しんうごかすシズルを表現ひょうげん目指めざすのは本能ほんのううったえかけるコピー

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 連載れんさいだい24かいは、博報堂はくほうどう生活せいかつしゃエクスペリエンスクリエイティブきょく コピーライターの尾形おがたまどか登場とうじょう。コピーライティングをじくにテレビCMからデジタル動画どうが広告こうこくなど多様たよう企画きかく得意とくいとする尾形おがたに、あいされるDXに必要ひつようなクリエイティブとはなにきました。

博報堂はくほうどうグループにおいて、クライアント企業きぎょうのデジタルトランスフォーメーション(DX)を、マーケティングDXとメディアDXの両輪りょうりん統合とうごうてき推進すいしんする戦略せんりゃく組織そしき「HAKUHODO DX_UNITED」。その唯一ゆいいつのクリエイティブ部門ぶもんである「生活せいかつしゃエクスペリエンスクリエイティブきょく」は、“潜在せんざい需要じゅよう発掘はっくつし、生活せいかつしゃあらたな好意こうい行動こうどう喚起かんきし、よりよい生活せいかつ社会しゃかいつくす”といった価値かち創造そうぞうがたのDXをリードする部門ぶもんです。キーワードは、「あいされるDXは、カタチにできるか?」。このテーマにむメンバーたちの多様たよう視点してんをご紹介しょうかいしていきます。

きでもきらいでもないもの」にならないためにコピーライターはいる

──テレビCMとデジタル動画どうが広告こうこくなど多様たようなメディアを手掛てがけていらっしゃいます。テレビCMとデジタルの動画どうが広告こうこくでは、コピーのかんがかたちがうのでしょうか。

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尾形おがた

 かんがかたはメディアによってことなります。デジタルの動画どうが広告こうこくは6びょうわるものや、スキップされる可能かのうせいがあるので、それをまえて検討けんとうする必要ひつようがあります。基本きほんてきには6びょういたいことをつたえつつ、なにかしら関心かんしんってもらえるようにコピーをまとめる。それが企画きかくしんとなるコピーの場合ばあいもあれば、アテンションのフェーズにふさわしいコピーの場合ばあいもあります。

──クライアントからはどういった相談そうだんおおいのでしょうか。

 Z世代せだいとのかかわりかたについての相談そうだんえている印象いんしょうです。最近さいきんもある企業きぎょう仕事しごとで、Z世代せだい接点せってんつためのデジタル施策しさく手掛てがけました。その企業きぎょう訴求そきゅうしたいものはZ世代せだいには関心かんしんってもらいにくいものでした。価値かちをストレートに表現ひょうげんしても、「自分じぶんには関係かんけいない」と拒絶きょぜつされる可能かのうせいたかい。そこで、だれもが共感きょうかんできる課題かだいをインサイトとして抽出ちゅうしゅつし、Z世代せだいけにあいされる「キャラクター」を考案こうあんしました。複数ふくすう登場とうじょうさせるキャラクターがそれぞれにかかえる課題かだい解決かいけつする方法ほうほうひとつが、クライアントのしょうざいであるというストーリーにして、自分じぶんごととしてとらえてもらえるように工夫くふうしています。

──まんにんかかえる課題かだいを、Z世代せだいれられやすいキャラクターにするという発想はっそうがクリエイティブですね。

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 生活せいかつしゃのひとりとして、わたしは「広告こうこく大好だいすき」という人間にんげんではありません。だけど、「面白おもしろい!」「これならたい!」とおもえる広告こうこくはあります。ウェブの動画どうが広告こうこくれいにとると、自分じぶんたいと能動のうどうてきにアクセスした動画どうが合間あいまながれるものなので、6びょうたれずスキップされる可能かのうせいたかいです。そうした状況じょうきょうまえ、博報堂はくほうどうのストラテジストは、ターゲットとする年代ねんだいから戦略せんりゃくかんがえるなど、広告こうこく提案ていあんイメージを具体ぐたいてき内容ないようにしてくれます。ただ、その戦略せんりゃくをそのまま表現ひょうげんすると、ただしいけど面白おもしろいものにはなりにくく、きでもきらいでもないものになりがちです。戦略せんりゃく成果せいかすためにも、クリエイティブのちからかせないとかんがえています。

──コピーをかんがえるうえで、市場いちばデータや調査ちょうさ結果けっかなどはどのように活用かつようされていますか。

 参考さんこうにはしていますし、指針ししんひとつになるとはおもっていますが、わたし企画きかくするときにもっと大切たいせつにしているのは、「おちゃあいだ目線めせん」です。

──プロとして広告こうこく業界ぎょうかいはたらきつつ、「おちゃあいだ目線めせん」をつづけるのは容易よういではないとおもいます。

 それはわたしかぎらず広告こうこく業界ぎょうかいはたらおおくのひとかかえるなやみでもあります。たとえば、表現ひょうげんについて「このアングルがいいんだよ」など、細部さいぶ満足まんぞくしがちです。もちろん、ディテールにこだわって制作せいさくすることは、とても大切たいせつなことです。とはいえ、たとえば自分じぶんがこだわったポイントを家族かぞく友人ゆうじんはなしても「ふーん、そうなんだ?」とあまりひびいていなかったり。ぎゃく意図いとしていなかったポイントを面白おもしろいとってくれたり。そういう目線めせん一般いっぱんてき感覚かんかくなのかなとおもいます。その感覚かんかくつづけるために、一般いっぱんほう意見いけん積極せっきょくてきひろいにいったり、家族かぞく友人ゆうじん感想かんそうもとめたりと、目線めせんわせるようにつとめています。

データよりシズルをしんじる

──SNSはどのようにチェックされていますか。

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 いちとおりどれもていますが、とく意識いしきしているのは、若年じゃくねんそう使つかかたです。40だい以上いじょうでもSNSを活用かつようしているひとえていますが、10代や20だいとは使つかかたちがったりする。その使つかかたのズレを把握はあくしておくようにしています。
 フォローするひとは、友人ゆうじん知人ちじんおなじような趣味しゅみひとおおいですよね。投稿とうこう内容ないよう表現ひょうげん仕方しかたなどもていることがおおいので、わたしはあえて「おすすめ」をふかりしていき、自分じぶん趣味しゅみこのみの範囲はんいをできるだけひろげながら、るようにしています。
 どんな広告こうこくでもいまはメディアにわせて表現ひょうげん最適さいてき必要ひつようです。SNSといっても年代ねんだいによって使つかかたちがうし、てきした表現ひょうげんちがう。SNSはテレビCMよりライブかんせるので、TwitterではCMの撮影さつえい現場げんばでのエピソードを投稿とうこうしたり、Instagramでは起用きようしたタレントの写真しゃしん投稿とうこうしたり。そういったアイデアをかんがえるじょうでも、いまのSNSのトーンやトレンドとなっている表現ひょうげんなどを把握はあくしておく必要ひつようはあるとおもいます。

──SNSでの発信はっしんやリアクションは、企業きぎょう注目ちゅうもくしていますね。

 インパクトのある発信はっしんがしたいと意欲いよくてきんでも、「前例ぜんれいがない」とか、「データでの検証けんしょうれていない」など、さまざまな要因よういん挑戦ちょうせんできないケースもすくなくありません。そうした状況じょうきょうのとき、いかに説得せっとくできるかも広告こうこく会社かいしゃ仕事しごとだとおもっています。コミュニケーションのプロがっているから、しんじてやってみよう――わたし自身じしんがそんなふうおもってもらえるひとになることが理想りそうです。そのために必要ひつようなのは、実績じっせきだとおもっています。実績じっせきとは、広告こうこくしょう受賞じゅしょうというものではなく、いかにクライアントの課題かだい解決かいけつができたかどうかです。

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──どういったクリエイティブが実績じっせきにつながるとおもいますか。

 「シズル」がやはり大事だいじだとおもっています。ものかぎったはなしではなく、たとえば、「友人ゆうじんとコントローラをうばいながらひとつのゲームをたのしんでいるシーン」は、ゲームをやりたくなるシズルがある表現ひょうげんだとおもいます。ゲームをやったことがないひとでも、やってみたくなる。そういったシズルのある「本能ほんのううったえかけるクリエイティブ」が実績じっせきにつながるとかんがえています。べてみたい、使つかってみたい、れたい。そうおもわせるシズルからかんがえていくようにしています。このかんがかたは、師匠ししょう一人ひとりでもあるエグゼクティブ・クリエイティブディレクターの髙田あつしさんからまなんだことのひとつです。

──それはテレビCMでもデジタルでの動画どうが広告こうこくでも共通きょうつうしているのでしょうか。

 共通きょうつうしていてほしいとおもっています。本能ほんのうてきにいいとおもえる表現ひょうげん大切たいせつにしたいです。かつてはみんなそこを重視じゅうししていたはずなのに、広告こうこく制作せいさく現場げんばにデータや調査ちょうさといった概念がいねんはいってきて、「どうやらたしからしい」データが重視じゅうしされるようになりました。データのあつかかたれてきて、「それだけがたしかとはかぎらない」というかんがかた浸透しんとうしてきたのがいまだとおもっています。

──最後さいごに、あいされるDXのためには、なにをすべきだとおもいますか。

 DXだけなら博報堂はくほうどう以外いがい企業きぎょうでもできます。わたしたちが目指めざすのは、DXはたりまえにできて、そのうえで「あいされる」ためのクリエイティブを提案ていあんすること。そもそも「あいされる」とはなにか。だれにどうあいされるべきなのか。そこをふかりする必要ひつようがあるとおもいます。みんなにかれようとすると、八方美人はっぽうびじんになってしまいますからね。DXはあくまでツールです。どんなにデザインツールをマスターしていても、すぐれたデザインができるかどうかはべつはなしですよね。ツールが使つかえることが目的もくてきではなく、目的もくてきべつにあって「なにをつくるか」ということです。
 また、あいされるためにデータだけにたよらず、自分じぶん感覚かんかく本能ほんのううったえかける表現ひょうげんかんがえたいとおもっています。データを敵視てきしせずに味方みかたにつける。「この方向ほうこうせいもデータから検討けんとうできる」といったふうにクリエイティブを理解りかいしてもらうためにも、データはうまく活用かつようしていきたいとおもっています。

尾形おがたまどか(おがた・しゅん)

博報堂はくほうどう 生活せいかつしゃエクスペリエンスクリエイティブきょく コピーライター


2015ねん武蔵野美術大学むさしのびじゅつだいがく空間くうかん演出えんしゅつデザイン学科がっか卒業そつぎょう同年どうねん博報堂はくほうどう入社にゅうしゃ
コピーをじくとしたTVCMの企画きかく得意とくい分野ぶんやひとしんうごかすシズルを大切たいせつにすることを信条しんじょうとしている。