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立岩真也「ベーシックインカム――誰にでも同じ額を支給する所得保障」
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ベーシックインカム

だれにでもおながく支給しきゅうする所得しょとく保障ほしょう

立岩たていわ しん 2010/08/01 『中央公論ちゅうおうこうろん』2010-8(7がつ10日とおか発売はつばいごう
特集とくしゅう:このなつ流行はやりものをく50さつかり
http://www.chuokoron.jp/newest_issue/index.html
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 *おくった原稿げんこう掲載けいさいされるものとおなじものではないです)

 日本にっぽんでは生活せいかつ保護ほご制度せいどとしてあるような所得しょとく保障ほしょうではなく、つまり収入しゅうにゅう資産しさん調査ちょうさをしてまずしいひと選別せんべつしてそのひとたちにだけ所得しょとく保障ほしょうをするのでなく、だれにでもおながく支給しきゅうするというベーシックインカム(BI)という所得しょとく保障ほしょうのありかた注目ちゅうもくされている。日本にっぽんでこれがひろろんじられるようになったのはわりあい最近さいきんのことになるのだが、ここでは、なかでもこのねんあいだ出版しゅっぱんされたものにかぎって紹介しょうかいする。
『ベーシックインカム』』表紙  というのも、立岩たていわしん也・齊藤さいとうたく『ベーシックインカム――分配ぶんぱいする最小さいしょう国家こっか可能かのうせい――分配ぶんぱいする最少さいしょう国家こっか可能かのうせい』(いち〇・青土おうづちしゃ)の齊藤さいとうたくいただい日本にっぽんのBIをめぐる言説げんせつ」に、日本にっぽんでの議論ぎろんは、もちろん齊藤さいとう視点してんから整理せいり論評ろんぴょうされたものではあるのだが、網羅もうらてき紹介しょうかいされているからである。それをていただければ、論文ろんぶん雑誌ざっし記事きじ等々とうとうでどんなひとがどんなことをっているか、だいたいのことがわかる。
 のことではずいぶん意見いけんことなるはずのひとたちがこのあんについては賛成さんせいであったりする。どうしてそうなっているのか。まず、生活せいかつ保護ほごといった制度せいどあみからこぼれるひとたち、しかし生活せいかつ困難こんなんひとたちががとてもたくさんいるなかで、この仕組しくみの導入どうにゅうがそうしたひとたちがらしていくために使つかえる制度せいどだとかんがえ、それを導入どうにゅうするべきだとかんがえるひとたちがいる。また、この制度せいどが、面倒めんどう手続てつづきをはぶくことができ、いま制度せいどよりも効率こうりつてきやすくあがるとしてとして支持しじするひとたちがいる。このふたつの方向ほうこうはまったくべつのものであるとはえないかもしれない。しかし、やはりずいぶんとちがうもののようにもおもえる。もちろんそれは、どんな性格せいかくぜい使つかって財源ざいげん調達ちょうたつするのか、どれだけのがくのBIを支給しきゅうするのがよいのかとかんがえるかによる。また、この仕組しくみがはたらけるのにはたらかないひと不当ふとう優遇ゆうぐうすることになるといった批判ひはんもある。『ベーシックインカム』で立岩たていわ担当たんとうしただい「BIはけているか?」ではいくつかの基本きほんてき論点ろんてんについてかんがえている。
 その前年ぜんねんに『ベーシック・インカム入門にゅうもん――無条件むじょうけん給付きゅうふ基本きほん所得しょとくかんがえる』(光文社こうぶんしゃ新書しんしょ〇〇きゅう)がている。新書しんしょということもあって、おおくのひとまれている。このほんでは、BIの主張しゅちょう近年きんねん突然とつぜんあらわれたのではなく、おおくの思想家しそうかによって、また、社会しゃかい保障ほしょうからこぼれてしまってきた世界せかい様々さまざま人々ひとびとによってかんがえられ要求ようきゅうされてきたものであることがしるされている。
 このほんけて、たちばなしゅんみことのり山森やまもりあきら貧困ひんこんすくうのは、社会しゃかい保障ほしょう改革かいかくか、ベーシック・インカムか』(〇〇きゅう人文書院じんぶんしょいん)がある。貧困ひんこん格差かくさ現状げんじょううれうるてん共通きょうつうしつつ、現在げんざいある制度せいど改善かいぜんはかるのがよいとかんがえる著名ちょめい経済けいざい学者がくしゃたちばなと、BIの導入どうにゅう主張しゅちょうする山森やまもり対談たいだん対論たいろんしている。
『現代思想』38-8(2010-6) 8(特集:ベーシックインカム――要求者たち)表紙  そして『現代げんだい思想しそう』(青土おうづちしゃいちねんろくがつごう特集とくしゅうが「ベーシックインカム――要求ようきゅうしゃたち」。日本にっぽん最初さいしょにBIを紹介しょうかいし、その現実げんじつせいいたほんした小沢おざわ修司しゅうじ論文ろんぶん収録しゅうろくされている。シングルマザーや障害しょうがいしゃ学生がくせいにとってBIはどこまでよいものなのか、そのとう立場たちばかれているひとたちの文章ぶんしょうがある。みなみアフリカでのBIの実現じつげんけたうごきをってきた牧野まきの久美子くみこ論文ろんぶんもある。山森やまもり立岩たていわはおのおののかんがえをどうけとるか、どうすすめていくか、対談たいだんしている。
 最後さいごに、一般いっぱんてきでわかりやすいほんとはいえないのだが、フィリップ・ヴァン・パリース『ベーシック・インカムの哲学てつがく――すべてのひとにリアルな自由じゆうを』(〇〇きゅう・勁草書房しょぼう)。原著げんちょいちきゅうきゅう年刊ねんかん訳者やくしゃ後藤ごとう玲子れいこ最初さいしょ紹介しょうかいしたほん著者ちょしゃでもある齊藤さいとうたく立岩たていわはそこでわれていることのいくつかに疑問ぎもんがあって、それを齊藤さいとうとの共著きょうちょ検討けんとうしている。だが、BIの国際こくさいてきなネットワークの創設そうせつ運営うんえいにもかかわってきたヴァン・パリースがBIの「不断ふだん最大さいだい」を主張しゅちょうしていることは、制度せいどけずって支出ししゅつ節約せつやくできる制度せいどとしてBIがろんじられることもあるなかできちんとめられるべきだ。

山森やまもり あきら 200902 『ベーシック・インカム入門にゅうもん――無条件むじょうけん給付きゅうふ基本きほん所得しょとくかんがえる』光文社こうぶんしゃ新書しんしょ,296p. ISBN-10: 4334034926 ISBN-13: 978-4334034924 \882 [amazon][kinokuniya] ※ bi.p0601
◆Van Parijs, Philippe 1995 Real Freedom for All-What (if Anything) Can Justify Capitalism?, Oxford University Press=20090610 後藤ごとう 玲子れいこ齊藤さいとう たくわけ『ベーシック・インカムの哲学てつがく――すべてのひとにリアルな自由じゆうを』,勁草書房しょぼう,494p. ISBN-10: 4326101830 ISBN-13: 978-4326101832 \6000 [amazon][kinokuniya] ※
たちばな しゅんみことのり山森やまもり あきら 20091120 貧困ひんこんすくうのは、社会しゃかい保障ほしょう改革かいかくか、ベーシック・インカムか』人文書院じんぶんしょいん,302p. ISBN-10: 4409240846 ISBN-13: 978-4409240847 2100 [amazon][kinokuniya] ※ bi.
立岩たていわ しん也・齊藤さいとうつぶせ 2010/04/10 『ベーシックインカム――分配ぶんぱいする最小さいしょう国家こっか可能かのうせい青土おうづちしゃ,ISBN-10: 4791765257 ISBN-13: 978-4791765256 2310 [amazon][kinokuniya] ※ bi.
現代げんだい思想しそう』38-8(2010-6) 20100601 特集とくしゅう=ベーシックインカム 要求ようきゅうしゃたち,青土おうづちしゃ,229p. ISBN-10: 4791712145 ISBN-13: 978-4791712144 \1300 [amazon][kinokuniya] ※

 *掲載けいさいされるはずの文章ぶんしょう

 生活せいかつ保護ほご制度せいどとしてあるような所得しょとく保障ほしょう、つまり収入しゅうにゅう資産しさん調査ちょうさをしてまずしいひと選別せんべつしてそのひとたちにだけ所得しょとく保障ほしょうをするのではなく、だれにでもおながく支給しきゅうするベーシックインカム(BI)という所得しょとく保障ほしょうのありかた注目ちゅうもくされている。日本にっぽんでこれがひろろんじられるようになったのはわりあい最近さいきんのことになるのだが、ここでは、なかでもこのねんあいだ出版しゅっぱんされたものにかぎって紹介しょうかいする。
 というのも、立岩たていわしん也・齊藤さいとうたく『ベーシックインカム――分配ぶんぱいする最小さいしょう国家こっか可能かのうせい――分配ぶんぱいする最少さいしょう国家こっか可能かのうせい』(いち〇・青土おうづちしゃ)の齊藤さいとういただい日本にっぽんのBIをめぐる言説げんせつ」に、日本にっぽんでの議論ぎろんが、もちろん齊藤さいとう視点してんから整理せいり論評ろんぴょうされたものではあるのだが、網羅もうらてき紹介しょうかいされているからである。それをんでいただければ、論文ろんぶん雑誌ざっし記事きじ等々とうとうでどんなひとがどんなことをっているか、だいたいのことがわかる。
 のことではずいぶん意見いけんことなるはずのひとたちが、このあんについては賛成さんせいであったりする。どうしてそうなっているのか。まず、生活せいかつ保護ほごといった制度せいどあみからこぼれるひとたち、しかし生活せいかつ困難こんなんひとたちががとてもたくさんいるなかで、この仕組しくみがそうしたひとたちがらしていくために使つかえる制度せいどだとかんがえ、それを導入どうにゅうするべきだとかんがえるひとたちがいる。また、この制度せいどが、面倒めんどう手続てつづきをはぶくことができ、いま制度せいどよりも効率こうりつてきやすくあがるとしてとして支持しじするひとたちがいる。このふたつの方向ほうこうはまったくべつのものであるとはえないかもしれない。しかし、やはりずいぶんとちがうもののようにもおもえる。もちろんそれは、どんな性格せいかくぜい使つかって財源ざいげん調達ちょうたつするのか、どれだけのがくのBIを支給しきゅうするのがよいのかとかんがえるかによる。一方いっぽう、この仕組しくみが、はたらけるのにはたらかないひと不当ふとう優遇ゆうぐうすることになるといった批判ひはんもある。『ベーシックインカム』で立岩たていわ担当たんとうしただい「BIはけているか?」ではいくつかの基本きほんてき論点ろんてんについてかんがえている。
 その前年ぜんねん山森やまもりあきら『ベーシック・インカム入門にゅうもん――無条件むじょうけん給付きゅうふ基本きほん所得しょとくかんがえる』(光文社こうぶんしゃ新書しんしょ〇〇きゅう)がている。新書しんしょということもあって、おおくのひとまれている。このほんでは、BIの主張しゅちょう近年きんねん突然とつぜんあらわれたのではなく、おおくの思想家しそうかによって、また、社会しゃかい保障ほしょうからこぼれてしまってきた世界せかい様々さまざま人々ひとびとによってかんがえられ要求ようきゅうされてきたものであることがしるされている。
 このほんけて、たちばなしゅんみことのり山森やまもりあきら貧困ひんこんすくうのは、社会しゃかい保障ほしょう改革かいかくか、ベーシック・インカムか』(〇〇きゅう人文書院じんぶんしょいん)がある。貧困ひんこん格差かくさ現状げんじょううれてん共通きょうつうしつつ、現在げんざいある制度せいど改善かいぜんはかるのがよいとかんがえる著名ちょめい経済けいざい学者がくしゃたちばなとBIの導入どうにゅう主張しゅちょうする山森やまもり対談たいだん対論たいろんしている。
 そして『現代げんだい思想しそう』(青土おうづちしゃいちねんろくがつごう特集とくしゅうが「ベーシックインカム――要求ようきゅうしゃたち」。日本にっぽん最初さいしょにBIを紹介しょうかいしその現実げんじつせいいたほんした小沢おざわ修司しゅうじ論文ろんぶん収録しゅうろくされている。シングルマザーや障害しょうがいしゃ学生がくせいにとってBIはどこまでよいものなのか、そのとう立場たちばかれているひとたちの文章ぶんしょうがある。みなみアフリカでのBIの実現じつげんけたうごきをってきた牧野まきの久美子くみこ論文ろんぶんもある。山森やまもり立岩たていわはおのおののかんがえをどうけとるか、どうすすめていくか、対談たいだんしている。
 最後さいご一般いっぱんてきでわかりやすいほんとはいえないのだがフィリップ・ヴァン・パリース『ベーシック・インカムの哲学てつがく――すべてのひとにリアルな自由じゆうを』(〇〇きゅう・勁草書房しょぼう)。原著げんちょいちきゅうきゅうねん訳者やくしゃ後藤ごとう玲子れいこ最初さいしょ紹介しょうかいしたほん著者ちょしゃでもある齊藤さいとうたく立岩たていわはそこでわれていることのいくつかに疑問ぎもんがあって、それを齊藤さいとうとの共著きょうちょほん検討けんとうしている。だが、BIの国際こくさいてきなネットワークの創設そうせつ運営うんえいにもかかわってきたヴァン・パリースが、BIの「最大さいだい」を主張しゅちょうしていることは、制度せいどけずって支出ししゅつ節約せつやくできる制度せいどとしてBIがろんじられることのあるなかできちんとめられるべきだ。


UP:20100622 REV:20100624, 0713, 0916
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