(Translated by https://www.hiragana.jp/)
森幹郎『ヨーロッパの老人福祉』
HOME > BOOK >

『ヨーロッパの老人ろうじん福祉ふくし

もり 幹郎みきお 19700415 全国ぜんこく社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかい,259p

Tweet
last update: 20180225

このHP経由けいゆ購入こうにゅうすると寄付きふされます


もり 幹郎みきお 19700415 『ヨーロッパの老人ろうじん福祉ふくし』,全国ぜんこく社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかい,259p. ASIN: B000J9OXZA 480 [amazon] ※ b a02 a06

目次もくじ

自序じじょ
Ⅰ はじめに-一般いっぱんてき共通きょうつうてん概説がいせつ

1 老人ろうじんホームのパターン
2 地域ちいき社会しゃかいなか老人ろうじんホーム
3 居宅きょたく福祉ふくし
4 センチナリアン イギリスーソビエト連邦れんぽう―ハンガリー
5 だい11かい国際こくさいリハビリテーション会議かいぎ
6 だい3かい国際こくさいホーム・ヘルプ会議かいぎ
7 ボランタリー活動かつどう
8 浮浪ふろうしゃ
9 住宅じゅうたく保障ほしょう北欧ほくおう
10 アル中あるちゅう北欧ほくおう

各国かっこくへん老人ろうじん福祉ふくし施設しせつ特徴とくちょう
〈イギリス〉
11 老人ろうじん福祉ふくし
12 老人ろうじんホーム
13 いちにち福祉ふくし事務所じむしょちょうとしての体験たいけん
14 WRVS
15 保健ほけん福祉ふくしじゅうねん計画けいかく

〈アイルランド〉
16 老人ろうじん福祉ふくし

西にしドイツ〉
17 老人ろうじんホームおよび老人ろうじん住宅じゅうたく最低さいてい基準きじゅん
18 においの花園はなぞの
19 老人ろうじんホーム・ヘルパー
20 老人ろうじん職業しょくぎょう紹介しょうかい事業じぎょう
21 寮母りょうぼ試験しけん
22 地域ちいき福祉ふくしセンター
23 社会しゃかい事業じぎょう高校こうこう
24 ベーテルのまち

〈オランダ〉
25 老人ろうじん工場こうじょう
26 3つの十字じゅうじしゃ

〈ルクセンブルグ〉
27 修道院しゅうどういん老人ろうじんホーム

〈デンマーク〉
28 老人ろうじん福祉ふくし
29 グリーンランドとう

〈フィンランド〉
30 老人ろうじん福祉ふくし
31 医療いりょう実態じったい調査ちょうさ
32 赤十字せきじゅうじしゃ
33 ホーム・ヘルプ・サービスほう
34 どものしろ
35 スロット・マシンの効用こうよう
36 北極圏ほっきょくけん社会しゃかい福祉ふくし
37 フィンランドの社会しゃかい政策せいさくかんする2,3の印象いんしょう

〈ノルウェー〉
38 老人ろうじん福祉ふくし
39 社会しゃかい福祉ふくし
40 私生児しせいじ

〈スウェーデン〉
41 ホーム・ヘルパー
42 家庭かていでのリハビリテーション

〈ソビエト連邦れんぽう
43 老齢ろうれい年金ねんきん
44 老人ろうじん体操たいそう

〈ポーランド〉
45 社会しゃかい事業じぎょう学校がっこう
46 ソーシャル・ワーカー


引用いんよう

 「わたくしは昭和しょうわよんよんねんがつからいちがつまでのあいだ西欧せいおう北欧ほくおうおよび中東ちゅうとう国々くにぐに滞在たいざいして、老人ろうじんたいする保健ほけん福祉ふくし実態じったい体験たいけんてきまな機会きかいあたえられた。本書ほんしょはまず上司じょうしたいする出張しゅっちょう復命ふくめいしょであり、また同時どうじに、関係かんけいしゃたいする体験たいけんてき報告ほうこくでもある。……」(もり 1970「自序じじょ」より)

5 だい11かい国際こくさいリハビリテーション会議かいぎ

「リハビリテーションという言葉ことばはいまだに専門せんもんあいだ専門せんもん用語ようごであって、一般いっぱん日本人にっぽんじんあいだにはまさしく理解りかいされていない。老人ろうじん福祉ふくし仕事しごとにたずさわっているものあいだでさえも、いまなお、この言葉ことば誤解ごかいしているものがある。つまり、リハビリテーション訓練くんれんは、身体しんたい障害しょうがいしゃには必要ひつようであるが、老人ろうじんには必要ひつようでないとかんがえられているのである。老人ろうじんは、いわば人生じんせいくだざかあるいているものであり、しょせん、かえるべきものであるから、リハビリテーションなど必要ひつようではない、むだなことである、というのである。
リハビリテーションのかんがかた一部いちぶ関係かんけいしゃあいだ理解りかいされるにいたったのは、日本にっぽんでは、ようやく戦後せんごのことである。以来いらい今日きょうまでのみじか期間きかんにあって、老人ろうじんリハビリテーションのかんがかたがひろくただしく理解りかいされるのは、困難こんなんなことであったとおもうが、その理由りゆうは、リハビリテーションという言葉ことば日本語にほんごへの訳語やくご問題もんだいとわがくににおける人間にんげん理解りかい人間にんげん尊重そんちょう精神せいしんかけじょとにもとづくものである。
まずだいいち理由りゆうからかんがえてみよう。リハビリテーションという言葉ことばは、第一義だいいちぎてきには、ひとをしてふたた適応てきおうさせるという意味いみである。この場合ばあい対象たいしょうしゃがどの程度ていどまでふたた適合てきごうできるかということは、問題もんだいではない。言葉ことばをかえていうと、そののこされた能力のうりょく回復かいふくりょくはんそれで十分じゅうぶんなので、これがリハビリテーションである。
日本にっぽんでは、リハビリテーションとは、労働ろうどう社会しゃかい復帰ふっきすることであるとかんがえられてきた。これがリハビリテーションのかんがかた出発しゅっぱつ当初とうしょから誤解ごかいされてきた原因げんいんである。
老人ろうじん機能きのう能力のうりょくは、としとともに減退げんたいしていく。そしてその場合ばあいのこされた能力のうりょく回復かいふくする能力のうりょくひとによって、みなちがっており、したがって、どの程度ていどまでふたた適応てきおうすることができるかということは、ひとによってみなちがうのである。
ようするに、リハビリテーション訓練くんれんによって、労働ろうどうしゃとして社会しゃかい復帰ふっきできるひともあれば、できないひともあるわけである。おおくのひとは、社会しゃかい復帰ふっきできそうも場合ばあい、リハビリテーション訓練くんれんなど必要ひつようないとかんがえがちであるが、それは、さきにもべたように、リハビリテーションという言葉ことば社会しゃかい復帰ふっきやくしてしまったことによるものである」(40-42)


老人ろうじんとは人生じんせいにおいてすべてのものをうしなったものである。健康けんこう財産ざいさんども、ときにはおっとを、つまうしなった場合ばあいもあろう。そして、いまはかえるべきつだけである。しかし、それにもかかわらず、そのいのなにのこされたものがあることをしんじ、それを発見はっけんしようとつとめ、そしてのこされたものをかすことのできる老人ろうじんはしあわせである。老人ろうじんにも、たとえ、どんなにといいていても、なにのこされたものがあるはずである。リハビリテーション訓練くんれんは、おとろえた能力のうりょく維持いじし、その低下ていかふせぎ、ときにはその能力のうりょく増進ぞうしんさせるのである」(46)

42 家庭かていでのリハビリテーション
度目どめのスウェーデン滞在たいざいであるが、前回ぜんかい同様どうよう、やはり、リハビリテーションについておおきな関心かんしんがあった。6ねんまえおなじなのか、それとも進歩しんぽしているのか、進歩しんぽしているとしたらそれはどんなてんなのか、いろいろ期待きたい興味きょうみとがじっていた。
ストックホルムの中心ちゅうしんから、きたにバスで20ふんほどのところに、カロリンスカ病院びょういんがある。大学だいがく付属ふぞく病院びょういんで、ヨーロッパ最大さいだい病院びょういんわれている。このまえここで、わたしはリハビリテーション医学いがくについての洗脳せんのうけ、ウェルフェア(福祉ふくし)についての開眼かいがん体験たいけんしたのであった。
さて、今度こんどのスウェーデン滞在たいざいで、わたしはこのくにのリハビリテーションはおおきな進歩しんぽをしているのをった。それは、リハビリテーションがたん施設しせつなかのものではなく、家庭かてい生活せいかつなかにとけこんでいたからである。いろいろな補助ほじょたすけをかりてまがりなりにも家庭かていでの生活せいかついとなんでいるひとたちをなんじゅうにんたずねてみた。いわゆる家庭かてい復帰ふっきという意味いみにおいてリハビリテーションが成功せいこうしているのであった」(244)

ようするに老齢ろうれい年金ねんきんではやっていけないほど、老人ろうじん病院びょういんでも老人ろうじんホームでもコストはたかいのである。だから自分じぶん家庭かていでいつまでも生活せいかつしたいという老人ろうじんのニードを充足じゅうそくするということもさることながら、施設しせつ保護ほご経済けいざいせいにはほとほといている、というのがいつわらざる実情じつじょう見受みうけた。リハビリテーションはこうした経済けいざいてき必要ひつようせいにもこたえているのである」(245-246)


UP: 20080116 REV: 20090316 田島たじま 明子あきこ, 20180225
もり 幹郎みきお  ◇  ◇介助かいじょ介護かいご  ◇身体しんたい×世界せかい関連かんれん書籍しょせき  ◇BOOK
TOP HOME (http://www.arsvi.com)