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天田城介『〈老い衰えゆくこと〉の社会学(増補改訂版)』
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『〈おとろえゆくこと〉の社会しゃかいがく増補ぞうほ改訂かいていばん)』

天田あまだ しろかい 20100310 多賀たが出版しゅっぱん,vi+683p.
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天田あまだ しろかい 20100310 『〈おとろえゆくこと〉の社会しゃかいがく』,多賀たが出版しゅっぱん,vi+683p. ISBN-10: 4811575717 ISBN-13: 978-4811575711  \4,200 [amazon][kinokuniya] ※ a06

  *だいかい日本にっぽん社会しゃかい学会がっかい奨励しょうれいしょう著書ちょしょ受賞じゅしょう

文献ぶんけんひょう言及げんきゅうなどはこちらも参照さんしょうください→http://www.josukeamada.com/bk/books1.htm


内容ないよう

□「BOOK」データベースより
 ほん研究けんきゅうでは“おとろえゆくこと”をたんおとろえてゆく当事とうじしゃ身体しんたい帰属きぞく完結かんけつする個別こべつてき現象げんしょうとして理解りかいするのではなく、成員せいいんあいだ関係かんけいせい変容へんようさせる出来事できごととして照射しょうしゃし、そこでの相互そうご作用さようおよ相互そうご作用さよう過程かてい社会しゃかいがくてき分析ぶんせき記述きじゅつすることを主題しゅだいとする。本書ほんしょ一貫いっかんしてこの立場たちばから論考ろんこうしている。

□「MARC」データベースより
 おとろえてゆく当事とうじしゃと、かれ彼女かのじょらに介護かいご提供ていきょうする成員せいいんたちとの関係かんけいせいはどのように変容へんようしていくのか。おとろえてゆくという現実げんじつはどのようにして行為こうい遂行すいこうてきつくされているのか。これらを社会しゃかいがく視座しざからあきらかにする。

田賀たが出版しゅっぱんのHPより(http://www.taga-shuppan.co.jp/books/books.php?id=705
 本書ほんしょでは、痴呆ちほう慢性まんせい疾患しっかんかかえてきる高齢こうれいしゃ、あるいはかれ彼女かのじょらを介護かいごする人々ひとびと視点してん徹底的てっていてき照準しょうじゅんしたうえで、そうした当事とうじしゃからた〈おとろえゆくこと〉の生活せいかつ世界せかい剔出てきしゅつし、高齢こうれいしゃおとろえゆくなかで人間にんげん人間にんげん関係かんけいせいがどのように変容へんようしていくのかを鮮明せんめい析出せきしゅつしている。くわえて、本書ほんしょでは施設しせつ介護かいご在宅ざいたく家族かぞく介護かいご高齢こうれい夫婦ふうふ介護かいごというみっつの実際じっさい現場げんばにおけるインテンシブなフィールドワークにもとづいた緻密ちみつかつ大胆だいたん実証じっしょう研究けんきゅう展開てんかいされていると同時どうじに、その結果けっかまえたうえあらたな理論りろんてき地平ちへいひらいているてんこそ、本書ほんしょまがほうなき功績こうせきである。
 本書ほんしょは、以上いじょうのような理路りろうえで、はじめて〈おとろえゆくこと〉を「政治せいじてき出来事できごと」としてらしした先駆せんくてき研究けんきゅうである。その意味いみで、社会しゃかいがく社会しゃかい福祉ふくしがく看護かんごがくなどの領域りょういき研究けんきゅうしゃのみならず、実際じっさい高齢こうれいしゃ福祉ふくし現場げんばはたら人々ひとびと、あるいはみずかいをむかえつつある人々ひとびとおやいをている人々ひとびとにとって必読ひつどくしょである。


目次もくじ

序章じょしょう 研究けんきゅう目的もくてき意義いぎ
  〈おとろえゆくこと〉へのまなざし
  ほん研究けんきゅう主題しゅだい設定せってい方法ほうほうろん
  ほん研究けんきゅう構成こうせい
だいいちしょう 視座しざとアプローチ――自己じこ他者たしゃ
  自己じこ他者たしゃ――「再帰さいきせい」の視点してんから
  「えざる・なき再帰さいきせいによる物語ものがたり
  「儀礼ぎれい」と「物語ものがたり」の解読かいどく
  方法ほうほうろんにおける〈視線しせん〉のじゅうせい――社会しゃかいがくの「かたる」場所ばしょ
だいしょう 老年ろうねんがく現在げんざい
  高齢こうれい社会しゃかい歴史れきしせい
  老年ろうねんがく現在げんざい
  高齢こうれい社会しゃかいにおける再帰さいきてきエイジング
  〈おとろえゆくこと〉の社会しゃかいがくけて
  おとろえゆく自己じこ他者たしゃ
だいさんしょう 施設しせつにおいておとろえゆく身体しんたいきるということ
  〈おとろえゆくこと〉と相互そうご作用さよう秩序ちつじょ
  ロビーにおける「痴呆ちほうせい老人ろうじん」の関係かんけいせい分析ぶんせき
  「痴呆ちほうせい老人ろうじん」における/をめぐる相互そうご作用さよう諸相しょそう
  施設しせつ介護かいごにおける「痴呆ちほうせい老人ろうじん」へのケアの実践じっせん構築こうちく 
だいよんしょう 在宅ざいたくおとろえゆく身体しんたいきる家族かぞく介護かいごするということ
  〈家族かぞく〉による介護かいご困難こんなんせい
  「痴呆ちほうせい老人ろうじん」と家族かぞく介護かいごしゃにおける相互そうご作用さよう過程かてい
  家族かぞく介護かいごをめぐる相互そうご作用さようダイナミズム
  在宅ざいたく家族かぞく介護かいごにおける「痴呆ちほうせい老人ろうじん」へのケアの実践じっせん構築こうちく
だいしょう おとろえゆく高齢こうれい夫婦ふうふの〈親密しんみつせい〉の変容へんよう
  おとろえゆく自己じこ他者たしゃ
  おとろえゆく高齢こうれい夫婦ふうふをめぐる〈親密しんみつせい〉の変容へんよう
  高齢こうれい夫婦ふうふにおける〈親密しんみつせい〉の達成たっせい
  高齢こうれい夫婦ふうふ介護かいごにおけるおとろえゆく人々ひとびとへのケアの実践じっせん構築こうちく
だいろくしょう おとろえゆく身体しんたいきる――〈おとろえゆくこと〉の困難こんなん可能かのうせい
  「市民しみん社会しゃかい」における〈おとろえゆくこと〉の構成こうせい
  〈おとろえゆくこと〉のかたむずかしさ・かたなさ
  〈ケア〉の困難こんなん可能かのうせい――暴力ぼうりょくとしての介護かいご
終章しゅうしょうおとろえゆくこと〉の社会しゃかいがくによるあらたなる地平ちへい
  ほん研究けんきゅう結論けつろん――「再帰さいきてきエイジング」をえて
  〈おとろえゆくことの可能かのうせい〉と〈ケアの可能かのうせい〉の基底きていてき条件じょうけん
  いくつかの提言ていげん――実践じっせんてき可能かのうせいけて
ろん おとろえゆく身体しんたいをめぐる社会しゃかい
  贈与ぞうよのエコノミーと犠牲ぎせい構造こうぞう――おとろえゆくひとびとの生存せいぞんという戦術せんじゅつ
  〈ジェネレーション〉を思想しそうする
  「脆弱ぜいじゃくせい」の統治とうち――統治とうちろん高齢こうれいしゃ介護かいごへの「応用おうよう」をめぐる困難こんなん

増補ぞうほ改訂かいていばん」あとがき
参考さんこう文献ぶんけん


引用いんよう

引用いんよう http://d.hatena.ne.jp/K416/20050621
 「ここで決定的けっていてき重要じゅうよう要件ようけんは、「他者たしゃゆうする意味いみ秩序ちつじょ」である。しかし本質ほんしつてきわたしにはそのしゃ意味いみゆうする意味いみ秩序ちつじょ完全かんぜん把握はあくすることは不可能ふかのうである―わたしにはそれはからない!
 であるからこそ、我々われわれ他者たしゃたいして「からない」とうことは、我々われわれはそれによってむしろ「いつかかるかもしれない」という希望きぼうを―到達とうたつ不可能ふかのうではあるが、それ自体じたい希求ききゅうする希望きぼうを―あらわしているのだ。」(p.543)

引用いんよう
 →立岩たついわ 2006/03/25天田あまだしろかいほん・1」医療いりょう社会しゃかいブックガ イド・58),『看護かんご教育きょういく』47-03(2006-03):-(医学書院いがくしょいん

 だいしょう 老年ろうねんがく現在げんざい

 「近代きんだい社会しゃかいにおける「暦年齢れきねんれい絶対ぜったい」によって「老人ろうじん」は匿名とくめいてきカテゴリーとして構築こうちくされ、それは同時どうじに「老人ろうじん神話しんわ」をも創出そうしゅつした。ところが、1970年代ねんだいにおける「老人ろうじん」から「高齢こうれいしゃ」へのネガからポジへの価値かち転換てんかんはかつての高齢こうれいしゃぞう呪縛じゅばくからの解放かいほううたいながらも、いよいよ他者たしゃのケアに依存いぞんしなくてはきられない状態じょうたいとなった「おとろえゆく」人々ひとびとを「医療いりょう」「福祉ふくし」の世界せかいかこ結果けっかとなった。」(p.108)

 終章しゅうしょう 〈おとろえゆくこと〉の社会しゃかいがくによるあらたな地平ちへい

 「現代げんだいいをきる人々ひとびとは、老年ろうねんにおいてもえずみずからの身体しんたい制御せいぎょし、かつての価値かち制度せいど吟味ぎんみ改編かいへん対象たいしょうとしつつ、みずからが何者なにものであるかを自問じもん再認さいにんする<再帰さいきてき自己じこ>であることを暗黙あんもくのうちに命令めいれいされている。[…]こうした「えざる・なき再帰さいきせいによる物語ものがたり」としての自己じこは、みずからの存在そんざい価値かちあるものであることを証明しょうめいしようとしてアイデンティティ管理かんり躍起やっきになり、また自己じこ内部ないぶの<他者たしゃ>としての発見はっけんとパラレルなかたちで、自己じこ外部がいぶにある<他者たしゃ>を発見はっけん創出そうしゅつする[…]そしてさらには<他者たしゃ>として発見はっけん創出そうしゅつされた人々ひとびとみずからの自己じこ否定ひていせいなにとか返上へんじょうしようとさらなるアイデンティティ管理かんり実践じっせんへととらわれてしまう[…]」(p.518)

 「結局けっきょくのところ、「痴呆ちほう」とは<自己じこ同一どういつせい規範きはん参照さんしょう媒介ばいかいにすることで「自己じこしん喪失そうしつする」「病気びょうき」であるかのようにえ・おもえ、その結果けっか痴呆ちほう」と名付なづけられており、そのせいはそうした<せい>をあたかも彼岸ひがんへと変移へんいしたしたものとして、あるいはよりも否定ひていてきな<せい>として了解りょうかいすることを基盤きばんとして成立せいりつしているのである。
 とすれば、これまで先行せんこう研究けんきゅう指摘してきされてきたような医療いりょうによって「痴呆ちほう」がつくられたという「テクノロジー決定けっていろん」は論理ろんりてき説明せつめいりょくいており、むしろ近代きんだい社会しゃかいが<自己じこ同一どういつせい>とその前提ぜんていたる全能ぜんのうてき不死ふしかんとしての<せい>を欲望よくぼうするがゆえに、「医療いりょう」が産出さんしゅつ徹底てっていされ、「痴呆ちほう」がつくりあげられた、とかんがえるべきであろう。
 すなわち、先述せんじゅつしたように、高齢こうれい社会しゃかいにおける近代きんだいてき自己じこ人生じんせい全般ぜんぱんへの拡大かくだい普遍ふへんによって登場とうじょうした「主体しゅたいてき高齢こうれいしゃ」と、医療いりょうによって「発見はっけん」された「痴呆ちほうせい老人ろうじん」は、わば<自己じこ同一どういつせい>の原理げんり母体ぼたいとしてされた双生児そうせいじ分身ぶんしんなのだ。」(p.531)

 そういうことではある。…。で、…。

 「<おとろえゆくこと>をめぐるケアを媒介ばいかいにしたあいだ身体しんたいせい、すなわち「応答おうとう可能かのうせいとしての主体しゅたい」どうしの<あいだ>では、高齢こうれいしゃが「存在そんざいしていること/存在そんざいしてきたこと(be)」によって、あるいはその来歴らいれきによって、介護かいご提供ていきょうしゃみずからの「存在そんざいしていること/存在そんざいしてきたこと(be)が身体しんたいつなぎとめられ、また他者たしゃかた言葉ことばこえにもならないつぶやきやなげきやさけびをつうじて、おたがいに「他者たしゃがいまここにげんに・ともきてること」を肯定こうていすることが可能かのうするのである。」(p.533)


書評しょひょう紹介しょうかい

立岩たていわ しん也 20060325 天田あまだしろかいほん・1(医療いりょう社会しゃかいブックガイド・58)」看護かんご教育きょういく』 47(3)

鷲田わしだ 清一せいいち 20031221 書評しょひょう
 『朝日新聞あさひしんぶん』2003-12-21
 (1)『レイアウトの法則ほうそく アートとアフォーダンス』佐々木ささき正人まさとちょ春秋しゅんじゅうしゃ・2300えん
 (2)『午後ごごみつばこ』(稲葉いなば真弓まゆみちょ講談社こうだんしゃ・1700えん
 (3)『<おとろえゆくこと>の社会しゃかいがく』(天田あまだしろかいちょ多賀たが出版しゅっぱん・8500えん
 「ものの、ひとの、肌理きめ(きめ)にふか感応かんおうした書物しょもつみっつ。(1)は、「輪郭りんかく言語げんご」に拉致らちされた「もの」の世界せかいから、「もの」の肌理きめ錯綜さくそう(さくそう)し変圧へんあつしあう知覚ちかく表現ひょうげん風景ふうけいもどす、生態せいたい心理しんりがく成果せいか。ひとのちいさな行為こういへの、骨太ほねぶといかけと繊細せんさい感度かんどとひとをふかあい(いとお)しむしんとがうつくしくりあわされている。かつて哲学てつがくのものとされた世界せかいへの「おどろき」が、いまはこの、世界せかい出現しゅつげんさい定義ていぎしようという研究けんきゅう充満じゅうまんしている。
 (2)は、ひとらしのなかのものおと空気くうきのひそやかな触感しょっかんをなぞり、からまりをこばみながらほのかに惹(ひ)かれらいでしまう、他者たしゃとの不安定ふあんてい距離きょりかんえがいたたん編集へんしゅう。(3)は、とくやしなえでのフィールドワークをもとにした痴呆ちほう(ちほう)せい老人ろうじん介護かいご研究けんきゅう言葉ことばとそれをおさめるたい(あきら)めとが交錯こうさくする高齢こうれいしゃの「親密しんみつせい」の肌理きめについて、わたしはうんと年下としした研究けんきゅうしゃからたっぷりおそわった。」

◆200506 「だいかい日本にっぽん社会しゃかい学会がっかい奨励しょうれいしょう著書ちょしょ受賞じゅしょうしゃ自著じちょかたる」/受賞じゅしょうさく天田あまだしろかい,2003,『〈おとろえゆくこと〉の社会しゃかいがく多賀たが出版しゅっぱん
 日本にっぽん社会しゃかい学会がっかい発行はっこう社会しゃかいがく評論ひょうろん』221ごう(Vol.56, No.1)


言及げんきゅう



作成さくせい小林こばやし 勇人はやと 
UP:20100305 REV:20100525
  ◇身体しんたい×世界せかい関連かんれん書籍しょせき  ◇BOOK
 
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