ゴッホの肖像しょうぞう画がに扮ふんするセルフポートレイト写真しゃしん「肖像しょうぞう/ゴッホ」(1985年ねん)以来いらい、 約やく20年間ねんかんにわたり続行ぞっこうされている、 モリムラの中心ちゅうしん的てきシリーズ。美術びじゅつ作品さくひんとの出会であいは、「鑑賞かんしょう/見みること」、「制作せいさく/作つくること」、 「研究けんきゅう/読よむこと」などさまざまだが、 モリムラは「見みること」でも「作つくること」でも「読よむこと」でもなく、自分じぶん自身じしんが美術びじゅつ作品さくひんに 「なること」で出会であおうとする。 「なる」過程かていで、数すう多おおくの発見はっけんがあり、それらを盛もり込こむことで作品さくひんを仕上しあげてゆくため、 参照さんしょうした原画げんがとの「似にている」部分ぶぶんよりも、むしろどうアレンジを加くわえているかが重要じゅうようとなる。 その意味いみで、モリムラの「美術びじゅつ史しシリーズ」は、美術びじゅつ作品さくひんの創作そうさくという方法ほうほうを通つうじて展開てんかい する、一種いっしゅの美術びじゅつ批評ひひょうであるともいえる。 1989年ねん以降いこう、複数ふくすうの登場とうじょう人物じんぶつが登場とうじょうするばあいなどには、コンピュータによるデジタル合成ごうせい が試こころみられるようになった。
みずからが有名ゆうめいな映画えいが女優じょゆうに扮ふんすることで話題わだいとなったシリーズ。その多おおくでモリムラは野外やがいロケを試こころみている。ただし ロケはすべて日本にっぽんで行おこなわれた。西洋せいようの女優じょゆうと日本にっぽんの風景ふうけいのコンビネーションは、日本にっぽんに住すみ、そして西洋せいようの文化ぶんかの影響えいきょうを 受うけて育そだったモリムラの心象しんしょう風景ふうけいでもある。 西洋せいようと日本にっぽん、男性だんせい的てきなものと女性じょせい的てきなもの、虚像きょぞうと実像じつぞうなど、さまざまな境界きょうかい線せん上じょうに浮うかび上あがる美びの世界せかいを追究ついきゅうしたこ のシリーズは、1996年ねん、横浜よこはま美術館びじゅつかんで個展こてん「美びに至いたる病やまい/女優じょゆうになった私わたし」として発表はっぴょうされ、その後ご、ヒューゴボス アワード(グゲンハイム ソーホー/NY)、シドニービエンナーレ(シドニー)などの国際こくさい展てんや海外かいがいでの個展こてんなど、数多すうた くの展覧てんらん会かいに出品しゅっぴんされ続つづけている。
日本にっぽんの文化ぶんかにおける西洋せいようの文化ぶんかの影響えいきょうといったテーマがこれまで大おおきなウェイトをしめているため、 モリムラの美術びじゅつ史しシリーズの多おおくは西洋せいよう美術びじゅつが多おおく取とり扱あつかわれてきたが、日本にっぽんの美術びじゅつへの関心かんしんも高たかく、 浮世絵うきよえなどをテーマとした作品さくひんもある。これら日本にっぽん美術びじゅつ史しのテーマは今後こんごのモリムラの課題かだいのひとつ でもある。
20世紀せいきの出来事できごとをテーマに、モリムラが「男おとこ達たち」になるシリーズ。女優じょゆうシリーズでは20世紀せいきの「女おんな達たち」をテーマにしており、なにもかへのレクイエムと女優じょゆうシリーズのふたつによって、モリムラは20世紀せいき全体ぜんたいを包括ほうかつ的てきにとらえようとしている。 大おおきな時代じだいの変化へんかとともに21世紀せいきになったが、このまま21世紀せいきに突つき進すすむのではなく、立たち止どまり、20世紀せいきとはなんであったかを検証けんしょう、「終おわり行いく世界せかい」への敬意けいいと鎮魂ちんこんを経へてこそ、新あらたな時代じだいは見みつかるという思おもいがモリムラにはあるようだ。 なお、本ほんシリーズの完結かんけつ編へんは、2010〜2011年ねん、国内外こくないがい各所かくしょで個展こてんとして発表はっぴょうされる予定よていである。
1985年ねんに「肖像しょうぞう/ゴッホ」でセルフポートレイト作品さくひんを制作せいさくする以前いぜんの、主おもに1983年ねん〜1984年ねんに制作せいさくされたモノクロ写真しゃしんのシリーズ。 基本きほん的てきにはセルフポートレイトではなく、卓上たくじょうにのせられた食器しょっきなどを組くみ合あわせ、独自どくじの美びを作つくり出だしている。 制作せいさく当時とうじはほとんど評価ひょうかされず、ながらく未み発表はっぴょうのままになっていたが、2005年ねんに青あお幻まぼろし舍しゃから写真しゃしん集しゅうとして刊行かんこうされ、その後ご、展覧てんらん会かいとしても発表はっぴょうされるようになった。 バルコネグロとは、制作せいさく当時とうじ、モリムラが好すきだったポルトガルのファドの名曲めいきょく「暗くらいはしけ=バルコネグロ」からとられている。卓上たくじょうという小ちいさな世界せかいにこそ芸術げいじゅつは生うまれるという想おもいも、タイトルには込こめられている。
モリムラの作品さくひんの全貌ぜんぼうは多種たしゅ多様たようである。マイケル・ジャクソンやマドンナをテーマとしたものや、なにか特定とくていのテーマに基もとづく事ことのない、「自由じゆう演技えんぎ」と呼よばれるセルフポートレイト写真しゃしん、あるいは「書しょ」や「彫刻ちょうこく」もある。それらは一般いっぱん的てきには「例外れいがい的てき作品さくひん」とされ、美術びじゅつ史しシリーズなどの主要しゅよう作品さくひんとは区別くべつされることがおおいが、モリムラにとっては共ともに重要じゅうような創作そうさく活動かつどうである。