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第59回
“予算が乏しい”“IT人材もいない”、それでも目指す業務効率化
「フェリーの待ち時間に仕事がしたい」島しょの自治体・竹富町がM365で進めるDX
2024年07月30日 08時00分更新
文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp
「朝、フェリーで島に着いて、予定していた業務が5分で終わる。帰るための船までには時間があるが、フリーWi-Fiやパソコンがあっても、やれることが何もない」(竹富町役場・DX課、久保田氏)
日本最南端に位置する沖縄県の「竹富町」。人口は約4300人で、9つの有人島と7つの無人島からなる島しょ(とうしょ・大小の島々という意味)の町だ。NHKの朝の連続ドラマ「ちゅらさん」の舞台としても有名である。
日本最南端の大自然と文化のまち「竹富町」(緑の部分)
そんな竹富町の庁舎は、実は同町の中にはなく、隣の石垣市にある。そのため、町内への外出には常にフェリーを使うことになり、便数が少ないため待ち時間が多く発生する。しかし、庁舎外からは業務の要であるグループウェアにアクセスできず、冒頭コメントのように無駄な時間が生じる――。
この問題を解消するため、竹富町が間もなく運用を開始するのが「Microsoft 365」(M365)だ。竹富町役場のDX課に所属する久保田祐人氏、古見勇樹氏に詳しく聞いた。
町内への移動はフェリーが基本、次の便までの待ち時間を持て余す職員の日常
竹富町の庁舎が石垣市にあるのは、同町のすべての島が石垣島の港とつながっており、島民にとってそのほうが利便性が高いからだ。ちなみに同様の体制をとる自治体としては、鹿児島県の三島村、十島村がある。
竹富町内の出張所は、西表島に2か所、波照間島に1か所のみで、ほとんどの町職員が石垣市に住んでいる。そのため、住民サービスを直接提供するには、そのつど町内の島にフェリーで移動する必要がある。
久保田氏は、「町内に出かけるたびに、乗船券を買って船に乗るといった日常。とにかく移動コストがかかる。例えば(最南端の)波照間島で作業するには、1万円弱の出費が伴う」と語る。とはいえ、町民の検診や災害対応、建設関連の確認、祭事の開催など、現地でなければ対応できないことは無数にあり、年間100回ほど島を訪れる職員もいるという。
竹富町役場 DX課 久保田祐人氏。千葉県出身だが自然と海に魅かれて移住した
外出のたびに、交通費に加えて“無駄な時間”が発生するのも悩みだった。
島によっては1日2、3往復しか船便がなく、間が2時間以上空くのが基本。さらに、冬場や台風シーズンには欠航もよく起こる。その結果、「1回の外出につき3~4時間ほどの空き時間」が生じるという。
この空き時間を業務に有効活用できればよいのだが、そうもいかない。庁舎外からは、メールやスケジュール管理などを担うグループウェアやファイルサーバーにアクセスできない。さらに、モバイル通信が弱い場所も多いため、リモートデスクトップでは重くて仕事にならない。
竹富町の地理的特性