あの半沢直樹でも、今回は再雇用先を確保するのは難しいかもしれない……。
ジェットスター・ジャパンがパイロットと客室乗務員合わせて約600人を対象に、長期休暇や希望退職などの選択肢を提示していることを明らかにしたのは9月中旬のことだった。
航空ジャーナリストが語る。
「成田空港を最大拠点とするジェットスター・ジャパンは、2012年7月に就航。当初は遅延や欠航が相次ぐなど、赤字経営が続いた時期もありましたが、2016年6月期には黒字に転換。その躍進を支えたのが、他社が国際線に力を入れるなか、地道に国内線を広げた逆張り戦略にあったことはよく知られる話。結果、同社では北海道(札幌)から、東北(庄内)、四国、九州、沖縄・宮古(下地島)まで、LCCとしては最大級の全国16都市、23路線での運航を実現し、年間客数でも日系4社の首位を走るまでになったんです」
ところが、新型コロナウィルスの影響をモロに受け、国内線では約5割が減便や運休を余儀なくされ、国際線に至っては全便運休という状況が続いたことで、業績が赤字に転落。
「現在、同社には約1000人の従業員がいて、うち約200人がパイロット、客室乗務員が約400人程なんですが、8月から構造改革を始め、9月には全従業員の6割を占めるパイロットと客室乗務員に対して希望退職や長期休暇、一時帰休の延長などを提示。さらに今後は、整備士や地上係員(グランドスタッフ)、企画職などの人員計画の見直しを検討するとのことです。先日も、ユナイテッド航空が、10月から成田のCA拠点を閉鎖するとの報道があったばかりですから、CAに次いで、ついにパイロットのリストラが始まった、と航空業界は大揺れですよ」(前出・ジャーナリスト)
というのも、パイロットは慢性的な人手不足ということもあり、その”売り手市場”は数年来揺るぎないものがあったというのは、前出のジャーナリストだ。
「その要因の一つが、LCCの就航拡大で、LCCが所有する機体は小型機が中心となるため、大型機に比べ、運航するためにはより多くのパイロットが必要になります。そんなLCC路線の増加が、パイロットや管制官不足に拍車をかけてきたわけですが、にもかかわらず、大学でパイロットの資格を取得する場合、現在でも1000万円近い費用がかかる。そのハードルの高さから結果、人手不足が改善されず、今に続いていたというわけなんです」
ところが、コロナ禍で航空機の運航自体が激減。結果、パイロットが”お荷物”のような存在になり、彼らに支払う高額な給料が経営を圧迫することになるとは……。
ジェットスター・ジャパンにおけるパイロットリストラの報道を受け、SNS上では、
《LCCは乗ってもらってナンボやからね。コロナでの乗客減は経営をまともに直撃するし。他のLCCも苦しいやろうけど、仕方がないのかなぁ》《世界中でいま、パイロットは飽和状態。1年前とでは、天と地の差。JJPパイロット切りは航空業界、生き残りをかけて最も高い牙城に切り込んだ懸命な判断ですね》
と、リストラもやむなし、いう声がある一方、
《必要なくなればポイッ。これが外資のやり方か?》《長期視点では、需要回復時に特に養成に時間が掛かるパイロットと整備士のクビを切っておいて、おいそれとはすぐに人材が見つからない責任は、今の経営陣がどうするのか計画まで出しておかないと、企業の継続性=Going Concernから外れる》
といった批判的な声も少なくなかった。
まさか、パイロットがリストラされる時代が来るとは誰が想像しただろうか?
これまでの常識をなぎ倒し、予期せぬ事態を引き起こし続ける新型コロナウィルス。さすがの半沢直樹でも「帝国航空」のような再建案は困難!?
(灯倫太郎)