磁場じばが支ささえていた大だい質量しつりょう星ぼしへの物質ぶっしつ供給きょうきゅう

【2023年ねん1月がつ30日にち アルマ望遠鏡ぼうえんきょう】

星ほしはガスが重力じゅうりょくによって集あつまることで誕生たんじょうするが、その形成けいせい過程かていで磁場じばも重要じゅうような役割やくわりを果はたすことがこれまでの研究けんきゅうから示しめされている。しかし、具体ぐたい的てきに磁場じばの強つよさがどれほどなのか、磁場じばが星ほしの材料ざいりょう物質ぶっしつを中心ちゅうしん星ほしまで運はこぶことができるのか、さらに、いつどこで重力じゅうりょくが磁力じりょくの影響えいきょうを上回うわまわるのかなどは、よくわかっていない。

台湾たいわん・中央ちゅうおう研究けんきゅう院いん天文てんもん及天文てんもん物理ぶつり研究所けんきゅうじょのPatrick Kochさんを中心ちゅうしんとする国際こくさい研究けんきゅうチームはアルマ望遠鏡ぼうえんきょうを用もちいて、わし座ざの方向ほうこう1万まん7000光年こうねんの距離きょりに位置いちする大だい質量しつりょう星ぼし形成けいせい領域りょういき「W51」内ないの高温こうおんの分子ぶんし雲くもコア「e2]と「e8」の磁場じば構造こうぞうを観測かんそくし、4段階だんかいの解像度かいぞうど（2～3秒びょう角かく、0.7秒びょう角かく、0.26秒びょう角かく、0.1秒びょう角かく）で詳くわしく調しらべた。

この領域りょういきが最初さいしょに観測かんそくされたころの解像度かいぞうどは3秒びょう角つのだったが、アルマ望遠鏡ぼうえんきょうは最高さいこうでその30倍ばいにあたる0.1秒びょう角かくの精度せいど、面積めんせきに換算かんさんすると約やく1000倍ばいも拡大かくだいした鮮明せんめいな画像がぞうを取得しゅとくし、500天文てんもん単位たんい（太陽たいよう～地球ちきゅうの500倍ばい、約やく750億おくkm）という小ちいさな領域りょういき内ないの磁場じばの分布ぶんぷを初はじめて可視かし化かした。

W51 e2（上うえ）とe8（下した）内ないの磁場じばと物質ぶっしつ降着こうちゃくの様子ようす。右みぎに行いくほど解像度かいぞうどが高たかく、右みぎ端はしのパネルでは1000倍ばい鮮明せんめいになるように流ながれ線せんを可視かし化か。最もっとも高たかい解像度かいぞうど（0.1秒びょう角かく）では、星ほし形成けいせいの中心ちゅうしん核かくに物質ぶっしつが流ながれ込こんでいるように見みえ、中心ちゅうしん核かくとつながる複数ふくすうの流ながれが分解ぶんかいして見みえている。磁場じばがガスの流ながれに強つよく沿そっているため、ガスの流ながれは崩壊ほうかいや外圧がいあつに対たいして安定あんていしている。右みぎ端はしの破線はせん円えんの大おおきさは、左端ひだりはしの観測かんそくと同様どうようの3秒びょう角かくによる解像度かいぞうどを示しめし、アルマ望遠鏡ぼうえんきょうによって解像度かいぞうどが飛躍ひやく的てきに向上こうじょうしたことがわかる（提供ていきょう：Koch et al.）

まず、原始げんし星ぼしエンベロープ（星ほしを覆おおうガスと塵ちりの雲くも）全体ぜんたいをとらえた2～3秒びょう角かくの画像がぞうには、強つよい磁場じばが作つくる模様もようや周囲しゅういから中心ちゅうしんに向むかう物質ぶっしつ降着こうちゃくの様子ようすが映うつっている。0.7秒びょう角かくの画像がぞうでは、全体ぜんたいとしては重力じゅうりょくによって物質ぶっしつが集あつまる一方いっぽうで、局所きょくしょ的てきには磁場じばによって抵抗ていこうが生しょうじていることがわかる。さらに、0.26秒びょう角かくの画像がぞうではe2（上うえ）の塊かたまりが2つの小ちいさな核かくに分解ぶんかいされ、ここでも磁場じばの分布ぶんぷと重力じゅうりょくの作用さようについては0.7秒びょう角かくの画像がぞうと同おなじ傾向けいこうが見みられた。

最もっとも解像度かいぞうどの高たかい0.1秒びょう角かくの画像がぞうでは、0.26秒びょう角かく画像がぞうで球状きゅうじょうに広ひろがって見みえていた塊かたまりが、複雑ふくざつに入いり組くんだガス流りゅうのネットワークとしてとらえられている。ガスの流ながれは星ほしが生うみ出だされているまさに中心ちゅうしんに向むかっていて、磁場じばがその流ながれに沿そっていることがわかった。これは、磁場じばの力ちからがガスの流ながれを外圧がいあつや重力じゅうりょく作用さようから守まもっていることを意味いみしている。大だい質量しつりょう星ぼし形成けいせいの際さいに中心ちゅうしん星ぼしへの物質ぶっしつ供給きょうきゅう過程かていにおいて、磁場じばが重要じゅうような役割やくわりを果はたしている可能かのう性せいを示唆しさする結果けっかだ。

「今回こんかいの結果けっかは、他たの望遠鏡ぼうえんきょうでは不可能ふかのうなアルマ望遠鏡ぼうえんきょうの優すぐれた感度かんどと解像度かいぞうどを証明しょうめいするものです。星ほしを形成けいせいする中心ちゅうしん核かくへの物質ぶっしつの流ながれ込こみを安定あんてい化かさせるという、磁場じばの新あらたな役割やくわりを発見はっけんしました」（Kochさん）。