スポーツアナリティクスジャパン2020 「ディズニーを超こえるスポーツアナリティクス」

スポーツのデータ分析ぶんせきはエンタメを劇的げきてきに変かえる

　ここ数すう年ねんスポーツ界かいにも入はいりつつあるデータやアナリティクスが、日本にっぽんのスポーツ市場いちばを大おおきくする鍵かぎを握にぎるかもしれない――日本にっぽんスポーツアナリスト協会きょうかい（JSAA）のイベント「スポーツアナリティクスジャパン（SAJ） 2020」では、エンターテインメント視点してんからデータ分析ぶんせきのチャンスについて語かたられた。

アビームコンサルティングの髙見航こう平たいら氏しとこにわ氏し

「ディズニーを超こえるぐらいのやり方かたがある」――アナリティクスとエンターテインメントの組くみ合あわせについて、そう語かたるのはこにわ氏しだ。こにわ氏しといえば松岡まつおか修造しゅうぞう氏しのものまねで知しられるが、テニス、フィギアスケートと様々さまざまなスポーツに精通せいつうしており、過去かこにもSAJに参加さんかしている。そのこにわ氏しが2020年ねんは、アビームコンサルティングの髙見航こう平たいら氏し（P&T Digitalビジネスユニット CRMセンター シニアコンサルタント）と対談たいだんした。モデレーターはアビームでP&T Digitalビジネスユニット ダイレクターを務つとめる竹井たけい昭人あきと氏しが努つとめた。

　最初さいしょに表示ひょうじされたのは、日本にっぽんと米国べいこくのスポーツアナリストの報酬ほうしゅう（新卒しんそつ平均へいきん年収ねんしゅう）の差さだ。日本にっぽんは580万まん円えんであるのに対たいし、アメリカは約やく2倍ばいの1060万まん円えん。「これで少子しょうし高齢こうれい化かが進すすめば、10年ねん後ごのスポーツアナリストは食たべていけるのか？」と竹井たけい氏しは問といかけた。

　続つづいて、こにわ氏しと高見たかみ氏しが日米にちべいのスポーツ市場いちばの現状げんじょう分析ぶんせきを展開てんかいした。高見たかみ氏しは北米ほくべいでインディーカーシリーズの支援しえんをしたり、車くるまいすバスケットボールのトップリーグを支援しえんしており、米国べいこくのスポーツ市場いちばに精通せいつうしている。

　具体ぐたい的てきには、スポーツを1)「みる」、2)「する」、3)「支ささえる」の3つで、日本にっぽんと米国べいこくを比較ひかくした。1)の「みる」は、『熱闘ねっとう甲子園こうしえん』に代表だいひょうされるように日本にっぽんは「お涙なみだちょうだい、ドラマ仕立したて」（こにわ氏し）でコンテキスト（文脈ぶんみゃく）に感動かんどうするのに対たいし、アメリカでは、”速はやい”、”高たかく飛とんだ”などの「現象げんしょう」に感動かんどうするのだという。2)の「する」でも違ちがいはある。日本にっぽんは期待きたいされていた結果けっかが残のこせなかった時ときに選手せんしゅが「申もうし訳わけありません」などと発言はつげんするように、選手せんしゅの責任せきにん感かんが強つよいのに対たいし、米国べいこくは可能かのう性せいを楽たのしむという。3)の「支ささえる」では、指導しどう者しゃの比較ひかくとして、日本にっぽんでは正解せいかいを教おしえようとするのに対たいし、米国べいこくは選手せんしゅとのやりとりを通つうじて選手せんしゅの考かんがえを引ひき出だそうとするなどのアプローチの違ちがいがあるという。

　日米にちべいの違ちがいをまとめた後のち、竹井たけい氏しは「日本にっぽんのいいところと米国べいこくのいいところをミックスしてスポーツ振興しんこうができたらいいのではないか」と述のべる。

　では、日本にっぽんのスポーツ市場いちばを大おおきくするために、アナリティクスをどう活用かつようできるのか？

「見みる」では、アナリティクスによる数字すうじのみを表示ひょうじするのだけではなく、選手せんしゅがなぜその動うごきをするのかを解説かいせつすることをこにわ氏しは提案ていあんする。「フィギアスケートでのトラッキング技術ぎじゅつ“ice:stats（アイスタッツ）”――すごい分析ぶんせきだが、足たりないのは、その数字すうじで見みている人ひとに何なにを伝つたえたいのか」とこにわ氏し。専門せんもん家かにはわかる数字すうじかもしれないが、一般いっぱんの人ひとに対たいしてその数字すうじが何なにを意味いみするのかなどの解説かいせつがあればもっと楽たのしめるそうだ。アビームの高見たかみ氏しも、「僕ぼくらは勝かつために競技きょうぎ支援しえんとしてアナリティクスを使つかっているが、見みている人ひともデータを見みることによりもっとワクワク感かんが高たかまり、スポーツに興味きょうみを持もてるのではないか」と同意どういした。

　こにわ氏しはさらに、「バスケ、テニスなどは流ながれのスポーツ。流ながれが悪わるくなったらもっと応援おうえんしてくださいというエンターテインメントを仕掛しかけることができる」と続つづける。アビームのソリューションでは、バスケットボールでエリアごとにどこからシュートを打うつと入はいるのか／入はいらないのかのデータをとっており、この選手せんしゅはこのエリアが得意とくいなどということがリアルタイムでわかる。これを利用りようすることで、その選手せんしゅが得意とくいなエリアに入はいったときに選手せんしゅの名前なまえをコールするような応援おうえんをアプリを通つうじて仕掛しかけることができる、とこにわ氏しは提案ていあんした。

特定とくていのエリアからの選手せんしゅのシュート成功せいこう率りつはリアルタイムでわかる。これをエンターテインメントに活用かつようできそうだ。

「する」では、選手せんしゅが自分じぶんの成長せいちょうプロセスがわかるようなデータがあることで、楽たのしんだり、長ながく続つづけたいと思おもうような「タレントマネジメント」をアビームの高見たかみ氏しは紹介しょうかいした。前回ぜんかいの試合しあいと今回こんかいの試合しあいとでシュート成功せいこう率りつがどのぐらい改善かいぜんしたのかなどがわかることで、選手せんしゅのモチベーションが上あがったり練習れんしゅうの効率こうりつ化かが図はかれるなどの効果こうかがありそうだ。

　観客かんきゃくにしてみれば、「勝かち負まけよりも成長せいちょうや進化しんかを感かんじることで、そこに対価たいかを払はらう人ひとが増ふえる」と竹井たけい氏し、選手せんしゅも長ながく活躍かつやくできるので市場いちばが大おおきくなりそうだと続つづけた。

　3つ目めの「支ささえる」は、チーム全体ぜんたいのタレントマネジメントになる。アビームはSAPのタレント管理かんり「SAP SuccessFactors」の機能きのうを利用りようしたソリューションを提供ていきょうしており、チームは自じチームの選手せんしゅのパフォーマンスの見みえる化かを進すすめることができる。特定とくていのポジションに対たいして、後継こうけい者しゃとなる選手せんしゅが何人なんにんいるのか、その選手せんしゅの能力のうりょくの推移すいいや報酬ほうしゅうを見みることなども可能かのうだし、ポジションのレコメンなども確認かくにんできるという。

「選手せんしゅの中なかには、楽たのしみたい選手せんしゅもいれば、上達じょうたつしたい選手せんしゅもいるし、勝利しょうりにこだわる選手せんしゅもいる。個々ここの選手せんしゅに合あわせたコーチングが必要ひつよう」と現場げんばをよく知しる高見たかみ氏しは述のべた。

特定とくていのポジションの後継こうけい者しゃ管理かんりができる

選手せんしゅのデータからポジションの適性てきせい度どを分析ぶんせきしたり、伸のばすべき能力のうりょくが見みえる。

　このようなアナリティクスを取とり入いれた「見みる」、「する」、「支ささえる」を、サイクルとして回まわすことが最終さいしゅう的てきには重要じゅうようだ、と高見たかみ氏し。

「データ活用かつようは現時点げんじてんでは競技きょうぎ支援しえんの文脈ぶんみゃくで使つかわれていることが多おおいが、可能かのう性せいは無限むげんだ。スポーツ振興しんこう全体ぜんたいを促進そくしんするためのツールとしてデータは使つかえるだろう」と高見たかみ氏しが述のべれば、こにわ氏しも、会場かいじょうの多おおくを占しめるスポーツアナリストに向むかって「皆みなさんがやっているアナリティクスは、チームの経営けいえい、エンターテインメントなどにもっと寄与きよできます」と述のべ、「もっとお金かねを稼かせいでください」とエールを送おくった。