、今回こんかいの改正かいせい案あんは入院にゅういん拒否きょひや逃亡とうぼう事例じれい等とうの実数じっすうやそれによる疫学えきがく的てき影響えいきょう等とうの立法りっぽう事実じじつすら何なんら明あきらかになっていない状況じょうきょうで拙速せっそくに浮上ふじょうしたものであり、議論ぎろん・検討けんとうがほとんどなされていないことも極きわめて重大じゅうだいな問題もんだいである。

そもそも、昨年来さくねんらい、新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょうの患者かんじゃ・家族かぞくに対たいする誹謗ひぼう中傷ちゅうしょう・差別さべつ事例じれいが数多かずおおく発生はっせいし、ハンセン病はんせんびょう患者かんじゃ・家族かぞくに対たいする偏見へんけん差別さべつの歴史れきしが繰くり返かえされているのであって、患者かんじゃに対たいする罰則ばっそくを伴ともなう強制きょうせいは市民しみんに恐怖きょうふや不安ふあん・差別さべつをより一層いっそう助長じょちょうすることにもつながり、刑事けいじ罰ばつ・罰則ばっそくが科かされることになると、それを恐おそれるあまり、検査けんさを受うけない、あるいは検査けんさ結果けっかを隠蔽いんぺいすることにもつながり、結果けっか、感染かんせんの抑止よくしが困難こんなんになることが想定そうていされる。

感染かんせん症しょう法ほうは、かつて強制きょうせい隔離かくり政策せいさくによって、患者かんじゃ及およびその家族かぞくらが多大ただいな人権じんけん侵害しんがいを受うけたハンセン病はんせんびょう問題もんだいなどへの歴史れきし的てき反省はんせいのもとに制定せいていされており、同どう法ほうの前文ぜんぶんには「我わが国くににおいては、過去かこにハンセン病はんせんびょう、後天こうてん性せい免疫めんえき不全ふぜん症候群しょうこうぐん等とうの感染かんせん症しょうの患者かんじゃ等とうに対たいするいわれのない差別さべつや偏見へんけんが存在そんざいしたという事実じじつを重おもく受うけ止とめ、これを教訓きょうくんとして今後こんごに生いかすことが必要ひつようである。このような感染かんせん症しょうをめぐる状況じょうきょうの変化へんかや感染かんせん症しょうの患者かんじゃ等とうが置おかれてきた状況じょうきょうを踏ふまえ、感染かんせん症しょうの患者かんじゃ等とうの人権じんけんを尊重そんちょうしつつ、これらの者ものに対たいする良質りょうしつかつ適切てきせつな医療いりょうの提供ていきょうを確保かくほし、感染かんせん症しょうに迅速じんそくかつ適てき確かくに対応たいおうすることが求もとめられている。」と記載きさいされている。

今回こんかいの改正かいせい案あんは、過去かこの過あやまちに対たいする真摯しんしな反省はんせいのもとに制定せいていされているはずの感染かんせん症しょう法ほう等とうの趣旨しゅしを無視むしした違憲いけんかつ違法いほうな内容ないようであることが明あきらかであり、先さきのハンセン病はんせんびょう国こく賠訴訟そしょう及およびハンセン病はんせんびょう家族かぞく訴訟そしょうで闘たたかった原告げんこくら、そして我々われわれ弁護べんご団だんにとって、今回こんかいの改正かいせい案あんを許ゆるすことは、同どう訴訟そしょうでの闘たたかいを無むにするものと言いっても過言かごんではない。
　我々われわれは、本ほん改正かいせい案あんに強つよく反対はんたいし、直ただちに撤回てっかいすることを求もとめるとともに、あらゆる手段しゅだんを用もちいて同どう法案ほうあんの可決かけつを阻止そしする覚悟かくごである。

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