プライベートクラウドという選択
第1回
プライベートクラウドをオールインワンで提供する
導入してすぐに使えるIBM CloudBurst
2010年07月13日 09時00分更新
文● TECH.ASCII.jp
プライベートクラウドは企業インフラの効率化とコストダウンを実現するというが、すぐに導入できるというわけではない。導入と運用には、さまざまなノウハウが必要となる。こうした課題を解決するのが、IBM CloudBurstだ。
IBMが考える
クラウドコンピューティング
IBMはパブリッククラウドからプライベートクラウドまで、幅広いソリューションを展開している数少ない企業だ。同社では、クラウドをITサービスの工業化と捉えている。工業化とは、簡単にいえばオートメーション化ということだ。通信業は自動交換機を導入することによって、利便性が大幅に向上した。一方、製造業はロボットを活用することで、生産性が大きく高まった。こうした工業化をITに導入することこそが、ITサービスの利便性向上と劇的なコストダウンに欠かせないというわけだ。
写真1 「工業化がプライベートクラウド成功の鍵」と力説する日本アイ・ビー・エム株式会社 クラウド・コンピューティング事業部長 事業企画担当 三崎文敬氏
ITの工業化を実現するためにIBMは、「仮想化」「標準化」「自動化」という3つのキーワードを掲げている。最初の「仮想化」は、物理的なリソースを論理分割し、管理を下位レイヤー内へ分離するという考え方だ。
2つめのキーワードである「標準化」は、サーバーやミドルウェアなどのインフラ構築と環境設定における手順を標準化し、ユーザーの利便性と管理性を向上させることを指す。たとえば、通常必要となるOSやサーバーソフトウェア、ミドルウェアを適切に組み合わせ、これをユーザーがすぐに使えるようにあらかじめ準備しておくことを意味する。ちょうど、Amazon Web Services(以下、AWS)におけるマシンイメージ(AMI:Amazon Machine Image)を思い浮かべるとわかりやすいだろう。そして、3つめのキーワードである「自動化」は、クラウド環境の自律運用を指す。これら3つのキーワードを組み合わせることで、コスト削減とユーザーの利便性の向上が実現されるというわけだ。
ユーザーが求める
プライベートクラウド
IBMはこれまで、膨大な数のプライベートクラウド構築・導入案件を扱ってきた。こうした案件では、ユーザーから以下のような要望が寄せられたという。
- クラウド環境の構築自体に時間とコストをかけたくない
- クラウド環境をすぐに利用したい
- クラウド環境の設計構築のスキルがなくても使いたい
- クラウド環境を導入するにあたり、どこからはじめたらよいのかわからない
この要望からは、プライベートクラウドをすぐに利用したいが、そのために手間やコストをかけたくないというユーザーの思惑が見て取れる。つまり、AWSと同等の手軽さを、社内システムに取り込みたいと考えているわけだ。
すべてを提供する
IBM CloudBurst
こうした要望に応える回答の1つが、同社のCloudBurst(写真2)である。CloudBurstは、プライベートクラウドを実現するために必要となるすべての要素を、オールインワンにまとめたプラットフォームだ。オールインワンというだけあって、ハードウェア、ソフトウェア、サービスのすべてがセットになったソリューションとなっている。
写真2 導入するだけで、すぐにプライベートクラウドが使えるようになるオールインワンのシステムだ
CloudBurstの特徴は、導入すればすぐにプライベートクラウドを運用できるという点にある。たとえば、CloudBurstの機能であるセルフサービスポータルでは、Webアプリケーションからクラウドを利用するための申請が簡単に行なえる。ここでクラウド上の仮想マシンの利用期間やハイパーバイザーの指定、OSや環境のイメージ、CPUやメモリ、ディスクなどのリソースを申請する。あとは管理者から利用許可が下りさえすれば、すぐにでも仮想マシンが使えるようになるというわけだ。
従来のように物理ハードウェアを導入するのであれば、まずユーザーが管理者に利用申請を行ない、それに基づいてハードウェアを購入し、管理者が環境を構築していた。これはハードウェア調達や物理的なセッティングが必要だったり、ソフトウェアのインストールにともなう時間がかかってしまう。一方CloudBurstであれば、ユーザーがWebポータルでリソースを申請するだけで、自動的にプロビジョニングが行なわれ、その場で使えるようになる。管理者がわざわざマシンをセットアップする必要もない。
図1 CloudBurst が提供する機能
CloudBurstのハードウェアは、同社のサーバーマシンとラック、そしてストレージとネットワーク機器で構成されている。サーバーマシンはクラウドを管理するクラウド管理サーバーと、クラウドを構成するブレードサーバーの2つに大きく分けられる。前者のクラウド管理サーバーとしては、2UサイズのSystem x3650が採用されており、後者のブレードサーバーにはBladeCenter HS22(クアッドコアXeon X5560 2.8GHz×2、メモリ48GiB)が用いられている。
ストレージは、System Storage DS3400(5.4TB。利用可能容量4.5TB)を搭載する。このストレージも仮想化され、クラウド上のマシンに動的に割り当てられる。
ソフトウェアとしては、自動化とクラウドの管理、課金およびメータリングのためにTivoliが、仮想環境の管理のためにSystems Directorが採用されている。そして、仮想化ソフトウェアとしてVMware VirtualCenterとVMwareESXiを搭載する。なお、今後は同社のSystem pシリーズに搭載されている仮想化環境である、PowerVMにも対応するという。
こうしたソフトウェアやハードウェアを、実運用で活用するためのサービスが付属しているのも、CloudBurstの特徴だ。これはクイックスタートサービスと呼ばれるもので、CloudBurstの導入と設定に加え、セキュリティポリシーの設定、仮想化サーバーやネットワーク、ストレージのセットアップ、セルフサービスポータルの構成、運用・活用方法のレクチャーといったものが含まれている。
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プライベートクラウドを導入すれば、社内ITにおけるすべての問題が解決すると多くのユーザーが誤解しているようだ。しかし、実際にプライベートクラウドを成功させるためには、標準化や自動化に加え、管理者の負担を軽減する仕組みが必要である。これらプライベートクラウドを成功させるために必要となる要素がすべて詰まっているソリューションが、CloudBurstといえるだろう。