業務ぎょうむを変かえるkintoneユーザー事例じれい 第だい29回かい

kintone hive tokyoでポーラが語かたる「浸透しんとうするシステム」

イノベーションを創造そうぞうするシステムの「シナプス型がた展開てんかい」とは？

　2018年ねん6月がつ14日にち、新木場しんきばスタジオコーストにて、サイボウズが主催しゅさいしているkintoneのユーザーイベント「kintone hive tokyo」が開催かいさいされた。その中なかで、5社しゃの事例じれい発表はっぴょうが行おこなわれたが、今回こんかいはその1番手ばんて、ポーラのTBエリア統括とうかつ部ぶ 伊藤いとう祐輔ゆうすけ氏しの発表はっぴょうを紹介しょうかいする。伊藤いとう氏しは販売はんばいと営業えいぎょうをサポートするエリア統括とうかつ部ぶという部署ぶしょで働はたらいており、業績ぎょうせき管理かんりや教育きょういく、インフラ構築こうちくを行おこなっている。

ポーラのTBエリア統括とうかつ部ぶ 伊藤いとう祐輔ゆうすけ氏し

情報処理じょうほうしょりの複雑ふくざつ度ど「154万まん2400」とは？

　プレゼンのテーマは「シナプス型がた展開てんかいでイノベーションを創造そうぞうする」で、最初さいしょのスライドには、154万まん2400という数字すうじが大おおきく表示ひょうじされた。この数字すうじは、「私わたしたちが年間ねんかんで行おこなっている情報処理じょうほうしょりの複雑ふくざつ度どを表あらわしている」と伊藤いとう氏し。ポーラ調しらべでは、1日にち平均へいきん400ほどの情報じょうほうを与あたえられるという。その情報じょうほうを与あたえられる場所ばしょや取とりに行いく先さきは約やく16ヵ所かしょ、そして年間ねんかんの稼働かどう日数にっすうを241日にちとし、3つの数字すうじを掛かけ合あわせた数字すうじが、154万まん2400となるというわけだ。

　「われわれは無意識むいしきのうちに、154万まんという判断はんだんを行おこなっているのが怖こわいところです。でも、情報じょうほうを取とりに行いく場所ばしょを1ヵ所かしょにすると、複雑ふくざつ度どが9万まん6400になり、94％がカットされます。94％の無駄むだをなくせれば、もっとクリエイティブな仕事しごとに当あてられます」（伊藤いとう氏し）

私わたしの友達ともだちの数かずでも年収ねんしゅうでもないと冗談じょうだんを飛とばす伊藤いとう氏し

　ポーラでは、この情報じょうほうを取とりに行いく場所ばしょを1つに集約しゅうやくするため、kintoneを活用かつようしているのだ。

　伊藤いとう氏しは、「誰だれでも正ただしく」「わかりやすい」「いつでもどこでも」「手軽てがるに簡単かんたん」という、4つの要素ようそを基本きほんにして、シンプルワークという働はたらき方かたの提案ていあんを行おこなっている。

　従来じゅうらい、社内しゃないでシステムを展開てんかいする場合ばあいはウォーターフォール型がた（トップダウン型がた）が基本きほん。ポーラでもずっとウォーターフォール型がたでの展開てんかいが続つづいていた。しかし、ウォーターフォール型がただと、組織そしきや階層かいそう、部署ぶしょ、チームなどが増ふえれば増ふえるほど、末端まったんに届とどく情報じょうほうの量りょうと質しつが低下ていかするというのが問題もんだい点てんだという。

　「皆みなさんの中なかにも、こんなにいいシステムなのに、なんでもっと使つかってもらえないのだろうか？　と思おもっている人ひともいらっしゃるのではないでしょうか。弊社へいしゃでも実際じっさいにありました。その理由りゆうは、一言ひとことで表あらわすと『わくわくしない』からです」（伊藤いとう氏し）

　ユーザーの期待きたいに添そいきれていないから、わくわくしない。具体ぐたい的てきには、コンテンツが古ふるくなっているとか、時代じだいに合あわせてブラッシュアップされにくいとか、不要ふようなものが残のこっているとか、必要ひつようなものが霞かすんでしまったりしているため。そして、ちょっとした改修かいしゅうでも大おおきなコストがかかってしまう。これらがきっかけで使つかってもらえないシステムが生うまれてしまうという。

従来じゅうらいのウォーターフォール型がただと実効じっこう性せいは高たかいが情報じょうほうの質しつの低下ていかが課題かだいになる

わくわくするシステムを実現じつげんするシナプス型がた展開てんかい

　そこで伊藤いとう氏しは、わくわくするシステムを作つくろうと考かんがえた。常つねに新あたらしいコンテンツが湧わき上あがっており、時代じだいにマッチしたほしいものがあり、重要じゅうようなものだけが残のこるというシステムで、最小限さいしょうげんのコストで済すむシステムを目指めざした。

　しかし問題もんだいになるのが、企画きかく・運営うんえいとメンテナンスの体勢たいせい。従来じゅうらいのように情報じょうほうシステム部ぶが全部ぜんぶ担当たんとうするのではなく、課題かだいを持もっている人ひとがシナプスのように作成さくせい者しゃ・管理かんり者しゃとなり、改善かいぜんや改革かいかく、イノベーションを形かたちにできる体勢たいせいが作つくれれば、わくわくできるシステムになるのではないかと考かんがえたのだ。

　「それを実現じつげんするのが、このシナプス型がた展開てんかいです。はっきり言いって、このシナプス型がた展開てんかいはトップダウン型がた展開てんかいと比くらべて、時間じかんがかかります。なぜなら、一瞬いっしゅんの打うち上あげ花火はなびではなく、組織そしきや文化ぶんかを作つくっていくことになるからです」（伊藤いとう氏し）

　ポーラでシナプス型がた展開てんかいを実施じっししてから3年ねんが経過けいかしている。次つぎのスライドでは、この3年間ねんかんの稼働かどう／削除さくじょ／総そうアプリ数すうとログイン数すうが表示ひょうじされた。2015年ねんに導入どうにゅうされてから3ヵ月かげつほどでぐっと増ふえたが、そこから2年ねん以上いじょう横よこばいが続つづき、2018年ねん2月がつから急激きゅうげきに増加ぞうかしていた。

長ながい浸透しんとう期きのあと、一気いっきに展開てんかい期きで広ひろがっていくシナプス型がた展開てんかいのグラフ

　伊藤いとう氏しは、この横よこばいの時期じきを「浸透しんとう期き」、ログイン数すうが跳はね上あがり、アプリ数すうも急増きゅうぞうしているこの数ヵ月すうかげつを「展開てんかい期き」と呼よんだ。浸透しんとう期きのポイントは、いかにキラーコンテンツを作つくるかにかかっているという。最初さいしょ、日報にっぽうアプリから作つくり始はじめた伊藤いとう氏しは、kintoneの強つよみと弱よわみを理解りかいし、色々いろいろなことが実現じつげんできるかも知しれないと肌はだで感かんじたそう。そして、もっと広ひろげたいと思おもい、営業えいぎょうが必要ひつようとしていたアプリを開発かいはつする。

　「営業えいぎょう先さきで、iPhoneから必要ひつような情報じょうほうを全部ぜんぶ手しゅに入いれたい、というニーズに応こたえたのが、PライブラリとPラーニングアプリです。営業えいぎょうに必要ひつような情報じょうほうの格納庫かくのうこで、ここにすべての情報じょうほうを一元化いちげんかしています」（伊藤いとう氏し）

　しかし、アプリを開発かいはつしたのに、最初さいしょはアクセス数すうがまったく伸のびなかった。その理由りゆうは、告知こくちをしなかったため。そこで、kintoneの機能きのうを利用りようし、アプリが更新こうしんされたら通知つうちが出でるようにした。さらに、社内しゃないの施策しさくや教育きょういく部門ぶもんと連動れんどうし、ユーザーの口くちコミを広ひろげるという仕掛しかけを行おこなった。「そのおかげで、社内しゃないでkintoneの存在そんざいに気きがついてもらうことになりました。ここに来くればなんでもあるという、弊社へいしゃでのkintoneのブランディングが完成かんせいしました」と伊藤いとう氏し。

　展開てんかい期きのポイントは、驚おどろきと感動かんどうの共きょう創そうだという。伊藤いとう氏しは日々ひび相談そうだんを受うけたり、打うち合あわせをするが、その場ばでkintoneアプリを作つくってしまう。そうすれば、その場ばで実際じっさいに試用しようしてもらうことができる。すると、「え、こんなことできるの？」や「こんなに早はやくできちゃうの？」という声こえがもらえるという。そして今度こんどは作成さくせい者しゃ側がわの口くちコミが広ひろがっていく。

　「（ユーザーと作成さくせい者しゃの）口くちコミが広ひろがっていくと、「次つぎもお願ねがいするね」「kintoneだったらできるって聞きいたんだけど」「kintoneを使つかってみたい」などと、いつの間まにか、勝手かってに依頼いらいが入はいってくる仕組しくみができました」（伊藤いとう氏し）

大切たいせつなのはイノベーションを起おこし続つづけること

　現在げんざいでは、社内しゃないでkintoneが浸透しんとうし、アプリ作成さくせいの依頼いらいの方ほうが多おおくなってしまっている状況じょうきょうで、クリエイターが足たりなくなっているのが最大さいだいの課題かだいだそう。アプリのアクセス数すうが少すくないと困こまっていたときと比くらべると、すごい変化へんかだと言いえる。さらに、クリエイターを増ふやすためには、kintoneを伝承でんしょうしていく必要ひつようがあるという。実際じっさい、会場かいじょうには伊藤いとうさんのあとを継つぐ人ひとたちも来場らいじょうしていた。kintone hiveでプレゼンする伊藤いとう氏しの姿すがたを見みせて、ねずみ算ざん式しきにクリエイターを増ふやしていきたいとのことだった。

　「複雑ふくざつで不ふ確実かくじつ、曖昧あいまい、ドラスティック、そんな変化へんかし続つづけていく社会しゃかいの中なかで選えらばれ続つづける企業きぎょうになるためには、私わたしたちが変化へんかし続つづけていかなければいけません。大切たいせつなのは、イノベーションを起おこし続つづけることだと感かんじています。だからこそ、私わたしたちはあえてシナプス型がたで展開てんかいし、シンプルワークを目指めざして行いきたいと思おもいます。すべての従業じゅうぎょう員いんが、誰だれでもいつでもどこでも正ただしくわかりやすく手軽てがるに簡単かんたんに、これを実現じつげんできるのがkintoneなのです。人ひとと組織そしきには無限むげんの可能かのう性せいがあると思おもいます。それを引ひき出だしてくれるのが生いき物もののようなkintoneなのではないでしょうか」（伊藤いとう氏し）

プレゼンの後のちのトークで、伊藤いとうさんの自己じこ紹介しょうかいや更新こうしんの育成いくせい方法ほうほうが語かたられた

　アプリのアクセス数すうが少すくないと困こまっているところから、依頼いらい殺到さっとうでクリエイターが足たりなくなるところまでに至いたったストーリーは、これからkintoneを導入どうにゅうしようとしている企業きぎょうにはとても参考さんこうになるはず。もし、いいシステムなのに社員しゃいんが使つかってくれない、と悩なやんでいるならぜひ参考さんこうにして欲ほしい事例じれい発表はっぴょうだった。