業務ぎょうむを変かえるkintoneユーザー事例じれい 第だい226回かい

笑わらえて、じ～んと来くる業務ぎょうむ改善かいぜんと内うち製せい化かの話はなし

京都きょうとの葬儀そうぎ社しゃがモーレツ業務ぎょうむをkintone化か　人ひとと向むき合あう本来ほんらいの仕事しごとへ

　kintone hive 2024 Osakaのトップバッターとして、Zeppなんばを埋うめ尽つくした聴衆ちょうしゅうの前まえに姿すがたを現あらわしたのは、おのえメモリアルの森垣もりがい譲ゆずる夫おっと氏し。まさかの合掌がっしょうから始はじまったセッションは、多忙たぼうすぎる葬儀そうぎ社しゃの業務ぎょうむをkintoneの内うち製せい化かで効率こうりつ化かした業務ぎょうむ改善かいぜんストーリー。笑わらえて、「じ～ん」と来くる森垣もりがい氏しの話はなしに多おおくの聴衆ちょうしゅうが魅了みりょうされた。

合掌がっしょうから始はじまる葬儀そうぎ社しゃのkintone事例じれい

　大阪おおさかで12回かい目めの開催かいさいとなるkintoneユーザーの事例じれい登壇とうだんイベント「kintone hive 2024 Osaka」。冒頭ぼうとう、登壇とうだんしたサイボウズ大阪おおさかオフィスの山田やまだ氏しは、専門せんもん知識ちしきなしにアプリを開発かいはつできるkintoneが、DXで重視じゅうしされる内うち製せい化かのツールとして注目ちゅうもくを集あつめていると説明せつめい。kintone hiveで100社しゃ100通とおりの使つかい方かたや活用かつよう方法ほうほうを学まなんで、共有きょうゆうしてほしいとアピールした。「業種ぎょうしゅや規模きぼにかかわらず活用かつようしてもらうためのコツがきっとあるはず。アプリ作成さくせいのコツ、利り活用かつようの工夫くふう、活用かつようの引ひき出だしを増ふやしてもらい」と山田やまだ氏しは語かたる。

　トップバッターはおのえメモリアルの森垣もりがい譲ゆずる夫おっと氏し。同社どうしゃは京都きょうと府ふ北部ほくぶ、天橋立あまのはしだての近ちかくにある与謝野よさの町まちの葬儀そうぎ社しゃで、従業じゅうぎょう員いんは23名めい。葬儀そうぎの施工しこうはもちろん、アフターフォロー、生花せいかの販売はんばい、事前じぜん相談そうだんなどを行おこなっており、大事だいじにしているのは「100人にんいれば100通とおりのお葬式そうしき」「ありがとうの行いき交かうお葬式そうしき」だ。

　セッションが始はじまると、会場かいじょうは静粛せいしゅくとなり、壇上だんじょうは完全かんぜんにセレモニーホールとなる。直立ちょくりつする森垣もりがい氏しは、「ただいまより、第だい12回かいkintone hive 大阪おおさかを執とり行おこないます。開ひらき式しきに際さいしまして、登壇とうだん者しゃ様さまのご健闘けんとうを祈いのり、ステージに向むけてお手てをお合あわせくださいませ。ご一同様いちどうさま、合掌がっしょう」と第一声だいいっせい。まさかの合掌がっしょうからスタートするプレゼンで、会場かいじょう中ちゅうに含ふくみ笑わらいが拡ひろがる。

　続つづいて自己じこ紹介しょうかい。森垣もりがい氏しは、おのえメモリアルに入社にゅうしゃして26年ねんというベテランで、趣味しゅみはずばりkintone。「kintoneに出会であう前まえは『森もりさんはなにが楽たのしくて生いきているんですか？』と言いわれていましたが、kintoneと出会であってからは『森もりさんからkintoneをとったらなにが残のこるんですか？」と言いわれるくらいになったという。

　kintone導入どうにゅう前まえ、同社どうしゃは葬儀そうぎの打うち合あわせや訪問ほうもんスケジュール、現金げんきん出納すいとう帳ちょうなど紙かみの管理かんりがとても多おおかった。葬儀そうぎ業務ぎょうむのパッケージソフトを用もちいていたが、できないことも多おおかった。こうした業務ぎょうむ環境かんきょうに社員しゃいんは慣なれっこだったのであまり不便ふべんを感かんじていなかったが、社長しゃちょうは「このままでは行いき詰づまる」という危機きき感かんを持もっていたという。

葬儀そうぎ屋やさんは大変たいへんです

　想像そうぞうに難かたくないが、葬儀そうぎ社しゃの業務ぎょうむはスピードを要求ようきゅうされる。「今日きょう亡なくなれば、あさってがお葬式そうしき」が普通ふつうなので、会葬かいそう礼状れいじょう、ガードマン、看板かんばん、折おり込こみ広告こうこく、葬儀そうぎ会館かいかん、司会しかい者しゃ、生花せいか、通夜つや料理りょうり、着付きつけ、マイクロバス、火葬かそう場じょう、祖そ供養くよう品ひん、お供そなえ物ものなどはすべて24時間じかん以内いないに手配てはいしなければならない。「そうなんです。全然ぜんぜん時間じかんが足たりないんです。葬儀そうぎ屋やさんは大変たいへんです」と森垣もりがい氏し。

　そんな業務ぎょうむ課題かだいに対たいして、社長しゃちょうがコンサルから勧すすめられたのがkintone、そしてパートナーであるBe Magical Solutionの稲澤いなざわ先生せんせいだ。「先生せんせいはおのえさんの将来しょうらいを見みつけるなら、絶対ぜったい自社じしゃでシステムを作つくった方ほうがいいと言いってくれたんです」とのことで、会社かいしゃとして開発かいはつを決意けつい。社長しゃちょう、総務そうむ部ぶ、生花せいか部ぶ、そして業務ぎょうむ部ぶの森垣もりがい氏しの4人にんが開発かいはつを担当たんとうすることになった。

　まずは、アプリの要望ようぼうを伝つたえて開発かいはつを依頼いらいする対面たいめん開発かいはつから始はじめた。そのために業務ぎょうむの棚卸たなおろしを行おこない、フローの中なかでどこで時間じかんが削減さくげんできるかを決きめた。その後ご、開発かいはつを始はじめて1年ねん後ご、先生せんせいである稲澤いなざわ氏しは「森垣もりがいさん、そろそろ自分じぶんでできるようにならないか？」と森垣もりがい氏しに告つげる。「正直しょうじき、驚おどろきましたが、ここから内うち製せい化かを始はじめることになりました」（森垣もりがい氏し）。

　内うち製せい化かを始はじめ、特とくに力ちからを入いれたのが、葬儀そうぎの売上うりあげを管理かんりする基幹きかんアプリ「メモリアル」だ。こちらのアプリは一覧いちらんと詳細しょうさいを同時どうじに見みられる画面がめんを作成さくせいし、お葬式そうしきの中身なかみがすぐにわかるようにした。フィールドが多おおかったため、タブで整理せいりするために活用かつようしたのがgusuku Customineだった。「ただ、Customineを使つかっても、タブが16個こもできてしまうんです。16個こもできると、横よこにあふれてしまうんです。悩なやんだ結果けっか、ボタンを押おすとタブが表示ひょうじできるようにしました。これで見みにくかったアプリも一気いっきに見みやすく変かわりました」と森垣もりがい氏しは振ふり返かえる。

　おのえメモリアルのシステムは顧客こきゃく情報じょうほうアプリを中心ちゅうしんに、基幹きかんアプリが5つ、運用うんようを支援しえんするアプリが6つ、その他た300以上いじょうのアプリで構成こうせいされている。「アプリ管理かんりアプリで見みると、こんなあったことがわかったんです。葬儀そうぎ屋やさんの業務ぎょうむもけっこうたくさんあることがわかります。葬儀そうぎ屋やさんは大変たいへんです」と森垣もりがい氏しはつぶやく。

なくなったのは「二に度ど打うち」「手書てがき」「人ひとに聞きくこと」、そして……

　ここで森垣もりがい氏しは、kintone導入どうにゅうによってなくなったものを挙あげる。3位いは「二に度ど打うち」。今いままで事務じむはシステムに、経理けいりは会計かいけいソフトに二に度ど打うちしていたが、現金げんきん出納すいとう帳ちょうアプリでは、勘定かんじょう項目こうもくはドロップダウンメニューで選えらべるようになり、会計かいけいソフトへのデータ登録とうろくも自動じどう化かされた。60分ふんかかっていた業務ぎょうむが、たったの5分ふんになった。

　2位いは「手書てがき」。今いままでは訪問ほうもん管理かんり表ひょうに手書てがきで記入きにゅうしていたが、スケジュールが変更へんこうになると、消けしゴムで消けして、再度さいど書かき入いれていた。そして、訪問ほうもん日びの前日ぜんじつには今度こんどは「日程にってい表ひょう」に書かき入いれる必要ひつようがあった。しかし、訪問ほうもんスケジュールアプリを使つかえば、出先でさきからでも予定よていが簡単かんたんに確認かくにんできる。「カレンダーPlus」（ラジカルブリッジ）というプラグインを利用りようすることで、担当たんとう者しゃごとに色分いろわけすることが可能かのうになり、スケジュールの変更へんこうも容易よういになった。日程にってい表ひょうへの出力しゅつりょくも「レポトンPro」（ソウルウェア）で自動じどう化か。「業務ぎょうむの流ながれはそのままに、消けしゴムがなくなったんです」（森垣もりがい氏し）。

　続つづいて4位いは「人ひとに聞きくこと」だ。kintoneで商品しょうひんのマスタアプリを作つくったところ、商品しょうひんについて聞きくことがなくなった。「聞きく側がわのストレスも、聞きかれる側がわのストレスもなくなったんです」（森垣もりがい氏し）。ルックアップのときに「一文字ひともじ検索けんさく」が可能かのうにするプラグインも導入どうにゅうしているという。

　そしてなくなったものの1位いは「訪問ほうもんするときの無駄むだ」だ。葬儀そうぎ社しゃはお葬式そうしきの前まえに打うち合あわせに行いくわけだが、近所きんじょの人ひとがお見舞みまいに来くると、家族かぞくは全員ぜんいんそちらに対応たいおうしてしまうため、葬儀そうぎ社しゃの担当たんとう者しゃは手持てもち無沙汰ぶさたになってしまう。「私わたし一人ひとりで虚無きょむの状態じょうたいでした」（森垣もりがい氏し）。しかし、今いまでは訪問ほうもん先さきでも発注はっちゅうができてしまう。空あいている時間じかんに「葬儀そうぎ手配てはい書しょ作成さくせいアプリ」にマイクロバスや看板かんばん、礼状れいじょうなどの情報じょうほうを入いれれば、業者ぎょうしゃにFAX送信そうしんしてくれる。手配てはいするものに応おうじて、出力しゅつりょくする帳票ちょうひょうの選択肢せんたくしも絞しぼり込こまれるという。

　また、パソコンで入力にゅうりょくしても出でない漢字かんじ（外字がいじ）を登録とうろくするため、手書てがきのフィールドを用意よういした。こちらはアールスリーインスティテュートのCustomineを活用かつよう。さらに葬儀そうぎ場じょうを案内あんないするための看板かんばんも、今いままではいったん事務所じむしょに戻もどってサンプルを持もち出だしていたが、kintone導入どうにゅう後ごは打うち合あわせの最中さいちゅうにサンプルが送おくられてくるので、漢字かんじの間違まちがいなどがないか、その場ばでご家族かぞくと確認かくにんできるという。

お客きゃくさまの目めを見みて入力にゅうりょくできるようになった

　こうして訪問ほうもん先さきの家族かぞくを待まっている間あいだに、おのえメモリアルは葬儀そうぎ一式いっしきの手配てはいまでできるようになった。それでも現場げんばスタッフからは「お客きゃくさまの前まえでパソコンを打うつのに抵抗ていこうがある」という声こえが上あがったという。「手てで書かくのと違ちがって、パソコンを入力にゅうりょくするのは集中しゅうちゅうしなければいけない。それが淡々たんたんとして、お客きゃくさまから事務じむ的てきに見みられるのではないかという声こえでした」（森垣もりがい氏し）。同社どうしゃが大切たいせつにしてきた「お客きゃくさまに向むき合あいましょう」という今いままでの教育きょういくと反はんするように見みえるわけだ。

　そこで、スタッフ全員ぜんいんを集あつめたところ、「フィールドがどこにあるのかわからない」「お客きゃくさまの前まえで迷まよいたくない」といった声こえが出でた。ただ、500近ちかいフィールドはどれも必要ひつよう。でも、最年長さいねんちょうの佐々木ささきさんは「とりあえず身体しんたいで覚おぼえていこう」と提案ていあん。人ひとと人ひとが話はなしのにおいて基本きほん中ちゅうの基本きほんである「相手あいての目めを見みて話はなす」を念頭ねんとうに、練習れんしゅうとシュミレーションを毎日まいにち繰くり返かえした結果けっか、今いまではどのスタッフもお客きゃくさまと話はなしながら入力にゅうりょくできるようになった。

　こうして内うち製せい化かが進すすんだおのえメモリアル。社長しゃちょうからは「システムとしていいところまで行いったのでは？」という声こえを得えることができた。kintoneがすべてというわけではないが、地方ちほうの葬儀そうぎ社しゃでありながらきちんと新卒しんそつをとることができているという。

　おのえメモリアルが「kintoneで楽らくしたことで生うまれたもの」とはなにか？　森垣もりがい氏しは、お客きゃくさまからの声こえを集あつめた「サプライズ記録きろくアプリ」を披露ひろうし、故人こじんが好すきだったラーメンを、お別わかれのときにサプライズでお供きょうしたというエピソードを披露ひろう。「葬儀そうぎの準備じゅんび段階だんかいで『あのラーメン好すきだったよね』という親戚しんせき様さまの声こえを元もとに、式しき中ちゅうに買かいに走はしったラーメンになります」と、できたてのラーメンを作つくってもらい、少量しょうりょうひつぎに入いれることができたという。「ご遺族いぞくの方ほうも驚おどろきかれていましたが、それ以上いじょうに、とても喜よろこんでいただきました。故こ人様ひとさまも安心あんしんして旅立たびだたれたと思おもいます」と森垣もりがい氏しは語かたる。

　そして、森垣もりがい氏しのセッションをエンディングへ。「このように私わたしたちは人ひとと向むき合あうのが仕事しごとなのです。もともと葬儀そうぎには紙かみもシステムも要いらないのです。喜よろこびを生うみ出だす仕事しごとなのです。少すこしでも多おおく人じんと向むき合あう時間じかんを生うみ出だすために私わたしたちにはkintoneというシステムが必要ひつようなのです。これからもお客きゃくさまからのありがとうのためにがんばっていきます、それではお名残なごりは尽つきませんが、このステージより降くだ壇だんしたいと思おもいます。講壇こうだんに際さいしましては、合掌がっしょうを持もって、お見送みおくりくださいませ」。合掌がっしょうの声こえと出棺しゅっかんのファンファーレがなり、森垣もりがい氏しのセッションも無事ぶじ見送みおくられた。

　kintoneによるアプリの内うち製せい化かと業務ぎょうむ改善かいぜんで得えたのは、お客きゃくさまと向むき合あう時間じかん。朴訥ぼくとつとした森垣もりがい氏しの話はなし方かたもあり、コメディのように「クスッ」と笑わらえるのに、なぜか「じーん」と心温こころあたたまる業務ぎょうむ改善かいぜんストーリーだった。

※初出しょしゅつ時じ、登壇とうだん者しゃの名前なまえを誤あやまって表記ひょうきしておりました。お詫わびし、訂正ていせいさせていただきます（2024/6/27）