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立岩真也「聞きたいことをいくつか」
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きたいことをいくつか

立岩たていわ しん 1997/11/21
日米にちべい障害しょうがいしゃリーダーシンポジウム資料集しりょうしゅう


 司会しかいをおおせつかった立岩たていわです。はなしはシンポジストの方々かたがたがなさいます。ですからわたしは、以下いか時間じかんがあったら)いてみたいなとおもうことを列挙れっきょします。
 ここにいる両国りょうこく人達ひとたちとうじてきた障害しょうがいしゃ運動うんどう基本きほんてき理念りねん共有きょうゆうされている、そしてそれは、すくなくとも理論りろんてき闘争とうそうではかし、主導しゅどうけんにぎったとかんがえる。(そしてこの理念りねん自体じたいは、どっちがどっちにおそわったということでもないとおもう。)だからこのことはここではわない。自立じりつ生活せいかつセンターの運営うんえい――のことにかたよったかな、といてからおもっている――について、障害しょうがいしゃ運動うんどうちから拡大かくだいについて、日本にっぽん現状げんじょうなどをいくつかしめし、それにからめ、米国べいこく組織そしきがどうしているのか、どうなっているのかいてみたいことを列挙れっきょすることにした。一方いっぽう他方たほうおなじことをやればうまくいくというものではないだろうが、ヒントになるものがあれば使つかってみたらよいとおもう。

規模きぼ連携れんけい
 J:日本にっぽん自立じりつ生活せいかつセンター=CIL(あるいはILC…どっちが流行はやりなんでしょう)は、短期間たんきかんのうちに全国ぜんこくひろがり、強力きょうりょく活動かつどう展開てんかいしている。1991ねん全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい(JIL)の発足ほっそく加盟かめい団体だんたいは15だったが、1992ねん:29→1993ねん:37→1994ねん:42→1995ねん:50→1996ねん:62→1997ねん:73(1995・1996ねん以外いがいあき時点じてんでの集計しゅうけい)と、えてきている。そしてこれには、先行せんこうして活動かつどうはじめたCIL、そしてJILがおおきな(十分じゅうぶんな、とはわない)役割やくわりたした。
 U:米国べいこくではどうなっているのだろうか。バークレーそのにCILがあることをわたしたちっている。だがではどうなのだろう。こういううごきが全然ぜんぜん、あるいはほとんどない地域ちいきもやはりあるのだろうか。米国べいこくでCILは「メジャー」なんだろうか。各地かくちのCILの連携れんけいはとれているのだろうか。のCILに研修けんしゅうったり、みたいなことはあるのだろうか。全国ぜんこくのCILの代表だいひょうしゃ一同いちどうかいするような機会きかいはあるのだろうか。

組織そしきひと
 千葉大学ちばだいがく社会しゃかいがく研究けんきゅうしつで「NPO」(Nonprofit Organization・営利えいり組織そしき)についての調査ちょうさ研究けんきゅうをして、昨年さくねん報告ほうこくしょ『NPOがえる!?――営利えいり組織そしき社会しゃかいがく』にまとめられた(この文章ぶんしょう末尾まつび紹介しょうかい)。そこであらためておもったのは、CIL(日本にっぽんのも)が米国べいこくしきのNPOの組織そしき形態けいたいをとっているということだった(報告ほうこくしょだいしょう「アメリカのNPO活動かつどう日本にっぽん市民しみん活動かつどう」、だいしょうひともちいる――アメリカのNPOはどうしているか」)。法律ほうりつしゅうによりことなるが、「理事りじかい」「運営うんえい委員いいんかい」が決定けってい機関きかんとなる。この委員いいん過半かはん組織そしき経済けいざいてき利害りがいのないひとでなければならない。つまりは無給むきゅうでないとならない。そして実務じつむ担当たんとうする事務じむきょくがある。(現在げんざい日本にっぽん検討けんとうされている「NPO法案ほうあん」でのNPOは総会そうかい決定けってい主体しゅたいとするもので、すこことなる)。CILはこうした組織そしきなか障害しょうがいをもつ当事とうじしゃ主体しゅたいがた組織そしきである(もちろん、事務じむきょくでも障害しょうがいしゃ積極せっきょくてき採用さいようしている)。そして、米国べいこくのNPOの「経営けいえい」がなかなか上手じょうずだとおもった。
 J:人材じんざいのことをおおきな課題かだいとしてかかえているとおもう。まず組織そしきとその活動かつどう中核ちゅうかくとなる障害しょうがいをもつ運営うんえい委員いいん、そしてスタッフである。JILでも「所長しょちょうセミナー」などやって、人的じんてきちから向上こうじょうにつとめているわけだが、いま人手ひとで不足ふそくをどうするか、そして次世代じせだいのリーダーたちがどうやってそだっていくのか、このことがとてもになっているのだとおもう。
 そして活動かつどう側面そくめんから仕事しごとささえる人達ひとたちたとえばボランティア。ボランティアという存在そんざいとき足手あしてまといになることを経験けいけんしているひと組織そしきもあるとおもう。しかし、使つかいようによってはおおきなちからにもなってくれるし、活動かつどうへの理解りかい媒体ばいたいにもなる。こん現在げんざいだって、73のかく団体だんたい直接ちょくせつ間接かんせつ平均へいきん 250にんひとかかわっているとするとやくまんにん。けっこうおおくの人達ひとたちがこの活動かつどうって、ささえている。ただそれをさらに、となるとどうするか。
 以下いか全体ぜんたいてき社会しゃかい環境かんきょうのことだからCILだけがんばってもどうにもならないというところがある。だが、日本にっぽんのCILも使つかえるところがあったられてよいとおもう。
 U:米国べいこくでうまくいってる、そして米国べいこくのNPOが上手じょうずだとおもうのが、ひとつくかた使つかかたである(報告ほうこくしょだいしょうひともちいる――アメリカのNPOはどうしているか」)。まず、NPOの運営うんえい委員いいん理事りじをつとめることにたいする社会しゃかいてき評価ひょうかたかい。企業きぎょうじんにしてもいわゆる学者がくしゃにしても、そういう仕事しごとをすることが職場しょくばでも評価ひょうかされる。また、NPOのスタッフになることについても、それなりの社会しゃかいてき評価ひょうかがあり、学校がっこうのち就職しゅうしょくさきとしてNPOが候補こうほにあがる。また、なんねんかNPOにつとめたのち大学院だいがくいんはいって関連かんれんした勉強べんきょう研究けんきゅうをして、またNPOにもどるといったこともかなりあるようだ。
 そして、ボランティアやインターンとばれる人達ひとたち使つかかた。NPOでボランティアをしたりアルバイトをしたりしたことが就職しゅうしょくさい選考せんこう評価ひょうか対象たいしょうになる。また大学だいがくなどでも教育きょういく一環いっかん組込くみこまれている。そして、NPOのがわでも、ボランティアとうたいするそれなりにしっかりしたプログラムをもっていて、そのはたらきを評価ひょうかするシステムをもっている。ボランティア経験けいけんしゃ就職しゅうしょくさい推薦すいせんしょくといったこともあるという。
 このあたり米国べいこく障害しょうがいしゃ組織そしき、そしてCILは、実際じっさい、どのようにやっているのだろう。

■おかね
 なんともいってもおかねである。おかねをどうやって調達ちょうたつするか。おかね出所しゅっしょは、基本きほんてきには、事業じぎょう収入しゅうにゅう民間みんかんから、政府せいふから、このみっつである。
 いち番目ばんめ本筋ほんすじかもしれない。かく利用りようしゃ自分じぶん手持てもちのおかね(そのおかね自分じぶんかせいだおかねである必要ひつようはない、年金ねんきんでもよい、生活せいかつ保護ほごでもよい…)から利用りようりょうはらう。この場合ばあい消費しょうひしゃ利用りようしゃによる選択せんたくせい最大さいだいになる(自分じぶんしいサービスにはらう、自分じぶんしいサービスを提供ていきょうする組織そしきはらう、cf. 上記じょうき報告ほうこく書中しょちゅうの「組織そしきにおかねわたまえ個人こじんわたすという選択肢せんたくしがある」)。ただ、現状げんじょうではこの方法ほうほうをとることはむずかしく、また現状げんじょうべつに、いくつかの場合ばあい組織そしき公的こうてき助成じょせいそして民間みんかん助成じょせいがなされることが正当せいとうされる。
 そして、CILの活動かつどう場合ばあい公的こうてき負担ふたん資金しきん援助えんじょ当然とうぜんかんがえてよいとおもう。
 J:日本にっぽんのCILの場合ばあい財政ざいせいてき比較的ひかくてき安定あんていしているところでは、自治体じちたいからるおかね割合わりあいおおきい。そして公的こうてき助成じょせい活動かつどうできているところと、それがないところとの格差かくさおおきい。それをいくらかでも打開だかいしうるひとつの昨年さくねんからはじまっている「市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ生活せいかつ支援しえん事業じぎょう」を受託じゅたくしてその仕事しごとをし、おかねることである。(この事業じぎょうについてJILの「所長しょちょうセミナー」でわたしがおはなししたことは「「市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ生活せいかつ支援しえん事業じぎょう」をう」『ノーマライゼーション研究けんきゅう』1997、ノーマライゼーション研究けんきゅうかい、にさいろく)このあき厚生省こうせいしょうは「身体しんたい障害しょうがいしゃ介護かいごとうサービス体制たいせい整備せいび支援しえん試行しこうてき事業じぎょう」なるどうしようもないものをちだしてきたが、そんな余計よけいなものにおかね使つかわせず、「支援しえん事業じぎょう」を強化きょうかすべきことを主張しゅちょうすべきだし、これをCILがやるべきだし、JIL(すくなくとも全国ぜんこく組織そしき)がそのための人材じんざい養成ようせい情報じょうほう提供ていきょう役割やくわりたすべきだし、さらに、この「支援しえん事業じぎょう支援しえん」の仕事しごとくにがおかねす、こういう方向ほうこう目指めざしていくべきだとおもう。
 民間みんかんからのおかねについて。民間みんかん組織そしきだから民間みんかんから資金しきん調達ちょうたつすることが本来ほんらいのぞましいみたいないいかたわれることもあるが、そうかんがえる必要ひつようはない。ただ、民間みんかんからの援助えんじょもあったほうがよいのだし、それをかいして社会しゃかい理解りかいふかまるということもある。個人こじんにせよ組織そしき財団ざいだんとう)にせよ、日本にっぽんでは、民間みんかんからの寄付きふがくすくない。ただ、今後こんごとも期待きたいできないというわけではかならずしもないとおもう。そのひとつのポイントは、どもにかねのこすなんていうことをいつまで日本人にっぽんじんつづけるかだとおもう。そんなことやってもむなしいということになって、じゃあ、となったときに、自分じぶん共感きょうかんするNPO、自分じぶんがサービスをけたNPOにおかねのこすことが、いまより一般いっぱんてきになるのではないかとおもう。
 U:米国べいこくのNPOの活動かつどう資金しきんについて、民間みんかんからの寄付きふおおいということはよくわれるし、これはたっている。ただ、平均へいきん(あくまで平均へいきんであることに注意ちゅうい)をみれば、政府せいふからのおかね割合わりあいじつ日本にっぽんのNPOよりおおきい(事業じぎょう収入しゅうにゅう比率ひりつ日本にっぽんのNPOはおおきいのである)。(前掲ぜんけい報告ほうこくしょだいしょう「どのようにおかねながれをつくるか」)
 CILではどうか。予算よさん総額そうがく予算よさんにおける各々おのおの出所しゅっしょ比率ひりつは…。連邦れんぽう政府せいふなりしゅう政府せいふなりから資金しきん提供ていきょうけることについてどうかんがえており、どういうアプローチをしているのか。民間みんかんからの資金しきん提供ていきょうをうけるためにどういうことをやっているか、等々とうとう

政策せいさく立案りつあん実現じつげん
 J:障害しょうがいしゃ本人ほんにんである人達ひとたちが、様々さまざま発言はつげんし、提言ていげんしている。運動うんどうしている。これがもっと重要じゅうようになってくる。積極せっきょくてき方針ほうしんすこと、あんつくることは大切たいせつだ。ここなんねんかのあいだにも、かなりちからはいった報告ほうこくしょがいくつもつくられ、提言ていげんがなされた。これはさらに拡大かくだいしていく必要ひつようがあるだろう。だが時間じかんもかかる。ひともいる。そしてあんつくったとしても、実現じつげんしないとあんつくっただけにわる。そのためにどういう手立てだてがあるだろうか。もういちあるいはあとなんまえくために、どういうがあるだろう。
 U:米国べいこくでは、(とくしゅうレベル、全国ぜんこくレベルでの)当事とうじしゃがわ政策せいさく立案りつあん、そして政策せいさく実現じつげんのための運動うんどうはどのようにおこなわれているのだろうか。どういう回路かいろ使つかって、どういう手法しゅほう使つかって議会ぎかい行政ぎょうせいはたらきかけているのだろうか。うん動体どうたい連携れんけい協力きょうりょく関係かんけいはどういうふうになっているのだろうか。

※ 自立じりつ生活せいかつ運動うんどう自立じりつ生活せいかつセンターの活動かつどうについては『なま技法ぎほう ―いえ施設しせつらす障害しょうがいしゃ社会しゃかいがく― 増補ぞうほ改訂かいていばん』(藤原ふじわら書店しょてん)。だいさつ最近さいきんました。最新さいしん団体だんたいリストき。税込ぜいこみ3045えんを2500えん販売はんばい。70さつぶんまで、売上うりあげ全額ぜんがくあたらしく活動かつどうはじめたCILに寄付きふします。『NPOがえる!?――営利えいり組織そしき社会しゃかいがく』(B5で366p.の分量ぶんりょう文献ぶんけんリストも充実じゅうじつ)は1500えん。また障害しょうがいという主題しゅだいともおおいに関係かんけいするとわたしかんがえている『私的してき所有しょゆうろん』を9月くがつに勁草書房しょぼうから刊行かんこう税込ぜいこみ6300えん→2割引わりびき。おあわとうは、390松本まつもと蟻ケ崎ありがさき1892-4立岩たついわ NIFTY-Serve:TAE01303, internet:tateiwa@gipac.shinshu-u.ac.jp fax & phone 0263-39-2141。ホームページでも情報じょうほう提供ていきょうしています。


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立岩たていわ しん
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