認証にんしょう済ずみアカウント、Splunkによるログ解析かいせき、“情報じょうほうのバリア”など9つを一挙いっきょ発表はっぴょう

「Slackコネクト」のEKM対応たいおうなど、Slackがセキュリティ強化きょうか発表はっぴょう

　ビジネスコミュニケーションツール「Slack」の米べいSlack Technologiesが2020年ねん8月がつ11日にち（米国べいこく時間じかん）、セキュリティ関連かんれんの新しん機能きのうと機能きのう強化きょうかを多数たすう発表はっぴょうした。「Slack Enterprise Key Management（Slack EKM）」や「Slackデータレジデンシー」などに関連かんれんする9つで、新型しんがたコロナウイルス感染かんせん拡大かくだいによってさらに高たかまる安全あんぜんなデジタルコラボレーションツールへのニーズに応こたえる。

　SlackでCSO（最高さいこうセキュリティ責任せきにん者しゃ）を務つとめるラーキン・ライダー（Larkin Ryder）氏しによると、今回こんかい発表はっぴょうしたセキュリティ機能きのうは大おおきく「データの可視かし化かと制御せいぎょ」「業界ぎょうかいや国くにの規制きせい遵守じゅんしゅ」「外部がいぶとの安全あんぜんなコラボレーション」の3つの分野ぶんやにフォーカスしたものとなる。

Slack CSO（最高さいこうセキュリティ責任せきにん者しゃ）のラーキン・ライダー（Larkin Ryder）氏し

暗号あんごう鍵かぎ管理かんりの「Slack EKM」が機能きのう強化きょうか、「Slackコネクト」にも対応たいおう

　まず、Slackの差別さべつ化か要素ようそともなっているEKMだ。これはAmazon Web Services（AWS）の「Amazon Key Management Service（KMS）」を使つかった、有償ゆうしょう版ばんEnterprise Gridプラン向むけの機能きのうで、顧客こきゃく企業きぎょう自身じしんで暗号あんごう鍵かぎを完全かんぜんにコントロールできるというもの。機密きみつ度どの高たかいメッセージやファイルに対たいするアクセス権限けんげんを細こまかく設定せっていすることが可能かのうだ。

　今回こんかいは、このEKMと「ワークフロービルダー」機能きのうとの連携れんけいが可能かのうになったことが発表はっぴょうされた。ワークフロービルダーは、Slackユーザー自身じしんがノンコーディングでタスク自動じどう化かフローを作成さくせいできるツール。このワークフローに含ふくまれるステップやメッセージ、フォームといったデータも、新あらたにEKMを利用りようして暗号あんごう化かすることが可能かのうになった。

　またEKMは、取引とりひき先さきやパートナー企業きぎょうとの共有きょうゆうチャンネル機能きのう「Slackコネクト」でも利用りようできるようになる。社外しゃがいとのメッセージ／ファイルのやり取とりを暗号あんごう化かするとともに、詳細しょうさいなアクセス制御せいぎょが可能かのうになる（提供ていきょう開始かいしは2020年ねん後半こうはんを予定よてい）。

Slack EKMがSlackコネクトにも対応たいおう。社外しゃがいとやり取とりするメッセージ／ファイルの暗号あんごう化かを細こまかく制御せいぎょできる

Slackコネクトで“本人ほんにん確認かくにん済ずみアカウント”も提供ていきょうへ

　Slackコネクトでは、2020年ねん中ちゅうに“本人ほんにん確認かくにん済ずみアカウント”を示しめす認証にんしょう機能きのうも導入どうにゅう予定よていだ。

Slackコネクトに認証にんしょう済ずみアカウント機能きのうを追加ついか

　これはTwitterの「認証にんしょう済ずみアカウント」のようなもので、そのアカウントが本人ほんにんであることを確認かくにん済ずみの場合ばあいはバーチャルバッジ（チェックマークのようなアイコン）を表示ひょうじして、他たのユーザーにその旨むねを知しらせる。社外しゃがいメンバーとのやり取とりを行おこなうSlackコネクトでは、面識めんしきがない相手あいてとのコラボレーションも増ふえる。特とくにコロナ禍かによって対面たいめんで会あう機会きかい自体じたいが減へっており、「バーチャルワールドでは相手あいての確認かくにんはさらに難むずかしくなるため、（この認証にんしょう機能きのうのような）他たの指標しひょうに頼たよる必要ひつようがある」とライダー氏しは説明せつめいする。

　Slackコネクトの認証にんしょうアカウント機能きのうは2020年ねん中ちゅうの提供ていきょう開始かいし予定よてい。どのように本人ほんにん確認かくにんを行おこなうのか、その具体ぐたい的てきなプロセスについては明あかさなかったが、企業きぎょうユーザー数すうを考かんがえるとスケーラブルな方法ほうほうが必要ひつようであり、なおかつ透明とうめい性せいも担保たんぽするとライダー氏しは述のべた。

Splunkとの提携ていけいでSlackログデータの解析かいせき／可視かし化かが容易よういに

　データの可視かし化かでは、ログデータ解析かいせき／管理かんり製品せいひんの米べいSplunkとの提携ていけいにより、「Splunk App for Slack」コネクタを使つかってSlackのデータを容易よういにSplunk環境かんきょうへ取とり込こめるようになった。監査かんさログを提供ていきょうするSlackのAPI「Audit Logs API」からデータを取得しゅとくし、ログインやチャンネルのアクティビティなどをダッシュボードで視覚しかく化かできる。

SlackのAPIとSplunkコネクタを通つうじて利用りよう状じょう況きょうなどを可視かし化かできる

　米べいMicrosoftとは、MDM（モバイルデバイス管理かんり）ツール「Microsoft Intune」との統合とうごうを強化きょうかする。Intuneが備そなえるMAM（モバイルアプリ管理かんり）機能きのうをSlackアプリが利用りようして、エンドユーザーはiOS／Androidデバイスから企業きぎょうデータにアクセスでき、一方いっぽうで管理かんり者しゃはアプリ内ないでのデータ保護ほごを設定せっていできる。これにより、BYODで私物しぶつモバイルデバイスを利用りようする場合ばあいのセキュリティを向上こうじょうさせる。SlackのIntuneサポートは2020年ねん後半こうはんの予定よていだ。

　さらにモバイル分野ぶんやでは、社内しゃないユーザーに対たいし、特定とくていバージョンのSlackアプリのインストール／利用りようを強制きょうせいできる機能きのうも発表はっぴょうされた。こちらはすでに提供ていきょうを開始かいししている。

トレーダー／アナリスト間あいだなどの情報じょうほう漏洩ろうえいを防ふせぐ“情報じょうほうのバリア”

　企業きぎょう内ないの部署ぶしょや役職やくしょく（ロール）に応おうじてコミュニケーションを制限せいげんする「Information Barriers」機能きのうも、まもなく提供ていきょうされる予定よていだ。これは、特定とくていのユーザーグループは別べつグループのユーザーと同一どういつのチャンネルに参加さんかできない、ダイレクトメッセージのやり取とりもできないといった“情報じょうほうのバリア”を築きずく機能きのうだ。たとえば、株かぶ取引とりひきに関かかわるトレーダーは自社じしゃのアナリストデータにアクセスしてはいけないなど、情報じょうほう規制きせいのある企業きぎょうにおける法令ほうれい遵守じゅんしゅを実現じつげんできる。

　Slackでやり取とりされるメッセージ／ファイルのデータ保存ほぞん場所ばしょ（国くに）を指定していできる、有料ゆうりょうプラン向むけのデータレジデンシー機能きのうについても説明せつめいした。Slackのデータは通常つうじょう、本社ほんしゃのある米国べいこくのデータセンターに保管ほかんされるが、金融きんゆうやヘルスケア、政府せいふ機関きかんなどでは法令ほうれい遵守じゅんしゅのため米国べいこく外がいでデータを保存ほぞんしたいというニーズがあった。この声こえを受うけて、これまでドイツやフランス、東京とうきょう、シドニーなどの都市としでデータレジデンシーに対応たいおうしてきた。7月にカナダが加くわわったことで、合計ごうけい6都市としでのデータ保存ほぞんが可能かのうになっている。さらに今後こんごは、EKMで暗号あんごう鍵かぎを格納かくのうする場所ばしょについても指定していできるようになるという。

　これらに加くわえて、米べい政府せいふのクラウドセキュリティ評価ひょうかプログラム「FedRAMP（Federal Risk and Authorization Management Program）」において、3段階だんかい評価ひょうかの中なか間あいだとなる「Moderate」を取得しゅとくしたことも発表はっぴょうしている。有料ゆうりょうプランのユーザーはすべてこのレベルの安全あんぜん性せいを享受きょうじゅできる。

＊　＊　＊

　創業そうぎょう以来いらい、Slackでは「電子でんしメールからの脱却だっきゃく」を呼よびかけてきたが、それを目指めざすうえでSlackのセキュリティ強化きょうかは大おおきなユーザーメリットになるものと位置いちづけている。たとえば、新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょう関連かんれんの詐欺さぎメール件数けんすうは1日にちに1800万まん件けんに上のぼる（グーグル調しらべ）ことをライダー氏しは指摘してきする。特定とくていメンバーしか参加さんかできないSlackチャンネルのコミュニケーションならば、そうしたリスクは低ひくいというわけだ。

　「Slackは設計せっけい段階だんかいからデータを保護ほごするために閉鎖へいさ的てきなシステムとして開発かいはつした。Slackだけを使つかっている場合ばあい、電子でんしメールと比くらべるとフィッシング攻撃こうげきに遭あう可能かのう性せいはかなり低ひくい」（ライダー氏し）

　その一方いっぽうで、Slackのユーザー数すうが増ふえ続つづけることで新あらたな攻撃こうげきターゲットになることも十分じゅうぶんありうる。ライダー氏しはそうした懸念けねんを認みとめつつ、Slack経由けいゆでのフィッシング攻撃こうげきにも備そなえており、被害ひがいが発生はっせいする前まえにそうした動うごきを検知けんちして、阻止そししたいと答こたえた。今後こんごもセキュリティ強化きょうかの取とり組くみは続つづけるという。

　「セキュリティと使つかいやすさはトレードオフの関係かんけいではない。安全あんぜん性せいがきちんと実装じっそうされている製品せいひんは、利便りべん性せいを損そこなうことはない」（ライダー氏し）