DX×ダイバーシティ発想はっそうはSDGsを解決かいけつする 次世代じせだいエクスペリエンス「じぶんランウェイ」の実践じっせんからまなんだこと

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 連載れんさいだい23かいは、博報堂はくほうどう生活せいかつしゃエクスペリエンスクリエイティブきょく デザイナーの永野ながの祐子ゆうこと、プラナーのひろしげいけい登場とうじょう自主じしゅ提案ていあんからまれた3Dアバターためしサービスプロトタイプ「じぶんランウェイ」の開発かいはつたずさわったおにんに、バーチャル空間くうかん瞬時しゅんじ同時どうじ複数ふくすうためし体験たいけん可能かのうという「じぶんランウェイ」の特徴とくちょう開発かいはつのプロセス、そこからられたづきと展望てんぼうについてきました。

博報堂はくほうどうグループにおいて、クライアント企業きぎょうのデジタルトランスフォーメーション(DX)を、マーケティングDXとメディアDXの両輪りょうりん統合とうごうてき推進すいしんする戦略せんりゃく組織そしき「HAKUHODO DX_UNITED」。その唯一ゆいいつのクリエイティブ部門ぶもんである「生活せいかつしゃエクスペリエンスクリエイティブきょく」は、“潜在せんざい需要じゅよう発掘はっくつし、生活せいかつしゃあらたな好意こうい行動こうどう喚起かんきし、よりよい生活せいかつ社会しゃかいつくす”といった価値かち創造そうぞうがたのDXをリードする部門ぶもんです。キーワードは、「あいされるDXは、カタチにできるか?」。このテーマにむメンバーたちの多様たよう視点してんをご紹介しょうかいしていきます。

このみのふく自分じぶんのアバターを客観きゃっかんてきしん体験たいけん

──3Dアバターためしサービスプロトタイプ「じぶんランウェイ」を開発かいはつされました。特徴とくちょうおしえてください。

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ひろし

ひろし既存きそんためしサービスとのちがいは、フォトリアルな自分じぶん自身じしんの3Dアバターがためしちゃくすることです。特徴とくちょうたんためしちゃくするだけではなく、複数ふくすう自分じぶんのアバターがファッションショーのようにランウェイを続々ぞくぞくあるくこと。このみのふく自分じぶんのアバターのあるいている姿すがたうし姿すがたなどを360°視点してん客観きゃっかんてきるという、いままでにない体験たいけん提供ていきょうします。ためしちゃくしてみたいコーディネートは、いちに6種類しゅるい選択せんたくできるので、ランウェイをある姿すがた比較ひかくしながら検討けんとうすることも可能かのうです。

永野ながの:その瞬時しゅんじにランウェイ体験たいけんをできることが魅力みりょくひとつです。パートナーである株式会社かぶしきがいしゃVRCの高速こうそく3Dアバター生成せいせい技術ぎじゅつ即時そくじオートフィッティングがたバーチャルためし技術ぎじゅつ活用かつよう実現じつげんしました。専用せんようのボディスキャンの筐体きょうたいはいって20びょうほどで、リアルでこう精細せいさいなアバターが完成かんせいします。6種類しゅるいのコーディネートをいちためすことができるのも、ランウェイをあるくことも、その姿すがた客観きゃっかんてきることも、すべてバーチャルだからできる体験たいけんです。色々いろいろなコーディネートの自分じぶんがランウェイをあるいている。その姿すがたるのは、ちょっと面白おもしろい。ワクワクした体験たいけんをもたらすことができるのが「じぶんランウェイ」の特徴とくちょうです。

ひろし:アバターがうごかないせいたいのままだと、自分じぶんている実感じっかんきにくいという課題かだいがありました。ランウェイをあるくことで、ふくのゆらめきやひろがりなど、こなしたとき雰囲気ふんいきがよりリアルに体感たいかんできます。

──「じぶんランウェイ」の開発かいはつ経緯けいいについておしえてください。

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永野ながの

永野ながの博報堂はくほうどうDYグループないでは、メタバースをはじめXR領域りょういきのクリエイティブやソリューション開発かいはつ、ビジネス開発かいはつおこなうプロジェクト「hakuhodo-XR」があります。新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいによって商業しょうぎょう施設しせつなどリアルなおみせでのためしがしづらい状況じょうきょうにあり、またECだとサイズがわないといった課題かだい顕在けんざいしていました。そうした状況じょうきょうなかでhakuhodo-XRの知見ちけんによるテクノロジーを使つかったあたらしいためしサービスの企画きかくまれました。

ひろし:リアルなためし感覚かんかくかしながら、バーチャルならではのためし体験たいけんをできないだろうか?とかんがえました。ランウェイをあるくというアイデアは「ショッピングモールの通路つうろやアトリウムなどでファッションショーが開催かいさいされたら面白おもしろそうだな」と妄想もうそうしたのがきっかけです。それをリアルな空間くうかんではなく、スマホアプリで再現さいげんしたらどうなるか、と発想はっそうをふくらませていきました。

──「じぶんランウェイ」はどのようなプロセスを体験たいけんできるのでしょうか。

永野ながの:まず、ボディスキャンの専用せんよう筐体きょうたい自分じぶんの3Dアバターをつくります。そのはスマホのアプリのみで操作そうさ可能かのうです。「じぶんランウェイ」のアプリにラインアップされているコーディネートのなかからこのみのものをえらび、ランウェイへGOすると、そのえらんだコーディネートを自分じぶん続々ぞくぞくとウォーキングして登場とうじょうします。360°自由じゆう視点してん移動いどうできたり、複数ふくすうなかから確認かくにんしたい自分じぶんにフォーカスしたり、比較ひかくしてたり、バーチャルならではのためし体験たいけんできます。った洋服ようふくがあれば、より詳細しょうさい情報じょうほう閲覧えつらんでき、最終さいしゅうてきにはかくブランドのECに遷移せんい購入こうにゅうするというながれを想定そうていしています。

──「じぶんランウェイ」を導入どうにゅうしていることが、購入こうにゅう動機どうきとなる可能かのうせいこうそうですね。開発かいはつ段階だんかいとくくばったてんなにでしょうか。

永野ながの:ランウェイのシーンのユーザーインターフェース(UI)は、このアプリの一番いちばんなので、どんな演出えんしゅつにするか検証けんしょうかさねました。そもそも、一般いっぱんひとはランウェイをあるくことはできませんよね。モデルあるきをする自分じぶんが、続々ぞくぞくと6にん登場とうじょうする。その面白おもしろさはどんなUIだったら実感じっかんしてもらえるか?チームでがった議論ぎろんでもあり、苦心くしんしたところでもあります。

ひろし:ランウェイの背景はいけいもいろいろかんがえました。観客かんきゃくがいたり、ハワイのような海辺うみべ景色けしき東京とうきょう表参道おもてさんどうのような都会とかい風景ふうけい、セレクトした洋服ようふく雰囲気ふんいき世界せかいかんによって背景はいけいわったり、有名人ゆうめいじん一緒いっしょあるけたりするなど自由じゆう発想はっそうしながら議論ぎろんしました。結果けっか、プロトタイプの段階だんかいではふく主役しゅやくにすることに主眼しゅがんいてシンプルなランウェイにまりました。

いたいひといたいものがちゃんととどく SDGsの達成たっせいにもつながるDX

──「じぶんランウェイ」はどのようなブランドにいているとおもいますか。

永野ながの:D2Cなど店舗てんぽたないECのみのブランドとバーチャルためしサービスは、親和しんわせいがあるとおもっています。ハイブランドにも可能かのうせいかんじています。ハイブランドのふくこころみちゃくしてみたいものの、おみせ敷居しきいたかいとかんじ、ためしまですすまないほうおおいのではないでしょうか。かとって、なんじゅうまんえんもする洋服ようふくこころみもせずECで購入こうにゅうするのはハードルがたかいですよね。「じぶんランウェイ」を導入どうにゅうすることで、ECの利用りようりつばせる可能かのうせいはあるとおもいます。

ひろし仕事しごといそがしいほう子育こそだちゅうほうなど、ゆっくりショッピングをたのしめる時間じかんがとりづらいひとにもニーズがあるとかんがえています。メインの利用りようしゃはECでふくほう中心ちゅうしんひろくご利用りよういただけるのではないでしょうか。とくにファッションきのほう親和しんわせいたかいとかんがえていましたが、意外いがい普段ふだんあまりこだわりなくふく購入こうにゅうしているほうからも「あたらしい発見はっけんがあってたのしい」というこえをもらっています。

永野ながのためし面倒めんどうくささ以外いがいに、プラスサイズや小柄こがらほうは、リアル店舗てんぽ自分じぶんうサイズがなくてこまっていたり、店員てんいんほうにしてサイズちがいの商品しょうひんえらんでしまったりするというこえきました。普通ふつう体型たいけいひとでも、とりあえずMをってみたけどわなかった・・・といった経験けいけんもあるとおもいます。ものストレスを軽減けいげんして、購買こうばいにつなげられる可能かのうせいがあるとかんがえています。

──「あいされるDX」をカタチにするためにはなに必要ひつようだとおもいますか。

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永野ながの:まさに「じぶんランウェイ」がその好例こうれいひとつだとおもいます。3Dアバターにデジタルじょうふくさせてためし体験たいけんをするものは、いままでも存在そんざいしています。ただ、それらは効率こうりつてきえをしているようでなにかワクワクしない。そこを、自分じぶんがランウェイをあるいて登場とうじょうするという体験たいけん昇華しょうかすることで、一転いってんして気分きぶんがるためし体験たいけんになります。ここに「あいされるかどうか?」のちがいがるのだとおもいます。さらに「じぶんランウェイ」で目指めざしているのは、ながあいされることです。利用りようしてくださる方々かたがたあいされつづけるためには、便利べんりたのしさにくわえ、環境かんきょうのこともかんがえたSDGsの観点かんてんからも満足まんぞくしてもらうことが必要ひつようだとおもいます。店舗てんぽでたくさんためしちゃくされたふくは、廃棄はいきされることもすくなくないそうです。ECで購入こうにゅうしてサイズがわなかったふく返品へんぴんされたり、ないままシーズンをえてしまったりもする。このようなふく廃棄はいき問題もんだいにも寄与きよし、環境かんきょうへの負荷ふからすことにもつなげたいとかんがえています。

ひろし中国ちゅうごくではDXがすすんでいます。モバイルで注文ちゅうもんしてれるコーヒーショップや、スーパーでのもの配送はいそうサービスなど、DXされたサービスはいくつもあります。生活せいかつ便利べんりにする体験たいけんおおいのですが、すべてのサービスが生活せいかつしゃあいされているものかどうかはかりません。では、どうやったらあいされるのか。あいされるために必要ひつようなのは、便利べんりであることにくわえて、たのしさや面白おもしろさなど、ひとしんうごかす体験たいけん提供ていきょうすることだとおもっています。「じぶんランウェイ」では、ためし手間てまがかからない、正確せいかくなサイズがわかるといった便利べんり以外いがいに、せまためししつからしてランウェイであるけることや、複数ふくすう自分じぶん続々ぞくぞく登場とうじょうすることなど、いままでのないあたらしい体験たいけんつくりたいとかんがえました。なにのためにテクノロジーを使つかうのか、テクノロジーの仕組しくみがわかりやすくつたえられているのか、どういう体験たいけんあたえたいのかを生活せいかつしゃ目線めせんかんがえることが必要ひつようです。

──便利べんりなだけではなく、たのしい体験たいけんもできる。「じぶんランウェイ」はあいされるDXとえますね。そんなクリエイティブな仕事しごとをするじょうで、大切たいせつにしていることは。

永野ながの社会しゃかい潮流ちょうりゅうむことは日頃ひごろから意識いしきしています。それと同時どうじに、一人ひとりひとりの本音ほんね本質ほんしつてきなやんでいることなど、インサイトにふかみみかたむけることも大事だいじなことだとかんがえています。自分じぶんへのいかけはもちろん、友人ゆうじん知人ちじんにインタビューをするなど、身近みぢかひとこえ大切たいせつにしています。「ワンビジュアル」をつくるときとはちがい、「体験たいけんのデザイン」は生活せいかつしゃ行動こうどう気持きもちをデザインしていくものなので、想像そうぞうりょくがより必要ひつようになってくるとかんじています。

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ひろしたりまえではありますが、担当たんとうするブランドの商品しょうひん食品しょくひんなら、できるかぎべたりんだりする。映画えいがやアニメなら、全部ぜんぶる。SNSではどんな投稿とうこうがあるか、くまなくチェックする。もし、がけるブランドのメインターゲットが小学生しょうがくせいだとしたら、当時とうじ自分じぶんおもしてなりきってかんがえる。できるかぎりの想像そうぞうりょくはたらかせながら、生活せいかつしゃ発想はっそう企画きかく目指めざしています。大学生だいがくせいとき日本にっぽん留学りゅうがくしてきたのですが、くにちがうと言語げんご価値かちかんなどにおおきな存在そんざいするものの「本当ほんとういクリエイティビティはどのくにひとてもいとおもえるもの」だとおもっているので、真剣しんけんうことを大切たいせつにしています。

永野ながの 祐子ゆうこ(ながの・ゆうこ)

博報堂はくほうどう 生活せいかつしゃエクスペリエンスクリエイティブきょく デザイナー


東京藝術大学とうきょうげいじゅつだいがく美術びじゅつ学部がくぶデザイン卒業そつぎょう、2016ねん博報堂はくほうどう入社にゅうしゃ広告こうこくグラフィック、ブランディング業務ぎょうむ、サービス開発かいはつ、D2Cブランドのげ、UI/UX領域りょういき業務ぎょうむなどに従事じゅうじ

ひろしげいけい(わん・げいか)

博報堂はくほうどう 生活せいかつしゃエクスペリエンスクリエイティブきょく プラナー


中国ちゅうごく北京ぺきんまれ。大学だいがくから日本にっぽん留学りゅうがく東京大学とうきょうだいがく工学こうがくけい研究けんきゅう建築けんちくがく専攻せんこうくまけんわれ研究けんきゅうしつ修了しゅうりょう、2020ねん博報堂はくほうどう入社にゅうしゃ。プラナーとして、アクティベーション、映像えいぞう言葉ことば、テクノロジー、空間くうかん、サービス、商品しょうひん開発かいはつなど手法しゅほうわずブランド体験たいけん企画きかく