最新さいしんユーザー事例じれい探求たんきゅう 第だい52回かい

当初とうしょからインターネットのみ、今年ことしは運営うんえい効率こうりつ化かにFileMaker CloudやiPhoneも採用さいよう。事務じむ局きょく担当たんとう者しゃに背景はいけいを聞きく

IT活用かつようの「コンパクトな大会たいかい運営うんえい」20周年しゅうねん、宮崎みやざきシーガイアトライアスロン

　今年ことし7月がつに宮崎みやざき市しで開催かいさいされた「第だい20回かい宮崎みやざきシーガイアトライアスロン大会たいかい2018」。20周年しゅうねんの節目ふしめとなる今年ことしの大会たいかいには、宮崎みやざき県内けんないだけでなく全国ぜんこくからおよそ1000人にんのアスリートがエントリーし、スイム、バイク、ランによる熱あついレースを繰くり広ひろげた。

7月がつ8日にちに開催かいさいされた「第だい20回かい宮崎みやざきシーガイアトライアスロン大会たいかい2018」（写真しゃしん提供ていきょう：ファイルメーカー、以下いか同様どうよう）

　同どう大会たいかいの実行じっこう委員いいん会かいは、20年ねん前まえのスタート当初とうしょからITやインターネットを活用かつようした「スマートでコンパクトな大会たいかい運営うんえい」を目指めざし、実践じっせんしてきた。現在げんざいではエントリー管理かんりや、大会たいかい前日ぜんじつ／当日とうじつに複ふく数すう回かい行おこなう現地げんち受付うけつけ、レース中ちゅうの選手せんしゅの状況じょうきょう把握はあくなどに「FileMaker」プラットフォームで構築こうちくしたシステムとiPhone/iPadデバイスをフル活用かつようしている。今年ことしの大会たいかいでは、昨年さくねんから国内こくない提供ていきょうが始はじまった「FileMaker Cloud」も取とり入いれた。

大会たいかい運営うんえいにFileMakerで開発かいはつしたカスタムアプリやiPhone/iPadを活用かつようしている

　今回こんかいは同どう大会たいかいの運営うんえいに携たずさわる大会たいかい実行じっこう委員いいん会かい事務じむ局きょくの徳留とくどめ功一こういち氏しと、大会たいかい運営うんえいシステムをFileMakerで開発かいはつしたスプラッシュ 代表だいひょう取締役とりしまりやくの蜷川にながわ晋すすむ氏しに、トライアスロン大会たいかい運営うんえいの裏側うらがわやITを積極せっきょく的てきに取とり入いれる理由りゆう、FileMakerベースで構築こうちくされたシステムの具体ぐたい的てきな機能きのうや活用かつようシーンを聞きいた。

宮崎みやざきシーガイアトライアスロン大会たいかい実行じっこう委員いいん会かい事務じむ局きょくの徳留とくどめ功一こういち氏し

大会たいかい運営うんえいシステムの構築こうちくを手てがけたスプラッシュ 代表だいひょう取締役とりしまりやくの蜷川にながわ晋すすむ氏し

「コンパクトな大会たいかい運営うんえい」目指めざし、20年ねん前まえからインターネットとITを活用かつよう

　1998年ねんから毎年まいとし開催かいさいされている宮崎みやざきシーガイアトライアスロン大会たいかい。2012年ねんからは、それまでのショートディスタンス部門ぶもんに加くわえてオリンピックディスタンス部門ぶもん（スイム1.5km＋バイク40km＋ラン10km）も始はじまり参加さんか選手せんしゅが増加ぞうか、現在げんざいでは「九州きゅうしゅうでもいちばん人気にんきの大会たいかいになった」と徳留とくどめ氏しは語かたる。全国ぜんこく的てきにも知名度ちめいどがあり、今年ことしは関東かんとうなど県けん外がいからのエントリーが7割わりを占しめたという。

　「宮崎みやざき県けんトライアスロン連合れんごうが中心ちゅうしんとなり、さまざまな地元じもと企業きぎょうや地元じもと組織そしきが参画さんかくして実行じっこう委員いいん会かいを構成こうせいしています。大会たいかい当日とうじつは500、600人にんほどの高校生こうこうせいボランティアも参加さんかしており、彼かれら彼女かのじょらが沿道えんどうから熱あつい声援せいえんを送おくってくれるのも、この大会たいかいの魅力みりょくになっていますね」（徳留とくどめ氏し）

　ちなみに今年ことしのボランティア参加さんか者しゃは高校生こうこうせい、大学生だいがくせい、一般いっぱんを合計ごうけいしておよそ630人にんだったという。

宮崎みやざきシーガイアトライアスロン大会たいかいは今年ことしで20周年しゅうねんを迎むかえた（画面がめんは公式こうしきサイト）

　そんな同どう大会たいかいの大会たいかい運営うんえいでは、第だい1回かい目めの開催かいさいからITやインターネットの活用かつように力ちからを入いれてきたという。1998年ねんと言いえば、ちょうどインターネットの利用りよう環境かんきょうが日本にっぽんの家庭かていにも普及ふきゅうし始はじめたころだ。

　「20年ねん前まえから『少しょう人数にんずうでコンパクトに、システマチックに大会たいかい運営うんえいをすること』ことをテーマにしてきました。われわれは1回かい目めの大会たいかいから、告知こくちポスターやチラシ、参加さんか申込もうしこみ書しょといった“紙かみ”は一切いっさい作つくっていません。告知こくちも参加さんかエントリーも、インターネットですべて完結かんけつさせています」（徳留とくどめ氏し）

　1998年ねん当時とうじ、ほかのトライアスロン大会たいかいではまだ「アナログな」運営うんえい方法ほうほうが取とられていたと徳留とくどめ氏しは振ふり返かえる。大会たいかい参加さんか選手せんしゅは事前じぜんに健康けんこう診断しんだんを受うけ、その診断しんだん書しょを参加さんか申込もうしこみ書しょやエントリー料りょうなどと一緒いっしょに現金げんきん書留かきとめ封筒ふうとうに入いれて大会たいかい事務じむ局きょくに郵送ゆうそうする。受うけ取とった事務じむ局きょくはそれを手作業てさぎょうでまとめ、管理かんりする――そういうやり方かただ。一斉いっせいに数すう百ひゃく人にん、数すう千せん人にんがエントリーするのだから、事務じむ局きょくの作業さぎょうはかなり大変たいへんなものになる。

　そもそも全国ぜんこくで開催かいさいされているこうした地域ちいき主体しゅたいのスポーツイベントは、人員じんいんの面めんでも運営うんえい資金しきんの面めんでもそれほど余裕よゆうがないのが実情じつじょうだと徳留とくどめ氏しは明あかす。安全あんぜん面めんなど大会たいかいの根幹こんかんにかかわる部分ぶぶんはしっかりと守まもりつつ、それ以外いがいの部分ぶぶんではできるだけ効率こうりつ化かしていかなければ、長期ちょうき的てきに開催かいさいを維持いじするのは難むずかしい。

　そこで宮崎みやざきシーガイアトライアスロンでは、エントリー受付うけつけはWebサイトで行おこない、エントリー料りょうはコンビニエンスストアやクレジットカードで決済けっさいする方式ほうしきをとった。大会たいかい事務じむ局きょくは、そこで取得しゅとくしたデータを取とり込こんでエントリー選手せんしゅの管理かんりや参加さんか通知つうち証しょうの発送はっそうなどに使つかう。「今いまでこそこうした方法ほうほうが一般いっぱん的てきになりましたが、当時とうじはかなり先進せんしん的てきだったと思おもいます」と徳留とくどめ氏しは語かたる。

FileMakerのカスタムアプリを開発かいはつ、大会たいかい当日とうじつの受付うけつけ業務ぎょうむを効率こうりつ化か

　それから20年間ねんかん、同どう大会たいかいでは毎年まいとし試行錯誤しこうさくごを重かさねながらIT活用かつようをグレードアップしてきた。5年ねん前まえの2013年ねん大会たいかいからは、大会たいかい前日ぜんじつ／当日とうじつの受付うけつけ業務ぎょうむや運営うんえい状じょう況きょうの監視かんしにFileMakerで構築こうちくしたシステムを導入どうにゅうしている。

　「FileMakerを導入どうにゅうするまでは、われわれも当日とうじつ受付うけつけを紙かみベースで行おこなっていました。全ぜん参加さんか者しゃのリストを五十音ごじゅうおん順じゅんで印刷いんさつしておき、受付うけつけが済すんだら鉛筆えんぴつでチェックしてゼッケンを渡わたす、そういう煩雑はんざつな作業さぎょうをやっていたわけです。アナログなやり方かたなので時間じかんがかかり、10人にん以上いじょうのボランティアを割わり当あてても受付うけつけ待まちの長ながい行列ぎょうれつが出来できてしまうので、なんとか解決かいけつしたいと考かんがえていました」（徳留とくどめ氏し）

　受付うけつけ業務ぎょうむは最初さいしょの総合そうごう受付うけつけだけでなく、選手せんしゅ説明せつめい会かい（後述こうじゅつ）や前夜祭ぜんやさいのウェルカムパーティー、当日とうじつの大会たいかい会場かいじょうでも行おこなう。およそ1000人にんの参加さんか選手せんしゅが合計ごうけい4回かいも行おこなう受付うけつけ処理しょりをどう効率こうりつ化かするのか、これがひとつの課題かだいだった。

　これに加くわえて、トライアスロンという競技きょうぎならではの特殊とくしゅな事情じじょうを背景はいけいとした課題かだいもあったという。

　「トライアスロン大会たいかいは、生命せいめいにかかわる危険きけんもあるスポーツイベントです。そのため参加さんか選手せんしゅには、大会たいかい前日ぜんじつに何なん度どか開催かいさいする『選手せんしゅ説明せつめい会かい』への出席しゅっせきを義務ぎむづけています。最初さいしょに総合そうごう受付うけつけを済すませてからでないと選手せんしゅ説明せつめい会かいに出席しゅっせきできないルールなのですが、総合そうごう受付うけつけと選手せんしゅ説明せつめい会かいの受付うけつけは別べつの場所ばしょで並行へいこうして行おこないますから、紙かみベースで管理かんりするかぎりそのチェックができません。これも悩なやみでした」（徳留とくどめ氏し）

　これをシステム化かし、運営うんえいスタッフ間あいだでリアルタイムに情報じょうほう共有きょうゆうできるようにしようと徳留とくどめ氏しが思おもい立たったのが2013年ねんだった。「ほかの仕事しごとでFileMakerを使つかっており、その良よさはわかっていた」（徳留とくどめ氏し）ため、FileMakerでシステム開発かいはつのできる会社かいしゃを探さがし、出会であったのが東京とうきょうのスプラッシュだった。スプラッシュの蜷川にながわ氏しは、徳留とくどめ氏しから「大会たいかい受付うけつけを迅速じんそくに、誰だれでもできるようなシステムが作つくれないか」と相談そうだんを受うけたことを覚おぼえていると語かたる。

　相談そうだんした時点じてんで徳留とくどめ氏しがイメージしていたのは、PCに取とり付つけたバーコードリーダーで選手せんしゅ参加さんか証しょうを読よみ取とり、データベースと照合しょうごう／記録きろくするような受付うけつけシステムだった。ここで蜷川にながわ氏しは、受付うけつけ端末たんまつとしてPCではなくiPhoneを利用りようすることを提案ていあんした。FileMakerは標準ひょうじゅん機能きのうで二に次元じげんバーコードの読よみ取とりに対応たいおうしており、モバイルデバイス用ようの「FileMaker Go」を使つかえばiPhoneの内蔵ないぞうカメラで簡単かんたんにスキャンできる。クラウドにホストしたFileMaker Serverに接続せつぞくして使つかうかたちならば、屋外おくがいを含ふくめ複数ふくすうの場所ばしょで、複数ふくすうのスタッフが並行へいこうして受付うけつけを行おこなううえでも便利べんりだろう。

　徳留とくどめ氏しからシステム要件ようけんをき取きとりながら、スプラッシュではカスタムアプリの開発かいはつを進すすめていった。「すべて標準ひょうじゅん機能きのうを使つかって開発かいはつしたので、2週間しゅうかんくらいで出来できたと記憶きおくしています」と蜷川にながわ氏しは語かたる。

　現在げんざいは、毎年まいとし4月がつ下旬げじゅんにWebでの参加さんかエントリーを締しめ切きったあと、大会たいかい事務じむ局きょくが各かく選手せんしゅのCSVデータにエントリー番号ばんごうを付ふ番ばんしたうえでスプラッシュに渡わたし、スプラッシュがFileMakerのカスタムアプリに取とり込こむ。このアプリ（ランタイム版ばん）は事務じむ局きょくに渡わたされ、事務じむ局きょくのPCで大会たいかい開催かいさいまでの管理かんり業務ぎょうむに利用りようされる。選手せんしゅデータの閲覧えつらんや修正しゅうせいといった機能きのうだけでなく、二に次元じげんバーコード入いりの参加さんか通知つうち証しょうや封筒ふうとうの印刷いんさつ機能きのうも備そなえている。

大会たいかい事務じむ局きょくが利用りようするカスタムアプリ。各かく参加さんか選手せんしゅのデータをここに集約しゅうやくしており、参加さんか通知つうち証しょうや封筒ふうとうの印刷いんさつ機能きのうも備そなえる（画面がめんはダミーデータ）

　また、大会たいかい当日とうじつにはこのカスタムアプリをFileMaker Serverでホスティングし、インターネット経由けいゆで活用かつようしている。前述ぜんじゅつしたとおりFileMaker Goを使つかい、二に次元じげんバーコードをスキャンするだけで処理しょりできる仕組しくみにした結果けっか、これまで10人にん以上いじょうで対応たいおうしても行列ぎょうれつが出来できていた受付うけつけ業務ぎょうむが、わずか2人ふたりのボランティアで余裕よゆうを持もって対応たいおうできるようになった。

iPhoneからアクセスすると受付うけつけ用ようアプリを表示ひょうじ。受付うけつけ担当たんとう者しゃは内蔵ないぞうカメラでバーコードをスキャンするだけで処理しょりができる。ちなみに選手せんしゅは紙かみの参加さんか証しょうでなく、二に次元じげんバーコード部分ぶぶんを撮影さつえいしたスマートフォン画像がぞうを見みせるだけでもOK

　このカスタムアプリには、iPadで受付うけつけの進捗しんちょく状じょう況きょうをダッシュボード表示ひょうじしたり、選手せんしゅのリタイア情報じょうほうを登録とうろくしたりする大会たいかい事務じむ局きょく向むけの機能きのうも備そなえている。

　「大会たいかい事務じむ局きょくでは『今年ことしは受付うけつけがスムーズに進すすんでいるね』『説明せつめい会かいも参加さんかの出でだしは順調じゅんちょうだね』といった具合ぐあいに、iPadを見みながら大会たいかいの状況じょうきょう確認かくにんをしています。また、安全あんぜんな大会たいかい運営うんえいのためには、リタイアした選手せんしゅの人数にんずうをきちんと把握はあくする必要ひつようがあります。リタイア選手せんしゅが出でた場合ばあいには、無線むせん連絡れんらくを受うけた大会たいかい本部ほんぶがすぐにそれを登録とうろくし、メディカルスタッフやレースタイムの計測けいそく会社かいしゃも含ふくめてリアルタイムに情報じょうほう共有きょうゆうできる仕組しくみにしています」（徳留とくどめ氏し）

iPadからは受付うけつけ状じょう況きょうのダッシュボードも確認かくにんできる

選手せんしゅがリタイアした場合ばあいは即座そくざに情報じょうほうを共有きょうゆうする