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浮ケ谷幸代『病気だけど病気ではない――糖尿病とともに生きる生活世界』

『病気びょうきだけど病気びょうきではない――糖尿とうにょう病びょうとともに生いきる生活せいかつ世界せかい』

浮ケ谷うきがや幸代さちよ　20040720　誠まこと信しん書房しょぼう，226p.　3150

　製作せいさく：植村うえむら要かなめ＊／青木あおき慎まき太朗たろう
　＊http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/g/uk01.htm

Last update:20101211

■浮ケ谷うきがや幸代さちよ　20040720　『病気びょうきだけど病気びょうきではない――糖尿とうにょう病びょうとともに生いきる生活せいかつ世界せかい』，誠まこと信しん書房しょぼう，226p.　ISBN：4414428580　3150　［amazon］／［kinokuniya］ s02

■目次もくじ

序章じょしょう　なぜ糖尿とうにょう病びょうか　p１

第だい１章しょう　糖尿とうにょう病びょうの語かたられ方かた　p１２
　第だい一いち節せつ　医療いりょう専門せんもん家かの説明せつめい　p１２
　　１　生物せいぶつ医学いがくの説明せつめい　p１２
　　２　患者かんじゃ教育きょういくの三みっつの柱はしら　p１４
　　３　セルフケアのための支援しえん　p２０
　　４　セルフ・コントロールの神話しんわ　p２２
　第だい二に節せつ　「主体性しゅたいせい原理げんり」から「生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう」へ　p２６
　　１　セルフ・コントロールを支ささえる「主体性しゅたいせい原理げんり」　p２６
　　２　「生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう」という名なづけ　p２７

第だい２章しょう　糖尿とうにょう病びょうになった原因げんいん　p３１
　第だい一いち節せつ　「なぜ」と「いかに」の問とい　p３１
　第だい二に節せつ　医師いしによる説明せつめい　p３４
　第だい三さん節せつ　糖尿とうにょう病びょうになった人ひとの説明せつめい　p３６
　　１　「食たべることが健康けんこう」　p３６
　　２　「これが原因げんいんだと思おもう」　p４０
　　３　「よくわからない」「運命うんめい」「気きにしない」　p４２
　第だい四よん節せつ　自己じこ言及げんきゅうという社会しゃかい的てき装置そうち　p４４

第だい３章しょう　糖尿とうにょう病びょうとの向むき合あい方かた　p４９
　第だい一いち節せつ　関係かんけい性せいのなかで「向むき合あう」　p５０
　第だい二に節せつ　糖尿とうにょう病びょうとどのように向むき合あっているか　p５３
　　１　「底そこをつく経験けいけん」を通とおして　p５３
　　２　「運命うんめいだから」　ｐ５６
　　３　「受うけ入いれたいけど受うけ入いれられない」　ｐ６１
　　４　「病気びょうきは性格せいかくみたいなもの」　ｐ６６
　第だい三さん節せつ　糖尿とうにょう病びょうとともに生いきる　ｐ６９

第だい４章しょう　治療ちりょう実践じっせんを飼かい慣ならす　ｐ７３
　第だい一いち節せつ　「飼かい慣ならす」ということば　ｐ７３
　第だい二に節せつ　「夫おっとのため、子こどものため、家族かぞくのため」　ｐ７５
　第だい三さん節せつ　自分じぶん流りゅうの治療ちりょう実践じっせん　ｐ７８
　第だい四よん節せつ　「注射ちゅうしゃは眼鏡めがねをかけるようなもの」　ｐ８４
　第だい五ご節せつ　情報じょうほうは主体しゅたい的てきに取捨選択しゅしゃせんたくする　ｐ９０
　第だい六ろく節せつ　飼かい慣ならす術じゅつ(すべ)　ｐ９５

第だい５章しょう　デジタル化かされる身体しんたいと「自分じぶんのからだ」　ｐ１００
　第だい一いち節せつ　デジタル化かからアナログの世界せかいへ　ｐ１００
　第だい二に節せつ　身体しんたいは語かたる　ｐ１０２
　第だい三さん節せつ　「自分じぶんのからだ」の発見はっけん　ｐ１０８
　第だい四よん節せつ　「医療いりょう的てき身体しんたい」と「自分じぶんのからだ」とのあいだ　ｐ１１１

第だい６章しょう　食事しょくじ療法りょうほうをめぐる社会しゃかい関係かんけい　ｐ１１５
　第だい一いち節せつ　食事しょくじ実践じっせんから生しょうじる問題もんだい　ｐ１１６
　　１　「わかっているけどできない」　ｐ１１６
　　２　「社交しゃこうしたくてもできない」　ｐ１１９
　第だい二に節せつ　糖尿とうにょう病びょうから見みえる夫婦ふうふの風景ふうけい　ｐ１２３
　　１　「セットとしてのセルフ」　ｐ１２３
　　２　妻つまが医療いりょう的てき言説げんせつを内面ないめん化かしたとき　ｐ１２６
　　３　自分じぶん流りゅうの治療ちりょう実践じっせんを編あみ出だす　ｐ１２９
　　４　「楽たのしみ」や「幸しあわせ」の発見はっけん　ｐ１３１
　第だい三さん節せつ　「食しょく」とセルフ・コントロール　ｐ１３４

第だい７章しょう　医療いりょう者しゃとのつき合あい方かた　ｐ１３９
　第だい一いち節せつ　患者かんじゃ―医療いりょう者しゃ関係かんけい　ｐ１３９
　第だい二に節せつ　医師いしとの信頼しんらい関係かんけいを求もとめて　ｐ１４１
　第だい三さん節せつ　「主体しゅたい的てき選択せんたく」の意味いみ　ｐ１４８
　第だい四よん節せつ　「イズム」から信頼しんらい関係かんけいそして共同きょうどう実践じっせんへ　ｐ１５４

第だい８章しょう　なぜ集つどうのか――<Ｙの会かい>の活動かつどうから　ｐ１５８　cf.セルフヘルプグループ
　第だい一いち節せつ　苦悩くのうの経験けいけんを共有きょうゆうする　ｐ１５８
　第だい二に節せつ　患者かんじゃ会かいまたはセルフヘルプ・グループ　ｐ１６０
　第だい三さん節せつ　<Ｙの会かい>とは
　第だい四よん節せつ　<Ｙの会かい>の活動かつどう――調理ちょうり実習じっしゅうから　ｐ１６４
　第だい五ご節せつ　集つどうことと実践じっせんすること　ｐ１７２
　１　集つどうこと　ｐ１７２
　２　実践じっせんすること　ｐ１７４
　第だい六ろく節せつ　患者かんじゃ会かいは必要ひつようなのか　ｐ１７６

終章しゅうしょう　「病気びょうきだけど病気びょうきではない」　ｐ１８１

　注ちゅう　ｐ１８９
　引用いんよう・参考さんこう文献ぶんけん　ｐ２１０
　あとがき　ｐ２２３

■引用いんよう

「これが本書ほんしょを貫つらぬく主要しゅようなテーマとなるが、糖尿とうにょう病びょう治療ちりょうの状況じょうきょうを見みることで、現代げんだい社会しゃかいが生うみ出だした3>>4生物せいぶつ医療いりょうの専門せんもん家か支配しはいの構図こうずと個人こじんの自律じりつ性せいとの関係かんけいを映うつし出だすことができるという点てんである」

「ここでは、主体性しゅたいせいや能動のうどう性せいを前提ぜんていとする存在そんざい様式ようしきとは異ことなる態度たいどを示しめす人ひとたちをより多おおく紹介しょうかいすることになると思おもう」(p.5)

「病気びょうきの経験けいけんに見出みいだされる苦悩くのうやパトス、偶発ぐうはつ性せいといった諸しょ要素ようそは、人間にんげんの生せいを構成こうせいする根源こんげん的てきな存在そんざい様式ようしきの一部いちぶであるはずなのに、自律じりつ性せいや主体性しゅたいせいを強調きょうちょうするような現代げんだい社会しゃかいでは克服こくふくされるべきものとして見みなされてい7>>8る。また、近代きんだい個人こじん主義しゅぎの徹底てってい化かからは肯定こうてい的てきに評価ひょうかされえない者ものとして捉とらえられている」

「「病気びょうきだけど病気びょうきではない」というタイトルにしたのは、「病気びょうきである」とか「病気びょうきではない」という事実じじつは、生物せいぶつ医学いがくの診断しんだんや社会しゃかいが決定けっていするのではなく、そうした言説げんせつに影響えいきょうを受うけながらも、一人ひとりひとりが置おかれている状況じょうきょうによって生うまれているということを伝つたえたかったからである。日常にちじょう生活せいかつの文脈ぶんみゃくこそが、「病気びょうきである」や「病気びょうきではない」という現実げんじつを構築こうちくしているということなのだ」(p.8)

「「病気びょうきだけど病気びょうきではない」ということばに現あらわれているように、「コントロールさえ良よければ健常けんじょう者しゃと同おなじ」ということばは、合併症がっぺいしょうがなければ普通ふつうの人ひとたちと変かわらない日常にちじょうを生いきているということを意味いみしている。けれども、「病気びょうきだけど病気びょうきではない」という彼かれらの現実げんじつは、それほど単純たんじゅんではなく、きわめて複雑ふくざつで多様たようである」(p.182)

「社会しゃかい的てき文脈ぶんみゃくで構成こうせいされる世界せかいで生いきている人ひとびとの現実げんじつを生活せいかつ世界せかいと呼よんでいるわけだが、文脈ぶんみゃくに依存いぞんする人ひとたちの多様たような経験けいけんは、科学かがく的てき思考しこうを支ささえる論理ろんり性せいや普遍ふへん性せい、客観きゃっかん性せいとは必かならずしも一致いっちしない」(p.184)

「ところが、この両義りょうぎ的てきでどっちつかずの境界きょうかい領域りょういきは、合理ごうり性せいや論理ろんり性せい、首尾しゅび一貫いっかん性せいなどの近代きんだい的てきな思考しこうを基盤きばんとする現代げんだい社会しゃかいでは、排除はいじょされるべき領域りょういきとして位置いちづけられてきた。いいかえれば、近代きんだいの科学かがく的てき思考しこうに基盤きばんをおく限かぎり、私わたしたちは二元論にげんろんのなかで常つねに二者択一にしゃたくいつ的てき存在そんざいであり続つづけることが要求ようきゅうされている。そのうえ、科学かがく的てき思考しこうを取とる二元論にげんろんは、「科学かがくの価値かち中立ちゅうりつ性せい」という神話しんわのもと、社会しゃかいの価値かちづけというふるいにかけられると、カテゴリー分割ぶんかつに価値かち判断はんだんが挿入そうにゅうされて、そちらか一方いっぽうのカテゴリーを優位ゆういに位置いちづけることになる。「健康けんこうであること」が絶対ぜったい的てきに「善ぜんなるもの」として価値かちづけられている社会しゃかいでは、「病気びょうきであること」は排除はいじょされるべきものとして見みなされる」(p.187)

■書評しょひょう

◆濱はま雄つよし亮あきら　2004　「書評しょひょう：浮ヶ谷うきがや幸代さちよ著ちょ『病気びょうきだけど病気びょうきではない――糖尿とうにょう病びょうとともに生いきる生活せいかつ世界せかい』，『人間にんげんと社会しゃかいの探究たんきゅう』 (59)： 91-95
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UP:20070506 REV:20101211, 20110320

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