生成せいせいAIがライブでコメントするサービスを開発かいはつ中ちゅう、ほかにも幅広はばひろいスポーツデータ活用かつようを展開てんかい

サッカーの試合しあいを生成せいせいAIが多言たげん語ごで実況じっきょう！ブンデスリーガとAWSのデモを見みてきた

2024年ねん08月がつ09日にち 16時じ45分ふん更新こうしん

文ぶん● 末岡すえおか洋子ようこ　編集へんしゅう● 大塚おおつか／TECH.ASCII.jp

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ドイツのブンデスリーガがAWSと共同きょうどう開発かいはつ中ちゅうの生成せいせいAI多た言語げんご実況じっきょう（ライブコメント）サービス

　スポーツ観戦かんせんの楽たのしみは国境こっきょうを越こえる。特とくに近年きんねんでは、海外かいがいのチームやリーグの情報じょうほうでもSNSや各種かくしゅネットサービスを通つうじて収集しゅうしゅうしやすくなっており、“国境こっきょうを越こえて応援おうえん”するスポーツファンが急増きゅうぞうしている。スポーツチームやリーグの側がわも、そんな海外かいがいファンの獲得かくとくに努つとめている。

　ドイツのサッカーリーグ、ブンデスリーガ（Bundesliga）では現在げんざい、Amazon Web Services（AWS）とともに、生成せいせいAIを使つかってドイツ語ご以外いがいの多言たげん語ごでライブコメントするサービスを開発かいはつ中ちゅうだ。

　2024年ねん7月がつ末まつ、京都きょうと府ふにある「サンガスタジアム by KYOCERA」で行おこなわれた京都きょうとサンガF.C.－VfBシュトゥットガルトの親善しんぜん試合しあいで、この“AI実況じっきょう”のライブデモを見みることができた。

生成せいせいAIがゴールシーンなどの“見みどころ”を詳くわしく実況じっきょう

　試合しあいは前半ぜんはん21分ふん、京都きょうとサンガのラファエル・エリアス選手せんしゅが、ゴールポストに当あたって跳はね返かえったボールを押おし込こむかたちで最初さいしょのゴールを決きめた。ファンの興奮こうふんも冷さめやらぬなか、15分ふんも経たたないうちに京都きょうとサンガは追加ついか点てんを挙あげる。スタジアムは大おおいに湧わいた。

　こうした試合しあい中ちゅうの見みどころシーンを、生成せいせいAIが多言たげん語ごで実況じっきょう（コメント）してくれるのが、現在げんざい開発かいはつ中ちゅうのサービス（Generative AI Live Ticker）である。上述じょうじゅつしたエリアス選手せんしゅによるゴールシーンを、このサービスが日本語にほんご、英語えいごで実況じっきょうしたのが下したの写真しゃしんだ。

日本語にほんごによる実況じっきょうコメント。原はら選手せんしゅのアシストでゴールを決きめたことを伝つたえている。ただし、ゴールを決きめた選手せんしゅ名めいを「タリオ」と誤あやまっている（正まさしくはエリアス選手せんしゅ。さらにTulio選手せんしゅは「トゥーリオ」と読よむのが正ただしい）

英語えいごによる実況じっきょうコメント。こちらでは「エリアス選手せんしゅが」「原はら選手せんしゅのアシストを受うけて」「センターから」「右足みぎあしで」ゴールを決きめたことを正まさしく実況じっきょうしている

　このように、ゴールを決きめたシュートの詳くわしい内容ないようまで、生成せいせいAIが自動的じどうてきにライブでコメントしてくれる。さらには、ゴールシーンだけでなく、選手せんしゅがシュートを打うったもののゴールできなかったシーン、コーナーキックやファウルのシーンなどの見みどころも実況じっきょうしてくれた。

　上うえの写真しゃしん（日本語にほんご版ばん）で示しめしたとおり、自動じどう実況じっきょうの精度せいどにはまだ改善かいぜんすべき点てんもあるようだ。それでも、試合しあいの流ながれに沿そったリアルタイムの実況じっきょうは見みていて楽たのしい。各かくコメントの表示ひょうじには若干じゃっかんのタイムラグを感かんじたが、これはデモ環境かんきょうがAWSのドイツリージョンにあるためで、本番ほんばんサービスを提供ていきょうする際さいには改善かいぜんできるという。

1試合しあい1600件けん以上いじょうのイベントをサーバーレスで処理しょり、「Amazon Bedrock」で実況じっきょうコメント生成せいせい

　このサービスを開発かいはつしているのは、ブンデスリーガの子会社こがいしゃであるスポーテック・ソリューションズ（Sportec Solutions）である。試合しあい中ちゅうのシュートやパスといったイベント（出来事できごと）をとらえ、リアルタイムに処理しょりするために、AWSの「Amazon Fargate」を用もちいている。

　AWSの説明せつめいによると、イベントデータは1試合しあいあたり平均へいきん1600件けんほど生成せいせいされる。試合しあい中ちゅうにいつイベントが発生はっせいするかはわからないので、サーバーレスアーキテクチャをベースとして開発かいはつし、状況じょうきょうに応おうじて瞬時しゅんじに拡張かくちょうできるようにしている。もちろん、試合しあいが終おわればゼロまでスケールダウンする。

　処理しょりされたイベントデータは「AWS Lambda」に渡わたされてLLMへの指示しじ（プロンプト）を準備じゅんびし、「Amazon Bedrock」のAPI経由けいゆで指定していされたLLM実況じっきょうコメントを生成せいせいする。このコメントは「AWS AppSync」経由けいゆでフロントエンドのWebアプリケーションに配信はいしんされ、リアルタイムで表示ひょうじされる、という流ながれだ。なお、生成せいせいされたコメントは「Amazon DynamoDB」にも保存ほぞんされる。

生成せいせいAI実況じっきょうサービスの概要がいよう。1試合しあいあたり1600件けんのイベント、さらに試合しあいのサマリーやデータ（現在げんざいの得点とくてん、出場しゅつじょう選手せんしゅなど）に基もとづき生成せいせいAIがコメントする

AWSのサービス群ぐんを組くみ合あわせたアーキテクチャ

　現在げんざいのところ、上述じょうじゅつの自動じどう処理しょりフローはピッチ上じょうでイベントが発生はっせいしてから7～12秒びょうほどで完了かんりょうするという。この程度ていどの遅延ちえんは放送ほうそうにおいては許容きょよう範囲はんいであり、たとえばライブストリーミングの映像えいぞう配信はいしんと実況じっきょうコメントを同期どうきできると説明せつめいする。途中とちゅうから見み始はじめた視聴しちょう者しゃが、これまでの試合しあいの流ながれを確認かくにんするのにも便利べんりだろう。

　生成せいせいAIの特性とくせいを生いかし、多言たげん語ごでのコメントだけでなく「スポーツジャーナリスト風ふう」「カジュアル」「若者わかものっぽい口調くちょう」など、実況じっきょうコメントのバリエーションも付つけられるという。人間にんげんの解説かいせつ者しゃでは実現じつげんが難むずかしいことも簡単かんたんにできてしまうのだ。