日沼ひぬまさとし体当たいあたりばったり!

だい50かい

ソニー「ZV-E1」דカット技法ぎほう”で短編たんぺん映画えいが挑戦ちょうせん! 目指めざ動画どうが初心者しょしんしゃ脱却だっきゃくだい2だん

あたらしいVlogけカメラ「ZV-E1」で動画どうが撮影さつえいしてみた

前回ぜんかいほん連載れんさいでは「動画どうが初心者しょしんしゃ脱却だっきゃく」とだいし、動画どうが撮影さつえい初歩しょほ初歩しょほについてソニーに特別とくべつ講義こうぎをしていただいた。今回こんかいはそのだい2だん撮影さつえい基礎きそ理解りかいできたはずなので、つぎ動画どうが編集へんしゅう見据みすえ、具体ぐたいてきにどんな撮影さつえい方法ほうほう編集へんしゅう技法ぎほうがあるのかを事前じぜんまなんでおこう、というのがテーマだ。

あわせて、2023ねん4がつ発売はつばいされたばかりのVlogけカメラ「ZV-E1」を使用しようして動画どうが撮影さつえいにもチャレンジした。ソニーが「VLOGCAMの頂点ちょうてん」とアピールするフルサイズセンサー搭載とうさいモデルだ。新型しんがたということもあって、今回こんかいのテーマに沿って活用かつようできる機能きのうりだくさん。それらの機能きのう使つかいつつ、実際じっさい制作せいさくした短編たんぺん動画どうががどんな出来できになったのか、ぜひごらんいただければ!

撮影さつえい基礎きそのおさらい

まず最初さいしょに、前回ぜんかいのおさらい。動画どうが初心者しょしんしゃ撮影さつえいけるべきてん簡単かんたん箇条書かじょうがきでかえっておきたい。

1. 撮影さつえい開始かいしまえにストーリーを具体ぐたいてきにイメージする
2. 基本きほんはフィックス(カメラをうごかさない)で
3. ズームしながららない、やるならここぞという場面ばめんのみ
4. うごかすときは「5びょうフィックス→うごかす→5びょうフィックス」

いきなりなにかんがえずに撮影さつえいはじめると、グダグダな映像えいぞうになりやすい。風景ふうけい単純たんじゅん撮影さつえいするにしても、なにせたいのかをあたまのなかでイメージしてから撮影さつえいはじめることが大事だいじ、というのが1つ。

撮影さつえい開始かいしまえにストーリーを具体ぐたいてきにイメージする

つぎに、撮影さつえいにおいてもっと重要じゅうようなことは「フィックスでる」こと。なんとなく被写体ひしゃたいうようにカメラをってしまいがちだけれど、ブレしたり被写体ひしゃたいがフレームからはずれたりして映像えいぞう安定あんていせず、心理しんりてきにも不安ふあん映像えいぞうになってしまう。

基本きほんはフィックス(カメラをうごかさない)で

ズームインやズームアウトも同様どうようだ。安定あんていしたズーム撮影さつえい初心者しょしんしゃにはむずかしく、これも映像えいぞうのブレにつながってしまう。そうならないよう、注目ちゅうもくしてほしいものをつけたなら、ズームイン状態じょうたいとズームアウト状態じょうたいの2つのカット・シーンにけて撮影さつえいするのもだ。そもそもズームは、視聴しちょうしゃとしてはそこになんらかの特別とくべつ意図いとかんってしまうものなので、ここぞという場面ばめんでのみ使つかうようにすべきだろう。

ズームしながららない、やるならここぞという場面ばめんのみ

とはいえ変化へんかすくない風景ふうけいなどでは、フィックス撮影さつえいだけだと味気あじけない映像えいぞうになるかもしれない。そこで、どうしてもカメラをうごかしてりたいときは、「5びょうフィックス→うごかす→5びょうフィックス」という手順てじゅんにする。いちうごかすのは一方向いちほうこう、1かいのみを原則げんそくとし、前後ぜんご十分じゅうぶんなフィックスの時間じかんもうけたい。うごかすときにはブレしないよう、しっかりわきかためるか、三脚さんきゃく利用りようしよう。

うごかすときは「5びょうフィックス→うごかす→5びょうフィックス」

あらかじめ「どんな撮影さつえい編集へんしゅう手法しゅほうがあるのか」をあたまれておくべし

今回こんかいもソニー本社ほんしゃうかがって、っておくべき撮影さつえい編集へんしゅう手法しゅほうについてレクチャーしていただいた

というわけで、ここからが本題ほんだい今回こんかいは「編集へんしゅう見据みすえた撮影さつえい方法ほうほう編集へんしゅう技法ぎほう事前じぜんまなぶ」というのがテーマなので、前回ぜんかいけるべきポイントの1番目ばんめにある「撮影さつえい開始かいしまえにストーリーを具体ぐたいてきにイメージする」をよりげたような中身なかみ、とえなくもない。

ストーリーのイメージをかためるにあたっては、シナリオやコンテをつくることが有効ゆうこう。ただ、そもそもそのぜん段階だんかいとして「動画どうが撮影さつえい編集へんしゅうするためには、どんな撮影さつえい編集へんしゅう手法しゅほうがあるかをあらかじめっておくことが重要じゅうよう」とソニーの担当たんとうしゃ説明せつめいする。カメラの機能きのう編集へんしゅうテクニックにどんなものがあるのかっているのとっていないのとでは、シナリオづくりにも動画どうが編集へんしゅう効率こうりつにもおおきなてくるからだ。

動画どうが撮影さつえい編集へんしゅうするためには、どんな撮影さつえい編集へんしゅう手法しゅほうがあるかをあらかじめっておくことが重要じゅうよう

たとえば被写体ひしゃたいうごきを印象いんしょうてきとらえたいとおもったとき、カメラにスローモーション撮影さつえい機能きのうがあることを把握はあくしていれば、それを前提ぜんていにしたシーンをシナリオにむという発想はっそうができるだろう。あるいはシナリオじょうもっと効果こうかてき場面ばめんえの方法ほうほうかんがえるとき、さまざまな編集へんしゅう技法ぎほうあたまはいっていれば、現場げんば最適さいてき技法ぎほう的確てきかくえらして、それに一番いちばんマッチする撮影さつえい方法ほうほうづくり(えづくり)できたりもする。

そういった知識ちしきまったくない状態じょうたいでとりあえず撮影さつえいだけえてしまうと、いざ編集へんしゅうしようとしたときに通常つうじょう速度そくど映像えいぞう素材そざい無理矢理むりやりスローモーションにするしかなく、場合ばあいによってはコマおくりの不自然ふしぜん見栄みばえになりかねない。また、撮影さつえい場面ばめんえを意識いしきしていなかったために、イメージに映像えいぞうれていないことに編集へんしゅうちゅう気付きづ場合ばあいもある。そうなったら「もう一度いちどなおし」なんていう“サイアク”な状況じょうきょうおちい可能かのうせいもありうるだろう。

撮影さつえい編集へんしゅうのポイント1:カメラがもっている機能きのうっておこう

「ZV-E1」

ということから、最初さいしょっておくべきことは、今回こんかい使用しようするカメラ「ZV-E1」がついろいろな機能きのう映像えいぞう作品さくひんとしてつくげていくとき、「ZV-E1」がそなえるすうおおくの機能きのうのなかでも、効果こうかてき使つかえそうなものとしてソニー担当たんとうしゃげたのが、「シネマティックVlog」、「ルック・ムード」、「ダイナミックアクティブモード」と「フレーミング補正ほせい」、そして「スローモーション・クイックモーション」という機能きのう設定せっていだ。

「シネマティックVlog」設定せっていは、映画えいがのような雰囲気ふんいきづくりを可能かのうにするしん機能きのう。16:9の映像えいぞう上下じょうげくろたいはいり、実質じっしつ「2.35:1」のより横長よこながのシネマスコープサイズで映像えいぞう記録きろくされるモードだ。フレームレートは24p(23.98fps)固定こていとなり、まさに映画えいがっぽいニュアンスの映像えいぞう仕上しあがる。

映像えいぞう映画えいが雰囲気ふんいきくわえる「シネマティックVlog」設定せってい

「ルック」は、撮影さつえい段階だんかい映像えいぞうのコントラストやいろどりえられる機能きのう映画えいがふうの「S-Cinetone」、さわやかな印象いんしょうの「CLEAN」、いろどりとして重厚じゅうこうかんす「CHIC」、いろあざやかな「FRESH」、モノトーンの「MONO」という5つのプリセットが用意よういされている。

「シネマティックVlog」を設定せっていしていると、「ルック」はデフォルトで「S-Cinetone」になる

それに機能きのうの「ムード」は映像えいぞう全体ぜんたい色味いろみえられるもので、ホワイトバランスの設定せっていちかいものとなる。こちらは周囲しゅうい環境かんきょうわせて最適さいてき色合いろあいに調整ちょうせいする「AUTO」のほか、いろ温度おんどたかめの「GOLD」、クールな「OCEAN」、ノスタルジックをかんじさせる「Forest」の4種類しゅるい。これらの「ルック」と「ムード」をわせることで合計ごうけい15パターンの色合いろあいに簡単かんたん調節ちょうせつし、そのシーンにおける撮影さつえいしゃ意図いとった色味いろみ記録きろくできるのだ。

撮影さつえい段階だんかい色味いろみえられる「ルック」と「ムード」
けい15パターンの色味いろみ簡単かんたん調節ちょうせつできる

「ダイナミックアクティブモード」は、これまでソニーのカメラで実現じつげんしていた「アクティブモード」のブレ補正ほせいをさらに進化しんかさせ、動画どうが撮影さつえいにも適用てきようできるようにしたしん機能きのう従来じゅうらい光学こうがくしき5じくしゅブレ補正ほせいによるアクティブモードにくわえて、電子でんししきブレ補正ほせいくわえることで、補正ほせい効果こうかを「従来じゅうらい30%向上こうじょう」させたというものだ。かく若干じゃっかんせまくなるものの、カメラを手持てもちしてあるきながら撮影さつえいするようなときに、たしかなブレ軽減けいげん効果こうかられるだろう。

より安定あんていしたブレ補正ほせい実現じつげんする「ダイナミックアクティブモード」

それと併用へいようすることで、より確実かくじつ被写体ひしゃたいとらえられるようにする機能きのうが「フレーミング補正ほせい機能きのうとなる。「ダイナミックアクティブモード」利用りように「フレーミング補正ほせい機能きのう有効ゆうこうにすると、AIにより自動じどう被写体ひしゃたいをトラッキングして映像えいぞう最適さいてきかたちでトリミングし、フレームない一定いってい位置いち被写体ひしゃたいをほとんど固定こていした状態じょうたい撮影さつえいできる。ひとやペットをいかけるような場面ばめん活躍かつやくする、とく動画どうが初心者しょしんしゃには心強こころづよ機能きのうだ。

映像えいぞう自動じどうトリミングして被写体ひしゃたいとらえる「フレーミング補正ほせい機能きのう

最後さいごの「スローモーション・クイックモーション」はしん機能きのうというわけではないが、「ZV-E1」では最大さいだい5ばいのスローモーション撮影さつえい(120fps記録きろく、24p再生さいせい)や最大さいだい120ばいのクイックモーション撮影さつえい(1fps記録きろく、120p再生さいせい)が可能かのうとなっている。スローではうごきのはや被写体ひしゃたいをはっきり視認しにんできるように、反対はんたいにクイックではタイムラプスのようなはやまわ動画どうがつくるときなどにやくつ。

「スローモーション・クイックモーション」撮影さつえい機能きのう

撮影さつえい編集へんしゅうのポイント2:「カット」は5びょう基準きじゅんにしよう

つぎまなんでおきたいのが、動画どうが撮影さつえい編集へんしゅうにおける「カット」の技法ぎほう。カットせずに長時間ちょうじかん撮影さつえいしたままの映像えいぞうせることももちろんあるが、それこそ映画えいが撮影さつえいするときのような「入念にゅうねん準備じゅんび」が必要ひつようになる。動画どうが初心者しょしんしゃにとってはハードルがたかいため、みじかいカットをつないでつくげていく方法ほうほうがまずはおすすめだ。

みじかいカットで構成こうせいすることを想定そうていしておくと、セリフをミスしたり、背景はいけい余計よけいものうつんだり……といったアクシデントをけやすい。撮影さつえい難易なんいがるほか、編集へんしゅうには映像えいぞうにリズムができてやすくなる効果こうかもある。ただし、あまりにカットのえがおおすぎると、かえってていてつかれるものになってしまう、というてんにはけておきたい。

みじかいカットをつなげて動画どうがつく方法ほうほうがおすすめ

ということもあり、カットのしゃくみじかくても「5びょう」が基準きじゅん。「5びょうあれば30文字もじはなせる」ことや、ネットCMでは「最初さいしょの5びょう肝心かんじん」(5びょう以内いない興味きょうみけなければ離脱りだつしてしまう)とされていることをかんがえると、5びょうみじかいようでいて動画どうがとしてはながかんじられるものとえる。

しかしながら、動画どうが配信はいしんサイトで最近さいきん人気にんきのショート動画どうが通常つうじょう1ふん以内いないということもあり、カットなしで投稿とうこうしているものもすくなくない。しかも、ショート動画どうがでは「最初さいしょの2びょう勝負しょうぶ」ともわれているのだそう。配信はいしん形態けいたいによってカットの有無うむながさをえたほうがいいこともある、というのもおぼえておきたいところだ。

1カットのしゃく最低さいてい5びょう基準きじゅん

撮影さつえい編集へんしゅうのポイント3:撮影さつえい時点じてんで「カット」を意識いしきしよう

どうせうしろ編集へんしゅうするのだから、撮影さつえいときはとりあえずちょうまわししておいて、最終さいしゅうてき必要ひつようなところだけえらんでカットすればいいや、なんておもったりするかもしれない。が、編集へんしゅう必要ひつようなシーンかどうかを確認かくにんするには、基本きほんてきじつ時間じかんをかけて動画どうが再生さいせいすることになるわけで、とても効率こうりつてきとはえないだろう。

撮影さつえいにカットを意識いしきする。編集へんしゅうまかせにしてしまうと失敗しっぱい原因げんいんになることも

そんなわけで、撮影さつえい時点じてんでカットを意識いしきしておくことはとても大切たいせつ動画どうがのトリミング(カットやクリップのなが調整ちょうせい)が最小限さいしょうげんになり、余計よけい作業さぎょう工数こうすう発生はっせいせずにむ、というのはもちろんのこと、そこで節約せつやくできた時間じかん作品さくひんとしてのブラッシュアップにてられる、という見方みかたもできる。カットを意識いしきした撮影さつえいは、最終さいしゅうてき完成かんせいたかさにもつながるわけだ。

では、実際じっさいのところカットするタイミングをどうかんがえるといいのか。ソニーの担当たんとうしゃいわく「4コマ漫画まんがのような起承転結きしょうてんけつかんがえるとわかりやすい」とのこと。さすがに映像えいぞう作品さくひんが4つのカットでむことはないにしても、ストーリー全体ぜんたいとして起承転結きしょうてんけつの「4コマ」をおもえがき、それに必要ひつようそうなカットをめていく、という方法ほうほうだと初心者しょしんしゃでもやりやすそうだ。

撮影さつえい編集へんしゅうのポイント4:作業さぎょうしやすいようにタイムラインを整理せいりしよう

つぎは、ごく基本きほんてき動画どうが編集へんしゅう手順てじゅん動画どうが撮影さつえいわったら、それを動画どうが編集へんしゅうソフトにんで映像えいぞう素材そざいをつなぎわせて編集へんしゅうする。1つの作品さくひんとしてつくむにあたってはテクニックを駆使くししてった見栄みばえにしたいところだが、そのまえ準備じゅんび段階だんかい作業さぎょう意外いがい重要じゅうようだ。

準備じゅんび作業さぎょうでは、基本きほんとなる手順てじゅんが「撮影さつえい時間じかんじゅんにカットをならべ」たのち、「それぞれのカットの不要ふよう部分ぶぶん(撮影さつえい失敗しっぱいした箇所かしょなど)をトリミング」し、さらに「不要ふようなカットを削除さくじょ」する、というもの。こうすることでとりあえず必要ひつようなカットが(撮影さつえいの)系列けいれつでつながった状態じょうたいになり、全体ぜんたい見通みとおしがくなる。

撮影さつえいした映像えいぞう素材そざいをタイムラインに順番じゅんばんならべ、必要ひつようなカットだけのこ

ただし、これだと想定そうていしたストーリーに沿った順番じゅんばんになっていないかもしれない。現場げんばではかならずしもストーリーのながどおりに撮影さつえいしているとはかぎらないからだ。なので、ストーリーにわせてドラッグ&ドロップでカットをえ、さらに追加ついか必要ひつようになったカットや静止せいしなどの素材そざい適切てきせつ場所ばしょ挿入そうにゅうする。

ストーリーにわせてカットをなら

このあたりの手順てじゅんは、動画どうが編集へんしゅうれるにしたがって自分じぶんなりに効率こうりつてき方法ほうほうわっていく可能かのうせいもありそうだが、最初さいしょはこうした基本きほんまもっておくとあと応用おうようきやすいのではないだろうか。

撮影さつえい編集へんしゅうのポイント5:さまざまなカット技法ぎほう理解りかいしておこう

100ねん以上いじょうまえから映画えいがつくられてきたこともあり、映像えいぞう制作せいさく歴史れきしながく、そのなかでさまざまな表現ひょうげん手法しゅほう発明はつめいされてきた。場面ばめんえにかかわるカットにかぎっても多数たすう技法ぎほう存在そんざいする。それらの種類しゅるい使つかかた視聴しちょうしゃあたえる印象いんしょうっておけば、自分じぶんがこれからつくろうとしている映像えいぞう作品さくひん完成かんせいたかめるたすけになるにちがいない。あるいは、撮影さつえい意識いしきしておくべきことがより明確めいかくになる、という効果こうかもあるだろうか。

そんなカット技法ぎほう(素材そざいのつなげかた)の代表だいひょうれいとしてソニー担当たんとうしゃが1つげたのが「クロスカッティング」(クロスカット)。2だい以上いじょうのカメラを使つかい、たとえばきの映像えいぞうりの映像えいぞうなど、ことなる被写体ひしゃたい同時どうじ並行へいこう撮影さつえいし、編集へんしゅうにそれら2つ以上いじょう映像えいぞう素材そざい交互こうごわるようにカットするものだ。おな場所ばしょ撮影さつえいしたものでもいいし、ことなる場所ばしょ撮影さつえいしたものをわせてもいい。海外かいがいとうとしているひとのシーンと、それをめようといそいで空港くうこうかっているひとのシーンを交互こうごせる、みたいなのもこの「クロスカッティング」だ。

クロスカッティング

2つは「フラッシュバック」。単純たんじゅんうと、クロスカッティングにみじかいカットをはさむことで、印象いんしょうつよめたり、緊張きんちょうかん演出えんしゅつしたりする手法しゅほうだ。たとえば役者やくしゃAと役者やくしゃBが電話でんわ会話かいわしているのを交互こうごせつつ、その会話かいわのなかからおもされた役者やくしゃBの記憶きおく瞬間しゅんかんてき挿入そうにゅうする、といったようなシーンがかんがえられる。

フラッシュバック

3つは「ジャンプカット」。これについては撮影さつえいにカットをあまり意識いしきせず、ちょうまわしした映像えいぞう素材そざいもとに、必要ひつようなところだけ抽出ちゅうしゅつしてつなげていく、という手法しゅほうになる。料理りょうり手順てじゅん紹介しょうかいする動画どうがで、余計よけいいよどみや失敗しっぱい作業さぎょうなどをどんどんはぶき、みじかしゃく情報じょうほう整理せいりしてむ、というようなものがれいとしてげられる。もしくは、とおくからカメラにかってはしってくるひと途中とちゅう経過けいかこまかいカットできざんで、時間じかん経過けいかいきおいを表現ひょうげんしたりするとき使つかえるだろう。

ジャンプカット

最後さいごは「カットアウェイ」と「マッチカット」。いずれも動画どうが初心者しょしんしゃにはむずかしい技法ぎほうだが、「カットアウェイ」は一連いちれんのシーンのなかで、それと直接的ちょくせつてきには関係かんけいしていない(つながっていない)カットをむもの。たとえばレースカーがはしっているシーンの途中とちゅうで、観客かんきゃくっているポップコーンがばされるカットをみ、もとのレースシーンにもどる、というのも「カットアウェイ」とえる。

「マッチカット」は、ジャンプカットにたところがあるものの、前後ぜんごのカットにおける被写体ひしゃたい動作どうさ映像えいぞう構図こうず一致いっち(マッチ)させるというてんことなる。テレビ番組ばんぐみなどでよくる「マッチカット」のれいとしては、ロケなどで出演しゅつえんしゃがジャンプした直後ちょくご場面ばめん転換てんかんしてべつ場所ばしょ着地ちゃくちする、というようなものがある。「カットアウェイ」も「マッチカット」も、撮影さつえいにきちんとカットを意識いしきしておかないと利用りようできない手法しゅほうだ。

カメラ機能きのう把握はあく必要ひつよう知識ちしきて、ついに動画どうが作品さくひん完成かんせい

前回ぜんかい動画どうが撮影さつえい基礎きそまえつつ、カメラの機能きのう意識いしきしておくべきカット技法ぎほうなどをあたまれたうえで、いよいよ短編たんぺん動画どうが制作せいさくいどむことにした。周囲しゅういには撮影さつえい小物こものとして使つかえそうなアイテムがふんだんに用意よういされ、なんとモデルの女性じょせいもスタンバイ。撮影さつえいメンバーは筆者ひっしゃと、AV Watch編集へんしゅう2にんけい3にんのみ。ここまで舞台ぶたいととのえてもらってヘタな動画どうがつくれない。3にんともプレッシャーをかんじておよがせている状況じょうきょうのなか、最初さいしょは「プランニング」からはいることになった。

おもいついた要素ようそをホワイトボードにんでいく筆者ひっしゃ(ネタバレになるので一部いちぶをぼかしています)
筆者ひっしゃがディレクションし、編集へんしゅう2人ふたり撮影さつえいするという役割やくわり分担ぶんたん

ホワイトボードに「動画どうがのテーマ」「ストーリー」「起承転結きしょうてんけつ」という3種類しゅるい要素ようそみ、全体ぜんたい構成こうせいかんがえていく。まったくのノーアイデアからスタートしたが、室内しつないでひときわ目立めだっていたキノコがた椅子いすと、それにかたち卓球たっきゅうのラケットに着目ちゃくもくして、ほとんどおもいつきで、さきに「起承転結きしょうてんけつ」の「ゆい」を決定けってい。そのオチにかって室内しつないにあるほかのアイテムをわせることで、なんらかのストーリーがつくれないかを検討けんとうしていくことにした。

じつ最初さいしょからになっていたキノコがた椅子いすたち

おおまかな「テーマ」と「起承転結きしょうてんけつ」がさだまったのちは、「ストーリー」に具体ぐたいてき撮影さつえいシーンをつらねる。室内しつないのどこで撮影さつえいするか、演者えんじゃがそこでなにをするか、シーンとシーンのあいだはどうつなぐか、といったところをかんがえながらながれをつくっていく。もちろんそのなかでは、シーンごとにカメラのどの機能きのう使つかい、どういうカット技法ぎほうせるかもある程度ていどめる。「ZV-E1」の目玉めだま機能きのうの1つである「ルック・ムード」の使つかけ、「スローモーション」機能きのう使つかいどころにもこだわった。

「ZV-E1」の設定せってい全編ぜんぺんとおして「シネマティックVlog」とし、動画どうが記録きろく方式ほうしきは「XAVC S 4K」、記録きろく設定せってい(映像えいぞう品質ひんしつ)は「60M 4:2:0 8bit」とした。レンズはズーム可能かのうな「FE 28-60mm F4-5.6(SEL2860)」や、たん焦点しょうてんの「FE 24mm F2.5 G(SEL24F28G)」「FE 50mm F2.5 G(SEL50F25G)」などを使用しようし、カメラ2だい体制たいせい撮影さつえいしている。

「シネマティックVlog」で、「XAVC S 4K」かつ「60M 4:2:0 8bit」の設定せっていとした
撮影さつえい簡易かんい編集へんしゅう必要ひつようなカットだけをならべ、必要ひつよう素材そざいれているか確認かくにん

そうしてできあがったムービーが下記かきだ。参考さんこうまでに、おまけとして動画どうがない使用しようしたカット技法ぎほうとカメラ機能きのう字幕じまくとしてれたバージョンのムービーも用意よういした。

「mushroom dream」監督かんとく日沼ひぬまさとし
「mushroom dream」 (カット技法ぎほうやカメラ設定せってい字幕じまくり)

動画どうが編集へんしゅうかんしては、今回こんかい単純たんじゅん素材そざいをつないでフェードイン・アウトのエフェクトを使つか程度ていどめた。カラーグレーディングのような、いわゆるいろあかるさ調整ちょうせいなどの加工かこう一切いっさいおこなわず、撮影さつえい映像えいぞうそのままの色合いろあいとしている。それでも、「シネマティックVlog」や「ルック・ムード」の効果こうかがうまくあらわれており、調整ちょうせいながら雰囲気ふんいきのあるになったのではないだろうか。

筆者ひっしゃ自宅じたくほん編集へんしゅうしたさいのタイムライン。フェードイン・アウトなどの基本きほんてき機能きのうだけ使用しようした

「ZV-E1」のほかこまかい機能きのうたすけられる場面ばめんおおかった。たとえば撮影さつえいちゅうにフォーカスを手前てまえおくとでえたいときは、モニターのタッチ操作そうさねらった箇所かしょにスムーズにフォーカスをわせられる「AFトランジション」機能きのうだい活躍かつやく。トランジションの速度そくどもある程度ていど調節ちょうせつできるので、撮影さつえいしゃ意図いとちかわりかた再現さいげんできる。

「AFトランジション」機能きのう画面がめんのタッチ操作そうさでフォーカスを手前てまえからおくのオブジェに一定いってい速度そくどえられる

また、手前てまえ小物こものにフォーカスをわせたままにしたいときは「商品しょうひんレビューよう設定せってい」が便利べんりだ。おく被写体ひしゃたい不意ふいにフォーカスがわったりしないため、せたいものをしっかりせられる。これも撮影さつえい効率こうりつアップに貢献こうけんしてくれる機能きのうの1つだろう。

商品しょうひんレビューよう設定せってい」を使つかうと、手前てまえのオブジェにフォーカスをわせたままにできる

ちなみに動画どうがをごらんいただくとわかるとおり、今回こんかい撮影さつえい内容ないようやストーリーであればカメラ1だいでも問題もんだいなくこなせたとはおもう。ただ、2だい使用しようすることで頻繁ひんぱんにレンズ交換こうかんする必要ひつようがなくなり、シーンによってはことなるアングルからの撮影さつえいいちませられるなど、2だい体制たいせいならではのメリットを実感じっかんする場面ばめんすくなくなかった。とく撮影さつえい時間じかんかぎられているようなときは、カメラが複数ふくすうだいあると有利ゆうりなことは間違まちがいないだろう(機材きざいコストの問題もんだいいておくとして……)。

いち挑戦ちょうせんしてみてほしい「動画どうが作品さくひん」づくり

あらかじめストーリーをめ、それに沿って試行しこう錯誤さくごしながら撮影さつえいし、作品さくひん(てきなもの)に仕上しあげていくという作業さぎょうは、筆者ひっしゃ編集へんしゅうしゃの3にんにとってほとんどはじめての経験けいけん。だけれど、その一連いちれん過程かてい経験けいけんすることではじめてわかる「動画どうがむずかしさやたのしさ」がたくさんあったようにかんじる。

どうすれば自分じぶんたちの意図いと効果こうかてき表現ひょうげんできるのか、そのためにはどんなカットが必要ひつようで、1つ1つのカットをどこでどんなふう撮影さつえいすべきか。メンバーや演者えんじゃとコミュニケーションをりながら、それぞれが「いい」とおもえる中身なかみになるよう試行錯誤しこうさくごかえしていくのは、たしかにむずかしいことだらけとはいえ、時間じかんわすれるほどたのしいひとときでもあった。

モデルのほう説明せつめいする筆者ひっしゃ
えらそうに演技えんぎ指導しどうする筆者ひっしゃ
撮影さつえい仕方しかたくち筆者ひっしゃ
映像えいぞう確認かくにんしてなんとなく納得なっとくいっていないかんしてみる筆者ひっしゃ

なんとなくになったものを動画どうが撮影さつえいしてそれでわり、ということが普段ふだんおおいかもしれない。けれど、ときにはこんなふうに、しっかりストーリーをかんがえて動画どうが作品さくひんとして一生懸命いっしょうけんめいつくげていくことで、あらたな動画どうがたのしみかた、これまでとはちがったカメラとのふれあいかたにもけるのではないだろうか。みなさんもぜひ家族かぞく仲間なかまちからわせて、渾身こんしん動画どうが作品さくひんづくりにいちチャレンジしてみては?

今回こんかい撮影さつえい音声おんせい使つかわなかったが、「ZV-E1」の内蔵ないぞうマイクは指向しこうせい変化へんかさせられるなど高性能こうせいのうなのも特徴とくちょう
このようにたてかまえることもでき、たてきショート動画どうが撮影さつえいにも便利べんり
日沼ひぬまさとし

Web媒体ばいたい記者きしゃ、ITけい広告こうこく代理だいりてんなどをて、フリーランスのライターとして執筆しっぴつ編集へんしゅうぎょういとなむ。AV機器きき、モバイル機器きき、IoT機器ききのほか、オンラインサービス、エンタープライズけソリューション、オートバイをふくむオートモーティブ分野ぶんやから旅行りょこうまで、幅広はばひろいジャンルで活動かつどうちゅう著書ちょしょに「できるGoProスタート→活用かつよう 完全かんぜんガイド」(インプレス)、「はじめてのいまさらけないGoPro入門にゅうもん」(秀和しゅうわシステム)、「いますぐ使つかえるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全かんぜんだい事典じてん」シリーズ(技術評論社ぎじゅつひょうろんしゃ)など。Footprint Technologies株式会社かぶしきがいしゃ 代表だいひょう取締役とりしまりやく