もし小泉こいずみ進すすむ次郎じろう氏しが首相しゅしょうになったら、企業きぎょうがクビを切きりやすくなり、Uberがタクシー業界ぎょうかいに参入さんにゅうする？

2024年ねん09月がつ10日とおか 07時じ00分ふん更新こうしん

文ぶん● 小島こじま寛明ひろあき

JR桜木町さくらぎちょう駅えきで街頭がいとう演説えんぜつをする小泉こいずみ進すすむ次郎じろう氏し　Facebookより

　自民党じみんとうの総裁そうさい選せんが、2024年ねん9月がつ12日にちに告示こくじされる。

　この記事きじを書かいている9月がつ8日にちの時点じてんで、ジャーナリストや政治せいじ評論ひょうろん家かの予測よそくを整理せいりすると、ほとんどの人ひとが小泉こいずみ進すすむ次郎じろう氏し優勢ゆうせいだとみている。自民党じみんとうの総裁そうさい選せんに勝利しょうりした人物じんぶつは、日本にっぽんの総理そうり大臣だいじんになる。小泉こいずみ氏しが首相しゅしょうになるという大方おおかたの予測よそくを前提ぜんていとするなら、「小泉こいずみ進すすむ次郎じろう首相しゅしょう」が実現じつげんした場合ばあい、具体ぐたい的てきにどのような政策せいさくを実行じっこうしようとしているのか、あらかじめ理解りかいしておくことが重要じゅうようだ。

　そこで今回こんかいは、テクノロジーに関かかわる分野ぶんやで、小泉こいずみ氏しの陣営じんえいがどのような政策せいさくを打うち出だしているのか整理せいりしたい。6日にちの出馬しゅつば会見かいけんで小泉こいずみ氏しが述のべたテクノロジーと関係かんけいの深ふかい分野ぶんやの政策せいさくとしては、ライドシェアの解禁かいきん、解雇かいこ規制きせいの見直みなおし、スタートアップ支援しえんの強化きょうかが挙あげられる。

ライドシェア解禁かいきん

　これまでの経緯けいいを振ふり返かえると、ライドシェアの解禁かいきんは、岸田きしだ政権せいけんで実現じつげんできなかった政策せいさくと言いっていいだろう。

　現在げんざいの「日本にっぽん版ばんライドシェア」は、既存きそんのタクシー業界ぎょうかいに大おおきく配慮はいりょした形かたちになっている。日本にっぽん版ばんライドシェアは、タクシー会社かいしゃが運営うんえい主体しゅたいで、一般いっぱんのドライバーが有償ゆうしょうで乗客じょうきゃくを運はこぶ。現在げんざいは、タクシー会社かいしゃの人手ひとで不足ふそく対策たいさくの色いろが強つよい制度せいどになっているため、ウーバーをはじめとした非ひタクシー会社かいしゃの参入さんにゅうを認みとめるかどうかが焦点しょうてんとなっている。政府せいふは5月30日にち、タクシー会社かいしゃ以外いがいの参入さんにゅうについて「期限きげんを設もうけず議論ぎろんを続つづける」という方針ほうしんを明あきらかにしている。要ようするに、結論けつろんを出ださずに先送さきおくりにしたというのが実情じつじょうだろう。

　こうした現状げんじょうに対たいして、小泉こいずみ氏しは会見かいけんで次つぎのように述のべている。

　「この30年間ねんかん、日本にっぽんから世界せかいで勝負しょうぶする企業きぎょうが出でないのも、既存きそん企業きぎょうが既得きとく権益けんえきを守まもるため、新規しんき参入さんにゅうを阻はばもうとしているからで、この現状げんじょうを打破だはするためには、聖域せいいきなき規制きせい改革かいかくが不可欠ふかけつです。その象徴しょうちょうがライドシェアです。誰だれもが、いつでも、どこでも、安全あんぜんに利便りべん性せいの高たかい移動いどうサービスを享受きょうじゅできるよう、ライドシェアを完全かんぜん解禁かいきんする」

　小泉こいずみ氏しの「完全かんぜん解禁かいきん」という言葉ことばは、ウーバーを含ふくむタクシー会社かいしゃ以外いがいの企業きぎょうによるライドシェアへの参入さんにゅうを認みとめることだと解釈かいしゃくしていいだろう。6日にち付づけの毎日新聞まいにちしんぶんによれば、現在げんざいの斉藤さいとう鉄夫てつお国土こくど交通こうつう相しょうは、「安全あんぜんの確保かくほ、利用りよう者しゃの保護ほごなどの観点かんてんから問題もんだいがある」と述のべ、全面ぜんめん解禁かいきんには慎重しんちょうな姿勢しせいを示しめしている。

　自民党じみんとうと公明党こうめいとうが連立れんりつを組くむ自公じこう政権せいけんでは、近年きんねんは公明党こうめいとうから国土こくど交通こうつう大臣だいじんが選えらばれ続つづけている。小泉こいずみ氏しがライドシェアを実現じつげんするには、タクシー業界ぎょうかいだけでなく、連立れんりつのパートナーである公明党こうめいとうも説得せっとくする必要ひつようがある。

解雇かいこ規制きせいの緩和かんわ

　「解雇かいこ規制きせいの緩和かんわ」は、ライドシェア以上いじょうに手強てごわい課題かだいだ。小泉こいずみ氏しが会見かいけんで述のべた解雇かいこ規制きせいの具体ぐたい的てきな条文じょうぶんはおそらく、以下いかに示しめす労働ろうどう契約けいやく法ほう第だい16条じょうの規定きていだろう。

　「解雇かいこは、客観きゃっかん的てきに合理ごうり的てきな理由りゆうを欠かき、社会しゃかい通念つうねん上じょう相当そうとうであると認みとめられない場合ばあいは、その権利けんりを濫用らんようしたものとして、無効むこうとする。」

　この条文じょうぶんに対たいしては、大だい企業きぎょうからは解雇かいこが難むずかしく、必要ひつような時ときに人員じんいんの削減さくげんが実行じっこうできないとして、緩和かんわを求もとめる声こえが出でている。小泉こいずみ氏しは、会見かいけんで次つぎのように述のべている。

　「企業きぎょうが解雇かいこを検討けんとうせざるを得えない状況じょうきょうになった場合ばあい、働はたらく人ひとが、自分じぶんらしく働はたらくことのできない職場しょくばに留とまり続つづけるより、企業きぎょうにリスキリング・学まなび直なおしとその間あいだの生活せいかつ支援しえん、再さい就職しゅうしょく支援しえんを義務付ぎむづけることで、前向まえむきに成長せいちょう分野ぶんやへ移うつることのできる制度せいどを構想こうそうしたい」

　この発言はつげんをよく読よむと、企業きぎょうは、従業じゅうぎょう員いんに対たいして一定いってい期間きかん、生活せいかつに必要ひつような金額きんがくを支払しはらい、再さい就職しゅうしょくのために必要ひつような学まなび直なおしの費用ひようなどを支払しはらえば、現在げんざいよりも解雇かいこをしやすくなる制度せいどを構築こうちくすると理解りかいできる。要ようするに、金銭きんせん補償ほしょうとセットであれば、クビを切きりやすくなる制度せいどの導入どうにゅうだ。

　米国べいこくなどの企業きぎょうは、企業きぎょうの業績ぎょうせき、経済けいざいの動向どうこうあるいは特定とくていのプロジェクトのニーズなどに応おうじて、人ひとを雇用こようし、解雇かいこし、また雇用こようしというサイクルを繰くり返かえす。こうした新陳代謝しんちんたいしゃが企業きぎょうを強つよくする面めんがある一方いっぽうで、日本にっぽんでも従業じゅうぎょう員いんを大事だいじにしない制度せいどが導入どうにゅうされると見みることもできる。

　思おもい出だすのは、米国べいこくのIT大手おおてが2022年ねん末まつごろから実施じっしした大だい規模きぼな人員じんいん整理せいりだ。コロナ禍かでリモートワークが広ひろがったことで、PCや関連かんれんするWebサービスの需要じゅようが拡大かくだいし、IT大手おおて各社かくしゃは一気いっきに雇用こようを増ふやした。しかし、「リモートワーク特需とくじゅ」が一段落いちだんらくしたところで、各社かくしゃの人員じんいんは過剰かじょうになる。そこで各社かくしゃが実施じっししたのは大だい規模きぼなレイオフだった。

　このレイオフで、GAFAの一角いっかくを退職たいしょくしたエンジニア数すう人にんの話はなしを聞きく機会きかいがあった。いずれも、同僚どうりょうたちが順番じゅんばんに解雇かいこを告つげられる中なか、次つぎに解雇かいこを告つげられたのは自分じぶんだったと話はなしていた。話はなしを聞きいた人ひとたちはいずれも疲つかれ、傷きずつき、戦場せんじょうから戻もどってきたかのように見みえた。

　近年きんねん、日本にっぽん企業きぎょうは海外かいがいの投資とうし家かなどから、生産せいさん性せいの低ひくさが指摘してきされ続つづけている。解雇かいこ規制きせいもその原因げんいんの一ひとつだろう。日本にっぽん企業きぎょうの新陳代謝しんちんたいしゃの向上こうじょうが必要ひつようであることは理屈りくつのうえでは理解りかいできる。しかし、2022年ねんから2023年ねんに行おこなわれたIT大手おおてのレイオフの光景こうけいを思おもい返かえすと、やり切きれない気持きもちになる。

スタートアップ支援しえんは中身なかみ不明ふめい

　小泉こいずみ氏しは、解雇かいこ規制きせいの緩和かんわとスタートアップの強化きょうかは関連かんれんするものと考かんがえているようだ。会見かいけんで次つぎのように述のべている。

　「出番でばんさえあれば能力のうりょくや個性こせいを発揮はっきできる人ひとを、ベンチで座すわらせておく。試合しあいに使つかわない。今いまの日本にっぽんに、一人ひとりの人材じんざいもおろそかにする余裕よゆうはありません。社会しゃかい全体ぜんたいで、新あたらしい成長せいちょう分野ぶんやのスタートアップや中小ちゅうしょう企業きぎょうに人材じんざいが流ながれていく仕組しくみを作つくることこそ、究極きゅうきょくの成長せいちょう戦略せんりゃくです」