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立岩真也「あればいいってものではない――知ってることは力になる・8」
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あればいいってものではない

ってることはちからになる・8―

立岩たていわしん 1999 『こちら”ちくま”』13
発行はっこう自立じりつ支援しえんセンター・ちくま


 3月さんがつ27にち高橋たかはしおさむさんがくなりました。享年きょうねん50さい新潟にいがたけん長岡ながおかまれ。学校がっこうかず(けず)。20さいぎてはじめていえそとへ。それが伊豆いずのリハビリテーション・センター。その東京とうきょうへ。立川たつかわ活動かつどうとくに1990年代ねんだい介護かいご保障ほしょう全国ぜんこく障害しょうがいしゃ介護かいご保障ほしょう協議きょうぎかい)、権利けんり擁護ようご障害しょうがいしゃインターナショナル=DPI・日本にっぽん会議かいぎ)、そして「ちくま」もそのひとつである自立じりつ生活せいかつセンターの活動かつどう自立じりつ生活せいかつセンター・立川たちかわ全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい=JIL)、さまざまな重要じゅうよう運動うんどうひきいたひとでした。集会しゅうかいとうではもっぱら裏方うらかたてっしていましたが。かれのことをくときりがありません。ホームページ(http://itass01.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/1.htm)の「高橋たかはしおさむ追悼ついとうする」のコーナーにすこっています。(ホームページの住所じゅうしょすこわっています。これでいままでつながらなかったひともつながるようになったとおもいます。)
 立川たちかわて、かれはじめ、そしてつづけたのがJR立川たつかわえきにエレベーターを設置せっちさせる運動うんどうでした。実現じつげんには時間じかんがかかりました。もちろんR東日本ひがしにっぽん対応たいおう問題もんだいなのですが、ただこれには、なにかとりあえずのたせるというところで妥協だきょうしなかったという事情じじょうもあったのです。高橋たかはしさんたちは、一般いっぱん改札かいさつはいって改札かいさつとおってそしてホームにりるというその経路けいろにエレベーターがあるべきだと主張しゅちょうつづ実現じつげんさせた。一部いちぶえきでは、改札かいさつ通路つうろとはべつにホームのはしほうにエレベーターをつけたりするのですが、そのため通常つうじょうかぎがかけられ、インターホンかなにかで連絡れんらくし、駅員えきいんがやってきて、かぎをあけ、ということになる。連絡れんらく不手際ふてぎわ車椅子くるまいすひと半日はんにちエレベーターにとじめられたといった事故じこきています。だれもが使つかうエレベーターだったらありえないことです。また、このごろよくあるのは車椅子くるまいすよう階段かいだん昇降しょうこうですが、これも使つか勝手がってがわるいし時間じかんもかかる。そしてこれらはいずれも車椅子くるまいすだけに対応たいおうしようという発想はっそうです。しかし、だれでも使つかえるところにあるエレベーターなら、がったりくだったりがつらいどんなひとでも使つかえます。設置せっちのためのおかねはかかるけれど、利用りようしゃおおいから一人ひとりあたりのコストをかんがえれば結局けっきょくこれが一番いちばん経済けいざいてきでもあります。
 バスにしてもおなじです。「リフトづけバス」が松本まつもとでもはしっていることははしっています。しかしあれはすっとってすっとりることができない。ああいうのでなく、「ノンステップ・バス」とばれるバスがあります。バスのゆかひくくする。いままでもていゆかしきバスはありましたが、これよりひくくする。それでもくるまはら道路どうろをこすったりしないようなバスが、実際じっさいはしっているのですから、あるのです。こぎでも電動でんどうでも車椅子くるまいすでなんなくれる。つえをついたり、足腰あしこしよわくなってきたひとにも便利べんりなところもよい。これはたしか熊本くまもと障害しょうがいしゃのグループがヨーロッパにったときにこれを感心かんしんし、日本にっぽんでもこれにしようということで、紹介しょうかい導入どうにゅう運動うんどうはじまったものです。そして実際じっさい熊本くまもと――松本まつもとたような規模きぼ地方ちほう都市としです――をはじめいくつかの自治体じちたい導入どうにゅうはじまっています。
 だから、できるだけ、特別とくべつのものをおまけにけるのでなく、そもそもだれもが使つかえるものにする。「ユニヴァーサル・デザイン」などという言葉ことばもこのごろは使つかわれます。そのうえで、それでカバーできない部分ぶぶんについてそれぞれのひとにあった方法ほうほうかんがえる。「ちくま」が昨年さくねんからやっている「移動いどうサービス」は後者こうしゃということになるでしょう。その「ちくま」が、一般いっぱんてき交通こうつう機関きかん道路どうろ使つかいよくなってそれでこのサービスのおきゃくるならってよい、いや歓迎かんげい、というかまえでやっているのはいさぎよくて、ただしい、のです。
 そのためには、ひとつには情報じょうほう必要ひつようです。どういうものがひろなかにはあるのかという情報じょうほう。そういう意味いみで、ってることはちからになる、のです。そしてなにがどんなものであるか(ほんとによいものかどうか…)を利用りようしゃ自身じしん評価ひょうかし、発信はっしんし、はたらきかけること。この紙面しめんでもなんかい掲載けいさいされた「ジョイ(スティック・コントロール)カー」にしてもそうでした。これを使つかいたいというひとたち自身じしんうごいて、はじめて日本にっぽんはしるようになったのです。
 そして、最善さいぜん当然とうぜん選択肢せんたくし実現じつげんされるまでは、かないこと。5月ごがつにち高橋たかはしさんの追悼ついとう集会しゅうかいがあって、 500にんあまりのひと全国ぜんこくからあつまりました。そのながれたのですが、そのとき、ここ10ねんほど一緒いっしょ高橋たかはしさんとやってきた男性だんせいけいそん車椅子くるまいす使つかっています)が、「えきなんかの対応たいおうについて、我慢がまんしようとおもえば我慢がまんできることもある。いちいち文句もんくうのは正直しょうじきつかれるときがある。けれど高橋たかはしさんがきていてここにいたらどうするか、ここではかないはずだ。いまそうおもってやっている、これからもやっていく。」とっていました。高橋たかはしさんには〇〇えきでの深夜しんやまでの篭城ろうじょう、〇〇都庁とちょうしゃでの徹夜てつやすわみ、等々とうとう武勇ぶゆうでんがいくつもあって、…というはなしはじめるとながくなります。今回こんかいはここまで。

 ※石川いしかわじゅん長瀬ながせおさむへん障害しょうがいがくへの招待しょうたい――社会しゃかい文化ぶんか、ディスアビリティ』発行はっこう
  明石書店あかししょてん,1999ねんがつ、2800えん。「ろう文化ぶんか」をろんじたあきらとか、「劇団げきだんたいへん」や
  「ドッグレッグス」(ってます?、いわゆる?「障害しょうがいしゃプロレス」やってると
  ころです)をろんじる「異形いぎょうのパラドックス」というあきらがあったり。かなりくて、
  おもしろいです。わたしひとつのしょういています。(著者ちょしゃ割引わりびき=2わりきで送付そうふ
  ですが、送料そうりょうれると定価ていかとほとんどおなじですね…。)


UP:20040913
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