世界のセレブを顧客に持つローマ発のハイジュエラー「ブルガリ」。2007年には銀座に旗艦店が誕生し、「ブルガリ イル・リストランテ」も同じく旗艦店内にオープンした。2009年9月にはエグゼクティブシェフとしてルカ・ファンティン氏が来日。ベネト出身で世界のイタリアンレストランを巡ったのちに、シェフとして来日したわけだが、最初はとまどいの連続だったという。
「当初はイタリアンの神髄を伝えたいと、ほぼすべてイタリアから食材を仕入れて使っていたのですが、何かが違うのです。今、考えれば当たり前です。長い旅をさせた食材は、とれたてのそれに比べて力がないのは当然です。それで日本のレストランを巡り、日本の食材のクオリティの高さを知り、驚きました」と。
その後は意識的に日本の食材を使用するばかりか、産地や生産者を訪ね、食材への見識を深めていった。ファンティン氏の作るガストロノミックなモダンイタリア料理に、鮮度抜群の日本の素材が見事にはまったわけだ。15年の間には、アジアのベストレストラン50にランクインするなど、ゲストはもとより専門家からも常に高い評価を得てきた。
そして今、ファンティン氏が取り組んでいることが「素材の本質を見極め、その魅力をシンプルかつ最大限に引き出すこと」だという。といって、まぐろに山葵と醤油をつけて食べるということではない。あくまでイタリア料理で使用する素材だけを用いて、イタリアのエスプリに満ち、かつコンテンポラリーなひと皿に昇華させるということだ。
言うは易しであるが、実現するのは大変に難しい。なぜなら、イタリアと日本というふたつの国への大いなるリスペクトと食文化への深い理解なくしてはできるものではないからだ。15年という長きにわたり、日本の素材に真摯に向き合い、生産者を訪れ、生産の現場を見、生産者の話を聞き、パッションを共有してきたファンティン氏だからこそできることなのであろう。
それはまさに日本とイタリアのテロワールの対話とも言える。ときに、日本の素材や調理法に魅了されるがあまり、ダイレクトにそれらを用いる外国人シェフも少なくないなか、あくまでイタリア料理としての進化にこだわりつづけるという点がファンティン氏たる所以なのである。
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この9月には、そうしたこれまでのファンティン氏の集大成と、さらなる進化を記念して、15周年のアニバーサリーディナーが開かれる。自ら足を運んで探した、15の特別な秋の食材、まぐろ、うに、あおりいか、毛蟹、栗、松茸、なす……にひとつひとつ魔法をかけ、ディナーコースが構成される。超一流の食材がファンティン氏というフィルターを通してどのようなイタリア料理になるのか、そのマジックを五感で体感しに出かけたい。
ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン
15th Anniversary Dinner Course ¥30,800(13%サ別、9/3~28の期間限定)
予約専用:03-6362-1270(受付時間:11:00-17:00)
オンライン予約:https://www.bulgarihotels.com/ja_JP/tokyo-osaka-restaurants/tokyo/il-ristorante
Text: Hiroko Komatsu
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)