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WEBアニメスタイル | 【アニメスタイル特報部】『チェブラーシカ』中村誠監督インタビュー 前編 この世界は実在する、という感じを出したかった

【アニメスタイル特報とくほう
『チェブラーシカ』中村なかむらまこと監督かんとくインタビュー
前編ぜんぺん この世界せかい実在じつざいする、というかんじをしたかった

 今週こんしゅうまつ18にちから全国ぜんこく公開こうかいされる人形にんぎょうアニメ『チェブラーシカ』は、ロシアのロマン・カチャーノフ監督かんとくんだ名作めいさく『チェブラーシカ』シリーズの、じつに27ねんぶりとなる新作しんさく中村なかむらまこと監督かんとくはじめとする日本人にっぽんじんスタッフとロシアじんスタッフが協力きょうりょくし、韓国かんこくのアニメーションスタジオで制作せいさくされたという国際こくさいしょくゆたかなプロジェクトだ。その仕上しあがりには原作げんさくしゃのエドゥアルド・ウスペンスキーや、旧作きゅうさくにスタッフとして参加さんかしたユーリー・ノルシュテインらも賛辞さんじおくり、現地げんちロシアの観客かんきゃくからも好評こうひょうたという。今回こんかいのアニメスタイル特報とくほうでは、6ねんしで作品さくひん完成かんせいさせた中村なかむらまこと監督かんとくにおはなしをうかがってきた。
 なお、この2010年版ねんばん『チェブラーシカ』は、1969ねん制作せいさくされたオリジナルばんさくのリメイクパートとなるだい「ワニのゲーナ」と、完全かんぜんオリジナルストーリーのだい「チェブラーシカとサーカス」、だい「シャパクリャクの相談そうだんしょ」からなる3構成こうせいになっている。全長ぜんちょうばんとなるロシアばんは、TOHOシネマズ六本木ろっぽんぎヒルズと、TOHOシネマズなんばの2かんのみで公開こうかい全国ぜんこく劇場げきじょう上映じょうえいされる日本語にほんごばんは、だいをダイジェストばんサイズにし、さい構成こうせいしたもの。いずれも短編たんぺん『くまのがっこう〜ジャッキーとケイティ』と2本立ほんだ公開こうかいされる。

── 中村なかむらさんが今回こんかいの『チェブラーシカ』に参加さんかされたきっかけは?
中村なかむら 最初さいしょのきっかけは「やれ」とわれたからです(笑)。今度こんどこういう企画きかくがあるから、監督かんとくをやらないかとわれまして。それまでチョロチョロと演出えんしゅつ仕事しごと手伝てつだっていたりしていたので、もしできるならやってみたいなあ、と。
── 製作せいさく母体ぼたいはどこなんですか。
中村なかむら 「チェブラーシカ・ムービー・パートナーズ」というところです。新作しんさくばん『チェブラーシカ』をつくるための、いわば製作せいさく委員いいんかいですね。
── その製作せいさく委員いいんかいには、フロンティアワークスも参加さんかしているんですか。
中村なかむら ええ、しています。
── 中村なかむらさんはアニメの脚本きゃくほんいたり、演出えんしゅつをされたりしていますが、じつはフロンティアワークスの社員しゃいんなんですよね。
中村なかむら はい。
── ちょっと『チェブラーシカ』のはなしからははずれますが、中村なかむらさんは元々もともとどういう職種しょくしゅ業界ぎょうかいはいられたんですか?
中村なかむら 最初さいしょはグラフィックデザイナーとしてムービックという会社かいしゃはいったんです。それが、途中とちゅう部署ぶしょえがありまして、ラジオ番組ばんぐみ制作せいさくするような部署ぶしょまわされたんですね。そこで番組ばんぐみ構成こうせい台本だいほんや、ゲーム原作げんさくのラジオドラマのシナリオなんかをいているうちに、とあるゲームの原作げんさくサイドからアニメばん脚本きゃくほんもやってくれないかとこえをかけていただいて。
── 脚本きゃくほんいたりするときは、会社かいしゃ業務ぎょうむのひとつとしていてるんですか。
中村なかむら 作品さくひんによってちがいます。たとえば『AIR』のシナリオは社員しゃいんとしていていますけど、東京とうきょうムービー作品さくひんなどの場合ばあいは、日本にっぽん脚本きゃくほん連盟れんめい所属しょぞく1人ひとりのライターとしていています。そういうときは、業務ぎょうむちゅうには一切いっさいいてません。仕事しごとわったのちとか、土日どにちいているかんじですね。
── 『のらみみ』でかくはなし演出えんしゅつをされたときも、土日どにちアフタあふたふぁいぶにやっていたんですか?
中村なかむら そうですね。コンテは土曜どように1にちだけ使つかってえがいたのかな。で、昼間ひるま会社かいしゃ仕事しごとをして、わってからよるわせしたり、原画げんがやシートのチェックをしたりしていました。
── 会社かいしゃはそういう外部がいぶでの仕事しごと黙認もくにんしているんですか。
中村なかむら いえ、ちゃんと自分じぶんから報告ほうこくしています。会社かいしゃ会社かいしゃなので、ぼく外部がいぶでそういう仕事しごとをすることで、それなりにメリットもあるんです。いままでフロンティアワークスと接点せってんのなかった会社かいしゃひとと、つながりができたりしますから。
── なるほど。今回こんかいの『チェブラーシカ』の監督かんとくは、社員しゃいんとしてたずさわっているんですか。
中村なかむら いや、これは社員しゃいんではなく、いち監督かんとくとしてかかわっています。ただ、こえをかけられたのは、ぼくがフロンティアワークスの社員しゃいんだったからだとおもいます。社員しゃいんなら会社かいしゃとしてもコントロールがきくし、日本にっぽん・ロシア・韓国かんこくからだい規模きぼなプロジェクトだからストレスもおおきいだろうし。長期ちょうきにわたるプロジェクトになること予想よそうできていましたから。外部がいぶかられてきた監督かんとくさんをなん年間ねんかん拘束こうそくして、そのストレスのなかつづけることって、なかなかむずかしいとおもうんですよ。そういう意味いみで、こいつならえるんじゃないかという計算けいさんもあったとおもいます(笑)。

── 中村なかむらさんにとっては、これが監督かんとくデビューさくになるわけですよね。映像えいぞう作品さくひん演出えんしゅつにはまえから興味きょうみがあったんですか。
中村なかむら そうですね。元々もともと子供こどもころはちミリビデオカメラをいじってあそんだりしてましたし、勝手かってにストーリーをつくって人形にんぎょうとかであそぶのもきでしたし。グラフィックデザインの仕事しごとも、構図こうず配置はいちなどのバランスをかんがえるというてんで、映像えいぞう作品さくひんづくりとつうじるものがあるとおもっていましたから。一見いっけん脈絡みゃくらくのない仕事しごとれきおもえるかもしれないですけど(笑)、ぼくなかではすじかよってるんです。
── なるほど。プロジェクトに参加さんかするまえから『チェブラーシカ』という作品さくひんはご存知ぞんじだったんですか。
中村なかむら ええ。っていましたし、てもいました。
── 最初さいしょ参加さんかしたのが、2004ねんごろ
中村なかむら そうですね。2004ねんにロシアへって、旧作きゅうさくスタッフへのインタビュー映像えいぞうったんです。かくか、ドキュメンタリーをつく予定よていがあったのかな。結局けっきょくそれは番組ばんぐみとしては成立せいりつしなくて、ディズニーさんから発売はつばいされた旧作きゅうさくのDVD特典とくてんとして、そのフッテージが使つかわれたんですが。
── ああ、ユーリー・ノルシュテインとか、エドゥアルド・ウスペンスキーとか、レオニード・シュワルツマン(旧作きゅうさく美術びじゅつ監督かんとく)とかがてくるやつですよね。あれがそうなんですか。
中村なかむら ええ。せっかくロシアにってオリジナルばんのスタッフにはなしいてくるんだから、映像えいぞうってこい、演出えんしゅつもおまえがやれ、と。だれわれたのかはおぼえてないんですけど、あんまり見通みとおしがないままってたがします。旧作きゅうさくを「三鷹みたかもりジブリ美術館びじゅつかん配給はいきゅうでリバイバル公開こうかいするというはなしも、当時とうじはなかったんじゃないかな。
── 具体ぐたいてき新作しんさくつく作業さぎょうはいってから、どんなところからはじめられたんですか。ストーリーから? それとも映像えいぞうてきめんから?
中村なかむら まずは、コンセプトをめることからはじめました。本国ほんごくロシアでは、だいさく公開こうかいからかぞえると40ねんもの歳月さいげつっていて、最後さいごつくられた短編たんぺんからかぞえると、30ねんちかくも新作しんさくていないわけです。あの4ほんしかない旧作きゅうさくのエピソードを、ロシアじんは30〜40年間ねんかんかえかんつづけている。そこでぼくが「じゃあ、今回こんかいはフルCGでつくりましょう」とかってもね(笑)。方法ほうほうろんはいくつかあるとおもうんですけど、そこでどういうとしどころをつけるか、どういうチャンネルですか、それをしっかりとかんがえるところからスタートしました。極端きょくたんはなしぜんロシア国民こくみんてきまわしかねないですから。
── かなりなやまれたんですか。
中村なかむら いや、そんなになやまなかったです。いくつかやりかたかんがえて、やっぱり旧作きゅうさく同様どうようパペットでつく以外いがい方法ほうほうろんはない、と。
── 構成こうせいにするというのは、最初さいしょからまっていたんですか。
中村なかむら ええ。
── すべ新作しんさくではなく、旧作きゅうさくのリメイクパートをれるというアイディアはどの段階だんかいまったんですか。
中村なかむら それもいちばん最初さいしょからめてました。なん旧作きゅうさくつづけているロシアじんにとっては、はっきりってリメイクパートなんて必要ひつようないとおもうんです。でも、やっぱり日本にっぽんではチェブラーシカをっているひとらないひとがいる。そうなると、チェブラーシカってなんなんだ? という世界せかいかんであったり、キャラクターせいみたいなものを説明せつめいするじょうで、あれ以上いじょうによくできただいってないんですよ。だったら、新作しんさく旧作きゅうさくのリメイクにするのがいちばんただしい。それがもっと間違まちがいがないだろうということで、ああいうつくりになったんです。
── リメイクパートは、シナリオから構図こうずから、すべてオリジナルばん準拠じゅんきょしてつくられているんですか。
中村なかむら そうです。旧作きゅうさくなんなおして、そのままこす作業さぎょうからはいっています。コンテはこしませんでしたけど、すべてのカットをキャプチャーして参考さんこうにしました。ただ、旧作きゅうさく画面がめんサイズがスタンダードですけど、今回こんかいはビスタなんですよね。違和感いわかんのないレイアウトにするにはどうしたらいいか、コンテと撮影さつえい段階だんかいでかなり苦心くしんしました。

── 制作せいさくちゅう、オリジナルばんのスタッフに意見いけんをあおいだりされたんですか。
中村なかむら いや、かなり初期しょき段階だんかいではありましたけどね。さっきもいましたが、2004ねん旧作きゅうさくスタッフのノルシュテインやシュワルツマンといった人達ひとたちいにって、新作しんさくつくるにあたってどうすればいいか助言じょげんをあおぎました。でも、かれらのほうからは「こうしなければいけない」みたいな意見いけんとくになく、とにかく「カチャーノフの作品さくひん教科書きょうかしょにしなさい」というひとことだけをもらいました。だからぼく助監督じょかんとくは、旧作きゅうさくけい600かいぐらいはてますね。部分ぶぶんてきなチェックもふくめてですけど。
── 脚本きゃくほん金月きんげつ龍之介りゅうのすけさん、島田しまだみつるさん、中村なかむら監督かんとく、ミハイル・アルダーシンさんというけいめいほうがクレジットされていますが、分担ぶんたんみたいなものはあったんですか。
中村なかむら 極端きょくたんなかたちでの分担ぶんたんはなかったです。日本にっぽんがわえば、ぼくがまず大雑把おおざっぱなシノプシスみたいなものをつくって、2のシナリオを島田しまださんにげて、3金月きんげつくんげたのかな。で、それぞれからがってきたものをぼくがまとめてなおし、ロシアがわおくって、こうとセッションしながらまたなおしていくというやりかたでした。えて分担ぶんたんといえる部分ぶぶんげるなら……マーシャというキャラクターをつくったのはぼく。「シャパクリャクの相談そうだんしょ」というはなしつくったのは島田しまださん。奇術きじゅつというアイディアをしたのは金月きんげつくんですね。
── サーカスのはなしにするとモブシーンが大変たいへんになるな、みたいな懸念けねんはなかったですか?
中村なかむら いや、モブシーンは最初さいしょからやりたかったんです。それはコンセプトにもかかわるテーマだったんですけど……カチャーノフ監督かんとくのオリジナルばんは、基本きほんてきに12フレームでられていたそうなんです。いわゆる2コマですね。で、ロシアじんはその12フレームのうごきに、「“できそこないのおもちゃ”であるチェブラーシカがうごく」というニュアンスをふかかんっているらしくて。
── そのカクカクしたかんじに意味いみがあるんだ、と。
中村なかむら そう。だけど40ねんったいま観客かんきゃくはそういうふうにはおもわないんじゃないか、と。チェブラーシカも、ワニのゲーナも、本当ほんとうきているようにおもわせなきゃいけないんじゃないか、とかんがえたんです。だから今回こんかいえて24フレームにして、できるだけこまかいニュアンスをすという方法ほうほうろんえらんだ。まち人々ひとびとや、サーカスのモブシーンをれたのも、そういう理由りゆうです。「このまち本当ほんとうにあるし、この人達ひとたち実在じつざいする」というつもりでつくったんです。

── 実在じつざいかんすための要素ようそのひとつが、モブだったんですね。
中村なかむら ええ。旧作きゅうさくだと、ゲーナのいえ毎回まいかいバラバラだったりするんですけど、今回こんかいまち全体ぜんたいのマップもつくれるようなかんじで設定せっていこして、それをもとにセットをんでいます。あさひるばんでの太陽たいよううごかしかたみたいなこと考慮こうりょれて、できるだけ旧作きゅうさくよりも「この世界せかい本当ほんとうにある」というかんじをそうとしました。あと、ぼく勝手かっておもみですけど、手塚てづか治虫おさむへのオマージュとして……やっぱり初期しょき手塚てづか作品さくひんといえばモブシーンじゃないですか(笑)。ノルシュテインと手塚てづかさんは親交しんこうがあったし、じゃあれとこうか、というのもすこしあります。
── 旧作きゅうさく映像えいぞう質感しつかんは、ちょっと現実げんじつてきかんじがありますよね。背景はいけいとかもホリゾントをそのままいろえして使つかっていたりして。今回こんかい新作しんさくは、全体ぜんたいてきやわらかな色調しきちょうで、そら普通ふつう青空あおぞらだったりしますね。
中村なかむら それもやっぱりおなじような理由りゆうで、やや写実しゃじつてきにすることで「この世界せかい本当ほんとうにある」とかんじてもらうためのものです。よーくるとづいていただけますけど、背景はいけいくもなんかもすこしずつうごいてるんです。それに付随ふずいして、地面じめんうつったくもかげうごいたりしてます。まわしするとかりやすいとおもうんですが。
── へええ。
中村なかむら そういう、ハッキリとはつたわらないかもしれないけど、ながらどこかで体感たいかんしていただけるようなディテールのかさねはしています。
── 共同きょうどう脚本きゃくほんとクリエイティブ・プロデューサーとして参加さんかされているミハイル・アルダーシンさんは、どの段階だんかい参加さんかされたんですか。
中村なかむら えーと、参加さんかしてもらったのは2006ねんぐらいの段階だんかいだったとおもいます。かれはユーリー・ノルシュテインのおしの1にんで、ノルシュテインから「ロシアじんのアドバイザーが必要ひつようだろう」とわれて紹介しょうかいしてもらったんです。で、かれがいちど京都きょうととき、1にちちゅうずっとりついて「参加さんかしろ、参加さんかしろ」と口説くどきまして(笑)。それではいってもらったんです。
── おもには、旧作きゅうさくにあるロシアてきなテイストとかをしてもらったんですか? ちょっとうらさびしいかんじとか。
中村なかむら いや、むしろ……そのあたりの感覚かんかくって、むずかしい問題もんだいなんですよね。日本人にっぽんじんおもっているチェブラーシカぞうと、ロシアじんおもっているそれというのは、本当ほんとうおなじものかどうかはからないじゃないですか。ぼくはなしいたかぎりでは、日本人にっぽんじんはチェブラーシカを哲学てつがくてきとらえすぎている、と。
── ああー。
中村なかむら ちょっと気取きどったいいかたをすると「アイデンティティをたない存在そんざいが、友達ともだちというのコミュニティに参加さんかすること自我じが確立かくりつする」みたいなね。もちろんそういう構造こうぞうえがかれているんだけど、そこはロシア人的じんてきにはあんまり重要じゅうようなポイントじゃない。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」「だれかのためになにかをしてあげること」とか、そういうシンプルなことがテーマなのであって、べつむずかしい哲学てつがくはいらないんだ、と。40年間ねんかん、あの4ほん短編たんぺんかえかんつづけてきて、ロシアじん辿たどいたチェブラーシカぞうみたいなものがあるんです。
── なるほど。
中村なかむら この作品さくひんつくときぼくなかでは「日本人にっぽんじんのためにつくる」ということ第一義だいいちぎとしてかんがえていなくて、30ねん新作しんさくつづけてきたロシアの人達ひとたちたのしんでもらえなければ、日本にっぽんでの成功せいこうもないとおもったんです。だから、ぼくはロシアじんのアドバイスにかんしても、納得なっとくできるものはすべれたし、納得なっとくできないものもぼく自身じしん納得なっとくできるまで意見いけんのやりとりをしました。結果けっかてきには7〜8わり、ロシアからの意見いけんれてます。
── 具体ぐたいてきには、どういうてんで?
中村なかむら たとえば最初さいしょのシナリオの段階だんかいだと、奇術きじゅつとマーシャというキャラクターは、おじいさんと孫娘まごむすめという設定せっていではなくて、ちちむすめという設定せっていだったんです。しかも、最後さいご2人ふたり出会であうんだけど、むすめではなかったというオチだった。でも、出会であえたからいいじゃないか、みたいなストーリーラインだったんです。
── まあ、それはそれでアリですよね。
中村なかむら だけど、ロシアがわから「これじゃダメだ」と。2人ふたり本当ほんとうつながりがなきゃダメだし、しかも親子おやこじゃなくておじいさんと孫娘まごむすめほうがいい、と。じゃあマーシャの両親りょうしん存在そんざいはどうするの? といたら「そんなものは関係かんけいない」(笑)。いやいや、になるでしょ! ってったら「大丈夫だいじょうぶにならないから」みたいなかんじで、そんなやりとりをした結果けっかいまのかたちにきました。いまにしておもえば、カチャーノフ監督かんとくとレオニード・シュワルツマンが最初さいしょにコンビをんだ『迷子まいごになった孫娘まごむすめ』(1966)という作品さくひんがあって、じつはそれにたいするロシアがわからのオマージュだったのかな、とはおもいます。
── それらの意見いけんは、おもにアルダーシンさんをとおして?
中村なかむら そうですね。ぼくもロシアがわスタッフの全容ぜんよう把握はあくしていないんですけど、それぞれに独立どくりつして監督かんとくをしているようなほうたち参加さんかしてくれているので、そういうかたたち意見いけんというのは、けるかぎりいていました。もちろん最終さいしゅうてきなジャッジはぼくがしましたけど、基本きほんてきにはれるスタンスでやっていましたね。

新作しんさくのオリジナルキャラクター“マーシャ”“奇術きじゅつ”そしてチェブラーシカとゲーナの設定せってい

── だい美術びじゅつ監督かんとくのミハイル・トゥメーリャさんというほうが、キャラクター設定せっていえがかれたそうですが、このほうは?
中村なかむら トゥメーリャはアルダーシンがれてきたひとで、アレクサンドル・ペトロフの『老人ろうじんうみ』とかにも参加さんかしているアニメーターです。たりまえですけど、大変たいへん上手うまいし、すごくセンスがいい。今回こんかいは「カチャーノフ・スタイルでやる」ということ旗印はたじるしにしていたので、しんキャラをすにしても、カチャーノフのスタイルで造形ぞうけいしなくてはならない。つまりはレオニード・シュワルツマンのスタイルということなんですけれどね。そこで、トゥメーリャさんにはいろんなタイプのえがいてもらって、「これがいい」「あれがいい」「こうしたほうがいい」というやりとりをしてつくっていきました。かれはベラルーシじんで、とてもいいじんうえに、うたもとても上手うまい。ロシアばんのクラウンのこえは、かれえんじています。
── あ、そうなんですか(笑)。キャラクター設定せっていは、トゥメーリャさんがすべえがかれたんですか。
中村なかむら そうです。共同きょうどう美術びじゅつ監督かんとくなので、もちろんアルダーシンの意見いけんはいっていますけど。
── たとえばしんキャラについて、日本にっぽんがわから「こんなかんじでよろしく」みたいなラフを提示ていじしたりしたんですか。
中村なかむら いや、ないです。ことデザインにかんしては、やっぱりロシアのものなので、こちらがわ最初さいしょなにかを立場たちばにないというか(笑)。まずロシアがわから、アルダーシンとトゥメーリャたちがセッションしてえがげたラフがいろいろなパターンでおくられてきて、そのなかからぼくえらんで「ここはもっとこうならない?」みたいな意見いけんえてもどす、というやりとりをかえしてつくっていました。
 たとえば、バスなんかにしても日本にっぽんのバスとは当然とうぜんちがいますよね。それはこちらがわ想像そうぞうでなんとかできるものではない。マーシャの体操たいそうとかいった服装ふくそう同様どうように、まずロシアがわ意見いけんいてます。で、なに疑問ぎもんおもったらいてみる。「これってどうなの?」「ああ、ロシアではこういうものなんだよ」「そうなんだ。かった」というようなかんじでした。そうやってブラッシュアップしていったものが、最終さいしゅう決定けってい稿こうになっています。
── 今回こんかいはデザインてきにも旧作きゅうさくより洗練せんれんされた印象いんしょうがあります。たとえば、オリジナルばんのチェブラーシカって、やけに毛並けなみがわるかったりしますよね(笑)。
中村なかむら あの旧作きゅうさくのデザインにかんしては、ふたつの意見いけんがあるんですよね。あのよごれたかんじがいいというひともいるし、つるっとしてるほう可愛かわいいというひともいる。それはこのみがかれるところだとおもうんですけど、毛並けなみがボサボサしてるのは、いろいろいてみると、ただ撮影さつえいちゅうにああなっちゃっただけらしいです(笑)。
── ちょっとずつうごかしてるあいだとかに?
中村なかむら そういう意見いけんおおかったですね。それに、むかしのようにああいうがモサッとった状態じょうたいで、24フレームで撮影さつえいするのは、ちょっとむずかしい。勝手かってがワサワサうごいてるようにえちゃったりしますから。旧作きゅうさくは12フレームだから、なんとなくあじわいとしてごまかせる部分ぶぶんがあるんですけど。
── ああ、なるほど。
中村なかむら 今回こんかい、チェブラーシカのはつ登場とうじょうシーンだけはちょっとよごしたんです。とかも若干じゃっかんボサボサで、かおうすよごれてるんだけど、ゲーナのいえれてってもらったときに、かおあらっただろうし、ちゃんとかしてもらっただろう、と(笑)。そういうかんじで徐々じょじょ綺麗きれいにしていってるんです。だから、ロシアばんだいていただくとかるんですけど、画面がめん色合いろあいもちょっとずつえています。オリジナルばんきだったひとのために、序盤じょばんでは色合いろあいをちょっととして、はなしすすむにしたがって現代げんだい調ちょうあかるい色合いろあいになっていく。そこはちょっと最大公約数さいだいこうやくすうねらったというか、どっちもれてしまったというかんじですかね。
 パペットのデザイン自体じたいは、2004ねん最初さいしょにロシアへったとき、シュワルツマンがチェブラーシカの人形にんぎょうつくってくれたんです。当時とうじ人形にんぎょう造形ぞうけいしたほうはもうくなられていたんですけど、そのお弟子でしさんにつくってもらったという人形にんぎょうがあって。それをもとに、まず関節かんせつはいったパペットをつくって、それをロシアじんスタッフと我々われわれはないながら、すこしずつアレンジしていくというかんじでつくりました。

▲リメイクばんのチェブラーシカ登場とうじょうシーン。たしかにがボサボサ

●『チェブラーシカ』中村なかむらまこと監督かんとくインタビュー 後編こうへんにつづく


関連かんれんサイト

『チェブラーシカ』&『くまのがっこう ジャッキーとケイティ』公式こうしきサイト
http://www.cheb-kuma.com/

(10.12.16)