共同きょうどう創業そうぎょう者しゃPlattner氏しが語かたる「SAP HANA」の進化しんか

ERPを進化しんかさせるSAP、インテリジェント・エンタープライズへ

2018年ねん06月がつ19日にち 09時じ00分ふん更新こうしん

文ぶん● 末岡すえおか洋子ようこ

　SAPがインメモリデータベース技術ぎじゅつ「SAP HANA」をベースに、ERPから拡大かくだいを続つづけている。6月、米べいフロリダ州しゅうオーランドで開催かいさいされた年次ねんじユーザーカンファレンス「SAPPHIRE Now 2018」では、HANAの生うみの親おやである共同きょうどう創業そうぎょう者しゃのHasso Plattner氏しが基調きちょう講演こうえんのステージに立たち、HANAの次つぎのステップとなるデータ管理かんりスイート「SAP HANA Data Management Suite」について説明せつめいした。

SAP共同きょうどう創業そうぎょう者しゃのPlattner氏し

SAPの進化しんかを支ささえるHANAーー実装じっそうをもっと高速こうそくに

　今年ことしのSAPPHIRE NowでSAPは”インテリジェント・エンタープライズ”という構想こうそうを打うち出だした。前回ぜんかいのSAPPHIREで発表はっぴょうしたイノベーションシステム「SAP Leonardo」の次つぎのステップで、デジタルコア、イノベーションシステムのSAP Leonardoにデータ統合とうごうが加くわわり、HANAの高速こうそくさを土台どだいに、データの活用かつようによりさらにスマートになるという考かんがえ方かただ。フロントエンド側がわでは、SAP Hybrisで展開てんかいしてきたコマース、マーケティング、セールスなどのクラウドを「C/4 HANA」としてスイートにした。

　1972年ねんに”リアルタイムエンタープライズ”を目指めざしてSAPを共同きょうどう創業そうぎょうしたPlattner氏しにとって、HANAは重要じゅうような技術ぎじゅつだ。R/1、R/2に続つづき登場とうじょうしたR/3は大だい成功せいこうを納おさめたが、リアルタイムエンタープライズの実現じつげんにはデータベースがネックだった。HANAは自社じしゃでそれを克服こくふくするという取とり組くみであり、2015年ねんに発表はっぴょうした最新さいしんのERP「S/4 HANA」ではHANAが土台どだいとなっている。

SAPのERPの変遷へんせん

　「HANAのスピード、インメモリ技術ぎじゅつにより、システムの性能せいのう劣化れっかを招まねいていた冗長じょうちょうな事前じぜんのアグリゲーションが不要ふようになった。HANAにより冗長じょうちょうなアグリゲーションがなくなった」とPlattner氏し、「全まったく違ちがうレベルの柔軟じゅうなん性せいが得えられる」と続つづける。「競合きょうごうは我々われわれに追おいついていないようだが」といつもの皮肉ひにくを口くちにしながら、「HANAがもたらすメリットは明確めいかくだ」と自信じしんを見みせる。

　大だい規模きぼな並列へいれつ処理しょりでデータのインポートが可能かのうとなり、性能せいのうの問題もんだいはなくなったと言いい切きる。「リアルタイムにアプリケーションを構築こうちくできるようになった」とPlattner氏し。リアルタイムのデータ入力にゅうりょくは可能かのうだったが、（リアルタイム）レポーティングは実現じつげんできなかったという。Plattner氏しによると、HANAの顧客こきゃくは2万まん2000に及およぶとのことだ。

　インテリジェント・エンタープライズは、スピード化かを図はかるものとなる。「数すう年ねん前まえから、SAPシステムの開発かいはつ、そして実装じっそうを加速かそくするために色々いろいろな取とり組くみを進すすめてきた。特とくに顧客こきゃく側がわでの新あたらしいSAPサービスの実装じっそうは高速こうそく化かすべきだと感かんじていた」ーーバックエンドとSAP SuccesssFactorsなどのフロントエンド、などとシステム間あいだの変革へんかくが必要ひつようと感かんじていたが、”インテリジェント・エンタープライズ”という掛かけ声ごえを持もつことで各かく事業じぎょう部ぶの連携れんけいが一気いっきに進すすんだという。

「数すう年ねんがかりでやっとSAPを実装じっそうしたのに、アップグレードできず最新さいしん機能きのうが使つかえないという顧客こきゃくがいる。これは悲かなしい話はなしだし、持続じぞく的てきなモデルではない」（Plattner氏し）

　コアをクリーンなままにするために拡張かくちょう部分ぶぶんを請うけ負おうSAP Cloud Platform、正式せいしき発表はっぴょうされたSAP HANA Data Managementは重要じゅうようなステップとなる。

　SAPのインテリジェント・エンタープライズは、S/4 HANA、SAPPHIREで発表はっぴょうした次世代じせだいCRM「C/4 HANA」、SAP Cloud Platformを中核ちゅうかくに、SAP Ariba、SAP SuccessFactors、SAP Fieldglass、SAP Concurが囲かこむ。デジタル時代じだいのユーザーインターフェイス、AIや予測よそく分析ぶんせきなどによる自動じどう化か、高速こうそくさが特徴とくちょうとなる。

SAP Cloud Platformを中心ちゅうしんにERPを超こえるインテリジェントエンタープライズを実現じつげん

HANAの進化しんか「SAP HANA Data Management Suite」の5つの特徴とくちょう

　SAP HANA Data ManagementはHANA、そしてHANA以外いがい（SAP以外いがい）のシステムにアクセスできる最新さいしんのデータ管理かんり技術ぎじゅつスイートだ。HANA、2017年ねん秋あきに発表はっぴょうされたデータパイプラインの「SAP Data Hub」を中心ちゅうしんに、「SAP Enterprise Architecture Designer」と「SAP Cloud Platform Big Data Services」を含ふくむ。

　Plattner氏しによるとは、SAP HANA Data Managementには5つの重要じゅうような特徴とくちょうがあるという。

1）データパイプライン、ガバナンス、ワークフロー: データを動うごかすことなくデータを活用かつようするという考かんがえを土台どだいとする。「データをAからBに移動いどうするのは大おおきなリスクだ。最初さいしょにそのデータを保存ほぞんしたアプリケーションが責任せきにんを持もつ」とPlattner氏し、パフォーマンスに与あたえる影響えいきょうもないという（SAP Data Hubの機能きのう）。「約やく25年ねんにETLでやったことを、ダイナミックに、オンザフライで実現じつげんできるようになった。これを実現じつげんしたのは高速こうそくな処理しょり能力のうりょくであり、洗練せんれんされた方法ほうほうでできるようになった」とも述のべる。
2）テキストと検索けんさく: 非ひ構造こうぞうデータ向むけの全文ぜんぶん検索けんさく、ナビゲーション、自然しぜん言語げんご処理しょり（NPL）（SAP HANA、SAP Leonardoが提供ていきょうする）
3）地理ちり空間くうかんとグラフ: 地理ちり空間くうかんデータとグラフ処理しょりが標準ひょうじゅん機能きのうとして含ふくまれる。ビジネスデータとの組くみ合あわせだけでなく、ストリーミングデータとの統合とうごうも可能かのうに。（SAP HANAの機能きのう）
4）データの匿名とくめい化か: GDPR（EU一般いっぱんデータ保護ほご規制きせい）などデータ保護ほご規制きせいで重要じゅうようになる機能きのうで、リアルタイムでデータの匿名とくめい化か、処理しょりが可能かのうになる（SAP HANAの機能きのう）
5）永続えいぞくメモリ: Plattner氏しが「一番いちばん面白おもしろい」という機能きのうがこれ。6TBのデータセットの場合ばあい、障害しょうがい時じのデータのリロードが50分ふんから4分ふんに短縮たんしゅくされる。2年ねん前まえよりIntelとの共同きょうどう作業さぎょうを行おこなっており、OptaneDCで実現じつげんした（SAP HANAの機能きのう）。

SAPのPaaS「SAP Cloud Platform」

　SAP Cloud Platform（SCP）については、製品せいひんを統括とうかつするSAP Cloud Platform担当たんとうプレジデント兼けんCTOのBjoern Goerke氏しが説明せつめいした。

SAP Cloud Platformを統括とうかつするBjorn Georke氏し

　SCPは9500以上いじょうの顧客こきゃく、950以上いじょうのパートナーを持じるPaaSで、1日にちに10億おく件けんのヒットがあるという。SAP App Centerのアプリ数すうは1500以上いじょう、5000以上いじょうの顧客こきゃくが統合とうごう機能きのうを利用りようしている。1万まん3700人にんの開発かいはつ者しゃがSAP API Business Hubを使つかっており、外部がいぶコネクタは150以上いじょうに上のぼる。2週間しゅうかんおきに新しん機能きのうを提供ていきょうするなど、どんどん進化しんかしているのも特徴とくちょうだ。

　Goerke氏しは、”インテリジェント・エンタープライズ”におけるSCPの役割やくわりとして、「ビジネスを革新かくしん的てきにし、スピードを上あげる」と説明せつめいする。具体ぐたい的てきには、アジャイルプラットフォームを中核ちゅうかくに、アプリ、データ、ビジネスプロセスの「統合とうごう」、アプリの「構築こうちく」、クラウド/オンプレミスアプリの「拡張かくちょう」、それに「体験たいけん」の4つの要素ようそで実現じつげんするという。

　特とくに体験たいけんについては、「プロセスがインテリジェントになると、エンドユーザーがシステムとインタラクションする方法ほうほうが土台どだいから変かわる」とGoerke氏し。将来しょうらいはプロセスが人間にんげんのインタラクションをトリガーするようになると続つづけた。機械きかい学習がくしゅうにより、会話かいわ型がたUI、チャットボットなどの新あたらしいUI技術ぎじゅつが可能かのうとなっており、予測よそく分析ぶんせきを加くわえることで「話はなしたり聞きいたりできるERP」などに進化しんかしていくと予想よそうした。

　SCPは17あるSAPのデータセンターに加くわえて、パブリッククラウドとして市場いちばをリードするAmazon Web Services（AWS）でも利用りようできる。また、今年ことしのSAPPHIREでは、これまでβべーた版ばん扱あつかいだったGoogle Cloud Platform（GCP）、Microsoft AzureがGAになったことが発表はっぴょうされた。パブリッククラウドに加くわえ、規制きせいの厳きびしい業界ぎょうかいなどに向むけてIBM Cloud上じょうでのプライベートクラウドエディション提供ていきょうに向むけても作業さぎょうを進すすめているという。

マルチクラウド化かを推進すいしんするSAP Cloud Platform

　マルチクラウドという顧客こきゃくの現状げんじょうに対たいし、課金かきんモデルも変かえた。Cloud Platform Enterprise Agreementでは単一たんいつの契約けいやくでSCPのすべての機能きのうを使つかうことができ、しかも使つかったぶんだけ支払しはらう「コンサンプションベース」を導入どうにゅうする。