花澤はなざわ香菜かな「芸能げいのう活動かつどうをやめよう」と決意けついも、思おもいとどまった理由りゆうは?

2020.5.8

美うつくしく澄すんだ声こえと演技えんぎ力りょくの高たかさに定評ていひょうがあり、アニメファンのみならず幅広はばひろい層そうに人気にんきの花澤はなざわ香菜かなさん。声優せいゆうは天職てんしょくに思おもえるものの、決けっして平坦へいたんな道みちのりではなかったようで…。

声優せいゆうでなかったら夢ゆめは絶対ぜったいにパン屋やさん。

――子こどもの頃ころから芸能げいのう界かいで活躍かつやくされていますが、どういう経緯けいいで声優せいゆうになったのでしょう。

花澤はなざわ：そもそも芸能げいのう界かいに入はいったのは、子役こやくのオーディションのチラシを持もってきた母ははに「やる？」と言いわれて、即答そくとうしたのがきっかけです。お遊戯ゆうぎ会かいや学芸がくげい会かいが大好だいすきで、目立めだちたがり屋やだったんです。お仕事しごとをしながら、習ならい事ごとなどもやらせてもらいましたが、やっぱり自分じぶんの中なかで芸能げいのう活動かつどうは特別とくべつ感かんがありました。でも高校こうこう卒業そつぎょうと同時どうじに、一いち度どはやめようと思おもったんです。そんなに活躍かつやくできていたわけでもないし、大学だいがくに入はいってやりたいことを見みつけようかなって。当時とうじ、レギュラーのアニメの仕事しごとがあったのですが、そのキャスティングをしていた今いまの事務所じむしょのマネージャーにやめることをお伝つたえしたら、「声こえがいいからやめないでほしい」と言いってもらって。お芝居しばいや声こえを褒ほめられたことがなかったので嬉うれしくて、必要ひつようとしてくれるなら続つづけようと思おもったんです。

――それまでご自身じしんの声こえの魅力みりょくに気きづいてなかったのが意外いがいです。

花澤はなざわ：声優せいゆうの仕事しごとに自信じしんが持もてるようになるのも時間じかんがかかりました。子役こやく事務所じむしょから声優せいゆう事務所じむしょに移うつってからも、自分じぶんは棒読ぼうよみだという自覚じかくがあったので。今いま振ふり返かえると、たしかに技術ぎじゅつはないけれども、キャラクターには合あっていたのかもしれないなと思おもったりもするのですが、当時とうじはほかの人ひとと全然ぜんぜん違ちがうことに悩なやんでいました。そんななか『ぽてまよ』という作品さくひんで、冷蔵庫れいぞうこから生うまれた謎なぞの生物せいぶつ「ぽてまよ」の役やくをやらせてもらったんです。2頭とう身みで「ほにほに」とか「にゃー」とか「ぱん」とかしか言いえない子こだったんですけど、台本だいほんに「アドリブ」と書かいてあるところがたくさんあったんですね。決きまったセリフを言いうだけではなく、自分じぶんで想像そうぞうして表現ひょうげんしてもいいんだってわかったらすごく楽たのしくなって、能動のうどう的てきにやってみようと思おもえるようになったんです。

――先さきほどのお話はなしから察さっするに、棒読ぼうよみで悩なやんでいた頃ころも練習れんしゅうをたくさんしていたのでしょうね。

花澤はなざわ：してましたね。『ゼーガペイン』というロボットアニメで、機体きたいに乗のって攻撃こうげきを受うけて「ギャー！」などと悲鳴ひめいを上あげるシーンがあったんですけど、ロボットに乗のったことなんてないし、攻撃こうげきされたらどうなるのかもわからなくて。こんな感かんじかな？　って、家いえの壁かべに激突げきとつしてみたりして（笑）。

――すごい（笑）。そのくらい共感きょうかんや体験たいけんは大事だいじなんですね。

花澤はなざわ：アニメは特とくに普段ふだん言いわないようなセリフも多おおいので、見みる人ひとが少すこしでも作つくり物ものだと感かんじると、入はいり込こめなくなってしまうじゃないですか。リアリティを出だすためにも、自分じぶんの体験たいけんから似にたような感覚かんかくを探さがすことが大切たいせつなんです。

――経験けいけんを重かさねてきたからこそ感かんじる、声優せいゆうの楽たのしさや難むずかしさは？

花澤はなざわ：やったことのない役やくをいただくと意欲いよくが湧わきますし、反対はんたいにやったことのあるような役やくでも、そのキャラクターに合あったものを今いまの自分じぶんが出だせているか気きになります。それと最近さいきんはナレーションのお仕事しごとが増ふえてきているのですが、キャラクターを演えんじるわけではないので、制限せいげんがあるようでないところが難むずかしいんですよね。聞ききやすさや伝つたえたいポイントはもちろん考かんがえますが、悩なやんでなかなか進すすまないときは第三者だいさんしゃの目めがとても頼たよりになります。本当ほんとうに終おわりがないところが、この仕事しごとの難むずかしさであり、楽たのしさでもありますね。ちょっとは成長せいちょうしたかなって思おもえる瞬間しゅんかんがあったらやっぱり嬉うれしいし、作品さくひんや番組ばんぐみを見みた方ほうから「よかったよ」って言いわれると、すごくやりがいにつながります。

――違ちがう職業しょくぎょうに進すすむことも考かんがえたそうですが、もし声優せいゆうでなかったら何なにをしていたと思おもいますか？

花澤はなざわ：絶対ぜったいにパン屋やさんです！　母ははがパン屋やさんで働はたらいていたこともあって、小ちいさい頃ころからパンで育そだってきましたし、高校こうこう時代じだいに私わたしもパン屋やさんでアルバイトをしていました。基本きほん的てきにへっぽこで、レジ打うちとかはすごく苦手にがてなんですけど、パンの名前なまえと値段ねだんだけはすぐに覚おぼえられる（笑）。立たち仕事しごとだったり力仕事ちからしごとだったりで大変たいへんだとは思おもうのですが、焼やきたての香かおりの中なかで一いち日にち中ちゅうお仕事しごとができたら、幸しあわせだろうなあと思おもいます。

――声優せいゆうとして、またお仕事しごと以外いがいでチャレンジしたいことは？

花澤はなざわ：ナレーションのお仕事しごとや今いままでとは違ちがう役やくをいただくことが増ふえてきて、今いまは進化しんかのチャンスだと感かんじています。本当ほんとうに遅おくればせながらですが、最近さいきんボイトレを始はじめたんです。次つぎの段階だんかいにステップアップしたいので、自分じぶんの殻からに閉とじこもらず、いろんな人ひとにアドバイスをいただきながら成長せいちょうしていければいいですね。プライベートでは、こんなご時世じせいでもパン屋やさんは開ひらいてくれているので、引ひき続つづき買かい支ささえていきたいです！

はなざわ・かな　東京とうきょう都と出身しゅっしん。2003年ねん、声優せいゆうとしての活動かつどうをスタート。『化物ばけもの語ご』『3月がつのライオン』『鬼おに滅めつの刃は』『マギアレコード魔法まほう少女しょうじょまどか☆マギカ外伝がいでん』など出演しゅつえん作さく多数たすう。2012年ねんに歌手かしゅデビューを果はたし、これまでにアルバムを5枚まいリリース。ラジオ『花澤はなざわ香菜かなのひとりでできるかな？』（文化放送ぶんかほうそう超ちょう！A＆G＋）でパーソナリティを務つとめている。

『青あおい花はな』に出演しゅつえんして以来いらい、志村しむら貴子たかこさんのファンだという花澤はなざわさん。『どうにかなる日々ひび』は元もと恋人こいびとの結婚式けっこんしき、男子校だんしこうの先生せんせいと生徒せいと、思春期ししゅんきの幼馴染おさななじみの男女だんじょを描えがいたオムニバスショートストーリー集しゅうで、花澤はなざわさんは最初さいしょのエピソード「えっちゃんとあやさん」に出演しゅつえん。監督かんとくを佐藤さとう卓哉たくやさん、主題歌しゅだいか・音楽おんがくをクリープハイプが担当たんとう。近日きんじつ公開こうかい予定よてい。