最新さいしんパーツ性能せいのうチェック 第だい444回かい

低てい発熱はつねつ＆低てい消費しょうひ電力でんりょくでも性能せいのうが向上こうじょうした「Ryzen 7 9700X」「Ryzen 5 9600X」のアプリ＆AI処理しょり性能せいのうに驚おどろいた

　2024年ねん8月がつ7日にち22時じ、AMDはZen 5アーキテクチャーを採用さいようした新しん世代せだいのデスクトップ向むけCPU「Ryzen 9000シリーズ」の下位かいモデルにあたる物理ぶつり8コアの「Ryzen 7 9700X」および物理ぶつり6コアの「Ryzen 5 9600X」の2モデルの販売はんばいをグローバルで解禁かいきんした。当初とうしょRyzen 9000シリーズは全ぜんモデルが7月がつ31日にち発売はつばいとアナウンスされていたが、初期しょきロットの一部いちぶに品質ひんしつ問題もんだいが発覚はっかくしたことから延期えんきされ、8月がつ7日にちと8月がつ14日にちの2段階だんかいローンチに変更へんこうされた。

CPU表面ひょうめん。表面ひょうめんの刻印こくいん以外いがいは形状けいじょう・デザインに変更へんこうはない。よく見みると左上ひだりうえの角かくに○マークが刻印こくいんされているが、これがなにを意味いみするかは不明ふめいだ

　日本にっぽんにおける発売はつばい日びはこれまでの慣習かんしゅうを継承けいしょうし、週末しゅうまつに合あわせた8月がつ10日とおか11時じより解禁かいきんされる。予想よそう価格かかくはRyzen 7 9700Xが7万まん800円えん、Ryzen 5 9600Xが5万まん4800円えん（いずれも税込ぜいこみ価格かかく）。北米ほくべいにおける予想よそう価格かかく359ドル/ 279ドルと比較ひかくすると1ドル200円えん近ちかいレートになるため、ここだけ見みると割高わりだか感かんは否定ひていできない。

　しかし前ぜん世代せだいの初値はつねはRyzen 7 7700Xが6万まん6800円えん、Ryzen 5 7600Xが4万まん9900円えんで、2024年ねん8月がつ初旬しょじゅん時点じてんでの実じつ売うれ価格かかく（大手おおてショップ限定げんてい）も6万まん2800円えんと4万まん1800円えんであるため、旧きゅう世代せだいよりも数すう千せん円えん価格かかくを上乗うわのせした程度ていどにとどめた、という点てんは評価ひょうかすべきだろう。

CPU裏面りめん。Socket AM5を継承けいしょうしているので、ランド（電極でんきょく）の数かずや配置はいちもこれまで通とおりとなる

　今回こんかい筆者ひっしゃは幸運こううんにもRyzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xをお借かりし、テストできる機会きかいに恵めぐまれた。Zen 5は前ぜん世代せだいと同等どうとう以上いじょうの性能せいのうを持もちつつも、熱ねつ設計せっけい的てきに余裕よゆうを持もたせることに成功せいこうしたとAMDは謳うたっている。ライバルが熱ねつ設計せっけいの限界げんかいまで攻せめたせいで大変たいへんな苦境くきょうに陥おちいっていることを考かんがえると合理ごうり的てきな戦略せんりゃくではあるが、攻せめねば性能せいのうが下さがりやすい、ということも我々われわれは知しっている。

　AMDは果はたしてこのジレンマを解決かいけつできたのか？　2回かいに渡わたってさまざまな角度かくどから検証けんしょうする。前編ぜんぺんとなる本稿ほんこうでは、CPUの基本きほん的てきな性能せいのうや消費しょうひ電力でんりょく、クリエイティブ系けいアプリやAI系けいのパフォーマンスを検証けんしょうする。

Ryzen 7 9700Xのパッケージ（レンダリング画像がぞう）。CPUクーラーは同どう梱こりされないので別途べっとCPUクーラーを購入こうにゅうする必要ひつようがある

Ryzen 5 9600Xのパッケージ（レンダリング画像がぞう）

TDPを下さげ、メモリークロックも上昇じょうしょう

　Ryzen 9000シリーズは、Zen 5アーキテクチャーを採用さいようしただけでなく最さい上位じょういのRyzen 9 9950Xを除のぞく3モデルにおいてTDPが前ぜんシリーズより下回したまわっているという点てんに特徴とくちょうがある。特とくに今回こんかい販売はんばい解禁かいきんとなったRyzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xにおいては、ブーストクロックは100MHz増ふえたものの、ベースクロックは大幅おおはばに下さがっている。

　CPUコアを満遍まんべんなく使つかう状況じょうきょう下かではクロックを抑おさえることで発熱はつねつや消費しょうひ電力でんりょくを下さげる、近年きんねんのブースト至上しじょう主義しゅぎを否定ひていするような仕様しようともいえる。クロックを大幅おおはばに落おとしてもZen 5アーキテクチャーによるIPC向上こうじょうが旧きゅう世代せだいと同等どうとう以上いじょうの性能せいのうを出だしてくれる、というのがAMDの主張しゅちょうだ。

　とにかく性能せいのうが欲ほしい人ひとには残念ざんねんな仕様しようではあるが、反面はんめんTDPが下さがったことで空冷くうれいクーラーでの運用うんようもより容易よういになったと考かんがえるべきだろう。

Zen 5とZen 4の比較ひかく。Zen 5ではCPU内ないの命令めいれい実行じっこうに関かかわる細こまかいスペックが全体ぜんたいに強化きょうかされている。L1データキャッシュの増量ぞうりょうは、Zen 5で盛もり込こまれた数々かずかずの改善かいぜんにおける一ひとつの要素ようそに過すぎない

　ちなみに、Ryzen 9000シリーズを運用うんようするにはBIOSのアップデートも必要ひつようになるが、パフォーマンスを十全じゅうぜんに引ひき出だすためにはAGESA 1.2.0.0A Patch A 準拠じゅんきょのBIOSが推奨すいしょうされる。AGESA 1.2.0.0Aでも動作どうさはするが、AGESA 1.2.0.0A Patch Aの方ほうがおより最適さいてき化か度どを高たかめたもの、という位置付いちづけだ（この表記ひょうきは本当ほんとうに分わかり辛つらい）。今回こんかいの検証けんしょうプロセスにおいてもAMDよりAGESA 1.2.0.0A Patch A適用てきよう済ずみのBIOSが配布はいふされた。

ASRock「X670E Taichi」の場合ばあい、AGESA 1.2.0.0Aとされているバージョン3.05と3.06にはどちらも「Ryzen 9000 CPU performance optimized」とあるが、Patch Aは3.06以降いこうに実装じっそうされている。つまりRyzen 9000シリーズへの最適さいてき化か度どは3.06の方ほうが高たかい。こういう紛まぎらわしい表記ひょうきは改あらためていただきたいところである

Ryzen 7 9700Xの情報じょうほう。「CPU-Z」で取得しゅとくした。注目ちゅうもくなのは1次じデータキャッシュの量りょうで、Ryzen 7000シリーズでは32KBだったものが、Zen 5のRyzen 9000シリーズでは48KBに増量ぞうりょうされた

Ryzen 5 9600Xの情報じょうほう。3次じキャッシュの搭載とうさい量りょうはRyzen 7 9700Xと同おなじ32MB