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ASCII.jp:ANAグループ4万人が“データの民主化”を実現した「14の秘伝」 (1/2)

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「AWS Summit Japan 2024」レポート

AWS Summitで紹介しょうかい全社ぜんしゃ体制たいせいのデータ活用かつようささえるプラットフォームとデータガバナンス

ANAグループ4まんにんが“データの民主みんしゅ”を実現じつげんした「14の秘伝ひでん

2024ねん07がつ08にち 1600ふん更新こうしん

ぶん福澤ふくさわ陽介ようすけ/TECH.ASCII.jp

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、2024ねん6がつ20日はつかと21にち国内こくない最大さいだい年次ねんじイベントである「AWS Summit Japan」をハイブリッドで開催かいさい。150をえるセッションが展開てんかいされた。

 ほん記事きじでは、全日本ぜんにほん空輸くうゆ(ANA)によるセッション「ANAグループ4まんにん展開てんかいするデータマネジメント基盤きばん裏側うらがわ」をレポートする。登壇とうだんしたのは、デジタル変革へんかくしつ イノベーション推進すいしん データマネジメントチームの丸山まるやま雄大たけひろ

 丸山まるやま所属しょぞくするデータマネジメントチームは、ANAを中心ちゅうしんとしたグループのデータ戦略せんりゃく策定さくてい、データ基盤きばん整備せいび開発かいはつ管理かんりなどをになっている。どうセッションでは、どうグループの“データの民主みんしゅ”の実現じつげんけたみが、チームでられた“14の秘伝ひでん”をつうじて披露ひろうされた。

全日本空輸ぜんにほんくうゆ デジタル変革へんかくしつ イノベーション推進すいしん データマネジメントチーム 丸山まるやま雄大たけひろ成田なりた国際こくさい空港くうこうのグランドスタッフからデータマネジメントチームに転身てんしんした

ANAグループでられたデータで、4まんにん社員しゃいん価値かちつくりだせる体制たいせい

 ANAグループは、主力しゅりょくブランドのANAにくわえ、Peach Aviationやエアージャパンといった航空こうくう事業じぎょう展開てんかいしている。近年きんねんでは“マイルで生活せいかつできる世界せかい”の実現じつげんけ、ANA PayやANA Mallといったノンエア領域りょういきのサービスにも注力ちゅうりょくする。

ANAグループのさまざまな業務ぎょうむささえるのが4まんにん社員しゃいん

 このようなグループの成長せいちょうやテクノロジーの進化しんかともない、発生はっせいするデータのりょう増加ぞうかしている。丸山まるやまは、「このデータの活用かつように、グループ4まんにん社員しゃいんちからかしたい。さんにんれば文殊もんじゅ知恵ちえではないが、4まんにん知恵ちえあつまれば、おもいもよらない価値かち創出そうしゅつできるのではないか」と説明せつめいする。

 そこでデータマネジメントチームがすすめるのが、ANAグループにおける“データの民主みんしゅ”だ。グループのかく社員しゃいんが、自由じゆうにデータをあつかい、価値かちせる状態じょうたい目指めざす。

 これまでのデータ活用かつようは、データの収集しゅうしゅう汎用はんようから加工かこう集計しゅうけい分析ぶんせき共有きょうゆうまで、すべてシステム部門ぶもん実行じっこうしてきた。それを、データの収集しゅうしゅう汎用はんようはシステム部門ぶもん中心ちゅうしん、そしてデータ活用かつよう主役しゅやくはビジネス部門ぶもんとして、りょう部門ぶもんきょうそうしながら実行じっこうしていく体制たいせい変革へんかくした。

ANAグループのデータの民主みんしゅのイメージ

 この変革へんかく推進すいしんつうじて、“秘伝ひでん”ともいうべきづきがいくつもられたという。まずは、データ活用かつようのための環境かんきょう仕組しくみにおける秘伝ひでん披露ひろうされた。

データ活用かつよう仕組しくみにおける秘伝ひでん:Amazon S3を中核ちゅうかくに、堅牢けんろうせい柔軟じゅうなんせい両立りょうりつした「BuleLake」を構築こうちく

秘伝ひでん1:データを物理ぶつりてきに1かしょあつめる戦略せんりゃく

 ANAでは、データを蓄積ちくせきする基盤きばんとして「BlueLake」、蓄積ちくせきされたデータを活用かつようするツールとして「BlueLake Apps」と仕組しくみを構築こうちくしている。かつてのデータ基盤きばんはエアラインにとくしており、データの民主みんしゅけ、より統合とうごうてきなデータ基盤きばんであるBlueLakeをさい構築こうちくした。

 データ管理かんりには様々さまざま手法しゅほうがあるが、BlueLakeでは、物理ぶつりてきにデータを集約しゅうやくして一元いちげん管理かんりしている。

 データは、個別こべつ業務ぎょうむとくしたシステムから集約しゅうやくするため、それぞれがたかた、キーなどがことなる。くわえて、SaaSを活用かつようする機会きかいえ、データの複雑ふくざつせいしている。より一貫いっかんせいのあるデータ管理かんり実現じつげんするために、この選択肢せんたくしをとった。

秘伝ひでん1:データを物理ぶつりてきに1かしょあつめる戦略せんりゃく

秘伝ひでん2:プライバシーに配慮はいりょした2そう構造こうぞう

 物理ぶつりてき集約しゅうやくされたデータは、おおくの社員しゃいん自由じゆうにあつかえるよう、プライバシーに配慮はいりょした2そう構造こうぞう管理かんりされている。

 具体ぐたいてきなアーキテクチャーは、Amazon S3を活用かつようしたデータレイク、Amazon RedShiftとSnowflakeを活用かつようしたDWH(データウェアハウス)で構成こうせいなまデータをあつかうデジタルマーケティングやサービス活用かつようけのそうと、仮名かめい加工かこうデータをあつかうデータ集計しゅうけいやBI、機械きかい学習がくしゅう活用かつようするそうを、べつのAWSアカウントで、完全かんぜん分離ぶんりしたかたちで運用うんようしている。

 これにより、データの堅牢けんろうせい担保たんぽ柔軟じゅうなんせい両立りょうりつ。グループの4まんにん自由じゆう使つかえるのは仮名かめい加工かこうデータをあつかうそうとなり、個人こじん情報じょうほう保護ほごほうやGDPRなどに対応たいおうする。

秘伝ひでん2:プライバシーに配慮はいりょした2そう構造こうぞう

秘伝ひでん3:Amazon S3を中心ちゅうしんとしたアーキテクチャー

 前述ぜんじゅつのとおり、データレイクにはAmazon S3を活用かつようするが、どうストレージサービスをマスターとして、時代じだい戦略せんりゃくわせてサービスを使つかける戦略せんりゃくをとる。

 「データ活用かつようのトレンドのうつわりは非常ひじょうはやい。それにわせて、毎回まいかい抜本ばっぽんてきにアーキテクチャーを刷新さっしんするのはコストがかかる。Amazon S3はコネクタが豊富ほうふで、Delta LakeやApache Icebergといったフォーマットにも対応たいおうする」(丸山まるやま

秘伝ひでん3:Amazon S3を中心ちゅうしんとしたアーキテクチャー

秘伝ひでん4:目的もくてきやレベルべつ多種たしゅなツールを整備せいび

 データ活用かつようのためのツールも、目的もくてきやレベルべつに、6つのツールを整備せいびしている。機微きび情報じょうほうあつかう「BuleLake Custo」、データ抽出ちゅうしゅつになう「BuleLake Exto」、社内しゃない基準きじゅんとなるレポートを全社ぜんしゃ共有きょうゆうする「BuleLake Repo」、セルフBIツールの「BuleLake Pivo」、データ実験じっけん環境かんきょうの「BuleLake Labo」、データプロフェッショナルけのなにでもできる環境かんきょう「BuleLake Pro」だ。

 かくツールは、スクラッチでの開発かいはつから、Amazon QuickSightやTableau、Amazon WorkSpaces、Databricksまで、利用りようするサービスは様々さまざま。「一見いっけんするとリッチにみえるが、ライセンス課金かきんのツールは利用りようしゃ見定みさだめ、したがえりょう課金かきんのツールは使つかぎないようガバナンスをかせることで、コストをおさえながら運用うんようしている」と丸山まるやま

秘伝ひでん4:目的もくてきやレベルべつ多種たしゅなツールを整備せいび

秘伝ひでん5:4まんにんおな基準きじゅんられるダッシュボード

 これらのツールのなかで、レポート展開てんかいになう「BuleLake Repo」は、グループの4まんにんが“おな目線めせんで”データをとらえられるダッシュボードとして、Amazon QuickSightをもちいて開発かいはつされた。「部門ぶもん部署ぶしょえると、独自どくじ集計しゅうけい分析ぶんせきおおくなり、基準きじゅんわせて物事ものごとすすめるのがむずかしくなる」と丸山まるやま

 工夫くふうしたポイントは2つ。ひとつは、アカウント作成さくせい自動じどうしたこと。ANAのグループウェアがそなえるIdPと、Amazon CognitoとAWS Lambdaをわせて、アカウントを自動じどう作成さくせいする仕組しくみを構築こうちくして、運用うんよう負荷ふか軽減けいげんした。

 もうひとつは、Amazon QuickSightをそのまま利用りようしなかったこと。データ活用かつようのハードルをできるかぎげられるよう、QuickSightはまれているが、だれでも気軽きがるにデータ分析ぶんせきができるよう、社内しゃないけのサービスとして整備せいびしている。

秘伝ひでん5:4まんにんおな基準きじゅんられるダッシュボード

秘伝ひでん6:抽出ちゅうしゅつツールは必要ひつよう現時点げんじてんでは)

 「BuleLake Exto」はデータ抽出ちゅうしゅつになうツールだ。「データ活用かつようのツールを整理せいりするなかで、データ抽出ちゅうしゅつ分析ぶんせき目的もくてきにはならないため不要ふようだとわれたが、実際じっさいはそう簡単かんたんではない」と丸山まるやま社内しゃないのデータ活用かつよう状況じょうきょうから、データ抽出ちゅうしゅつをなくすのはまだはやいと判断はんだん。しかし、意外いがいにもデータ抽出ちゅうしゅつとくしたサービスは市場いちば見当みあたらなかった。

 そこで、AWSのサービスを駆使くしして、ドラッグアンドドロップで利用りようできるSQLツールをスクラッチで開発かいはつ。まだリリースあいだもないため機能きのう単純たんじゅんなものだが、今後こんご、GUIで作成さくせいしたSQLをレシピとして保存ほぞんできる機能きのうや、社員しゃいん同士どうしでレシピを共有きょうゆうできる機能きのうなどを追加ついかしていく予定よていだ。

秘伝ひでん6:抽出ちゅうしゅつツールは必要ひつよう

秘伝ひでん7:ユーザーフレンドリーな“ナレッジの宝庫ほうこ

 つづいては、基盤きばんであるBlueLakeとツールであるBlueLake Appsの橋渡はしわたしをする“データカタログ”についてだ。とにかくデータやUIがわかりやすく、データにかんする質問しつもんやナレッジが共有きょうゆうできること、そして、コストパフォーマンスのたかさがもとめられた。

 高機能こうきのうなデータプロフェッショナルけのデータカタログはあったものの、利用りよう目的もくてきわず、データカタログもAWSのサービスでうちせいすることに。

 ANAのデータカタログ「Moana」は、無駄むだ情報じょうほうはぶき、わかりやすいUIとなるよう設計せっけいされた。カタログ機能きのうくわえて、社内しゃない用語ようごをまとめたDictionary機能きのうや、社員しゃいん同士どうしがつながるSNS機能きのう搭載とうさいいまではデータの民主みんしゅ促進そくしんするじょうかせないツールに成長せいちょうしているという。

秘伝ひでん7:ユーザーフレンドリーな“ナレッジの宝庫ほうこ

秘伝ひでん8:AWSは自社じしゃ世界せかいかん表現ひょうげんできる

 仕組しくみの最後さいご秘訣ひけつは、AWSのブランディングのしやすさだ。「データの民主みんしゅ推進すいしんは、マーケティング活動かつどうそのもの。つねに『BlueLake Apps』のでコミュニケーションするため、もと製品せいひんめいひとはいない」とかたる。企業きぎょう世界せかいかん表現ひょうげんするじょうで、AWSのカスタマイズせいたかさが有効ゆうこうであったという。

秘伝ひでん8:AWSは自社じしゃ世界せかいかん表現ひょうげんできる

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