エンジニア同士どうしによるディープなインフラトークも披露ひろう

Webサービスの先達せんだつはてなが語かたる、戦たたかい続つづけるためのインフラ設計せっけい

　2018年ねん3月がつ30日にち、大阪おおさかで開催かいさいされた「さくらのインフラで作つくる巨大きょだいシステム」のイベント後半こうはんに登壇とうだんしたはてなの渡辺わたなべ起おこり氏しは、さくらインターネット採用さいようの背景はいけいやサービスの使つかい分わけ、さくらとの役割やくわり分担ぶんたんについて講演こうえん。その後ご、さくらインターネット、ALiNKインターネット、はてなの3社しゃでトークセッションが繰くり広ひろげられた。

数すう多おおくの内部ないぶシステム、寿命じゅみょうの長ながいWebサービス

　2001年ねん創業そうぎょうとWebサービス企業きぎょうとしてはすでにベテランと言いえるはてな。「人力じんりき検索けんさくはてな」や「はてなブログ」「はてなブックマーク」などのWebサービス、「Mackerel」などの監視かんしサービスでおなじみだが、こうしたサービスのノウハウを活いかした他社たしゃとの共同きょうどう開発かいはつも増ふえており、今いまも数すう多おおくのサービスを手てがけている。

　はてなの特徴とくちょうとして、サービスが多おおく寿命じゅみょうが長ながいこと。「内部ないぶで使つかわれるシステムの数かずは、ひょっとしたらエンジニアの数かずより多おおいのではないか」とは渡辺わたなべ氏しの弁べん。また、「創業そうぎょう当時とうじに立たち上あげた人力じんりき検索けんさくはてなはすでに17年ねんくらいだし、はてなブログも新しんしめだけど、すでに7年ねんくらい経たっている」とのことで、寿命じゅみょうの長ながいサービスも多おおい。もちろん、サービス数すうの多おおさ、歴史れきしの長ながさに比例ひれいして、技術ぎじゅつも幅広はばひろく採用さいようしている。「その当時とうじのトレンドだった技術ぎじゅつを使つかっているが、最近さいきんのサービスはGoやScalaを使つかったものもある」（渡辺わたなべ氏し）とのことだ。

はてな システムプラットフォーム部長ぶちょう 渡辺わたなべ起おこり氏し

　こうしたサービスを支ささえるはてなのインフラは、現在げんざいオンプレとクラウドを併用へいようした形かたちで、サービスやコンポーネントによって選定せんていしている。オンプレミス側がわはXenで仮想かそう化かしており、極力きょくりょくハードウェアに依存いぞんしないリソース配置はいちを心こころがけているという。

　はてなとさくらインターネットのつきあいは古ふるく、2007年ねんにさかのぼる。渡辺わたなべ氏しが入社にゅうしゃする前まえだが、書かきためてあるエンジニアブログをまとめて、歴史れきしを振ふり返かえった。

　2007年ねんはまずこれまで利用りようしてきた自作じさくサーバーを車くるまに詰つめ込こみ、さくらインターネットのデータセンターに移行いこうした。2009年ねんにはラックマウント型がたの自作じさくサーバーを再さい設計せっけいし、台数だいすうとラックを増ふやしたという。「SSDを両面りょうめんテープでくっつけるとか、創意そういあふれる工夫くふうをやっていました。サーバー数すうが1000台だいとか超こえたのも、たぶんこの頃ころだと思おもう」と渡辺わたなべ氏しは振ふり返かえる。

さくらとはてなのインフラ10年ねん史し

　渡辺わたなべ氏しが入社にゅうしゃした2011年ねん頃ごろは、すでにサーバーの自作じさくは下火したびになっており、使つかいやすくなっていたベンダー製せいのサーバーを採用さいよう。物理ぶつり作業さぎょうもさくらインターネットに委託いたくするようになったため、データセンターに行いく回数かいすうは激減げきげんしたという。「今いままでサーバーを組くみ立たてて、データセンターに運はこぶのがインフラのアルバイトの仕事しごとだったけど、われわれとしてはやはり運用うんようで強つよみを出だして行いきたかった。さくらさんはやはりケーブリングとか物理ぶつり作業さぎょうがすごく美うつくしかったりするので、得意とくいなところを活いかして分業ぶんぎょうしていく方ほうがよいと思おもった」と渡辺わたなべ氏しは語かたる。

息いきの長ながいサービスを支ささえるための技術ぎじゅつ検証けんしょうと記録きろく

　2011年ねんには、はてなブログをAWS上じょうに構築こうちくし、クラウドとの併用へいようを開始かいしした。「当時とうじのクラウドは全然ぜんぜんI/Oが出でなかったので、いろいろな苦労くろうや運用うんよう知見ちけんが溜ためられた。サービスごとに適てきしたアーキテクチャを検討けんとうしながら、クラウド導入どうにゅうを進すすめていった」（渡辺わたなべ氏し）ということで、2000台だい規模きぼに膨ふくらんだサーバーの効率こうりつ的てきな運用うんようを追求ついきゅうしていったという。

　2014年ねんには、「ハウジングでのサーバーの集約しゅうやく度どやネットワーク性能せいのうに限界げんかいを感かんじてきた」（渡辺わたなべ氏し）ということで、さくらの専用せんようサーバへの移行いこう検証けんしょうを始はじめた。専用せんようサーバーを選択せんたくした理由りゆうとしては、なによりXenベースの既存きそんシステムからの移行いこうが容易よういなこと。また、静的せいてきに起動きどうしているDBサーバーの場合ばあい、専用せんようサーバーの方ほうがクラウドに比くらべて費用ひよう面めんで有利ゆうりだったという点てんも大おおきかったという。2015年ねんにはハウジング側がわとさくらの専用せんようサーバをVPNで接続せつぞくし、サーバーの移行いこうを開始かいし。2016年ねんにはさくらの専用せんようサーバのみで動作どうささせるサービスが生うまれたほか、ハイブリッド接続せつぞくも開始かいししたという。

　2018年ねんにはいよいよさくらクラウドの導入どうにゅうを開始かいしした。「さくらの専用せんようサーバでは、1サブネットでの台数だいすう制限せいげんやグローバル側がわに帯域たいいきが集中しゅうちゅうしてしまう問題もんだいなど、ネットワークがボトルネックになりつつあった」というのが導入どうにゅうの背景はいけいだ。

ハウジング、専用せんようサーバ、クラウドをハイブリッド接続せつぞくでつなぐ

　はてながクラウドの導入どうにゅうを検討けんとうしていたのは、さくらのクラウドでは接続せつぞくの自由じゆう度どが高たかい「ローカルルータ」の機能きのうが提供ていきょうされた頃ころ。このローカルルータとハイブリッド接続せつぞくを活用かつようし、柔軟じゅうなん性せいの高たかいクラウド側がわでリクエストを受うけつつ、負荷ふかの高たかいデータベースやアプリケーションは専用せんようサーバーで処理しょりするといった分散ぶんさんシステムが実現じつげんしているという。現在げんざいはハウジングから専用せんようサーバーへ移行いこう中ちゅうだが、石狩いしかりと東京とうきょうにシステムが分わかれているので、両者りょうしゃのネットワーク遅延ちえんが課題かだいにはなっているという。

　最後さいご、はてなの渡辺わたなべ氏しがまとめとして指摘してきしたのは「10年ねん戦たたかえる技術ぎじゅつで戦たたかう」という点てん。息いきの長ながいサービス自体じたいを効率こうりつよく運用うんようし、成長せいちょうさせていくためにはとにかく技術ぎじゅつ検証けんしょうをよく行おこない、本当ほんとうに必要ひつような技術ぎじゅつかを見極みきわめることが重要じゅうようだという。「必要ひつような技術ぎじゅつはどんどん導入どうにゅうしていく。いったん導入どうにゅうした技術ぎじゅつはきちんと刷新さっしんしていくサイクルが必要ひつよう」と渡辺わたなべ氏しは語かたる。

10年ねん戦たたかえる技術ぎじゅつで戦たたかうこと、記録きろくを残のこすこと

　もう1つ指摘してきしたのは、「記録きろくを残のこすこと」。渡辺わたなべ氏しが今回こんかい、入社にゅうしゃ時じより前まえからはてなのシステムを振ふり替かえることができたのは、やはりはてなにログの文化ぶんかがあったからにほかならない。渡辺わたなべ氏しは、「はてなブログや社内しゃないのグループウェアには当時とうじの担当たんとう者しゃの作業さぎょう記録きろくや思想しそうが残のこっている。昔むかしのシステムもよくできているので、決けっして負債ふさいではない。先人せんじんたちの記録きろくを参照さんしょうしながら、いいところは刷新さっしんし、よくないところはやめるようにしている」と語かたる。