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REVIEW

CD NAVIGATION[早川優]

だい40かい
世界せかい名作めいさく劇場げきじょう『レ・ミゼラブル 少女しょうじょコゼット』Sound Sketch 1
あい感動かんどう世界せかい名作めいさく劇場げきじょう『レ・ミゼラブル 少女しょうじょコゼット』サントラだいだん


 日曜にちようよる30ぶんのBSフジに伝統でんとうの「世界せかい名作めいさく劇場げきじょう」がかえってきた。しかも「ハウス世界せかい名作めいさく劇場げきじょう」のタイトルつきで(CSやブロードバンド配信はいしんばんでは「ハウス」きで表示ひょうじ)。
 やく10ねんぶりの記念きねんすべき新作しんさく題材だいざいは、日本にっぽんでは道徳どうとく教科書きょうかしょやミュージカルでお馴染なじみの「ああ無常むじょう」こと「レ・ミゼラブル」。物語ものがたり主人公しゅじんこうジャン・ヴァルジャンがしんささえとする少女しょうじょコゼットを主役しゅやくえたほんさくは、有名ゆうめい原作げんさくあいらしいヒロインの受難じゅなんげき現地げんち取材しゅざいした異国いこく情緒じょうちょあふれる美術びじゅつなど、「世界せかい名作めいさく劇場げきじょう」のタイトルをかんするに相応ふさわしいシリーズとして放映ほうえいちゅうだ。
 やはり「世界せかい名作めいさく劇場げきじょう」をかたじょうくことのできない音楽おんがくは、『魔法まほう騎士きしレイアース』や『黄金おうごん勇者ゆうしゃゴルドラン』、特撮とくさつ作品さくひんでは「仮面かめんライダー555」の松尾まつお早人はやと担当たんとう。2001ねんの『サイボーグ009』においてメイン・コンポーザー小室こむろ哲也てつや見事みごとにサポート、重厚じゅうこう華麗かれいなオーケストラきょく提供ていきょうしてスコア愛好あいこうけいアニメファンの注目ちゅうもくあつめたことも記憶きおくあたらしい。インデックス・ミュージックから発売はつばいちゅうのサウンド・トラックばんだいしゅうは、不肖ふしょう筆者ひっしゃ構成こうせい担当たんとうさせていただいたのだが、松尾まつおによる『レ・ミゼラブル』の音楽おんがくじつ素晴すばらしく、とく紹介しょうかいさせていただく次第しだいだ。
 ほんさくにおける松尾まつおのコンセプトは、舞台ぶたいとなる近世きんせいのフランスに存在そんざいしてもおかしくないイメージでおとをつむぐことだったという。映画えいが音楽おんがく主要しゅよう効果こうかのひとつに作品さくひん舞台ぶたいとなる世界せかいかん時代じだい表現ひょうげんがあり、こういった異国いこく時代じだいものでは、その役目やくめはぐっとおもくなってくる。ほん作品さくひんでは時代色じだいしょく表現ひょうげんとしてチェンバロがキー楽器がっきえらばれ、情景じょうけい表現ひょうげん音楽おんがく中心ちゅうしんおおくの楽曲がっきょくのイメージを支配しはい近世きんせいヨーロッパのかおりをつたえるやくたしている。
 松尾まつお主要しゅよう登場とうじょう人物じんぶつそれぞれにテーマ・モティーフをあたえるという手法しゅほうる。その音楽おんがくメニューは音響おんきょう監督かんとく高橋たかはし秀雄ひでおがまとめたものを、音楽おんがく造詣ぞうけいふか桜井さくらい弘明ひろあき監督かんとくこまかな指定していくわえて仕上しあげたもの。この2だんかまえのメニューづくりと、松尾まつお本人ほんにん映画えいが音楽おんがくづくりのセンスがくわわって、『レ・ミゼラブル』はここ最近さいきんのアニメ音楽おんがくなかでも指折ゆびおりの充実じゅうじつしたものになったとえる。
 ほん作品さくひんには、番組ばんぐみすうかいただけでだれもが記憶きおくしてしまう明確めいかく旋律せんりつをもった音楽おんがくがいくつもある。なかでももっと代表だいひょうてきなものが、コゼットとファンティーヌのははむすめあたえられたテーマ音楽おんがくである。コゼットの健気けなげ仕事しごとシーンにかせない木管もっかんによる可愛かわいいテーマと、おも当時とうじのフランス社会しゃかい過酷かこくさを表現ひょうげんするために、ファンティーヌ個人こじんのシーンをえて選曲せんきょくされている悲劇ひげきてき色彩しきさいびたテーマは、このサントラでも様々さまざまかたちえてあらわれる。また、さん番手ばんて位置いちするものとしては、コゼットがテナルディエ夫妻ふさいしいたげられる場面ばめんでお馴染なじみのスラブふう音階おんかいかれたテナルディエのテーマがげられる。逆境ぎゃっきょうえる主人公しゅじんこう姿すがたは、いわゆる”名作めいさくもの”の定番ていばんのひとつとえる要素ようそであり、コゼットに感情かんじょう移入いにゅうしているほうであれば、このテーマ音楽おんがくくだけで、名前なまえせられている2人ふたり声優せいゆうさんが作品さくひん世界せかいがいからコゼットにエールをおくるというユニークな趣向しゅこう予告編よこくへんよろしく、コゼットやジャン・ヴァルジャンを応援おうえんしたい気持きもちがにえ々とがってくるはずだ。
 その、ジャン・ヴァルジャンの高貴こうき性格せいかく表現ひょうげんしたそのテーマきょくや、フーガてき書法しょほうでかかれたジャヴェールのテーマきょくなどの人物じんぶつテーマ、コゼットとファンティーヌのあいのテーマといえる「おかあさんの子守こもり心情しんじょうきょく、サスペンスフルなアクションきょくまで、ほん作品さくひん音楽おんがくはばじつひろい。
 今回こんかいのアルバムはだいだんということで、物語ものがたりのプロローグから、コゼットが正体しょうたいかしたジャン・ヴァルジャンとともに旅路たびじるまでのながれを音楽おんがくさい構成こうせいしている。だいかい録音ろくおんつくられた音楽おんがくは、演奏えんそう楽器がっきちがいのヴァリエーションのほかは、主題歌しゅだいかアレンジの予告編よこくへん音楽おんがくうにおよばず、サブタイトルやアイキャッチなどのみじかいものをふくめて、そのすべてを収録しゅうろくした。かつてミュージカル「レ・ミゼラブル」の日本にっぽん初演しょえん舞台ぶたいでコゼットをえんじ、ヴァルジャンやく滝田たきたさかえから“おコゼ”の愛称あいしょうばれた斉藤さいとう由貴ゆき作詩さくし歌唱かしょうつとめるOP・EDきょくふうこう」と「ma maman (わたしのおかあさん)」は、双方そうほうTVてれびサイズでおさめる。名作めいさくファンはもとより、良質りょうしつなアニメ音楽おんがくもとめるファンのほう是非ぜひともおきいただきたいアルバムである。
文中ぶんちゅう敬称けいしょうりゃく執筆しっぴつ早川はやかわゆう

■DATA
世界せかい名作めいさく劇場げきじょう『レ・ミゼラブル 少女しょうじょコゼット』Sound Sketch 1」
ぜん38トラック 収録しゅうろく時間じかん:57ふん50びょう
インデックス・ミュージック NECA-30188
2007ねん5がつ23にち発売はつばい 定価ていか3000えん税込ぜいこみ
[Amazon]

執筆しっぴつしゃから一言ひとこと
 先日せんじつ羽田はた健太郎けんたろうさんの突然とつぜん訃報ふほうはショックだった。せんだって『宝島たからじま』のDVDのライナーのためにおはなしうかがったばかりだったし、作曲さっきょく・ピアニストとして表現ひょうげんふかみをくわえていく道程どうていの、58さいというわかさでられたことは本当ほんとうしまれてならない。
 6がつにち告別こくべつしき予報よほうはれれのちあめだったが、しきあいだ一瞬いっしゅん天気てんき見舞みまわれた程度ていど。さらにそのあめなか式場しきじょうまえのテントへ移動いどうした参列さんれつしゃみみ設置せっちされていたモニターからひびいてきたのは、羽田はたさんらがかなでるB・バカラック作曲さっきょくの「あめにぬれても」のメロディだった。そのあまりにも絶妙ぜつみょうなタイミングに、そこここの参列さんれつしゃからは「さすが羽田はたさん」というささやきがかれた。やがて出棺しゅっかんまえながれたのはチャップリンの「スマイル」。そして、盟友めいゆう佐藤さとうまこと彦氏のあくまであかるいジャズ・ピアノによる「聖者せいじゃ行進こうしんをバックに、参列さんれつしゃ手拍子てびょうしって出棺しゅっかんとなった。家族かぞくほう以外いがいには病気びょうき苦闘くとうかくし、最期さいごまでピアノと音楽おんがくきたプロフェッショナルならではのご葬儀そうぎだったとおもう。あらためて羽田はた先生せんせいつくされた音楽おんがく世界せかい感謝かんしゃささげつつ、ご冥福めいふくをおいのりいたします。
 

だい41かいつづ

(07.07.02)

 
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