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旧優生保護法国家賠償請求訴訟北海道弁護団 2021/02/04 「旧優生保護法訴訟札幌地裁判決に対する声明」
「旧優生保護法訴訟札幌地裁判決に対する声明」
旧優生保護法国家賠償請求訴訟北海道弁護団 20210204.
last update: 20210430
■『優生保護法被害者を支える市民の会・北海道』白土さんのメールより
みなさま
『優生保護法被害者を支える市民の会・北海道』の白土です。
本日、道央ご夫妻の札幌地裁での判決が出されました。
残念ながら、今回も「原告の請求を棄却する」という不当判決でした。
報告集会の冒頭、北海道弁護団の小野寺弁護士から、
「全国の訴訟の中で最も酷い判決が出されました」と言うとおり、
以下のような概要でした。
1、被害者女性が強制的に不妊手術・人工妊娠中絶を受けたかどうかの最初の論点について裁判所は次の2点で原告側の主張を退け、いわば、門前払いをした。
(1)優生手術を受けたかどうか
手術痕を確認できない状態で、夫が弁護団立ち会いで録音したテープを証拠提出したが、女性の義妹の証言をもとに夫の証言は採用できないとして、認定を否定
(2)中絶を受けたかどうか
中絶の事実は認定したが、
・中絶手術の前に女性は中絶を認識していた
・義妹が原告夫婦と話し合って中絶を決めたと証言している
を理由に、「女性は中絶に対して同意がない」ことが認められない
また、原告側の「14条1項1号の知的障害を理由とした手術である」と主張した点に関しては、義妹の「お金を借りに来ていたことがある。生活が苦しかった」の証言をもとに4号の『経済的理由』による手術の可能性があると認定
被害者夫妻の苦しみ・悲しみの声を無視し、一方 義妹の証言の一部を都合良く解釈して憲法判断を避けた結論ありきの判決であると、弁護団は糾弾しています。
報告集会に参加された皆さんも 一様に このあまりにも暴挙と言える判決に呆然とした様子でした。私個人としても、基本的にリプロダクティブ・ライツとしての中絶が障害者への差別として使われた本裁判がどのような判決となるか注目していたのですが、『経済的理由』を歪曲して不当判決に利用したことには、めまいすら覚えました。
弁護団は「判決は非常識極まりない酷い内容、原告のご了解を得られれば控訴したい」との決意です。
小島喜久夫さんが除斥期間の経過を理由に請求を棄却した一審判決を不服として1月28日に札幌高裁に正式に控訴しました。本日も麗子さんが「今日は第三者の目で判決を聞きに来たの」と力強くお話しておられました。
私たち市民の会も、今日の不当判決への怒りを胸に続きたいと思います。
北海道弁護団の声明文を添付しております。
■本文
旧優生保護法訴訟札幌地裁判決に対する声明
本日、札幌地方裁判所民事3部(燒リ勝己裁判長)は、旧優生保護法に基づいて強制不妊手術及び人工妊娠中絶を実施された知的障害のある女性とその亡夫の請求を棄却する判決をい渡した。
最低最悪の判決である。女性が強制不妊手術をされたという主張については、亡夫の供述がありながら、手術を受けたことを認める証拠がないとして、強制不妊手術が実施された事実を認定しなかった。
また、女性が人工妊娠中絶手術を受けたことについては、手術されたことは認めながらも、女性は「妊娠した子をおろすことを認識した上で、人工妊娠中絶手術を受けた」「夫婦が話し合って決めた」として、女性が人工中絶手術に同意していないという主張を否定した。加えて、女性に対する人工妊娠中絶手術は、旧優生保護法14条1項1号が定める「精神薄弱」に基づくものではなく、同項4号の「経済的理由」に基づく可能性があるとした。
あまりに被害者の体験と証拠とかけ離れた判断である。裁判所は女性の話を直接生の声を聴き、裁判の途中で急逝した亡夫の証言テープも聴いている。いずれも人工妊娠中絶手術を受けた苦しみ・悲しみを訴えるものである。しかし、被害者夫婦の声は無視する一方で、女性の義妹の証言のごく一部を都合良く解釈し、上記のような非常識な事実認定をすることで憲法判断を避けた。裁判所は国の責任を認めず、違憲性の判断をしないという結論ありきの判断といわざるを得ない。
私たち弁護団は、本日の不当判決を受け入れることはできない。弁護団はこの不当判決に控訴をし、強制不妊手術及び人工妊娠中絶手術を受けさせられた被害者の権利回復のために全力で闘う決意である。
2021年2月4日
旧優生保護法国家賠償請求訴訟北海道弁護団
団長 西村武彦
■PDFファイル
声明PDFファイル [PDF]
*作成:岩 弘泰