遠藤えんどう諭さとしのプログラミング＋日記にっき 第だい165回かい

SKIPシティで Jetson nano搭載とうさいのDonkeyCarが走はしってる

生成せいせいAIも体験たいけんして学まなぶ「AIのアイ」展てんがはじまった！

すべての大人おとなも子供こどもも“AI”に触ふれて考かんがえてみよう

　埼玉さいたま県けん川口かわぐち市しにあるSKIPシティ彩いろどりの国くにビジュアルプラザ 映像えいぞうミュージアムといえば、「あそぶ！ゲーム展てん」でご存ぞんじの方ほうもおられるはず。そのステージ１（2015年ねん10月がつ～2016年ねん2月がつ）は、ちょうど私わたしも日本にっぽん科学かがく未み来館らいかんの「GAME ON」展てんを共同きょうどう企画きかく・監修かんしゅうさせていただいた頃ころで、「あそぶ！ゲーム展てん」が専門せんもん家かやマニアに評判ひょうばんだったのを覚おぼえている。

　その映像えいぞうミュージアムで、「AIのアイ ～AIが見みる世界せかい、AIと創つくる世界せかい～」と題だいした企画きかく展てんがはじまっている。2022年ねん4月がつの「DALL-E2」からはじまり、2023年ねんは「ChartGPT」がビジネス誌しがのきなみ特集とくしゅうを組くむなど注目ちゅうもくを集あつめた。いまは、それら「生成せいせいAI」が、静しずかにしかし着実ちゃくじつに我々われわれの社会しゃかいや産業さんぎょうに浸透しんとうしてきているという状況じょうきょうである。

SKIPシティ彩いろどりの国くにビジュアルプラザの2階かいに「AIのアイ」展てんの入いり口くちがある（展示てんじは3階かい）。同おなじ建物たてものにはNHKの「映像えいぞう公開こうかいライブラリー」など映像えいぞうに関かんする複ふく合あい的てきな施設しせつになっている。

　建築けんちくの設計せっけい事務所じむしょが、客きゃくの要望ようぼうをChatGPTに与あたえてStable Diffusionで完成かんせい予想よそう図ずを作つくり出だしているなんて事例じれいは、AIの理想りそう的てきな使つかい方かたの１ひとつである。教育きょういく分野ぶんやでは、AIをどのように扱あつかうかが大おおきなテーマとなっているが、答こたえは「Speak」のようなアプリですでに示しめされているようにも見みえる。壁かべ打うち的てきな練習れんしゅうや発見はっけんのプロセスが明確めいかくなものは、AIは、品質ひんしつを一定いってい以上いじょうに保たもてる。

　生成せいせいAIを日常にちじょう的てきに使つかっている人ひとならお気きづきのとおり、自分じぶんが分わかっている分野ぶんやほど生成せいせいAIは威力いりょくを発揮はっきする。自分じぶんが分わかっていないと適切てきせつなプロンプトを与あたえられないしデタラメな結果けっかの検証けんしょうに時間じかんがかかるだけになる。つまり、１勉強べんきょうすると２得えるものがあるのが生成せいせいAIなのだといえる。子供こどもが勉強べんきょうが好すきになるゲーミフィケーション的てきな世界せかいになりうる。

　そんないま、大人おとなだけでなく子供こどもも体験たいけんできるAI展てんは、とてもタイムリーだし意義いぎあることだ。ちなみに、彩いろどりの国くにビジュアルプラザ 映像えいぞうミュージアムが会場かいじょうなので、最先端さいせんたんAIの仕組しくみの中なかでも“ビジュアル”に重おもきをおいた展示てんじになっている。

　ということで、入口いりくちを入はいってすぐのところに「AIの目め、人間にんげんの目め」というパネル展示てんじがある。「AIの目め」と「人間にんげんの目め」は、どう違ちがうのか？　答こたえは、生成せいせいAIには「生身なまみの身体しんたい」というものがない。そしてまた、生成せいせいAIには「人生じんせいや個人こじん」とうものもない。知しり合あいや景色けしきが目めに映うつったとたん記憶きおくや感情かんじょうが喚起かんきされるような「心しんの反応はんのう」がないのだ。人間にんげんでは、「見みる」ということが、複雑ふくざつな心しんや体からだの反応はんのうと関係かんけいすることがある。

　なんと、視覚しかくという１点てんから生成せいせいAIが現時点げんじてんでどんなものかが明あきらかになってしまうのだった。教育きょういくにおけるAIの取とり扱あつかいの境界きょうかい線せんもこのあたりにくるはずである。

　「AIのアイ」の展示てんじスペースは、けして広ひろくはないのだが、いま体験たいけんしておきたいソフトや知しっていたい事柄ことがらがそつなく並ならべられている。自宅じたくでもパソコンやスマートフォンがあれば試ためせる「ChatGPT」や「Dall-E」だが、体験たいけんコーナーでは大人おとなも子供こどもも初はじめて触ふれる人ひとが少すくなくないようだ。動画どうが生成せいせいの「Phenaki」などは映像えいぞう展示てんじ、「ディープフェイク」などはパネル解説かいせつになっている。人間にんげんがイラストを描えがくゲーム「Quick, Drow」は、ずっと遊あそんでいる子供こどもがいるほどの人気にんきだ。

お馴染なじみChatGPTはタブレットで体験たいけんできるように工夫くふうされている。記事きじ冒頭ぼうとうの写真しゃしんにあるコミュニケーションロボット「ユニボ」や「DALL-E」と同おなじく来場らいじょう者しゃが繰くり返かえし試ためしていた。

ビジュアル系けいを中心ちゅうしんにさまざまなAI事例じれいが紹介しょうかいされている。これは、東映とうえいツークン研究所けんきゅうじょによるグリーンバック不要ふよう、マーカー不要ふようのトラッキングによるリアルタイム合成ごうせいシステム「LiveZ studio」。

AIでRCカーを走はしらせよう！　が全面ぜんめん協力きょうりょく

　この「AIのアイ」展てんに、私わたしが仲間なかまたちとやっている「AIでRCカーを走はしらせよう！」のコミュニティが協力きょうりょくさせてもらっている。展示てんじのいちばん奥おくのあたり「運転うんてんするAI」の１ひとつとして、10✕4.5メートルというかなり大おおきめの特設とくせつコースで、AIカー（模型もけいの自動じどう運転うんてんカー＝Jetson nano搭載とうさいの「DonkeyCar」）のデモンストレーション走行そうこうが行おこなわれている。

AIカーの係員かかりいんのいるブースより「AIでRCカーを走はしらせよう！」のコースを望のぞむ。

コースは、内回うちまわり、外回そとまわりが可能かのう。後あとで触ふれるがY字じ路ろの一方いっぽうに通行止つうこうどめサインを立たててAIカーに判断はんだんさせる。

　AIカーについては、このコラムでも何なん度どか紹介しょうかいさせていただいてきた。毎年まいとし、東京とうきょうビッグサイトで開催かいさいされるMaker Faire Tokyoでは３回かい連続れんぞくでコースを設置せっちして、走行そうこう会かい＆デモンストレーションを行おこなってきた。詳くわしくは、「ラズパイありNVIDIAあり、Donkeyありタミヤあり、未来みらいのクルマは《オモチャ》なのだ」をご覧らんのこと。ちなみに、我々われわれのコミュニティ「AIでRCカーを走はしらせよう！」は、Facebookグループで情報じょうほう交換こうかんを行おこなっている。

　ところで、設置せっちされたコースだが、今回こんかいのためにオリジナルで設計せっけいして製作せいさく・提供ていきょうさせていただいたものだ。いままでは、AIカー用ように海外かいがいで販売はんばいされているものを購入こうにゅうして利用りようしたり、床ゆか面めんはそのままで段だんボールやガムテープでコースを作つくることがほとんどだった。これは、なかなか画期的かっきてきなことである。

　また、今回こんかいのコースは、オリジナルであるばかりでなく内回うちまわり・外回そとまわりの２種類しゅるいの走行そうこうができるようになっている。これは、DonkeyCar用ように販売はんばいされている公式こうしきコースやアマゾンAWSのAIカーであるDeepRacer用ようのコースでも行おこなわれていないものだ。デモ走行そうこうでは、Y字じになった分岐ぶんき点てんで一方いっぽうのルートを通行止つうこうどめすること内回うちまわり・外回そとまわりをさせている。通行止つうこうどめのサインとしては、侵入しんにゅう禁止きんしを示しめすバーと赤あかいパイロンを立たてる。ディープラーニングで走はしるDonkeyCarなので、AIを知しっている人ひとなら「なるほど」となると思おもう。

内回うちまわりコースを通行止つうこうどめにして外回そとまわりのコースを走はしらせているところ。DonkeyCarはカメラに映うつった画像がぞうを学習がくしゅうするわけだが、このように通行止つうこうどめのサインを置おいて３~４周しゅう走はしらせるだけで覚おぼえてしまう。

外回そとまわりコースを通行止つうこうどめにして内回うちまわりコースを走はしらせているところ。侵入しんにゅう禁止きんしを示しめすバーとパイロンでコースをふさいでいる。

　まだ展示てんじは始はじまったばかりだが、やはり走はしるものは子こどもにも大人おとなたちにも興味きょうみを持もってもらえている。デモ走行そうこうを見みている人ひとから「AIカーはどうやって自動じどう運転うんてんしているのか？」という質問しつもんがきたり、興味津々きょうみしんしんで見みている子供こどもに「AIカーに積つまれたコンピューターが任天堂にんてんどうSwitchの中身なかみと同おなじだよ」と説明せつめいすると、「そうなのか！」と驚おどろいたりしていた。

株式会社かぶしきがいしゃFaBoによるJetson nano版ばんDonkeyCar改あらため。１回かいの充電じゅうでんで30分ふん程度ていど走行そうこう。

子供こどもが見入みいっている画面がめんはDonkeyCarに搭載とうさいのカメラがとらえているコースのようす。

　「AIでRCカーを走はしらせよう！」としては、AIカーの提供ていきょうとコースの設計せっけいのほか、メンテナンスを可能かのうな範囲はんいでやらせていただく予定よていだ。デモ走行そうこうの運用うんようは「AIのアイ」展てんで係員かかりいんの方ほうがやってくれているのだが、土日どにちに限かぎり、「AIでRCカーを走はしらせよう！」のメンバーが、メンテのかたわら自身じしんのオリジナルのAIカーを走はしらせているかもしれない。AIカーに興味きょうみのある方ほうは、ぜひ「AIのアイ」展てん、来きてみていただきたい。

　AIは、基本きほん的てきにはとても賢かしこいのだが、ときに自分勝手じぶんがってな行動こうどうをとることがある。AIカーも文字通もじどおり迷走めいそうしたり、通行止つうこうどめのサインに突入とつにゅうすることもあるが、それも展示てんじの一環いっかんといってもよいのである。しかし、予期よきせぬ事態じたいになったとしても生いき物もののようになんらかの反応はんのうをする可愛かわいさが、従来じゅうらいのコンピュータープログラムとは違ちがうところだ。AIの肌触はだざわりが見みえるのがAIカーであり、DonkeyCarである。

展覧てんらん会かい名めい■AIのアイ　～AIが見みる世界せかい、AIと創つくる世界せかい～
会期かいき■2024年ねん1月がつ16日にち～2024年ねん6月がつ30日にち
会場かいじょう■SKIPシティ 彩いろどりの国くにビジュアルプラザ 映像えいぞうミュージアム
開館かいかん時間じかん■9:30～17:00 （入館にゅうかんは16:30まで）
休館きゅうかん日び■月曜日げつようび（祝日しゅくじつの場合ばあいは翌よく平日へいじつ）
入館にゅうかん料りょう■大人おとな520円えん／小中学生しょうちゅうがくせい260円えん（常設じょうせつ展てんも入場にゅうじょう可か）
主催しゅさい■埼玉さいたま県けん
後援こうえん■埼玉さいたま県けん教育きょういく委員いいん会かい / 川口かわぐち市し / 川口かわぐち市し教育きょういく委員いいん会かい
協力きょうりょく■AIでRCカーを走はしらせよう！ / NHKさいたま放送ほうそう局きょく / OpenAI / Google / GROOVE X株式会社かぶしきがいしゃ / 慶応義塾大学けいおうぎじゅくだいがくSFC大前おおまえ研究けんきゅう室しつ\ / 国立こくりつ研究けんきゅう開発かいはつ法人ほうじん産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究所けんきゅうじょ / 埼玉さいたま県けん産業さんぎょう振興しんこう公社こうしゃ / 東映とうえいツークン研究所けんきゅうじょ / 橋本総業はしもとそうぎょうホールディングス株式会社かぶしきがいしゃ / ユニロボット株式会社かぶしきがいしゃ / 早稲田大学わせだだいがく基幹きかん理工学部りこうがくぶ表現ひょうげん工学科こうがっか　尾形おがた哲也てつや研究けんきゅう室しつ（５０音おと順じゅん）
企画きかく・制作せいさく■デジタルSKIPステーション
公式こうしきページ■https://www.skipcity.jp/event/vm/ai/

遠藤えんどう諭さとし（えんどうさとし）

　株式会社かぶしきがいしゃ角川かどかわアスキー総合そうごう研究所けんきゅうじょ 主席しゅせき研究けんきゅう員いん。MITテクノロジーレビュー日本にっぽん版ばん アドバイザー。プログラマを経へて1985年ねんに株式会社かぶしきがいしゃアスキー入社にゅうしゃ。月刊げっかんアスキー編集へんしゅう長ちょう、株式会社かぶしきがいしゃアスキー取締役とりしまりやくなどを経へて、2013年ねんより現職げんしょく。人工じんこう知能ちのうは、アスキー入社にゅうしゃ前まえの1980年代ねんだい中盤ちゅうばん、COBOLのバグを見みつけるエキスパートシステム開発かいはつに関かかわりそうになったが、Prologの研修けんしゅうを終おえたところで別べつプロジェクトに異動いどう。「AMSCLS」（LHAで全面ぜんめん的てきに使つかわれている）や「親指おやゆびぴゅん」（親指おやゆびシフトキーボードエミュレーター）などフリーソフトウェアの作者さくしゃでもある。趣味しゅみは、カレーと錯視さくしと文具ぶんぐ作づくり。2018、2019年ねんに日本にっぽん基礎きそ心理しんり学会がっかいの「錯視さくし・錯聴コンテスト」で２年ねん連続れんぞく入賞にゅうしょう。その錯視さくしを利用りようしたアニメーションフローティングペンを作つくっている。著書ちょしょに、『計算けいさん機屋はたやかく戦せんえり』（アスキー）、『頭あたまのいい人じんが変かえた10の世界せかい NHK ITホワイトボックス』（共著きょうちょ、講談社こうだんしゃ）など。

X（旧きゅうTwitter）：@hortense667

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