国内こくないでの展開てんかいを本格ほんかく化か、まずは「HCP Vault」「HCP Consul」から提供ていきょうを開始かいし

ハシコープ「HashiCorp Cloud Platform」今秋こんしゅうに日本にっぽんリージョン開設かいせつ

2022年ねん08月がつ04日にち 07時じ00分ふん更新こうしん

文ぶん● 大塚おおつか昭彦あきひこ／TECH.ASCII.jp

　HashiCorp（ハシコープ）は2022年ねん8月がつ3日にち、マネージドクラウドプラットフォーム「HashiCorp Cloud Platform（HCP）」の日本にっぽんリージョンを今秋こんしゅうから提供ていきょう開始かいしすると発表はっぴょうした。このHCP日本にっぽんリージョンを利用りようして、まずはクラウドセキュリティを自動じどう化かする「HCP Vault」と、クラウドのネットワーキング／サービスメッシュを管理かんりする「HCP Consul」の2サービスを提供ていきょうする。2022年ねん10月がつ末まつ～11月がつ初旬しょじゅんの提供ていきょう開始かいし予定よてい。

　同日どうじつ開催かいさいされた記者きしゃ説明せつめい会かいでは、HashiCorp Japan カントリーマネージャーの花はな尾和おわ成しげる氏しがHCPの概要がいようのほか、国内こくないにおけるHashiCorpのビジネスアップデートと今後こんごの戦略せんりゃくを説明せつめいした。またゲストとして「Terraform Cloud」を導入どうにゅう、活用かつようしている自動車じどうしゃ部品ぶひんメーカーのアイシンも出席しゅっせきし、具体ぐたい的てきな活用かつよう内容ないようやマネージドサービスを採用さいようした理由りゆう、評価ひょうかなどを語かたった。

「HashiCorp Cloud Platform（HCP）」日本にっぽんリージョンの一般いっぱん提供ていきょう開始かいしを発表はっぴょう

HashiCorp Japan カントリーマネージャーの花はな尾和おわ成氏しげうじ、ゲスト出席しゅっせきしたアイシン CSSカンパニーコネクティッドソリューション部ぶの福元ふくもと将すすむ高だか氏し

マネージドサービス版ばん製品せいひんの国内こくない本格ほんかく展開てんかいを開始かいし

　HashiCorp Cloud Platform（HCP）は、HashiCorpが運用うんようするマネージドサービス向むけのプラットフォームだ。このプラットフォームを利用りようして、HCP VaultやHCP Consul、HCP PackerといったSaaSを提供ていきょうしている（Packerの日本にっぽんリージョンでの提供ていきょう開始かいし時期じきは未定みてい）。

HashiCorpの自動じどう化かソフトウェア製品せいひん群ぐんは、セルフマネージド（自社じしゃ構築こうちく）だけでなくマネージドサービス（SaaS）としても利用りようできる

　今回こんかいの発表はっぴょうは、このHCPの日本にっぽんリージョンを新あらたに開設かいせつするというもの。AWS（Amazon Web Services）の東京とうきょうリージョン／大阪おおさかリージョンを使つかって、顧客こきゃくごとのシングルテナント環境かんきょうが構築こうちくされるという。日本にっぽんリージョンで提供ていきょうする各かくサービスの機能きのうは海外かいがいリージョンと同おなじだ。

　花尾はなお氏しは、日本にっぽんリージョン開設かいせつでHCPの国内こくない展開てんかいを本格ほんかく化かさせていくと述のべたうえで、そのメリットを「顧客こきゃくに（セルフマネージド以外いがいの）選択肢せんたくしを提供ていきょうする。なおかつ、インフラの運用うんよう負荷ふかから顧客こきゃくを解放かいほうする」ことだと説明せつめいした。

　「日本にっぽんの顧客こきゃくは非常ひじょうにパフォーマンス、レイテンシを意識いしきされる。また自社じしゃのデータは国内こくないになければならないという、データの所在しょざいについても（日本にっぽんリージョンの）需要じゅようがあった。そこでグローバルのHashiCorpの展開てんかいと合あわせて、なるべく早はやい時期じきで日本にっぽんにリージョンを持もってきたのが今回こんかいの発表はっぴょうとなる」（花尾はなお氏し）

　今回こんかいの発表はっぴょうと合あわせて、HashiCorpでは「HCP（Vault／Consul）Jumpstart」キャンペーンも提供ていきょうする（申込もうしこみ期限きげん：2022年ねん10月がつ末まつまで）。「PoCコストを実質じっしつ無料むりょうにする特別とくべつなライセンス契約けいやく」（花尾はなお氏し）のほか、テクニカルトレーニング、利用りよう開始かいし支援しえん、導入どうにゅう後ごフォローアップなどを行おこなうという。

　今回こんかい発表はっぴょうされた日本にっぽん市場いちばへの本格ほんかく展開てんかい開始かいしは、どのくらいのビジネスインパクトをもたらすのか。花尾はなお氏しは「1年ねん後ご、2年ねん後ごにはかなりのインパクトをもたらすだろう」と答こたえた。

　「HCPの日本にっぽんへの本格ほんかく展開てんかいによって、顧客こきゃくが（HashiCorp製品せいひんに）“一いち歩ほ踏ふみ込こむ”ハードルがかなり下さがるのではないかと考かんがえている。さまざまな企業きぎょうがインフラの運用うんよう負荷ふかを減へらしたいと思おもっているので、『まずは（小規模しょうきぼで）始はじめてみたい』という顧客こきゃくが非常ひじょうに増ふえるのではないか。われわれの製品せいひんは、使つかい続つづけるうちに標準ひょうじゅん化かが進すすみ（適用てきよう範囲はんいが）広ひろがるという特性とくせいを持もっているので、1年ねん後ご、2年ねん後ごにはかなりのビジネスインパクトをもたらすものと考かんがえている」（花尾はなお氏し）

DX推進すいしん／マルチクラウド活用かつようにおけるHashiCorp製品せいひんのメリットとは

　花尾はなお氏しは、DXの推進すいしんとマルチクラウド活用かつようにおけるHashiCorp製品せいひんの役割やくわり、価値かちについても説明せつめいした。

　HashiCorpがグローバルで行おこなった最新さいしんの企業きぎょう調査ちょうさによると、すでに81％の企業きぎょうがマルチクラウド活用かつようを行おこなっており、うち90％が「マルチクラウド戦略せんりゃくは機能きのうしている」と回答かいとうしたという。CCoE（Cloud Center of Excellence）など、クラウド活用かつように向むけた組織そしき変革へんかくを行おこなう企業きぎょうも多おおい。

HashiCorpによる「マルチ／ハイブリッドクラウド運用うんよう状じょう況きょう調査ちょうさ報告ほうこく書しょ」の結果けっか

　花尾はなお氏しは「まさにいま、われわれはマルチクラウドの時代じだいにいる」と述のべ、その動うごきは業界ぎょうかいを問とわずに進行しんこうしていると説明せつめいする。

　そして、戦略せんりゃく的てきにマルチクラウド活用かつようを推進すいしんする企業きぎょうには「5つの共通きょうつう点てん」があると指摘してきした。「社内しゃないで標準ひょうじゅん化かされたワークフロー」「一貫いっかん性せいのあるコントロールポイント」「開発かいはつスピードを下さげないセキュリティとコンプライアンスの“シフトレフト”」「開発かいはつへのリソース集中しゅうちゅうを可能かのうにする自動じどう化か」「管理かんりコストやクラウド支出ししゅつコストの最適さいてき化か」という5つだ。

　これらを実現じつげんしていくためには、これまでボトムアップで実現じつげんされてきた「戦術せんじゅつ的てきなクラウド導入どうにゅう」から、社内しゃない横断おうだん的てきな「“戦略せんりゃく的てき”なクラウド活用かつよう」へとステップアップしていく必要ひつようがあり、その架かけ橋はしとなるのがHashiCorpが提唱ていしょうする「クラウド運用うんようモデル」」だという。これは、社内しゃない各かくユーザーがクラウドの各種かくしゅインフラサービスを直接ちょくせつ利用りようするのではなく、HashiCorpのコントロールプレーン（サービススタック）を間あいだに挟はさむことで、ワークフローの標準ひょうじゅん化かや自動じどう化か、インタフェースの統一とういつなどを図はかる。これにより、運用うんようの効率こうりつ化かや開発かいはつ生産せいさん性せいの向上こうじょうを実現じつげんするというものだ。

（左ひだり）社内しゃない各かくチームが個別こべつにクラウドサービスを利用りようすることでサイロ化かが起おきる（右みぎ）HashiCorpを統一とういつのコントロールプレーンとすることで、ワークフローの標準ひょうじゅん化かや自動じどう化かなどを図はかる

　HashiCorpの製品せいひん群ぐんを導入どうにゅうすることにより、顧客こきゃくには「スピード」「コスト」「リスク」の3つの側面そくめんでビジネス上じょうの価値かちが生うまれると、花尾はなお氏しは説明せつめいする。

HashiCorpの製品せいひん群ぐんがもたらすビジネス上じょうの価値かち

国内こくないエンタープライズ市場いちばでのビジネスは堅調けんちょう、顧客こきゃく数すうは1年ねんで2倍ばい強きょうに

　昨年さくねん（2021年ねん）5月がつに開催かいさいした記者きしゃ説明せつめい会かいのなかで「国内こくないエンタープライズ市場いちばへの本格ほんかく参入さんにゅう」方針ほうしんを表明ひょうめいしたHashiCorp Japanだが、この1年間ねんかん、ビジネスは堅調けんちょうに成長せいちょうしてきたという。国内こくない導入どうにゅう顧客こきゃく数すうは1年間ねんかんで130％成長せいちょうとなった。

　「もともとWebテク系けい、デジタルネイティブ系けい企業きぎょうでの導入どうにゅうが成功せいこうしていたが、ここ最近さいきんではDX推進すいしんを目的もくてきとして内うち製せい化かに取とり組くむ企業きぎょう、CCoEの組成そせいに取とり組くんでいる企業きぎょう（エンタープライズ）とのつきあいが、非常ひじょうに増ふえている」（花尾はなお氏し）

HashiCorp Japanにおける国内こくないビジネスの概況がいきょう。エンタープライズ市場いちばにおいて欠かかせない大手おおてSIパートナーとの協業きょうぎょうもスタートしている

　今後こんご注力ちゅうりょくしていく活動かつどうとしては「企業きぎょうにおけるクラウド運用うんようモデル、DevSecOps推進すいしんを支援しえん」「パートナー企業きぎょうと連携れんけい強化きょうか」「コミュニティの拡大かくだい」という3つを挙あげた。この3本ほん柱ばしらに加くわえて、今回こんかい発表はっぴょうしたHCPの国内こくない展開てんかい本格ほんかく化かを重要じゅうような取とり組くみと位置いちづけている。

国内こくないにおける今後こんごの注力ちゅうりょく活動かつどうとして3つを挙あげた

　ゲスト出席しゅっせきしたアイシンの福元ふくもと将すすむ高だか氏しは、さまざまなサービス提供ていきょうの基盤きばんである同社どうしゃの位置いち情報じょうほう活用かつようプラットフォーム「Tatami Platform」の開発かいはつや運用うんようにおいて、マネージドサービス版ばんのTerraformである「Terraform Cloud」を活用かつようしていることを紹介しょうかいした。

　アイシンでは、同どうプラットフォームの企画きかく開発かいはつから保守ほしゅ運用うんようまでを6名めいで担当たんとうしている。ただし、AWSのリソース数すうで2000以上いじょうに及およぶそのインフラのプロビジョニングや管理かんりを人手ひとでで行おこなうのは「非ひ現実げんじつ的てき」であり、IaC（Infrastructure as Code）化かが必須ひっすだったという。また監視かんしには「Datadog」を採用さいようしているが、こちらの設定せっていもやはりIaC化かが必要ひつようだった。そこでTerraformを採用さいようしたと語かたる。

　当初とうしょはオープンソース版ばん（OSS版ばん）のTerraformを採用さいようし、実行じっこう環境かんきょうを自前じまえで運用うんようしていたが、各人かくじんのPC上じょうで実行じっこうするとなるとガバナンスが利きかず、また6名めい規模きぼでTerraformサーバーを運用うんようするのは「まったくメリットがない」（福元ふくもと氏し）。そこでTerraform Cloudを採用さいようし、Terraform自体じたいの運用うんようはアウトソースして「自分じぶんたちのやりたいところ、やるべきところだけに集中しゅうちゅうできるようにした」という。

　今後こんごの展開てんかいについて福元ふくもと氏しは、社内しゃないのCCoE的てきな立場たちばも兼任けんにんしているため、今後こんごは同どうプラットフォームだけでなくほかのクラウド活用かつよう現場げんばにおいてもTerraformの利用りようを広ひろげていき、ガバナンスやセキュリティの強化きょうかにつなげたいと語かたった。