バルミューダかと思いましたね:
パナソニックの調理家電がかっこよくなった
2018年03月27日 11時00分更新
文● 盛田 諒(Ryo Morita)
おやバルミューダかと思いましたね。
パナソニックのIHジャー炊飯器「Wおどり炊き」とスチームオーブンレンジ「ビストロ」がかっこよくなりました。既発の「ロティサリーグリル&スモーク」、ホームベーカリーとおなじデザインコンセプトの「Creative! セレクション」新製品として登場です。鉄や鋳物の調理器具を思わせる、すっきりした見た目になりました。デザインだけでなく機能も新しくなっています。
同社が23日、東京都内で開催したイベントで新製品を体験しました。
古米も新米のように炊ける炊飯器
IHジャー炊飯器 Wおどり炊きは、古くなってパサパサになってしまったお米を新米のようにおいしく炊きあげる「鮮度センシング」が新機能。圧力をかけたときの減圧速度から、お米がどれだけ乾いているかを測り、炊き方を変えます。6月1日発売、市場想定売価11万円前後から。
IHジャー炊飯器 Wおどり炊き SR-VSX8
鮮度センシング機能は、正しくは水分量センシング機能。新米は古米よりおいしいイメージがありますが、じつはお米の内側にある水分量がおいしさを決めています。精米したてのお米は14%の水分をふくんでいますが、常温で2週間保存すると12%まで減ってしまうとか。お米の水分を保つには冷蔵庫に入れるのが最適ですが、冷蔵庫に大量のお米を保存するのは現実的ではありません。そこでつくられたのが、水分がとんで乾燥してしまった古米をおいしく炊きあげる鮮度センシング機能です。
古くなり乾燥したお米もおいしく炊きあげる「鮮度センシング機能」
Wおどり炊きはもともと圧力炊きが強みの1つ。そこに血圧計などに使われる圧力センサーをつけ、1秒ごとの圧力の変化をとらえ、自動的においしく炊きあがる機能をつけました。圧力の強さをふくめ合計13通りの炊きわけができるようにもなっていて、こだわり派にもおすすすめです。
圧力センサーが秒単位で圧力を計測し、米の乾燥具合を判定する
実際に食べ比べてみたところ、乾燥したお米をそのまま炊いたものはパサパサして箸からすぐに離れてしまいましたが、鮮度センシング機能を使って炊いたものはむちむちして箸にからみつき、なかなか箸から離れませんでした。食感だけでなく、甘みと香りもやや強く感じられました。水分が大事ということはわかりますが、炊き方ひとつでこんなにも変わるとはと驚きました。
乾燥米、非乾燥米、鮮度センシング機能で炊いた乾燥米の3種を食べ比べ。鮮度センシングVer.むちむちです
お米の銘柄炊き分け機能もグレードアップ。新たに宮城「だて正夢」、福井「いちほまれ」2銘柄が加わり、銘柄数は合計50種類になりました。
だて正夢は、もちもちしていて、粘りが強く、甘い、もち米のようなお米。いちほまれは粘りが強く、味わいが強く、くせのないお米。コシヒカリ発祥の地である福井がつくっている「ポスト・コシヒカリ」の名を冠するお米です。だて正夢はうまく炊かないとべしゃべしゃになってしまうむずかしいお米。パナソニックの開発担当者も炊飯プログラムをつくるのに苦労したそうです。
味の印象としては、だて正夢は「華やかな味でごはんだけでも満足するような味」。いちほまれは「粒の形もつやも美しく、おかずの味を引き立てる端正な味」。Wおどり炊きは逆方向の特徴をもつ2種類のお米をうまく炊きあげていました。
宮城「だて正夢」、福井「いちほまれ」2銘柄が炊き分け機能に追加
スペアリブがすぐ焼けるオーブンレンジ
スチームオーブンレンジ「ビストロ」は5年ぶりのフルモデルチェンジ。グリル皿の素材を改良し、グリル調理の最高温度を240℃から270℃まで30℃上げました。サイズは業界最小設置スペースに小型化しています。6月1日発売、市場想定売価17万円前後。
スチームオーブンレンジ ビストロ NE-BS1500
グリル機能を強化したのは調理時間短縮のためです。オーブン料理とグリル料理のちがいは加熱方法の違い。オーブンはじわじわ加熱し、グリルは直火でこんがり一気に加熱。グリルとオーブンでおなじ料理を作ると、グリルのほうが調理時間を短縮できるわけです。たとえばスペアリブなら23分→17分に短縮できます。
火力を高めているのは新開発のチタンコートグリル皿。上火(遠赤外線)の反射率を倍増させ、温度の立ち上がりをよくして、調理時間の短縮につなげています。裏には発熱効率の高いニッケル系フェライト素材を使用、下火の効果も強めています。チタンコートグリル皿はわずかな金色みを帯びていて、食卓に出したときの見た目も良いです。
チタンコートグリル皿。上火の反射率倍増で火力アップ
裏面。発熱効率の高いニッケル系フェライト素材を使用
グリル調理をするときは最上段にグリル皿をのせて使います。高さ約5cmまでの食材をのせたグリル調理が可能。耐熱皿などをのせる必要はなし。コーティングによってお手入れも簡単、お肉の脂などもするりと落ちるそうです。
塩・こしょう・酒・にんにくに漬けこんだ豚肉のスペアリブを17分間焼いたものを試食しました。肉汁があふれ、骨のまわりまでしっかり火がとおっていて、おいしかったです。
こんがり焼けたスペアリブ
ちなみに企画担当者のグリル推しレシピは「焼そば」。肉・野菜・めんを全部ゴシャッと入れてグリルで火を通し、適当に味つけするだけでおいしくなるそうです。ラクそうでいいですね……
それとややわかりづらいのですが、マイクロ波アンテナの回転パターンをメニューによって変え、料理に合った加熱ができるよう、技術的な改良も施しています。
たとえばすばやく内側まで加熱したいときの「内部優先加熱方式」では食材の前後でアンテナを停止させながら運転します。一方、両面をこんがり焼きたいときの「裏面優先加熱方式」では左右でアンテナを停止させながら運転しています。アンテナの回転制御によって、料理方法にあわせ、合計14種類の加熱ができるようになりました。
加熱方式の細かい調整により、離乳食に使う野菜をゆでたり、乾物を戻したり、さまざまな調理コースが使えるようになっています。うちは鋳物鍋ストウブで離乳食用の野菜を煮ていて、とてもおいしくできるのですが、鍋を洗う手間を考えるとレンジの誘惑が大きいです。
最後にサイズ。最近はオーブンレンジをレンジ台ではなく食器棚に置いている人が増えているそうです。食器棚に大きなレンジは置けないよということで新製品では小型化に注力。製品本体の高さを39cmから37cmへと2cm下げ、本体上部に空けるスペースを10cmから8cmへとやはり2cm下げ、業界最小の設置高さ45cmを達成しました。
小さくしても性能を損なわないよう工夫したのは機械室のコンパクト化。熱をもった機械の冷却性能を確保するため、空気の排気・吸気システムを新開発しました。具体的には排熱機構を中心に5つの改良をくわえ、設置スペースを小さくしているそうです。
【新システム概要】
1.冷却ファンから床面までの距離を縮めた
2.飾り板とタンクを薄くした
3.ドア下部を薄型化した
4.断熱材を改良した
5.排気口の面積を大きくとった
●お手ごろ路線もつくってほしい
最近、売り場でバルミューダを意識したようなデザインの調理家電をよく見かけるようになりました。似たような2機種で迷ったとき数千円高くてもデザインが良いほうを選ぶというわたしのような消費者は少なくないはずなのでいい傾向と感じます。ただ、バルミューダの調理家電は高くても5万円程度という手の届きやすい価格設定がミソ。「こんなかっこいい製品があるんだ!いいなー、ぜいたくして買っちゃおうかなー」という、わたしのような庶民の衝動買いを誘えるギリギリのラインと感じます。個人的にはパナソニックにもお手ごろ価格のかっこいい調理家電を作ってもらいたい。お手ごろ価格まで落ちるのを待つことなく、発売直後から衝動買いできる選択肢をつくってもらいたい。バルミューダと正面からぶつかって素手で打ち合ってほしいと乱暴なことを考えています。