(Translated by https://www.hiragana.jp/)
WEBアニメスタイル_REVIEW
web animation magazine WEBアニメスタイル

だいかい
だいかい
だいかい
だいかい
だいかい
だいかい
だいかい
だいかい
だいかい
だい10かい
だい11かい
だい12かい
だい13かい
だい14かい
だい15かい
だい16かい
だい17かい
だい18かい
だい19かい
だい20かい
だい21かい
だい22かい
だい23かい
だい24かい
だい25かい
だい26かい
だい27かい
だい28かい
だい29かい
だい30かい
だい31かい
だい32かい
だい33かい
だい34かい
だい35かい
だい36かい
 
REVIEW
DVD NAVIGATION

だい23かい
鮮烈せんれつなる色味いろみのショック!
 オリジナルカラーの再現さいげんせいが、感興かんきょうあらたなものに」
宇宙うちゅう戦艦せんかんヤマト TV DVD-BOX[初回しょかい限定げんてい生産せいさん])

氷川ひかわ竜介りゅうすけ(アニメ評論ひょうろん) 

 「ついに……」というのがBOXぼっくす入手にゅうしゅしてばん再生さいせいして最初さいしょ感激かんげき言葉ことばだ。
 あまりにもよく見知みしったセルそのままの画質がしつで、うご映像えいぞうとして眼前がんぜんあらわれたのだから。長年ながねん願望がんぼうが、またひとつかなえられた。
 1974ねん最初さいしょTVてれび放送ほうそうされた『宇宙うちゅう戦艦せんかんヤマト』は、歴史れきしてき作品さくひんである。中学生ちゅうがくせい高校生こうこうせい以上いじょうがアニメに熱中ねっちゅうするということ自体じたいおおきく進展しんてんさせたというてんで、現在げんざいのアニメの発展はってんじょうきょうすべてのルーツとってい。という定番ていばんはなしいまさら言葉ことばかさねるまでもないからここまでにして、以下いか私的してき今回こんかいのHDリマスターBOXぼっくすのみどころ、とくにそのオリジナル色調しきちょう再現さいげんせいへの感慨かんがいしぼってかたってみたい。

 そもそもわたし現在げんざいでもいだつづけているアニメ制作せいさく技法ぎほうへの興味きょうみは、『宇宙うちゅう戦艦せんかんヤマト』のスタジオ見学けんがくによってつちかわれたものである。ほん放送ほうそう当時とうじ(34ねんまえ!)、東京とうきょう練馬ねりまさくらだいにあった制作せいさく現場げんば(オフィスアカデミー)にったのが、つまるところ人生じんせいあやまはじめであったというわけだ。
 見学けんがく動機どうきは、もちろんきな作品さくひん工程こうていりたいということだが、じつ下心したごころもあった。それは、「セルたい」「できればしい」ということであった。
 セルはもうすこのちにファンのあいだ高値たかね取引とりひきされるようにもなっていく。やがてむしプロダクションで『セル盗難とうなん事件じけん』が発生はっせいするなど、「価値かち」が社会しゃかいてきにも認知にんちされてからけはエスカレートしていくが、まだセルは撮影さつえいわれば産業さんぎょう廃棄はいきぶつあつかいであり、ファンにも「おみやげ」としてくばっているという時代じだいだったのだ。アニメ雑誌ざっし創刊そうかんされるまえだから、それも口伝くでんてき情報じょうほうだけがたよりである。
 ではなぜセルしかったか。それはもちろん「セルがうつくしいから」である。透明とうめいかんあざやかさをそなえ、なおかつすこししっとりと湿しめったような感触かんしょくもあるあでやかな質感しつかん。「画材がざいとしてセルとセル表現ひょうげん素晴すばらしい」と、ある著名ちょめい作家さっかかたってくれたことがあるので、たんなるわたしおもみではない。いろデータを配置はいちしたデジタル映像えいぞうじょう虚像きょぞうちがい、「リアル世界せかいてきたキャラクター」としての存在そんざいかんもある。映画えいが俳優はいゆう写真しゃしんちかいものでもあり、めい場面ばめんった一服いっぷく絵画かいがとしてもたのしめる。
……とまあ、実際じっさいのセルさわったことがあれば、じつはそんなにいセルばかりではないのは御存知ごぞんじだろうから、これはすこしいいすぎ(笑)。まあ、アニメをつくげるパーツだから当然とうぜんなのだが、でもやっぱり究極きゅうきょくのアニメグッズなのである。

 じつわたしにはもうひとつ、セルしくなる堅実けんじつ動機どうきがあった。それは、「プラモデルを正確せいかく塗装とそうしたいから」である。
 なにしろまだ「TVてれびまんが」の時代じだいだ。当時とうじた『宇宙うちゅう戦艦せんかんヤマト』のプラモデルは、ヤマトのかん底部ていぶにゼンマイがついたり、コスモゼロになぞ分離ぶんり合体がったい機構きこうがついていたり、徹底的てっていてき児童じどうけアレンジがほどこされていた。工作こうさく技能ぎのう獲得かくとくした中高生ちゅうこうせい以上いじょうのファンにとって、そのゼンマイをおもむろにニッパーでバリバリといてプラいたをハメて改造かいぞうするのは、往年おうねん通過つうか儀礼ぎれいみたいなものだったのだ。
 というながれのなかで、「いったいヤマトやコスモゼロは、本当ほんとうなにしょくなんだ?」というのは、非常ひじょうりたいことのひとつだったのである。ヤマトはプラモのように水色みずいろじゃないし、コスモゼロが成形せいけいしょくぎんじゃないのは、もうさすがに当時とうじTVてれびでもはっきりしてた。とはいいながら、当時とうじ放送ほうそうTVてれび受像じゅぞう状況じょうきょうだと、グレーにしてもいったいどういう色味いろみなのか、TVてれび画面がめん写真しゃしんってもいろころんでしまう。雑誌ざっし印刷いんさついろが「ころぶ」のもっていたから、「本当ほんとういろ」をるには「撮影さつえいされる現物げんぶつ」、つまりセルにあたるしかないとおもっていたわけなのだ。

 現実げんじつにセル入手にゅうしゅしてからは、プラモのことはどこへやら。懸命けんめいにその「本当ほんとういろ」を後世こうせいつたえるために保存ほぞんしようとした。なにしろヤマトは「ヤマトしょく」でられているという衝撃しょうげき事実じじつかってしまったのだ。ヤマトの上側うわがわいろ指定していは「Z」という特色とくしょく番号ばんごうでシリーズされ、あか部分ぶぶんは「ZR」(Rはレッド)で指定していされている。しかも、その色味いろみかいかさねるごとにだんだんくなっているという。そう、プラモのいろ水色みずいろとは、じつはZのあかるいほういろだったということまでかってしまった。
 こうやってくちは「プラモのいろ」なのに、探求たんきゅうはどんどんくなっていくというわけだ。カラー写真しゃしん自体じたいたかくてそんなに使つかえない時代じだいだったのに、反射はんしゃガラスをって、太陽光たいようこう(デイライト)の500wのライトをって、三脚さんきゃくでカメラを固定こていしてレリーズでぶれをふせぎ、ものすごい苦労くろうをして「セルつまみ」の写真しゃしんのこそうとした。それは『ヤマト』のセルのいろが、本当ほんとうにきれいだったからだ。その感動かんどうのこそうとした。ただし、「10ねんのこればいい」というぐらいのみだった。19さいか20さいだと10ねんでも長大ちょうだい時間じかんなのだ。
 これほどまでに「セルの色味いろみ、それ自体じたい保存ほぞんしたかった」というファンもこのなかにそんなにいないとおもうのだが、そんなわたしが、「まさか、こんなにオリジナルのセルのいろのまま再現さいげんできる時代じだいようとは!」となみだにむせぶほどの再現さいげんせいである。しかも机上きじょうのノートPCで再生さいせいできるわけだから、まさにリマスターまんさいである。

 この34年間ねんかん、ずっともとめていたあるしゅ理想りそう状態じょうたいがようやくはいった。見慣みなれているはずの映像えいぞうなのに、はじめてるような感慨かんがいたのしむことができる。
 まず注目ちゅうもくしてほしいのは、けやきあいだ八郎はちろう華麗かれいなる美術びじゅつである。とくにガミラスぼしやイスカンダルぼし関係かんけいの、アバンギャルドでファンタジックで、しかもSFアートとしていちきゅう美術びじゅつは、今回こんかい再現さいげんせいいDVDではじめてその真価しんかかるのではないか。おもわぬところに原色げんしょくっぽいいろ配置はいちさせながら、りょくむらさき、あるいは黄色おうしょくなどフィルムで発色はっしょくしにくい微妙びみょう色味いろみがデジタルの威力いりょく鮮明せんめい再現さいげんされ、ているだけで美的びてき感動かんどうおぼえる。まさに「美術びじゅつ」なのである。
 では、セルはどれくらいセルのいろ再現さいげんせいがいいのか。すこしれいげてみよう。
 たとえばだいからだいまでとだい以後いごでは、会社かいしゃえたことによってセルの色味いろみがかなりちがう……というはなしは、当時とうじスタッフからいて「なるほど!」とおもったことである。しかし、このDVDではそんなことはあらためてわなくても、もう色味いろみちがって再生さいせいされてしまう。古代こだいくんや沖田おきた艦長かんちょう肌色はだいろは、ピンク色ぴんくいろっぽい色調しきちょうから茶色ちゃいろけいわるし、しま大介だいすけいかりマークはみどりっぽい色味いろみから深緑しんりょくっぽくわる。再生さいせい条件じょうけんさえととのえば、セル自体じたいちがいのままにたのしめるのである。
 トリビアな方向ほうこうせいでもビックリした。セルのかさねの枚数まいすうかったり、ブラシの質感しつかん判別はんべつつくのだ。セル時代じだいではボカシの特効とっこう特殊とくしゅ効果こうか)はエアブラシで表現ひょうげんされ、普通ふつうはセルうえからく。しかし、場合ばあいによってはうらからく。ガミラスかん光線こうせんなどは、しろいベタりにうらからいち蛍光けいこうピンクをいて、ひょうからもう一度いちどいて、透過とうかこうちか表現ひょうげんにしている。それはセルの実物じつぶつればかるが、画面がめんでは「ひかってる」としかからない。
 今回こんかいのDVDでは、カットによってはブラシをひょうからかけているかうらからかけているか、区別くべつがつくのである。うらからかけるとセルを透過とうかするのですこ湿しめったかんじにうつるが、ひょうがけのブラシはかわいたかんじになる。さらにBセルのうえにCセルがるとひょうがけのブラシもつやるので、かさねのちがいまで再現さいげんされてしまう。とんでもない再現さいげんせいである。
 そのぶん、セルきずとホコリも相当そうとう目立めだってしまうし(苦笑くしょう)、ブラシきずもはっきりかるのではあるが、それもふくめて「素材そざい一所懸命いっしょけんめいわせて、巨大きょだいなイメージをつくろうとしている」というかんがあって、なんだかみょうけてきた。
 一部いちぶ色味いろみやエラーはデジタルで修正しゅうせいされているので、かならずしも完全かんぜんオリジナルとはえないところは微妙びみょうだが、沖田おきた艦長かんちょう襟元えりもとのオレンジしょくて「これだよ、これ! よくってるあのオレンジだよ!」という歓喜かんきまえにはかなわない。こうしたいろ再現さいげんせいで、あのななしょく星団せいだん空母くうぼ艦載かんさい鮮烈せんれつ色味いろみが、戦闘せんとうビジュアルの作画さくがはげしさとともにたのしめるのだから、本当ほんとうかったなとおもう。

 作品さくひんのコンテンツそれ自体じたいとしては、当然とうぜんふるびたてんおおいが、この再現さいげんせいでやはり「原点げんてん迫力はくりょく」がかびがってきたようにおもう。そこささえていた美的びてきセンスが補完ほかんされることで、作品さくひんあらたな魅力みりょくさい発見はっけんできる。こうしたことも、21世紀せいきてきなアニメのたのしさの一貫いっかんなのだろう。そんな認識にんしきあらたにしたDVD-BOXであった。

P.S.添付てんぷされたあん秀明ひであき監督かんとくによるプラモデルのすばらしさについては充分じゅうぶん言及げんきゅうされているので割愛かつあいしたが、「そもそもプラモだった」という個人こじんてき願望がんぼうとのシンクロがうれしかった。また形状けいじょうてきにも「まだまだ完遂かんすいできていなかったオリジナル再現さいげんへの追求ついきゅう」というてんで、リマスターとたましいレベルで共鳴きょうめいしているてんが、なにより重要じゅうようなことなのである。34ねんぎて、いまなお『ヤマト』が「たのしい」「うつくしい」とおもえる事実じじつおもみは、この商品しょうひんをきっかけに、ますますおおきくなっていくのではないだろうか。





●DVD情報じょうほう
宇宙うちゅう戦艦せんかんヤマト TV DVD-BOX[初回しょかい生産せいさん限定げんてい
BCBA-3167/DVD7まいぐみやく624ふん)/ドルビーデジタル(モノラル)/4:3
価格かかく:39900えん税込ぜいこみ
初回しょかい封入ふうにゅう特典とくてんそう指揮しき西崎にしざきよしてん×監修かんしゅうあん秀明ひであきによる、1/700『宇宙うちゅう戦艦せんかんヤマト』インジェクションキット 原型げんけい制作せいさく真鍋まなべ正一しょういち 全長ぜんちょうやく40cmせんちめーとるバンダイホビーせい完全かんぜん新造しんぞうがた
※プラモデル単品たんぴんでのリリース予定よていはありません
ライナーノーツ(28P)
発売はつばいもと:バンダイビジュアル
販売元はんばいもと:バンダイビジュアル
[Amazon]
 


(08.06.03)

 
  ←BACK ↑PAGE TOP
 
   

編集へんしゅう著作ちょさくスタジオゆう  協力きょうりょくスタイル
Copyright(C) 2000 STUDIO YOU. All rights reserved.