コードの変更へんこう回数かいすうや障害しょうがいチケットの残存ざんそん期間きかんを可視かし化か、さらに機械きかい学習がくしゅう適用てきようや部門ぶもん間あいだでの情報じょうほう共有きょうゆうも

DevOpsの成果せいかをSplunkで分析ぶんせき＆可視かし化か、横河電機よこかわでんきのチャレンジ

2018年ねん07月がつ03日にち 07時じ00分ふん更新こうしん

文ぶん● 大塚おおつか昭彦あきひこ／TECH.ASCII.jp

　産業さんぎょう用よう制御せいぎょシステム／計測けいそく機器ききメーカーである横河電機よこかわでんきでは、ソフトウェアシステム製品せいひんの開発かいはつ部門ぶもんにおいて、数すう年ねん前まえからDevOpsの取とり組くみを進すすめてきた。現在げんざいではさらに、そこから生うまれるさまざまな開発かいはつメトリクスデータをAWS上じょうの「Splunk Enterprise」に取とり込こんで分析ぶんせき／可視かし化かすることで、開発かいはつ業務ぎょうむの効率こうりつ化かや改善かいぜんにチャレンジし始はじめているという。

　今回こんかいは、2018年ねん6月がつ8日にち開催かいさいの「SplunkLive! TOKYO」で事例じれい講演こうえんを行おこなった横河電機よこかわでんき devopsグループリーダの藤原ふじわら匠たくみさんと、同社どうしゃにおけるDevOpsの取とり組くみを共ともに推進すいしんしてきた高橋たかはし秀行ひでゆきさん、多田ただ哲あきらさんにお話はなしをうかがった。

（右みぎから）横河電機よこかわでんき IAシステム＆サービス事業じぎょう本部ほんぶ（IA-SS）システム開発かいはつセンターシステムソフトウェア技術ぎじゅつ部ぶ devopsグループリーダの藤原ふじわら匠たくみさん、同社どうしゃIA-SS システム開発かいはつセンター統括とうかつ管理かんり部長ぶちょうの高橋たかはし秀行ひでゆきさん、同社どうしゃIA-SS ライフサイクルサービス事業じぎょう部ぶソリューション開発かいはつ部ぶ開発かいはつ運用うんよう課かの多田ただ哲あきらさん。2013年ねん当時とうじは同おなじ部署ぶしょに所属しょぞくし、DevOpsの取とり組くみを推進すいしんしてきた仲間なかまだ

自動じどう化かの取とり組くみを1人ひとりで始はじめ、チーム内ないの“DevOpsマインド”が醸成じょうせいされるまで

　横河電機よこかわでんきのIAシステム＆サービス事業じぎょう本部ほんぶ（IA-SS）は、産業さんぎょうプラント向むけの生産せいさん制御せいぎょシステム「CENTUM VP」や安全あんぜん計けい装そうシステム「ProSafe-RS」といったWindowsソフトウェア製品せいひんを開発かいはつ／提供ていきょうする部門ぶもんだ。その中なかで藤原ふじわらさんは、こうしたソフトウェア製品せいひんの開発かいはつインフラ構築こうちく／運用うんようと、ビルドの実施じっしやインストーラの開発かいはつなどを主おもな業務ぎょうむとしている。

　横河電機よこかわでんきにおけるDevOpsの取とり組くみは、5年ねん前まえの2013年ねん、藤原ふじわらさんが「1人ひとりで」始はじめたのだという。当時とうじの藤原ふじわらさんは製品せいひんのテスター業務ぎょうむに従事じゅうじしており、ソフトウェアのインストールや設定せっていの作業さぎょうを繰くり返かえしていたが、担当たんとう製品せいひんのインストール作業さぎょうには1回かいあたり総計そうけいで5時間じかん以上いじょうかかっていた。当然とうぜん、そこに人ひとが張はりついて作業さぎょうするのでは効率こうりつが悪わるい。

　そこで藤原ふじわらさんはオープンソースのサーバー構成こうせい管理かんりツール「Chef」を導入どうにゅうし、OSの設定せっていやアプリケーションのインストールといった作業さぎょうを自動じどう化かした。その効果こうかは絶大ぜつだいであり、その後ご、Chefの適用てきよう先さきは同どう社内しゃないのソフトウェア開発かいはつ工程こうていや国内こくない／海外かいがい拠点きょてんにおける出荷しゅっか作業さぎょうにも拡大かくだいし、作業さぎょう工数こうすうを累積るいせきで数すう千せん時じ間あいだぶんも削減さくげんしている。この取とり組くみを通つうじて、藤原ふじわらさんはInfrastructure as Codeのもたらす効果こうかやDevOpsという考かんがえ方かたを理解りかいしていった。

　さらに2014年ねんからは藤原ふじわらさん、高橋たかはしさん、多田たださんらのチームが中心ちゅうしんとなり、より本格ほんかく的てきにDevOpsの取とり組くみを推進すいしんすることになった。開発かいはつ側がわ（Dev側がわ）ではなくインフラ側がわ（Ops側がわ）が主体しゅたいとなった、ボトムアップでのDevOpsアプローチだ。

　藤原ふじわらさんらが当時とうじ担当たんとうしていたプロジェクトは、1990年代ねんだいから長年ながねんにわたり開発かいはつが継続けいぞくしているソフトウェア製品せいひんの開発かいはつプロジェクトで、ソースコード規模きぼは数すう千せん万まん行ぎょう、200名めい以上いじょうの開発かいはつ者しゃが関かかわる大だい規模きぼなものだった。藤原ふじわらさんは製品せいひんのビルド工程こうていを担当たんとうしていたが、ビルド開始かいしから完了かんりょうまでには総計そうけいで24時間じかん以上いじょうもかかり、しかも工程こうていの途中とちゅうには手作業てさぎょうが残のこっていたため、ビルド処理しょりを開始かいしして放置ほうちできるわけでもなかった。「作業さぎょうが非ひ効率こうりつなだけでなく、社内しゃないから急きゅうに『明日あした使つかいたい』と言いわれても対応たいおうできませんでした」（藤原ふじわらさん）。

藤原ふじわらさんらが当時とうじ担当たんとうしていたのは非常ひじょうに大だい規模きぼな開発かいはつプロジェクトだった

　この課題かだいを解決かいけつするために、ビルド業務ぎょうむにかかる時間じかんと手間てまを削減さくげんする3つの取とり組くみに着手ちゃくしゅした。まず、手作業てさぎょうを排除はいじょして自動じどう化かするためにオープンソースのCIツールである「Jenkins」を導入どうにゅう。加くわえて、古ふるいビルドシステムも見直みなおし、必要ひつようであればモダンな言語げんごで再さい実装じっそうを行おこなったり、Jenkinsとの親和しんわ性せい改善かいぜんを図はかった。そして、とくに処理しょり時間じかんのかかっていたボトルネック部分ぶぶんをひとつずつ潰つぶしていったという。その結果けっか、全ぜん工程こうていを自動じどう化かすることによって、24時間じかんかかっていたビルド業務ぎょうむは5時じ間あいだにまで短縮たんしゅくされた。

　こうしてインフラ周まわりの運用うんよう自動じどう化かを進すすめた結果けっか、開発かいはつインフラチームのパフォーマンスは4倍ばい以上いじょうに向上こうじょうし、開発かいはつ者しゃの業務ぎょうむにも間接かんせつ的てきに改善かいぜん効果こうかをもたらしたという。さらにインフラチーム内ないでは自動じどう化かツールを扱あつかうスキルが向上こうじょうし、「DevOpsが文化ぶんかとして定着ていちゃくしたことで“DevOps的てきな考かんがえ方かた”ができるようになりました」と、藤原ふじわらさんは自みずから取とり組くんでみることでチーム内ないに起おきた変化へんかを語かたる。

　取とり組くみが成功せいこうした要因よういんについて、藤原ふじわらさんは「上司じょうし（高橋たかはしさん）やリーダーの支援しえん」と「チームメンバーの“改善かいぜん”マインド」があったからだと分析ぶんせきする。後者こうしゃについて、5年ねん前まえのチーム内ないは「『時間じかんがないから何なにも改善かいぜんできない』と考かんがえるようなつらい状況じょうきょう」だったが、運用うんよう自動じどう化かによって時間じかん的てきな余裕よゆうが徐々じょじょに生うまれ、その余剰よじょう時間じかんをさらなる業務ぎょうむ改善かいぜんに生いかしていく好こう循環じゅんかんが生うまれたという。

一般いっぱん的てきなDevOpsの主要しゅようプラクティス。横河電機よこかわでんきの場合ばあいはインフラの自動じどう化かやワンステップビルドからスタートした

　藤原ふじわらさんらの取とり組くみは、元々もともと“Ops側がわ”＝インフラ運用うんよう側がわ主体しゅたいの動うごきであり、横河電機よこかわでんき全社ぜんしゃで見みればまだまだ小ちいさな動うごきではある。長ながい歴史れきしを持もつ製造せいぞう業ぎょうがすぐに“DevOps的てき”なアジャイル開発かいはつ手法しゅほうを取とり入いれられるわけでもない。それでも、最近さいきんでは社内しゃないにDevOpsユーザー会かいが立たち上あがり、部門ぶもん間あいだの情報じょうほう共有きょうゆうや取とり組くみの支援しえんも始はじまるなど、意識いしき変化へんかが少すこしずつ始はじまっているのは確たしかのようだ。ちなみに「devopsチームリーダ」という藤原ふじわらさんの肩書かたがきがDevOpsを小文字こもじで表記ひょうきしているのは、DevとOpsの間あいだのサイロ（垣根かきね）をなくすという目標もくひょうに基もとづくという。

偶然ぐうぜん出会であったSplunkを使つかい、開発かいはつ業務ぎょうむの改善かいぜんを次つぎの段階だんかいへ

　取とり組くみの成功せいこう要因よういんとしてもうひとつ、藤原ふじわらさんは、ちょうど同おなじ時期じきに情報じょうほうシステム部門ぶもんがAmazon Web Services（AWS）やSplunkといった新あらたなIT環境かんきょうの社内しゃない利用りようを促進そくしんし始はじめたことを挙あげた。この偶然ぐうぜんが、次つぎなる取とり組くみへとつながったからだ。

　上述じょうじゅつしたとおり、2013年ねんからスタートしたDevOpsの取とり組くみは着実ちゃくじつに成果せいかを上あげてきた。しかしスタートから数すう年ねんが経過けいかし、インフラチームの扱あつかう範囲はんいでの自動じどう化かがひととおり終おわると、改善かいぜん効果こうかの幅はばは次第しだいに小ちいさなものになっていた。

　「ある意味いみ必然ひつぜんなのですが、取とり組くみが進すすむにつれて、改善かいぜんの効果こうかがだんだん出でにくくなっていました。そろそろ何なにか別べつのところに（改善かいぜんのための労力ろうりょくを）振ふり向むけてもいいかな、と考かんがえていました」（藤原ふじわらさん）

　そんなとき、藤原ふじわらさんはSplunkと出会であった。情報じょうほうシステム部門ぶもんが開催かいさいした社内しゃないセミナーで、セキュリティツールとして導入どうにゅうされたSplunkが紹介しょうかいされたのだった。セキュリティツールとして説明せつめいされたため「最初さいしょはピンと来きませんでした」と笑わらう藤原ふじわらさんだが、「DevOpsでもデータを入いれてみたら何なにかわかるかもしれない」と講師こうしに言いわれ、手元てもとのデータをSplunkに取とり込こんでみたところ簡単かんたんに可視かし化かができた。「その簡単かんたんさに感動かんどうすら覚おぼえ、すぐにSplunkのファンになりました」（藤原ふじわらさん）。

現在げんざいの横河電機よこかわでんきにおけるSplunkの活用かつよう範囲はんい。セキュリティやDevOpsだけでなく、幅広はばひろい領域りょういきでデータ分析ぶんせき／可視かし化かに利用りようされるようになっている

　Splunkの有用ゆうよう性せいを知しった藤原ふじわらさんは、当時とうじ抱かかえていた課題かだいもこれを使つかって解決かいけつできるのではないかと思おもいつく。それは「開発かいはつプロジェクトの進捗しんちょく状態じょうたいが見みえづらい」という課題かだいだった。

　「たとえば『今週こんしゅう開発かいはつしたテスト版ばんのクオリティが異常いじょうに低ひくいのだけど、その原因げんいんがよくわからない』ということがありました。プロジェクトの規模きぼが大おおきいため、プロジェクトマネージャーでさえも細こまかな開発かいはつの状況じょうきょうまではわかりませんでした。もしもそのとき、その週しゅうに多おおくのコード変更へんこうが行おこなわれたことが可視かし化かされていれば、それが原因げんいんではないかと考かんがえられたはずです」（藤原ふじわらさん）

　もちろん、工数こうすう管理かんりシステムなどを使つかった開発かいはつプロジェクト全体ぜんたいの管理かんりはこれまでも行おこなわれてきた。ただし、「コード変更へんこうの回数かいすう」のような具体ぐたい的てきな状況じょうきょうを知しるには、1、2カ月かげつごとに訪おとずれるフェーズ終了しゅうりょうごとのレビューを待またなければならなかった。ここでは管理かんりシステムからデータを取とり出だし、Excelに取とり込こんで担当たんとう者しゃが手作業てさぎょうでグラフ化かを行おこなっており「リアルタイムに状況じょうきょうが見みえないことが大おおきな課題かだいでした」と多田たださんは説明せつめいする。

　そこで藤原ふじわらさんらはSplunkを使つかい、コード変更へんこうのメトリクスを可視かし化かしてみることにした。具体ぐたい的てきには、チーム開発かいはつ支援しえん製品せいひんであるマイクロソフトの「Team Foundation Server（TFS）」から、ソースコードの変更へんこう履歴りれきデータを取とり出だしてSplunkに取とり込こみ、変更へんこう回数かいすうを週しゅうごとのグラフとして自動的じどうてきにまとめる。さらにグラフ上じょうではコードが対応たいおうする機能きのう別べつに色分いろわけをし、どの機能きのうで変更へんこうが多おおかったのかが一目いちもくでわかるようにした。