(Translated by https://www.hiragana.jp/)
視労協編『障害の地平』No.93
HOME > BOOK > 雑誌ざっし > 障害しょうがい地平ちへい >

障害しょうがい地平ちへい』No.93

視覚しかく障害しょうがいしゃ労働ろうどう問題もんだい協議きょうぎかい へん 19971205 SSK通巻つうかんだい1241ごう身体しんたい障害しょうがいしゃ定期ていき刊行かんこうぶつ協会きょうかい,24p.

Tweet
last update: 20210528



視覚しかく障害しょうがいしゃ労働ろうどう問題もんだい協議きょうぎかい へん 19971205 『障害しょうがい地平ちへいだい93ごう,SSK通巻つうかんだい1241ごう身体しんたい障害しょうがいしゃ定期ていき刊行かんこうぶつ協会きょうかい,24p. ds. v01

全文ぜんぶん

表紙ひょうし
 SSKー障害しょうがいしゃ開放かいほう運動うんどう理論りろんてき実践じっせんてき飛躍ひやくのためにー
 子宮しきゅうから墓場はかばまでノーマライゼーション!
 −労協ろうきょう
 障害しょうがい地平ちへい No.93
 労協ろうきょう解散かいさん提起ていきします
 視覚しかく障害しょうがいしゃ労働ろうどう問題もんだい協議きょうぎかい
 いちきゅうなないちねんろくがつじゅうななにちだい三種さんしゅ郵便ゆうびんぶつ許可きょか毎月まいつきろくかい ・0の発行はっこう
 いちきゅうきゅうななねん十二月じゅうにがつにち発行はっこうSSK通巻つうかんいちよんいちごう

目次もくじ
 ・労協ろうきょう解散かいさんについての提起ていき 労協ろうきょう事務じむきょく…1
 ・労協ろうきょう存続そんぞくかんする提起ていき もり登美江とみえ…3
 ・労協ろうきょうてき気分きぶん政策せいさく研究けんきゅう集会しゅうかいえて 奥山おくやま博幸ひろゆき…6
 ・えら権利けんり 斉藤さいとう昌久まさひさ…9
 ・さん日記にっきB 的野まとのせきろう…12
 ・ちないホームヘのみちのり みや昭夫あきお…15
 ・交通こうつうきょくによる「巣鴨すがもえき試験しけんかんする調査ちょうさ結果けっか」…18
 ・やさしいまちづくりに(かぶ)アイタッチ 本間ほんま丈雄たけお…20
 ・当事とうじしゃ使つかえる機器きき開発かいはつつ 上園うえその和隆かずたか…21
 ・ヘルスキーパー制度せいどへのみち 神崎かんざきこう…22
 ・書評しょひょういまどきしょうがい母親ははおや物語ものがたり」 梅林うめばやし和夫かずお…24

p1
 「労協ろうきょう解散かいさん提起ていきについて」
 労協ろうきょう事務じむきょく
 
 視覚しかく障害しょうがいしゃ労働ろうどう問題もんだい協議きょうぎかい(労協ろうきょう)は、結成けっせい22周年しゅうねんをこの10月22にちむかえました。発足ほっそく当初とうしょの、まさしく労働ろうどう問題もんだいという課題かだいにふさわしい、公務員こうむいん採用さいよう点字てんじ受験じゅけん達成たっせいけた運動うんどうから、教員きょういん採用さいよう点字てんじ受験じゅけん、そして、そのわくさんりょう(あんま・マッサージ・指圧しあつ、はり、きゅう)関係かんけい病院びょういん解雇かいこ撤回てっかいや、サウナ解雇かいこ撤回てっかいひろがっていきました。当時とうじ学生がくせい運動うんどうがりともわさって、労協ろうきょう会員かいいん増加ぞうか運動うんどういきおいは見張みはるものがあったとおもいます。大学だいがく門戸もんこ開放かいほう運動うんどうにおいては、全国ぜんこくてき展開てんかいをもすことにもなりました。
 少数しょうすうながら「めくらかい」をあっとわせる「障害しょうがいしゃ解放かいほう運動うんどう」という信念しんねんがそれぞれの会員かいいんにあったとおもいます。しかも会員かいいんそれぞれがみずからのおもいで活動かつどう参加さんかし、きとしていたとおもいます。
 労協ろうきょう運動うんどう頂点ちょうてんうべき筑波つくば技術ぎじゅつ短大たんだい設立せつりつ反対はんたい運動うんどうや、晴眼せいがんしゃ養成ようせい早稲田わせだしんきゅう学校がっこうへの反対はんたい運動うんどうは、いまでもみみのこ労協ろうきょう歴史れきしの1ページであることはうまでもありません。
 こういった歴史れきしをふまえながら今日きょうをむかえるのですが、ここ10ねんかんして「解散かいさん」という言葉ことばがささやかれ、活動かつどうそのものが停滞ていたいしていったといわざるをません。たとえば雇用こようあつか団体だんたいがいくつか誕生たんじょうしてきましたし、会員かいいんがいわゆる青春せいしゅん時代じだいから、職場しょくば家庭かてい地域ちいきといったところ安定あんていした位置いちにはまってしまったことも、そのひとつの要因よういんになるとおもいます。
 といった労協ろうきょう経過けいかがあるなかで、今年ことし9がつ、10月、11月の定例ていれいかいにおいて、「解散かいさん」か「継続けいぞく」かということが討論とうろんされました。定例ていれいかいといっても、6、7にん事務じむ局員きょくいんがそのまま出席しゅっせきしているという現実げんじつをもっていて、活発かっぱつ討論とうろんにはいたりません。また、「労協ろうきょう通信つうしん紙上しじょう経過けいか説明せつめい会員かいいんからの意見いけんとうびかけもしましたが、まったくとっていいほどはんおうがありませんでした。こういった状況じょうきょうをふまえても労協ろうきょう再生さいせいには程遠ほどとおいものがあるとおもいます。
 再度さいど簡単かんたん経過けいか報告ほうこくし、事務じむきょくからの解散かいさん提起ていきとさせていただきます。なお、手続てつづきとしては年度ねんどまつ総会そうかいにはかり、決定けっていすることになります。

p2
 〜経過けいか
 1.
 8がつ定例ていれいかいにおいて、下半期しもはんき活動かつどうをどうするかにあたって提起ていきをしてかたちつくってみても、参加さんかするひとにながいないことがはなされ、その討論とうろんなかから「解散かいさん」がされました。勿論もちろんのこしてほしいというひともいましたが、のこしてほしいというおねが調ちょうでは、労協ろうきょううごかないとの反論はんろんもあって、9月へし、同時どうじ通信つうしんをもって会員かいいんうということが確認かくにんされました。
 2.
 9、10月の定例ていれいかいにおいても、活発かっぱつ意見いけん交換こうかんはなされず、解散かいさん賛成さんせいがわと、のこしてほしいという存続そんぞくがわとにかれたままとなり、最終さいしゅう結論けつろんを11月の定例ていれいかいおこなうことを確認かくにんしました。
 3.
 11月の定例ていれいかいでも2つの対立たいりつした意見いけんはありましたが、だらだらとこのままつづけることをけ、解散かいさん決定けっていし、機関きかん障害しょうがい地平ちへい誌上しじょう事務じむきょく提案ていあんするということがまりました。
 〜おも解散かいさん理由りゆう
 1.
 事務じむきょくになじんがいないこと。
 2.
 まちづくりという活動かつどう以外いがい独自どくじ課題かだいをもって(たとえばさん療)、活動かつどうすることがなかなかむずかしい。
 3.
 会員かいいんそれぞれがきるっていて、労協ろうきょうというのもとに結集けっしゅうすることが不可能ふかのうになってきていること。
 4.
 労協ろうきょう独自どくじせいてなくなり、そのろうだん役目やくめわったとおもえること。
 以上いじょう経過けいか理由りゆうにもとづいて、事務じむてき作業さぎょうふくめてうごいていくことになりました。総会そうかい日程にっていとうって通信つうしんでご連絡れんらくさせていただきますが、おおくの会員かいいん参加さんかるために年度ねんどまつのスケジュールにくわえて、是非ぜひ活発かっぱつ審議しんぎをよろしくおねがいします。

p3
 労協ろうきょう存続そんぞくかんする提起ていき
 もり登美江とみえ

 1このあいだ経過けいか
 労協ろうきょうでは、あきになると年度ねんどまつ交流こうりゅう大会たいかい準備じゅんびはいります。わたし会員かいいんになったのは9ねんまえあきでした。そのときは「暫定ざんてい労協ろうきょう」というかたち存続そんぞく問題もんだい論議ろんぎされていました。そして、つぎとしはるから「再生さいせい労協ろうきょう」として活動かつどうつづくことになりました。それから8ねんあきからふゆにかけてのおも議題ぎだいとして毎年まいとしかなら解散かいさん存続そんぞくかがわれてきました。としかさねるにれて深刻しんこく課題かだいになっていったとおもわれます。
 今年ことしも9がつ10がつ11月と定例ていれいかい主要しゅよう議題ぎだいげられました。そのなかでは「にながいるならつづけてもいい」「解散かいさんはしないほうがいい」といった消極しょうきょくてき存続そんぞくこえもありましたが、独自どくじ課題かだいもなく、積極せっきょくてき労働ろうどう問題もんだいんでいるわけでもないところからこの名称めいしょうきずる意味いみまったくないのではないか、現在げんざいそれぞれがかかわっている活動かつどう自由じゆう発展はってんさせていくことが有意義ゆういぎなのではないか、ごく一部いちぶかぎられた人数にんずうでの活動かつどう限界げんかいなどが指摘してきされ、解散かいさん支持しじする意見いけん主流しゅりゅうとなりました。定例ていれいかいといっても事務じむきょく一人ひとりにん会員かいいんえる程度ていどというさびしい状況じょうきょうつづなかで、通信つうしんをもって会員かいいん意見いけんうこともしましたが、残念ざんねんながら反応はんのうられませんでした。「いつものことだ」とれてしまって重要じゅうようされなかったのか、通信つうしんまれなかったのか、いずれにしても事務じむきょくとしては結論けつろんさなければなりませんでした。そして、事務じむきょくからの解散かいさん提起ていきということになったわけです。
 わたし自身じしん事務じむきょく一人ひとりとして解散かいさん支持しじしてきました。わたしなかでの一番いちばん理由りゆうはなにをいかけても会員かいいんからの反応はんのうがない

p4
こと、参加さんかのないことでした。解散かいさん最初さいしょ主張しゅちょうしたわたしですが、いつもまよいがありました。ほんとうの意味いみでのまちづくりをかんがえるあつまりをつくりたいというおもいのなかでも、これまでの活動かつどう出会であった仲間なかまをどのようにすれば大事だいじにできるかとかんがつづけました。そして、会員かいいん反応はんのうがないという理由りゆう解散かいさんしかないと主張しゅちょうしていたわたし自身じしん労協ろうきょうつく立場たちばでなにもしてこなかったことにがついたのです。11月の定例ていれいかい機関きかんに「解散かいさん提起ていき」をせるという確認かくにんをしたにもかかわらず、12月の事務じむきょく会議かいぎにおいて再度さいどこの問題もんだい討議とうぎしてしいと提案ていあんしました。しかし、すで決定けっていしたことであり、事務じむきょくとしてはみとめられないという結論けつろんでした。ただし、事務じむきょくはなれて個人こじんとしての意見いけん機関きかんせる機会きかいをいただきました。事務じむきょく混乱こんらんまねいてしまったことをこの誌面しめんをおりしておもうげます。
 2存続そんぞく提起ていきする理由りゆう
 まえにもいたようにわたし自身じしんろう協会きょうかいいんとしての責任せきにんをもって、中心ちゅうしんになって労協ろうきょう活動かつどうすすめていこうと決意けついしました。になとしての意見いけんかれなかったにしても、存続そんぞくのぞこえがあったことは事実じじつです。様々さまざま立場たちば人達ひとたち参加さんかしやすいあるいは、興味きょうみてるような活動かつどうかたすすかたさぐりながら前進ぜんしんすることで、これまでとはちが労協ろうきょうまれかわることができるとかんがえます。解散かいさんはいつでもできます。一人ひとり個人こじんがやっていきたい、やりたくないというようなことで運動うんどう団体だんたい存在そんざいしたり、解散かいさんったりするものではないのかもしれませんが、つづけようという会員かいいん存在そんざいするかぎりはつづけてもいいのではないでしょうか。存続そんぞくのぞこえがあるのはたしかなのですから。
 3これからの労協ろうきょうをどうつくっていくのか

p5
 発足ほっそく当初とうしょから20年余ねんよ経過けいかした現在げんざい障害しょうがいしゃ活動かつどうかたも、なか状況じょうきょうおおきくわってきました。そのような変化へんか把握はあくしながら、わたしたちはなにができるのか、なにをすべきなのかを見極みきわめていかなければなりません。
 団体だんたいうごきも情報じょうほうとしてれながら、まず、視覚しかく障害しょうがいしゃとしての独自どくじ課題かだいしぼむことがいま大事だいじだとおもわれます。会員かいいんいちにん一人ひとり活動かつどう内容ないよう把握はあくできるように、だれもがはなしやすい会議かいぎにします。会議かいぎ行動こうどうへの参加さんか方法ほうほうも、できるだけそれぞれの事情じじょうわせてうごけるようにかんがえたいとおもいます。
 具体ぐたいてきには、まちづくりのひろげていくための主軸しゅじくづくり、さん療をはじめ障害しょうがいしゃはたらきやすい職場しょくばづくり、交流こうりゅうふかまながらの仲間なかまづくり。これらを基本きほんてていくのがよいのではないかとかんがえています。
 存続そんぞく提起ていきにしてはたよりないとおもわれるかもしれません。それでも、解散かいさん存続そんぞくかという重大じゅうだい問題もんだいをもう一度いちどみなさん一人ひとりいちにんいたいとおもいます。労協ろうきょう歴史れきしらわれる必要ひつようはないとおもいますが、その22ねんあゆみとってみまゆことも大事だいじときのようながします。そして、そのかさねのうえわたしたちがなにをかさわせることができるかをかんがえてみませんか?障害しょうがいしゃ運動うんどうになっているひとからいわせれば、わたし提起ていきなどは提起ていきではないかもしれません。それでも、わたし労協ろうきょうあたらしくまれわらせたいとおもっています。ぜひ、みなさんのご意見いけんをください。おちしています。
 もっと具体ぐたいてき方針ほうしんをここにくべきだったでしょうか。

p6
 労協ろうきょうてき気分きぶん
 政策せいさく研究けんきゅう集会しゅうかいえて
 奥山おくやま幸博ゆきひろ

 だい3かい障害しょうがいしゃ政策せいさく研究けんきゅう全国ぜんこく集会しゅうかいが12月6くち(土)、7にち(日)にちの2日間にちかん東京とうきょうにおいて開催かいさいされた。1にち全体ぜんたいかい御茶ノ水おちゃのみず全電通ぜんでんつう会館かいかんホール、2にち分科ぶんかかい代々木よよぎのオリンピック記念きねん青少年せいしょうねんセンターを会場かいじょうおこなわれた。今回こんかい障害しょうがい当事とうじしゃ中心ちゅうしん全国ぜんこく各地かくちから400めい参加さんか労協ろうきょうからも10めい参加さんかし、「交通こうつう・まちづくり分科ぶんかかい」ではえきホームからの転落てんらく事故じこ実態じったい再発さいはつ防止ぼうしけた整備せいびのありかたについてレポート報告ほうこくおこなった。
 集会しゅうかいテーマは「もっと自由じゆうにもっとあたりまえに地域ちいきなかで〜えよう障害しょうがいしゃ政策せいさくわたしたちの提言ていげんで〜」。6にち午前ごぜんちゅう主催しゅさいしゃ来賓らいひん(東京とうきょう福祉ふくしきょく障害しょうがい福祉ふくし部長ぶちょう連合れんごう中央ちゅうおう市民しみんボランティア局長きょくちょう)の挨拶あいさつつづいて基調きちょう提起ていき(実行じっこう委員いいんかい事務じむきょくメンバーである奥山おくやま担当たんとう)。内容ないようとしては、研究けんきゅう集会しゅうかい経過けいか政治せいじ経済けいざい状況じょうきょう障害しょうがいしゃ関連かんれん施策しさく動向どうこう、1999ねん中心ちゅうしんとした今後こんごのとりくむべき課題かだいなどについて提起ていきした。
 午後ごごからの記念きねん講演こうえんは、テーマ「障害しょうがいしゃ権利けんり法制ほうせい確立かくりつをめざして〜戦後せんご50ねん障害しょうがいしゃ施策しさく検証けんしょうあらたなパラダイムを構築こうちくするために〜」、講師こうしねがいせい短期大学たんきだいがく杉本すぎもとあきらさん。福祉ふくし医療いりょう関係かんけいふくめて、この社会しゃかい様々さまざま分野ぶんやでの不正ふせい腐敗ふはいあきらかになってきており、為政者いせいしゃがわもまたあらたなパラダイムを模索もさくせざるをない状況じょうきょうになっていると指摘してき。このあいだ障害しょうがいしゃ運動うんどうについてつぎようべている。「みずからのきる権利けんり主張しゅちょうとともに、ひとひととしてひとらしくきられる社会しゃかい実現じつげんのために苦闘くとうかさねられてきた。しかし相対そうたいてきには社会しゃかいのマイノリティ集団しゅうだんである障害しょうがいしゃが、その力量りきりょう社会しゃかい環境かんきょうのゆえにこれまでの苦闘くとうむくいられていないことも否定ひていしえない現実げんじつである」。テーマにもあるように戦後せんご50ねんを4け、それぞれの時代じだい特徴とくちょうてき施策しさくと、それに対峙たいじしてきた障害しょうがいしゃ運動うんどう姿すがたかさねるとゆう興味深きょうみぶかいおはなしがされた。T945ねん〜1959ねん(社会しゃかい福祉ふくし定礎ていそ」)、U

p7
は1960ねん〜1973ねん(社会しゃかい福祉ふくし拡大かくだい)、Vは1974ねん〜1990ねん(社会しゃかい福祉ふくしてんがた)、Wは1991ねん〜(地域ちいき福祉ふくしがた自治じちがた社会しゃかい福祉ふくしへの展開てんかい)としている。(この区分くぶん古川ふるかわたかしじゅんちょ戦後せんご福祉ふくし改革かいかく」による)。このはなしのなかで、「厚生こうせい白書はくしょ」にみられるくにの「障害しょうがいしゃかん」が大変たいへん印象いんしょうてきだったのでいくつか紹介しょうかいしてみる。
 1951年版ねんばん厚生こうせい白書はくしょ(はじめて刊行かんこうされたもの)。「身体しんたい障害しょうがい人間にんげんをおそう不幸ふこうなかでもきわめて深刻しんこくなもののひとつである。それは、人間にんげん各種かくしゅ能力のうりょく欠損けっそんをもたらすものであって、とく人間にんげん労働ろうどう能力のうりょくうばうことによって生活せいかつやぶじょうおとしいれることがおおい。のみならず、それは本人ほんにん心理しんりにも一般いっぱん世人せじん心理しんりにもつよ影響えいきょうして、身体しんたい障害しょうがいしゃ正常せいじょう人間にんげんかい関係かんけい建設けんせつすることが困難こんなんになり、社会しゃかい生活せいかつから隔離かくりされるおそれがなしとしない」、「精神せいしん障害しょうがいがあれば、現代げんだい複雑ふくざつ社会しゃかい生活せいかつ適応てきおうしえないのみならず、人生じんせい落伍らくごしゃとしてのこされ、その妻子さいし家族かぞく不幸ふこうおとしいれ、悲嘆ひたんにくれさせることとなる。またそれがこうずれば、社会しゃかい安寧あんねい危害きがいおよぼすことにもなるであろう。(以下いかりゃく)」。つぎに1966年版ねんばん。「これらの精神せいしん薄弱はくじゃくしゃは、現在げんざい医学いがくではほとんど治療ちりょう不可能ふかのうであるが、しかし、精神せいしん薄弱はくじゃくしゃ本人ほんにん不幸ふこうはもちろん、その家族かぞくのこうむる苦痛くつうにはきわめて深刻しんこくなものがあるし、優生ゆうせいがくてき見地けんちからみても、いたずらに放置ほうちすることはこのましくない。しかも、一部いちぶ精神せいしん薄弱はくじゃくしゃ治安ちあんじょうからみても危険きけん存在そんざいであり、また売春ばいしゅん婦女子ふじょしなどの相当そうとうすう精神せいしん薄弱はくじゃくしゃであって、社会しゃかい秩序ちつじょまもじょうでもなんらかの措置そち必要ひつようとする。しかも、医学いがくてき治療ちりょうがほとんど不可能ふかのう状態じょうたいにあるといっても、早期そうき発見はっけん教育きょういくあるいは補導ほどうおこなわれさえずれば社会しゃかいてき適応てきおうせい相当そうとう程度ていどまでちうるものである」。
 これらはすくなくとも戦後せんごのものである。こうした障害しょうがいしゃかんもとづいて障害しょうがいしゃ施策しさくすすめられてきたのである。90年代ねんだい後半こうはん今日きょう状況じょうきょうはどうであろうか。障害しょうがいしゃ基本きほんほう制定せいていされ、プランもしめされた。ノーマライゼーションが強調きょうちょうされている。しかし、現実げんじつはどうであろうか。くにの、社会しゃかいの、そして人々ひとびと障害しょうがいしゃかん意識いしき本当ほんとうかわったのであろうか。まった変化へんかしていないとはおもわないが、っこのところかわっていない、そんなおもいもいだかざるをない差別さべつ権利けんり侵害しんがいがあまりにもおおい。時間じかん関係かんけい杉本すぎもとさんのおはなしも十分じゅうぶんくことができなかったが、今後こんご施策しさくのありかた、「パラダイム」を検討けんとうしていくうえで、杉本すぎもとさんから提供ていきょうされた年表ねんぴょうなども参考さんこうにしながら継続けいぞくした議論ぎろんができればとおもう。

p8
 講演こうえんのちは、2にちおこなわれる分科ぶんかかいについて、担当たんとうしゃからの問題もんだい提起ていきおこなった。
 今年ことし分科ぶんかかいつぎの5つ。「自立じりつ支援しえん」、「教育きょういく」、「労働ろうどう」、「交通こうつう・まちづくり」、「権利けんり擁護ようご」。わたしは「教育きょういく」に録音ろくおん担当たんとうとして参加さんか。'79養護ようご学校がっこう義務ぎむから18ねん経過けいかした「障害しょうがい教育きょういく」の現状げんじょう今後こんごたたかいについて討論とうろんされた。詳細しょうさい報告ほうこく省略しょうりゃくするが、一言ひとことえば「個別こべつ闘争とうそうとも法律ほうりつ制度せいど変革へんかくを」ということになるだろう。「原則げんそく分離ぶんり特例とくれい統合とうごう」のかべやぶっていくためには制度せいど根幹こんかんである学校がっこう教育きょういくほうなどの改正かいせい不可欠ふかけつである。ここでもまた、教育きょういくにおけるあらたなパラダイムがもとめられている。
 集会しゅうかい全体ぜんたいとおしてつよかんじたことは、政策せいさく研究けんきゅう提言ていげん活動かつどうのキーワードは、ふるくてあたらしい「差別さべつ禁止きんし権利けんり確立かくりつ」ということになるのではないかということであった。
 労協ろうきょう今回こんかい解散かいさん提起ていきしている。わたし個人こじんとしてはこのことを積極せっきょくてき意味合いみあいでけとめ、今後こんごともおおくの障害しょうがい仲間なかまとともに政策せいさく研究けんきゅう集会しゅうかいをはじめとする様々さまざま運動うんどうかかわっていきたいとかんがえている。

p9
 「えら権利けんり
 選択せんたくする自由じゆうすくない日本にっぽん社会しゃかい学校がっこう

 視覚しかく聴覚ちょうかく障害しょうがい 斎藤さいとう昌久まさひさ(私立しりつ高校こうこう教員きょういん)

 昨日きのう障害しょうがいしゃ政策せいさく研究けんきゅう全国ぜんこく集会しゅうかい教育きょういく分科ぶんかかい出席しゅっせきしてかえったばかりで、わたし自身じしんなか人権じんけん感覚かんかくがかなりホットにえていて、いままでかんがえてきたことをなにかの機会きかいさなければならないとおもっていた問題もんだいでもあるので、ここにかなり整理せいり出来できていないかたちになるかもしれないが、きたいとおもいます。
 わたしは、小学校しょうがっこうときからのつよい近視きんし眼鏡めがねをかけていました。それでも矯正きょうせい視力しりょくは0.3がせいぜいで、教室きょうしつ一番いちばんまえせきでも黒板こくばんえませんでした。小学校しょうがっこう3ねんわりのときにクラスえがあり、それまで3年間ねんかんならっていた担任たんにんではなく、あたらしく赴任ふにんしてきたおんな教諭きょうゆのクラスにわりましたが、まえ担任たんにんわたし弱視じゃくし心配しんぱいし、交渉こうしょうしてくれたおかげで4年間ねんかんおな先生せんせいならうことが出来できたのですが、このときおさないながら、どうして自分じぶん先生せんせいえらべないのだろうかと疑問ぎもんったおぼえがあります。
 中学校ちゅうがっこうは4年間ねんかん担任たんにんをしてくださった先生せんせいすすめで私立しりつ学校がっこうすすみました。以来いらい高校こうこう大学だいがく教員きょういんとしての仕事しごと私立しりつ学校がっこう一貫いっかんしてえらんできたのでいまでも役所やくしょ人間にんげんあまきではありません。
 本題ほんだいもどりますが、政策せいさく研究けんきゅう集会しゅうかい問題もんだいになったのは、障害しょうがい普通ふつう学級がっきゅうになかなかかせてもらえない。たとえ教育きょういく委員いいんかい母親ははおや要求ようきゅうみとめて普通ふつう学級がっきゅうかようことを「承認しょうにん」したとしても、母親ははおや一緒いっしょ学校がっこうくか介助かいじょしゃ常時じょうじつけるなどの条件じょうけんをのまなければじんれようとしない。これは憲法けんぽうの「教育きょういく機会きかい均等きんとう」の精神せいしん違反いはんするばかりか、憲法けんぽう形骸けいがいし、国民こくみん侮辱ぶじょくする行為こういであるとおもいます。
 青木あおきゆうは「障碍しょうがいきる意味いみ」(岩波書店いわなみしょてん)のなかで「幼児ようじ集団しゅうだんなか障碍しょうがい子供こどもたちが『そこにいる』ということがどれほど大事だいじなことなのかは、どもだち自身じしんわたし

p10
たちきょういく責任せきにんものかえおしえてくれた。」とべて子供こどもたちのゆたかな発想はっそうで「ともあそび、まなぶ」事例じれい紹介しょうかいし、インタグレーション(統合とうごう)の教育きょういくのすばらしさを紹介しょうかいしています。
 障害しょうがいとそのおやが、他人たにんちがっている「人間にんげん」を特殊とくしゅ教育きょういくかせる以外いがいみちはないとはじめからあきらめなければならないような社会しゃかい、ある特定とくていみちしつけるいま日本にっぽん社会しゃかいは、いわゆる「健常けんじょうしゃ」にも個人こじんかたしつけてじない社会しゃかいといえるだろう。とく学校がっこうは、どんなどもにとっても「えら権利けんり行使こうしできない、窮屈きゅうくつきにくい社会しゃかいといえるだろう。
 昨年さくねん8がつわたしたちは「ノーマライゼーション教育きょういくネットワーク」を発足ほっそくさせたが、ここにつど教師きょうしたちは障害しょうがいちながら教壇きょうだんつづけたいとねがって、様々さまざま運動うんどうたたかいをつづけてのこってきたひとたちです。しかし、新入しんにゅう会員かいいんなかには、障害しょうがい同様どうように、その障碍しょうがい理由りゆう自分じぶんはたら学校がっこうえらべないひとおおくいます。残念ざんねんなのは教師きょうしとしての権利けんりどもに責任せきにんつことを教師きょうし権利けんりとして教育きょういく委員いいんかいうったえるひとすくないことです。わたし自身じしんも3ねんまえから「教壇きょうだん復帰ふっき」を教師きょうし基本きほんてき権利けんりとして職場しょくば同僚どうりょううったはじめたばかりですが、日本にっぽん学校がっこう社会しゃかいかべあつちふさがっています。
 わたしたち、障害しょうがい教師きょうし教育きょういく現場げんばはたら場合ばあい障害しょうがい種別しゅべつおうじた人的じんてき物的ぶってき補助ほじょ必要ひつようとします。視覚しかく障害しょうがい教師きょうしであれば、音声おんせいワープロ、点字てんじプリンター、拡大かくだい読書どくしょなどの教科書きょうかしょみとり器具きぐ教科書きょうかしょのテープをしてくれるボランティアや勤務きんむ軽減けいげんのための人的じんてき配置はいち要求ようきゅうしなければなりません。そうした条件じょうけん整備せいびがなければやっていけないことを「教師きょうし適格てきかく」な資質ししつとして退職たいしょくするように管理かんりしょくから強要きょうようされた先生せんせい多数たすういます。学校がっこう教育きょういく国際こくさい云々うんぬんされて7,8ねんたちますが、その面前めんぜんにあった「国連こくれん障害しょうがいしゃの10ねん」はどこかとおくにいてけぼりにされて、教育きょういく現場げんばは、共生きょうせいになっていません。教育きょういく現場げんばがいかに共生きょうせいになりえていないかをしめ会話かいわ紹介しょうかいします。
 A:数学すうがくのD先生せんせい生徒せいとさわがしくて授業じゅぎょう成立せいりつしていないって?」
 B:自信じしんがないんだよ、授業じゅぎょうに。よくこたえを間違まちがえるって、生徒せいとってるらしい。
 A:こまっているのはかればかりでないでしょう。担任たんにん相談そうだんしたのかな。

p11
 B:みんないそがしくて、かまってられないからね。Aさん、健常けんじょうしゃのDさんだつてそうなんだから、このまえのAさんの授業じゅぎょうだってわたしとC先生せんせいていなかったら、授業じゅぎょう成立せいりつしていたかどうかかりませんよ。(校正こうせいしゃちゅう:「Aさん、健常けんじょうしゃかりませんよ」下線かせん
 もうひとつよくかれる会話かいわれい
 A:最近さいきんなが時間じかん教材きょうざい研究けんきゅうしているとつかれて、頭痛ずつうがしてね。
 B:視覚しかく障害しょうがいしゃなのだから、あまりつかれるほど仕事しごとやってはいけないよ。
 A:拡大かくだい文字もじでもむのに時間じかんがかかるんですよ。だから、組合くみあい分会ぶんかい決議けつぎをして「時間じかんげん」などの障害しょうがい保障ほしょう校長こうちょう要求ようきゅうしてほしい。
 B:それは無理むりだね。みんなもおな要求ようきゅうもっているんだよ。くんだけ障害しょうがい保障ほしょうという理由りゆう時間じかんげんなんてできないよ。そんな要求ようきゅうすると、孤立こりつするよ。(校正こうせいしゃちゅう:「みんなもおな要求ようきゅう孤立こりつするよ」下線かせん障害しょうがい保障ほしょうなんていま学校がっこう財政ざいせいなかでできっこないだろう?  
 まえ会話かいわでは、障害しょうがいしゃをいつもひとつの仮定かてい条件じょうけんをつけてていること。自分じぶんをもふくめて同僚どうりょう教師きょうし集団しゅうだん一員いちいんとしてていないこと。会話かいわかることは、障害しょうがいしゃ要求ようきゅうが、みんなの要求ようきゅうおなじと認識にんしきしていながら、障害しょうがい保障ほしょうとしての障害しょうがいしゃ要求ようきゅうみとめていないというてん差別さべつてきです。
 わたしうえのような会話かいわれいしたのは、はじめにべた障害しょうがいやそのおやたちが、かれらの学校がっこうえらべない、行政ぎょうせいがわ学校がっこうがわえらばせない、れようとしないことと関係かんけいがあるのです。日本にっぽん学校がっこう教育きょういく憲法けんぽう教育きょういく基本きほんほう障害しょうがいしゃ基本きほんほうに「うたわれている」人間にんげん尊厳そんげん現実げんじつ世界せかいなか検証けんしょうすることなく、障害しょうがいしゃつね特定とくてい条件じょうけん仮定かていなか規制きせいしてきたのです。一方いっぽう日本にっぽん一般いっぱん社会しゃかい行政ぎょうせいがわのこうした姿勢しせいたいして批判ひはんりょく育成いくせいしてきたとはえません。わたしたちは、欧米おうべい、アジア諸国しょこく日本にっぽん規制きせい緩和かんわ要求ようきゅうしていることにたいして、それが勝手かってないいぶんまえに、わたしたちも歴史れきしてきに「規制きせい」を基盤きばんとした学校がっこう教育きょういくなかで、「えら権利けんり」をうばわれてきたのだということをさい認識にんしきしなければならいとおもいました。
 「政策せいさく研究けんきゅう全国ぜんこく集会しゅうかい」の論議ろんぎいて整理せいりのつかないうちに、おもいつくままにべてましたが、「えらぶ」こと、またひとたちのちがった選択せんたくれることの大切たいせつさを今後こんご自分じぶん自身じしんなか反芻はんすうし、うったえていきたいとおもいます。

p12
 さん日記にっき(3)
 的野まとのせきろう
 病院びょういん合理ごうりにあってくびになって、さん療での開業かいぎょうってからまる3ねん月日つきひぎてしまった。友人ゆうじんの、やっぱり開業かいぎょうしているかれが「3ねん辛抱しんぼう」ということをいってくれたことはげみになって、やっとここまできた。
 地域ちいきでのビラまきはかく家々いえいえに1かいえきで2ほどまいただけで、くちコミに全面ぜんめんてきたよって今日きょうまできた。最初さいしょから看板かんばんをださずに治療ちりょうしつをやってきたりには、くちコミの成果せいか偉大いだいなものがある。特別とくべつ特徴とくちょうてきな、個性こせいてき治療ちりょう方法ほうほう専門せんもん分野ぶんやはないが、「治療ちりょうしつ通信つうしん」を患者かんじゃ友人ゆうじん知人ちじんつづけ、治療ちりょうしつのことや地域ちいきのことやぼくざまつたえることがすこしはちからになってくれたのであろう。バックナンバー18、となってその発送はっそう作業さぎょう大変たいへんになっているのはうれしい悲鳴ひめいかもしれない。
 もう1つ、3年間ねんかん治療ちりょうをサービス期間きかんとしててい料金りょうきんにしてきたことが、それなりの患者かんじゃすう維持いじするものになったにちがいない。しかし、てい料金りょうきんにしたことが治療ちりょうしつ収入しゅうにゅうにどうはねかえってくるか、さらには、ある程度ていど収入しゅうにゅうのためにはたらくとしたらぼく体力たいりょくとの勝負しょうぶにもなる。やすければくるという発想はっそう論理ろんりがなりたたないこともある。たかほう信用しんようてるという論理ろんり片方かたがたにある。そういう観点かんてんからいえば、ぼく患者かんじゃ子育こそだてをえた主婦しゅふやパートやしょうぜに女性じょせいおおいことがうなずける。ぼくなかには、治療ちりょうくに国民こくみん医療いりょうとして全額ぜんがく負担ふたんすべきとおもっている。ということは、保険ほけん対象たいしょうになるべきということである。
 開業かいぎょう当初とうしょはもっと勉強べんきょうをしようというおもいがつよくあったのだが、患者かんじゃ定着ていちゃくしてくるにしたがって、その気持きもちがうすれてし

p13
まっているのにがつく。あたらしい患者かんじゃ獲得かくとくするには新天地しんてんちのビラまきも必要ひつようだが、やはり得意とくいとする治療ちりょうやしていく必要ひつようもある。くちコミのつよさはこんな病気びょうきなおったということがつたわることにある。いまのところ特別とくべつへまをしたおぼえはないが(ぼくらないところではぼろくそだったりして)勉強べんきょうをするにしたことはない。それで自信じしん過剰かじょう天狗てんぐにはなりたくないが。
 治療ちりょうしつきるということを障害しょうがいしゃざま地域ちいきすというテーマもかかえてきたつもりだが、このテーマはなかなかむずかしい。ビラをまくことも患者かんじゃ友人ゆうじんと、地域ちいき感謝かんしゃさいとして無料むりょうマッサージ体験たいけん点字てんじ紹介しょうかいをドッキングさせてイベントをんだり、健康けんこうについての勉強べんきょうかい治療ちりょうしつひらいたり、とあのこのとやってみるのだが、治療ちりょうけるだけの患者かんじゃ治療ちりょうおこなう先生せんせいという関係かんけいせいはなかなかやぶれない。しかし、「治療ちりょうしつ通信つうしん」にたいする興味きょうみ色々いろいろあって、たとえば、同封どうふう同文どうぶん点字てんじのことや障害しょうがいしゃ問題もんだい内容ないようとしてげていることやぼく自身じしんざまいていることなどに興味きょうみ反応はんのうがあったことはこのテーマをもっともっとしていく、あきらめないでいく必要ひつようがあることをうかがわせる。それにしても、地域ちいきなか障害しょうがいしゃとしてきるということはなかなかむずかしいものだ。
 もう1つ、ぼく努力どりょくしていないこともあるが、さん療師とのつながりがまるっきりこの3年間ねんかんなかではてなかったということがになる。近所きんじょ不動産ふどうさんには整体せいたい開業かいぎょう美容びようマッサージの開設かいせつのための部屋へやさがしがけっこうあるというはなし最近さいきんいた。看板かんばんしていないので、このあたりかれらにとっていいポイントになっているのかもしれない。そのためか20〜30Mうら整体せいたい看板かんばんした。視覚しかく障害しょうがいどう業者ぎょうしゃとつながっていれば、情報じょうほう交換こうかん地域ちいき戦略せんりゃくもそれなりにできてくるだろうが、

p14
ほんとに残念ざんねんながらつながっていない。できれば交流こうりゅう情報じょうほう交換こうかんふく視覚しかく障害しょうがいしゃさん関係かんけいネットワークをつくれればとおもう。技術ぎじゅつ向上こうじょうまえとしたあつまりはあるようだが、障害しょうがいしゃざま視点してんとしてのあつまりはないとおもう。勿論もちろん障害しょうがいしゃ差別さべつたいするいかりもかかえたあつまりである。
 おもいつくままに3年間ねんかん開業かいぎょうかえってみた。一人ひとり職場しょくば孤立こりつかん相変あいかわらずあるが、れのなか麻痺まひしてきている自分じぶん再度さいどむちちたい。
 最後さいごに、さん日記にっきになるかどうかからないが、多分たぶん僕達ぼくたち開業かいぎょう人達ひとたち関係かんけいのある2つの事柄ことがら。1つは老人ろうじん医療いりょう保険ほけん、もう1つは介護かいご保険ほけんのこと。原稿げんこう字数じすう制限せいげんがあるので、簡単かんたんれておく。前者ぜんしゃ病院びょういんでの支払しはらいがく1020えんが500えんが4かいくすり検査けんさはそれにプラスとなりました。僕達ぼくたち開業かいぎょうしゃにとって若干じゃっかんのプラスに、つまり、病院びょういんくことよりおなきんはらうなら治療ちりょうしつへとはならないだろうか。毎回まいかいなんひゃくえん接骨せっこついんかよひともいるようだ。なぜか接骨せっこついんほうがレベルがうえにみられている。後者こうしゃ介護かいご保険ほけんではまだまだ整備せいびしなければならないことだらけなのに、見切みき発車はっしゃしてしまった。それに、高齢こうれいしゃ障害しょうがいしゃたいする重大じゅうだい問題もんだいりとなっている。この分野ぶんや治療ちりょうしつのつながりはリハビリという訪問ほうもんする看護かんごやヘルパーにわっていることもかんがえなければならない。またの機会きかいれたいとおもうが、よう注意ちゅういの2てんだとおもう。

p15
 ちないホームヘの道程どうてい
 みや昭夫あきお

 「『ちる』と「ぶつかる』」
 「ちる」と「ぶつかる」は一人ひとりある視覚しかく障害しょうがいしゃにとって、主要しゅような2つの恐怖きょうふではないだろうか?「ぶつかる」のなか最悪さいあくなのは多分たぶんうごいているくるまだろう。そして、「ちる」のなか最悪さいあくなのがおそらくホームからの転落てんらくだ。
 我々われわれ日頃ひごろたよりにしている「しろい」つえ前方ぜんぽう道路どうろもの確認かくにんすることのできる大切たいせつ道具どうぐだ。しかし、それだけではない。うごいているくるまにとってしろつえは「若葉わかばマーク」よりも「紅葉こうようマーク」よりもつよ法的ほうてき強制きょうせいりょくともな注意ちゅうい信号しんごうなのだ。
 だが、このしろつえ一旦いったんホームから線路せんろ転落てんらくした場合ばあいにはなんのちからにもなってくれない。とにかくホームからちてはいけないのだ。
 「点字てんじブロックの可能かのうせい限界げんかい
 そうした我々われわれに「つよ味方みかた」として登場とうじょうしたのが「点字てんじブロック」である。点字てんじブロックとは、ホームのはしから80cm前後ぜんこう内側うちがわあしさきつえ確認かくにんできるブロックをくことによって、視覚しかく障害しょうがいしゃのホームからの転落てんらく防止ぼうししようとするものだ。70年代ねんだいから80年代ねんだいにかけてホームから転落てんらくした二人ふたり視覚しかく障害しょうがいしゃまさをもって(一人ひとり死亡しぼう一人ひとり重傷じゅうしょう)国鉄こくてつ責任せきにん裁判さいばんこすことによって(裁判さいばん自体じたい最終さいしゅうてき勝利しょうりちとれなかったが)点字てんじブロックは急速きゅうそくえきホームを中心ちゅうしん普及ふきゅうしていった。現在げんざいではホームのはしの「警告けいこくブロック」だけではなく、階段かいだんやエスカレーター、改札かいさつこうなどへみちびく「誘導ゆうどうブ  

p16
ロック」もえて、点字てんじブロックの情報じょうほうとしての可能かのうせいおおきくひろがろうとしている。
 「それでも事故じこらないのはなぜ?」
 94ねん12月から96ねん2がつまでの1ねん3ケ月かげつあまりのあいだに、関西かんさい地区ちくだけでも近鉄きんてつ大阪おおさか市営しえい地下鉄ちかてつ・JR東海道とうかいどうせんなどで7けん転落てんらく事故じこがあり、うち3にん死亡しぼうしている。そのにも東海道とうかいどうせん小田原おだわらえきでの転落てんらく事故じこなど、事故じこ一向いっこう様子ようすがない。わたし個人こじんてき印象いんしょうではむしろまえよりもえているようながする。すくなくとも「点字てんじ毎日まいにち」の紙上しじょうでみるかぎりそんながする。なぜだろう。点字てんじブロックはやくにたないのだろうか?わたしにはそんなことをいう根拠こんきょ勇気ゆうきもない。単独たんどく歩行ほこうをする視覚しかく障害しょうがいしゃえたのだろうか?歩行ほこう訓練くんれん問題もんだいがあるのだろうか?いまのところなんともいえない。多分たぶんいくつかの原因げんいんかさなっているのだろう。
 「誘導ゆうどう警告けいこくのはざま」
 わたし自身じしんはそうした原因げんいんの1つに「警告けいこくブロック」と「誘導ゆうどうブロック」の誤認ごにんというのがあるのではないかとおもっている。以前いぜんはホームじょうでブロックをみつければ、それはすなわちホームのはしの「警告けいこくブロック」だった。しかし、いまではまえにもれたように階段かいだんやエスカレーターや改札かいさつこうなどへ「誘導ゆうどう」するブロックも同時どうじ存在そんざいする。たしかにそれによって情報じょうほうりょうえた。しかし、それは錯覚さっかくする可能かのうせいえたということでもある。わたしは「誘導ゆうどうブロックは必要ひつようない」とはいわないが、すくなくともホームのうえではできるだけすくないほうがいいとおもっている。階段かいだんに落

p17
ちるよりは線路せんろちるほうあきらかに危険きけんなのだから。問題もんだい警告けいこくブロックと誘導ゆうどうブロックが瞬時しゅんじ区別くべつできるものである必要ひつようがあるということだ。
 「より完全かんぜんなホームしがらみ設置せっちさせるために」
 わたし自身じしんはこれまで4かいホームから転落てんらくしたことがある。点字てんじブロックは改良かいりょうし、まさしくかなければならない。しかし、それでもなお転落てんらく事故じこ可能かのうせいはかなりのこる。だから、わたしたち要求ようきゅう最終さいしゅうてきにはホームドアやホームしがらみ、つまり、ちないホームだということになる。なお、実験じっけんこころみの段階だんかいではあるが、ホームしがらみ実用じつようかってわずかながらうごきだしている。東急とうきゅう池上線いけがみせんをはじめ、都営地下鉄とえいちかてつ三田みたせんでも4がつから8がつにかけて3つのえき実験じっけんおこなわれた。来年らいねん1がつには運輸省うんゆしょうがJRの技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ使つかって、車椅子くるまいす使用しようしゃ視覚しかく障害しょうがいしゃ対象たいしょうとする実験じっけんをしようとしている。不完全ふかんぜんなホームしがらみあらたな危険きけんつくりかねない。みんなでチェックし、よりよいちないホームを目指めざしていこう。

p18
 はりマッサージユニオン みやさま
 拝啓はいけい
 日頃ひごろより都営とえい交通こうつうをご利用りよういただきまことにありがとうございます。
 おわせのありました「巣鴨すがもえき試験しけんかんする調査ちょうさ結果けっか」についてご報告ほうこくさせていただきます。
 1.試験しけんデータの広報こうほうについて
 試験しけんのデータは、けんたいするためのものであるので広報こうほう活動かつどうおこなうことはかんがえておりませんが、おわせがあれば、おこたえできる範囲はんい回答かいとうさせていただきます。
 2.「データがよければ設置せっちするのか」「採用さいようする場合ばあいにはどのような方法ほうほう設置せっちするのか」とのわせについて
 プラットホームのがっているえきでは、しがらみ設置せっちによってプラットホームじょう視界しかいわるくなるので、安全あんぜん確認かくにんむずかしくなり、監視かんしカメラもおおくの台数だいすう必要ひつようとなることがかりました。東京とうきょう交通こうつうきょくとしては、このような結果けっか総合そうごうてき検討けんとうし、つづき、安全あんぜんせいたか方策ほうさく検討けんとうしているところです。
 また、このしがらみとうは、ひとつの路線ろせんのなかのシステムとして検討けんとうしておりますので、採用さいようする場合ばあいは、ぜんえき設置せっちするべきものとかんがえております。
 3.アンケート結果けっか
 別紙べっしのとおりです。
 4.調査ちょうさ実施じっしえき
 巣鴨すがもえきのほか、神保町じんぼうちょうえき白山はくさんえきにおいて、しがらみ設置せっち調査ちょうさおこないました。
 都営とえい交通こうつうについてご意見いけんがございましたら、是非ぜひせくださいますようおねがいいたします。
 今後こんごも、都営とえい交通こうつうにご支援しえん、ご愛顧あいこたまわりますようおねがいいたします。
 敬具けいぐ

 平成へいせい9ねん10がつ22にち
 東京とうきょう交通こうつうきょく経営けいえい企画きかくしつ
 技術ぎじゅつ計画けいかく担当たんとう課長かちょうづけ
 技術ぎじゅつ開発かいはつ担当たんとう係長かかりちょう
 加納かのう卓夫たくお

 総務そうむ客様きゃくさまサービス
 サービス推進すいしん係長かかりちょう
 石井いしいただし

p19
 お客様きゃくさまアンケートの結果けっか
 (巣鴨すがもえき試験しけん客様きゃくさまアンケート集計しゅうけい) (校正こうせいしゃちゅう以下いかひょう文章ぶんしょうにてしるす)
 とい1 しがらみたかさについて、どのようにおもわれますか。
 1.たかいほうがよい(ラッシュ)11、(閑散かんさん)2、(合計ごうけい)13、(割合わりあい)7%
 2.ひくいほうがよい(ラッシュ)11、(閑散かんさん)16、(合計ごうけい)27、(割合わりあい)15%
 3.ちょうどよい(ラッシュ)69、(閑散かんさん)76、(合計ごうけい)145、(割合わりあい)78%
 (合計ごうけい)185

 とい2 しがらみしがらみとの間隔かんかくについて、どのようにおもいましたか。
 1.せまいほうがよい(ラッシュ)25、(閑散かんさん)40、(合計ごうけい)65、(割合わりあい)35%
 2.ひろいほうがよい(ラッシュ)12、(閑散かんさん)8、(合計ごうけい)20、(割合わりあい)11%
 3.ちょうどよい(ラッシュ)25、(閑散かんさん)46、(合計ごうけい)100、(割合わりあい)54%
 (合計ごうけい)185

 とい3 しがらみ設置せっち位置いちについて、どのようにおもわれますか
 1.列車れっしゃちかいほうがよい(ラッシュ)18、(閑散かんさん)9、(合計ごうけい)27、(割合わりあい)14%
 2.列車れっしゃからはなしたほうがよい(ラッシュ)16、(閑散かんさん)19、(合計ごうけい)35、(割合わりあい)19%
 3.ちょうどよい(ラッシュ)59、(閑散かんさん)67、(合計ごうけい)126、(割合わりあい)67%
 (合計ごうけい)188

 とい4 しがらみよりも、まえたお客様きゃくさま危険きけんをおらせするための警報けいほうおんしていますが、このおとをおきになったことがありますか。
 1.ある(ラッシュ)18、(閑散かんさん)13、(合計ごうけい)31、(割合わりあい)16%
 2.ない(ラッシュ)78、(閑散かんさん)83、(合計ごうけい)161、(割合わりあい)84%
合計ごうけい)192

 「ある」とおこたえになったほうにおきします。この「ピ、ピ、ピ」という警報けいほうおんいたとき、どのようにおもわれますか
 1.おとちいさい(ラッシュ)2、(閑散かんさん)1、(合計ごうけい)3
 2.おとおおきい(ラッシュ)1、(閑散かんさん)4、(合計ごうけい)5
 3.おとおおきさはちょうどよい(ラッシュ)8、(閑散かんさん)7、(合計ごうけい)15
 4.危険きけんらせるためのおとだとおもった(ラッシュ)8、(閑散かんさん)4、(合計ごうけい)12、
 5.なにのためのおとかわからなかった(ラッシュ)4、(閑散かんさん)2、(合計ごうけい)6

 とい5 このしがらみについて、どのようにおかんじになりましたか
 1.安全あんぜんせいぞう(ラッシュ)44、(閑散かんさん)52、(合計ごうけい)96、(割合わりあい)49%
 2.邪魔じゃまだ(ラッシュ)14、(閑散かんさん)9、(合計ごうけい)23、(割合わりあい)12%
 3.通行つうこうしにくい(ラッシュ)11、(閑散かんさん)8、(合計ごうけい)19、(割合わりあい)10%
 4.なんともおもわない(ラッシュ)37、(閑散かんさん)20、(合計ごうけい)57、(割合わりあい)29%
 (合計ごうけい)195

p20
 やさしいまちづくりのアイ・タッチ

 大手おおて銀行ぎんこう証券しょうけん会社かいしゃ倒産とうさんとう大変たいへんきびしいとしも、あわただしいとしをむかえましたが、いかがおごしですか。
 さて近年きんねん福祉ふくしてき配慮はいりょ一段いちだんたかまり、各種かくしゅ障害しょうがいのあるひと高齢こうれいしゃどもとうすべてのひとが、基本きほんてき人権じんけん尊重そんちょうされ、自由じゆう行動こうどう社会しゃかい参加さんかのできる「やさしいまちづくり」を目的もくてきに、全国ぜんこく各地かくち次々つぎつぎ条例じょうれい制定せいていされています。たとえば、東京とうきょう平成へいせい7ねん3がつに、大阪おおさか平成へいせい4ねん10がつ条例じょうれい制定せいていされました。
 福祉ふくしのまちづくりは、東京とうきょう方針ほうしんどうり、国民こくみん参加さんか協力きょうりょく基本きほんに、国民こくみん行政ぎょうせい事業じぎょうしゃ共通きょうつう認識にんしきしたに、各々おのおの立場たちばからきょうはたらかして推進すいしんすること、たん物的ぶってき環境かんきょう整備せいびにとどまらず、事業じぎょうしゃ提供ていきょうするサービスや国民こくみん相互そうごのふれいや、やさしさ、さらに関連かんれんする各種かくしゅ施策しさく連携れんけいとうにより、総合そうごうてき推進すいしんすることが重要じゅうようです。
 そこで弊社へいしゃは、その事業じぎょうしゃ役割やくわり十分じゅうぶん理解りかいし、視覚しかく障害しょうがい分野ぶんやで、視覚しかく障害しょうがいしゃほうかく団体だんたいのご意見いけん・ご要望ようぼう参考さんこうに、自由じゆう安全あんぜん快適かいてき生活せいかつ環境かんきょう整備せいび目指めざし、総合そうごうてきために、今年ことし10がつさわ案内あんないばん手摺てすり点字てんじ案内あんない中心ちゅうしんに、しん会社かいしゃ設立せつりついたしました。
 そして弊社へいしゃねがいは、障害しょうがいのあるひともないひとも、高齢こうれいしゃ若者わかものも、また大人おとなどもも、多様たよう個性こせいをもつ一人ひとりひとりが、みずからの人生じんせいえらり、それぞれの生活せいかつ尊重そんちょうしながら、しんやさしく、ゆたかに、相互そうごささっていける社会しゃかいをつくることであり、東京とうきょうをはじめとしたこの2ヶ月かげつ営業えいぎょう活動かつどうで「本当ほんとう役立やくだち、よろこんでいただけるものづくり」のためには、残念ざんねんながら現状げんじょうでは、視覚しかく障害しょうがいしゃ皆様みなさまかた行政ぎょうせいとのパイプ役ぱいぷやく必要ひつよう痛感つうかんしましたので、すこしでもおやくちたいとかんがえています。
 最後さいごに、「やさしいまちづくり」を推進すいしんする大事だいじ時期じきだとかんがえますので、皆様みなさまかた一緒いっしょに、真剣しんけん精一杯せいいっぱい努力どりょくしていきたいとおもいますので「アイ・タッチ」を、どうぞよろしくおねがもうげます。
 株式会社かぶしきがいしゃ アイ・タッチ 代表だいひょう取締役とりしまりやく 本間ほんま 丈雄たけお

p21
 当事とうじしゃ使つかえる機器きき開発かいはつ
 うえその和隆かずたか
 
 わたし歩行ほこうさい、もっとも恐怖きょうふかんじることのひとつは、下向したむきの段差だんさである。先日せんじつ「5センチ以上いじょう段差だんさがあれば振動しんどうするつえ開発かいはつされた」というニュースをいた。うたがいつつも「やったあ!」とむねおどおもいで広島ひろしまにあるアエラクリエイトに電話でんわしたところ、担当たんとうしゃ東京とうきょうにきているとのことで、現物げんぶつることができた。
 このつえあたらしい機能きのうみっつある。ひと現在げんざい広島ひろしま三原みはらでしか機能きのうしないが、このつえったひとちかづくとそなけのセンサーがはたら音声おんせい案内あんないをする。ふた点字てんじブロックに「反射はんしゃたい」がんであり、このうえつえをかざすと振動しんどうがなくなるため、つえ地面じめんにつくことなく左右さゆうりながら簡単かんたんにブロックのうえあるける。
 みっは、「段差だんさがわかる」ということ。これはてっきり、段差だんさに1メートルぐらいちかづくと振動しんどうするのだろうとんでいたが、そうではなくて、つえ先端せんたんゆかめんとの距離きょりが5センチ以上いじょうになると振動しんどうするというもの。ふつう白状はくじょう周囲しゅういゆかをつきながらあるくものなので、わたしは「これじゃあ従来じゅうらいのものでもおなじようなものだ、なん意味いみもない」とおもった。しかし開発かいはつしゃは「階段かいだんえんをさわりそこなっても、このつえ振動しんどうらせるから安全あんぜん」と主張しゅちょうする。いろいろ説明せつめいしてもらったがどのようなメリットがあるのかわからない。さらに説明せつめいうながすと、「モーワットセンサー(べつ機能きのうをもつものであり、使つかっているひとはかなりすくないとおもわれる)よりはいいですよ」という。
 「広島ひろしま県内けんない東京とうきょうでも何人なんにんかに使つかってもらい、歩行ほこう訓練くんれんからの好評こうひょうている」「広島ひろしまではテレビでもげられた」「1かい充電じゅうでんで5時間じかん使つかえるバッテリーつき」「年末ねんまつには7まんえんしたい。有効ゆうこうせいには自信じしんがある」「厚生省こうせいしょう日常にちじょう生活せいかつ用具ようぐ指定しているつもりである」などとはなしていた。
 わたしとはちがったあるかたをするひとにとって有用ゆうようつえであるかもれないので、「大勢おおぜいひとためしてもらいたい」とはなしたら、「あとおくる」とのことだったが3週間しゅうかん以上いじょうたったいまでもおくられてきていない。
 あのままされるのだろうか?「段差だんさがわかる」といううたい文句もんくしんじた視覚しかく障害しょうがいしゃ高価こうかつえわされるのではないか。本当ほんとう安全あんぜんなものであればわたしもぜひ使つかいたいとおもうが、このつえ価格かかく高価こうかすぎるわりには安全あんぜん確保かくほできるかどうかがうたがわしい。
 それにしてもいろんな開発かいはつがなされているのだが、なぜ、その過程かていでもっと当事とうじしゃ意見いけんれようとしないのか、残念ざんねんである。企業きぎょうだけが利益りえきをあげるようなばかりの福祉ふくし機器きき開発かいはつ販売はんばいはやめてほしいものだ。紙面しめん都合つごうききれないが、この1ねんばかりのあいだに、ほかにも2、3そのようなことはいているのである。

p22
 ヘルスキーパー制度せいどへのみち

 ヘルスキーパーの制度せいどもとめる連絡れんらくかい
 (略称りゃくしょう制度せいどれん)事務じむ局長きょくちょう神崎かんざきこう
 
 制度せいどれんは、ヘルスキーパーの求人きゅうじん減少げんしょう身分みぶん不安定ふあんてい業務ぎょうむ確立かくりつとう課題かだい解決かいけつ目指めざして1996ねん6がつ発足ほっそくした。活動かつどうはしらは、ヘルスキーパーの雇用こよう拡大かくだい労働ろうどう衛生えいせいへの位置付いちづけである。とはいえ、発足ほっそくには労働省ろうどうしょう姿勢しせいやヘルスキーパーの実態じったいすらも明確めいかくだったため、活動かつどう見通みとおしもてにくい状況じょうきょうにあった。
 ただ、いかなる制度せいどもとめるにせよかせないのがヘルスキーパーの定義ていぎだ。そこで、我々われわれ半年はんとし以上いじょうをかけて以下いか定義ていぎをまとめた。
 『ヘルスキーパーとは、「あんマッサージ指圧しあつ、はり、きゅうとうかんする法律ほうりつ」にさだめるあんマッサージ指圧しあつ資格しかくゆうするもの(その資格しかく以外いがいに、はりまたはきゅうあるいはその双方そうほう資格しかくゆうするものふくむ。)であって、その資格しかくにより業務ぎょうむとしておこなうことのできるあん・マッサージ・指圧しあつ(はりにあってははり、きゅうにあってはきゅうをふくむ。)およびそれらに併用へいようする各種かくしゅ物理ぶつり療法りょうほうにより、労働ろうどうしゃとうたいし、しゅとして労働ろうどう起因きいんして発生はっせいした心身しんしん疲労ひろう不定ふてい愁訴しゅうそ改善かいぜんすることにより、労働ろうどうしゃとう健康けんこう保持ほじ増進ぞうしん寄与きよするとともに、職業しょくぎょうせい疾病しっぺい労働ろうどう災害さいがい発生はっせい防止ぼうし一翼いちよくにない、もって労働ろうどう衛生えいせい向上こうじょう貢献こうけんすることを目的もくてきに、原則げんそくとして業務ぎょうむ対象たいしょうしゃである労働ろうどうしゃとう雇用こようしている企業きぎょう(官公庁かんこうちょうふくむ。以下いかおなじ。)と同一どういつ企業きぎょう雇用こようされているものをいう。』
 この定義ていぎいたるまでには、まずメンタルヘルスをどうあつかうかが議論ぎろんされた。あはきの特性とくせいから会話かいわによる心理しんりてきケアがなされているのは事実じじつだが、はたして定義ていぎめるのか、医師いし産業さんぎょうカウンセラーとの関係かんけい整理せいりできるのかとう意見いけんされ、結局けっきょく定義ていぎにはふくめないこととした。「労働ろうどうしゃ」という文言もんごんにも、「組合くみあい」のイメージがつよい、企業きぎょう役員やくいん派遣はけん社員しゃいん対象たいしょうにしないのかとう意見いけんされ、最終さいしゅうてきには労働ろうどう安全あんぜん衛生えいせいほうしたがい「労働ろうどうしゃ」の文言もんごんもちいつつ、あわせて「ひとし」の文字もじくわえ、総会そうかいにおける事務じむ局長きょくちょう見解けんかいとして企業きぎょうやく  

p23
いん派遣はけん社員しゃいんふくむことを表明ひょうめいすることとした。ヘルスキーパーの雇用こようぬしについても、対象たいしょうしゃである労働ろうどうしゃ雇用こようしているもの限定げんていしていいのか、特例とくれい子会社こがいしゃのように双方そうほう雇用こようぬしことなったらどうするのかとう意見いけんされ、当面とうめんは「原則げんそくとして」の文言もんごんくわえて雇用こようぬし範囲はんいひろくとらえることとした。
 一方いっぽう労働省ろうどうしょう労働ろうどう衛生えいせいとの交渉こうしょうでは制度せいどへの道程どうてい容易よういでないことが浮彫うきぼりとなった。どうは、「労働ろうどう衛生えいせい行政ぎょうせいは、労働ろうどうしゃみずからの健康けんこう保持ほじ増進ぞうしんささえるけん査や指導しどうのスタッフと施設しせつ充実じゅうじつはかるものであり、直接ちょくせつ労働ろうどうしゃ施術しじゅつするヘルスキーパーはふくまれない。」とのスタンスをっている。そのため、労働ろうどう衛生えいせい分野ぶんやにおけるヘルスキーパーの有用ゆうようせいあきらかにする目的もくてき研究けんきゅうすらできないというのだ。
 我々われわれとしても、現行げんこうのままでのむずかしさはわかっている。しかし、こうした研究けんきゅうとおしてヘルスキーパーの有用ゆうようせいあきらかにすることが企業きぎょう説得せっとくする材料ざいりょうとなり、またヘルスキーパー自身じしん業務ぎょうむ重要じゅうようせい理解りかいしてもらえるみちでもあるのだ。そこで、医学いがくてき要素ようそふくむこの難題なんだいをオブラートにつつみ、視覚しかく障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんさくとして実施じっしするよう労働省ろうどうしょう障害しょうがいしゃ雇用こよう対策たいさくげかけた。
 当初とうしょどうは、かならずしもいい返事へんじはしなかった。しかし最近さいきんになって、医学いがくてき部分ぶぶんべつとして「さわきょう調査ちょうさ研究けんきゅうでヘルスキーパーをあつかうよう調整ちょうせいする。」という返事へんじわってきた。我々われわれは、こうした微妙びみょう変化へんか注目ちゅうもくしている。
 と同時どうじに、行政ぎょうせいおこなわないならみずか調査ちょうさ研究けんきゅう着手ちゃくしゅする準備じゅんびはじめている。そのひとつが、制度せいどれん団体だんたい会員かいいんであるきょうれん学術がくじゅつ協力きょうりょくすすめた三菱みつびし財団ざいだんへの研究けんきゅう助成じょせい申請しんせいだ。この申請しんせい残念ざんねんながらみとめられなかったが、社員しゃいん記入きにゅうする調査ちょうさひょうとおしてヘルスキーパー業務ぎょうむ有用ゆうようせいあきらかにしようとするもので、今後こんご申請しんせいする予定よていである。また、労働省ろうどうしょうでもまった把握はあくできていないエルスキーパーの全数ぜんすう調査ちょうさこころみている。これはきょうれん進路しんろたいさく実施じっし主体しゅたいとなり、全国ぜんこく盲学校もうがっこうとうとおして現在げんざいエルスキーパーとして勤務きんむしている卒業生そつぎょうせい全員ぜんいん対象たいしょうに、雇用こよう形態けいたいとうをアンケート形式けいしき調査ちょうさしようとするもので、各校かくこうかくヘルスキーパーの協力きょうりょくられれば、名実めいじつともにはつのヘルスキーパーみな調査ちょうさとなる。非公式ひこうしきながら、労働省ろうどうしょうからも期待きたいされているのだ。
 制度せいどれん発足ほっそくから1ねんはんいま具体ぐたいてき成果せいかはない。しかし、課題かだい解決かいけつけた実感じっかん徐々じょじょはじめた。「制度せいどしたとき視覚しかく障害しょうがいしゃ廃除はいじょされないか。」という不安ふあんも、制度せいど近付ちかづくに身近みぢかになるだろう。我々われわれは、ヘルスキーパーを「かがやほし」にすべく関係かんけいしゃ智恵ちえあつめてみたいとおもっている。

p24
 書評しょひょう
 『いまどきしょうがい母親ははおや物語ものがたり
 ぽれぽれくらぶちょ・ふどうしゃかん

 1987ねん8がつに、「障害しょうがい保育ほいく充実じゅうじつをすすめるかい」として発足ほっそくしたかいが、「ぽれぽれくらぶ」の前身ぜんしんである。おも仙台せんだい中心ちゅうしん活動かつどうしている。「障害しょうがい保育ほいく充実じゅうじつ」ということからもわかるように会員かいいんわか母親ははおや中心ちゅうしんである。
 なぜ、このほんげたかというと、まさに「いまどき」のひとたちだからである。年齢ねんれいてきにもわかいということもあるが(当時とうじで20さいだい現在げんざいでも30さいだいである)、発想はっそうが、まさに「いまどき」なのである。
 たとえば障害しょうがいのために一生いっしょうけんめい教育きょういく療育りょういく頑張がんば母親ははおやたいして、「なんで、自閉症じへいしょうだからって、そこまでやらなくちゃいけないの?それで犠牲ぎせいにしたものは、ないの。なんだい、なんだい、 『わたし一生いっしょうけんめいやった母親ははおやよ』っていたいだけじゃないか!『一生いっしょうけんめいやった母親ははおやよっていたいんでしょう?』(すごく意地悪いじわる言葉ことばだ)、『一生いっしょうけんめいやった母親ははおやよっていたいんでしょう?』(なんかいでもってやる)」とか、「わかいおねえちゃん(保母ほぼさん)は、(障害しょうがいったおかあさんが)美容びよういんってきても、『わたしたちはいちにち必死ひっしてみているのに』とブーとむくれるのだ。・・やっぱりおんなはおしゃれだ…じゃない。余裕よゆうなのだ。(そして、やっぱりおしゃれなのだ)」とか。
 ほんのなかみにかんしてはんでいただくとして、わたしが、なぜこのグループに興味きょうみをもったのかは、このグループにぞくする?らしいわか母親ははおやはなちが・知的ちてき障害しょうがいしゃおや全国ぜんこく組織そしきである「全日本ぜんにほん育成いくせいかい」の全国ぜんこく大会たいかい組織そしき分科ぶんかかい助言じょげんしゃとして登場とうじょうし、発言はつげんしゃが「組織そしき停滞ていたいのなかでどのように組織そしき活性かっせいしていくか」という発言はつげんをするなかで、「高齢こうれいした役員やくいんめればよい、世代せだい交代こうたいできないような組織そしきはつぶれてもぜんぜんかまわない」と発言はつげんし、会場かいじょう騒然そうぜんとさせたり、またその「全日本ぜんにほん育成いくせいかい」の機関きかんにそれらのひと刺激しげきてき文章ぶんしょう(障害しょうがいったおや自分じぶん子供こどもことだけをかんがえるのではく、障害しょうがいしゃがよりきられる社会しゃかいづくりのために活動かつどうしようという施設しせつ職員しょくいんおやかい役員やくいんたいして、そのようなおやのありかた揶揄やゆする)が度々どど登場とうじょうするからである。
 つまり、旧来きゅうらいおやかい活動かつどうが、このグループのような発想はっそう(組織そしき維持いじのためのための組織そしき硬直こうちょくした価値かちかん否定ひてい)をすで必要ひつようとしているのである。その彼女かのじょらも、すでに、場所ばしょによっては中堅ちゅうけんてき存在そんざいとして紹介しょうかいされる。
 (梅林うめばやし和夫かずお)

裏表紙うらびょうしうら
 編集へんしゅう後記こうき
 今回こんかい機関きかん事務じむきょく提起ていきおもさは、ややもすればわすれがちの、自分じぶんたちがどうきているのか、障害しょうがいしゃとしてなにをしようとしているのかということを再度さいどけられることにもなったとおもいます。いまはそんならえかた流行はやらないというひともいるかもしれません。でも、現実げんじつてきに「解散かいさん」という提起ていきがされたわけですから、会員かいいんのみなさんには、ぜひおかんがえをおかせいただきたいとおもいます。労協ろうきょう今後こんごどういうかたちになったとしても、このいかけが無意味むいみなことにならないことをしんじます。
 あちらこちらで風邪かぜをひいたはなしがでていますが、くれぐれも注意ちゅういし、元気げんきのでる「明日あした」を創造そうぞうしたいものですね。

裏表紙うらびょうし奥付おくづけ
 1997ねん12月14にち
 定価ていか200えん
 編集へんしゅうじん 視覚しかく障害しょうがいしゃ労働ろうどう問題もんだい協議きょうぎかい
 〒239横須賀よこすか長沢ながそ115グリーンハイツ2ー7ー405
 奥山おくやま幸博ゆきひろ気付きつけ
 発行はっこうじん 身体しんたい障害しょうがいしゃ団体だんたい定期ていき刊行かんこうぶつ協会きょうかい
 世田谷せたがやきぬた6〜26〜21
 視覚しかく障害しょうがいしゃ労働ろうどう問題もんだい協議きょうぎかい

いちきゅうなないちねんろくがつじゅうななにちだい三種さんしゅ郵便ゆうびんぶつ許可きょか毎月まいつきろくかい ・0の発行はっこう
いちきゅうきゅうななねん十二月じゅうにがつにち発行はっこうSSK通巻つうかんいちいちよんいちごう


引用いんよう



書評しょひょう紹介しょうかい



言及げんきゅう





作成さくせい仲尾なかお 謙二けんじ
UP: 20210528 REV:
障害しょうがいがく 視覚しかく障害しょうがい  ◇身体しんたい×世界せかい関連かんれん書籍しょせき  ◇障害しょうがい地平ちへい  ◇雑誌ざっし  ◇BOOK  ◇全文ぜんぶん掲載けいさい
TOP HOME (http://www.arsvi.com)