ドトール、ついに客きゃく離ばなれが深刻しんこく化か…「居心地いごこちいい」コメダが怒涛どとうの出店しゅってん攻勢こうせいで猛追もうつい中ちゅう

コメダ珈琲こーひー店てん（「wikipedia」より)

「コメダ珈琲こーひー店てん」と「ドトールコーヒーショップ」で、明暗めいあんが分わかれている。

　コメダを運営うんえいするコメダホールディングス（HD）の2019年ねん2月がつ期き連結れんけつ決算けっさん（国際こくさい会計かいけい基準きじゅん）は、売上うりあげ高だかが前期ぜんき比ひ16.7％増ぞうの303億おく円えん、営業えいぎょう利益りえきが5.0％増ぞうの75億おく円えんだった。増収ぞうしゅう増益ぞうえきを達成たっせいした。特とくに売上うりあげ高だかは大おおきく伸張しんちょうしている。

　一方いっぽう、ドトールを運営うんえいするドトール・日にちレスHDの19年ねん2月がつ期き連結れんけつ決算けっさんは、売上うりあげ高だかが前期ぜんき比ひ1.5％減げんの1292億おく円えん、営業えいぎょう利益りえきは1.9％減げんの101億おく円えんだった。減収げんしゅう減益げんえきだ。18年ねん2月がつ期きまで8年ねん連続れんぞくで増収ぞうしゅうを達成たっせいしていたが、ここにきて一転いってんして減収げんしゅうとなった。

　コメダは店舗てんぽ数すうが大おおきく増ふえている。19年ねん2月がつ末まつ時点じてんの国内こくない店舗てんぽ数すうは1年ねん前まえから43店てん増ふえて828店てんとなった。現在げんざい青森あおもり県けん以外いがいの全すべての都道府県とどうふけんに出店しゅってんしており、6月がつに予定よていしている青森あおもり県けんでの出店しゅってんで47都道府県とどうふけんすべてでの展開てんかいが完了かんりょうする。コメダは1968年ねんに名古屋なごや市内しないで1号ごう店てんが誕生たんじょう。近年きんねんは知名度ちめいどが大おおきく高たかまり、出店しゅってんが加速かそくしている状況じょうきょうだ。

　一方いっぽう、ドトールの19年ねん2月がつ末まつ時点じてんの国内こくない店舗てんぽ数すうは1113店てん。1年ねん前まえからは13店てん減へった。長ながらく1100店てん台だいで概おおむね横よこばいで推移すいいしており、成長せいちょうが見みられない。1号ごう店てんが誕生たんじょうしたのは1980年ねん。コメダより後発こうはつだが、積極せっきょく的てきな出店しゅってんで店舗てんぽ数すうは急速きゅうそくに増ふえ、04年ねんには国内こくない1000店てんを達成たっせいした。だが、それ以降いこうは伸のび悩なやんでいる。00年代ねんだい中頃なかごろから現在げんざいまでは1100店てん台だいで横よこばいが続つづいている状況じょうきょうだ。

　コメダとドトールはフランチャイズチェーン（FC）加盟かめい店てんの割合わりあいが高たかいことが特徴とくちょうとなっている。そのことは店舗てんぽ数すうの伸のびに大おおきく関係かんけいしている。コメダ（国内こくない）のFC比率ひりつは97％、ドトール（同どう）は83％と高たかい。一般いっぱん的てきに、直営ちょくえいよりもFCのほうが出店しゅってんスピードを加速かそくしやすい。こうした原理げんりが働はたらき、ドトールは早はやくから店舗てんぽ数すうを伸のばすことに成功せいこうし、コメダも近年きんねん、急速きゅうそくに伸のばしてきている。

　コメダHDは出店しゅってんの面めんで好調こうちょうだが、既存きそん店てんのFC向むけ卸売おろしうり売上うりあげ高だかも好調こうちょうだ。3月は前年ぜんねん同月どうげつ比ひ6.2％増ぞうで、10カ月かげつ連続れんぞくで前年ぜんねんを上回うわまわった。通期つうきベースでは、19年ねん2月がつ期きが前年ぜんねん比ひ6.4％増ぞうと大おおきく伸のびている。それ以前いぜんはマイナスが続つづいていたが、一転いってんして大幅おおはば増ぞうに転てんじた。

客きゃく離ばなれが深刻しんこくなドトール

　19年ねん2月がつ期きの既存きそん店てん売上うりあげ高だかが大幅おおはば増ぞうだったのは、昨年さくねん5月がつ下旬げじゅんから中京ちゅうきょうエリアにおいて、コメダで使用しようされるすべての食材しょくざい・資材しざいを本部ほんぶが一括いっかつで調達ちょうたつ・配送はいそうする商しょう流りゅうに変更へんこうしたことが大おおきく寄与きよした。変更へんこうした18年ねん5月がつまで既存きそん店てん売上うりあげ高だかは6カ月かげつ連続れんぞくでマイナスだったが、6月がつ以降いこうは一転いってんして大幅おおはばなプラスが続つづき、先述せんじゅつした通とおり10カ月かげつ連続れんぞくでプラスとなっている。

「シロノワール」が好調こうちょうだったことも寄与きよした。シロノワールは直径ちょっけい約やく16センチメートルのデニッシュパンの上うえにソフトクリームがのったスイーツで、77年ねんに誕生たんじょうして以来いらいの看板かんばん商品しょうひんとなっている。19年ねん2月がつ期きは季き節ぶし限定げんていのシロノワールを8種類しゅるい投入とうにゅうした。たとえば、昨年さくねん10月がつは既存きそん店てん売上うりあげ高だかが11.8％増ぞうと好調こうちょうだったが、シロノワールが大おおきく貢献こうけんしている。9月下旬げじゅんからコーヒー味あじの「大人おとなノワール」を、10月がつ下旬げじゅんから森永製菓もりながせいかの人気にんきチョコレート菓子かし「小枝さえ」とコラボした「シロノワール小枝さえ」を、それぞれ期間きかん限定げんていで販売はんばいし、好評こうひょうだったという。

　コメダHDの既存きそん店てん売上うりあげ高だかは好調こうちょうに推移すいいしているが、一方いっぽうでドトールの既存きそん店てん売上うりあげ高だか（直営店ちょくえいてん・加盟かめい店てん）は冴さえない。3月は前年ぜんねん同月どうげつ比ひ1.3%減げんで、5カ月かげつ連続れんぞくで前年ぜんねんを下回したまわった。

　通期つうきベースでは、19年ねん2月がつ期きが前年ぜんねん比ひ2.0％減げんとマイナスだった。客きゃく離ばなれが深刻しんこくで、客数きゃくすうは19年ねん2月がつ期きまで2年ねん連続れんぞくでマイナスとなっている。

　ドトールは競争きょうそう激化げきかで顧客こきゃくを奪うばわれている。ドトールよりも多おおい1400店てんを展開てんかいするスターバックスコーヒーは店舗てんぽ数すうを伸のばしており、ドトールを引ひき離はなしている。後方こうほうからはコメダやタリーズコーヒーなどが追おい上あげている。また、近年きんねんはコンビニエンスストアのいれたてコーヒーの進化しんかが目覚めざましく、さらに店内てんないで飲食いんしょくできるイートインを増ふやしてカフェ化かが進すすんでおり、コンビニの脅威きょうい度どが高たかまっている。このように競合きょうごうが台頭たいとうしており、ドトールから顧客こきゃくが流出りゅうしゅつしている。

　ドトールが属ぞくする低てい価格かかく帯たいのコーヒー市場いちばを取とり巻まく環境かんきょうは今後こんごより厳きびしくなるだろう。特とくにコンビニが大おおきな脅威きょういだ。イートインを備そなえたコンビニは増ふえてはいるが、まだまだ設置せっちされていない店舗てんぽも多おおい。裏うらを返かえせば、イートイン設置せっち店舗てんぽを増ふやせる余地よちが大おおきいということだ。コンビニは全国ぜんこくに5万まん5000店てん以上いじょうもあり、計はかり知しれない潜在せんざい能力のうりょくを持もっているといえる。

　また、新規しんき出店しゅってんでイートイン併設へいせつ店てんが増ふえることも十分じゅうぶん予想よそうされる。今年ことしは「24時じ間あいだ営業えいぎょうをめぐる問題もんだい」のあおりで大手おおて各社かくしゃは出店しゅってんを抑制よくせいする考かんがえだが、来年らいねん以降いこうは大量たいりょう出店しゅってんを再開さいかいすることが考かんがえられ、イートイン併設へいせつ店てんが増ふえることが予想よそうされる。こうして、コンビニのドトール包囲ほうい網もうは確実かくじつに広ひろがっていくだろう。

顧客こきゃく満足まんぞく度どが急上昇きゅうじょうしょうしているコメダ

　このように低てい価格かかく帯たい市場いちばは厳きびしい状況じょうきょうにあるが、中ちゅう価格かかく帯たい以上いじょうは市場いちばの拡大かくだいが見込みこまれている。

　喫茶店きっさてんは外食がいしょく産業さんぎょうのなかでも、やや特殊とくしゅな業態ぎょうたいだ。ほかの業態ぎょうたいは一般いっぱん的てきに食事しょくじがメインで、焼肉やきにく店てんであれば焼肉やきにくを食たべることがそうだし、牛丼ぎゅうどん店てんであれば牛丼ぎゅうどんを食たべることがメインとなる。一方いっぽう、喫茶店きっさてんは必かならずしもコーヒーなどを飲食いんしょくすることがメインとはならない面めんがある。飲食いんしょくすることよりも、会話かいわや読書どくしょ、仕事しごと、勉強べんきょうすることを主おも目的もくてきにしている人ひとが少すくなくない。割合わりあいは後者こうしゃが大おおきくなっているだろう。

　喫茶店きっさてんを会話かいわや仕事しごとなどをする場ばとするには、居心地いごこちのいい雰囲気ふんいきが欠かかせない。この点てんにおいて、コメダは高たかいレベルを誇ほこっている。たとえば、居心地いごこちのいい雰囲気ふんいきを構築こうちくするため、コメダでは木材もくざいを多用たようしている。これは、視野しやに占しめる木材もくざいの割合わりあいを示しめす「木き視し率りつ」が4割わり程度ていどだと落おち着つくという建築けんちく業界ぎょうかいの経験けいけん則そくに基もとづいている。

　コメダは椅子いすがフカフカなのも特徴とくちょうで、ゆったり過すごすのに最適さいてきだ。これは、他たのコーヒーチェーンではあまり見みられない大おおきな武器ぶきとなっている。また、電源でんげんや無料むりょうWi-Fiを備そなえている店舗てんぽが多おおいのも、利用りよう者しゃにとっては嬉うれしい。コメダはこうした居心地いごこちのいい空間くうかんを提供ていきょうしていることが消費しょうひ者しゃに支持しじされている。

　コメダとドトールは、顧客こきゃく満足まんぞく度どにおいても明暗めいあんが分わかれている。日本にっぽん生産せいさん性せい本部ほんぶ・サービス産業さんぎょう生産せいさん性せい協議きょうぎ会かいの「日本にっぽん版ばん顧客こきゃく満足まんぞく度ど指数しすう（JCSI）」（2018年度ねんど）で、コメダはカフェ部門ぶもんの「顧客こきゃく満足まんぞく」で3位い、ドトールが2位いだった。ドトールのほうが上位じょういだが、勢いきおいの面めんではコメダが上うえだ。コメダの17年度ねんどの顧客こきゃく満足まんぞくは18年度ねんどと同おなじ3位いだったが、16年度ねんどは5位い以下いかの圏外けんがい、15年度ねんどは4位いだったので上昇じょうしょう傾向けいこうにあることがわかる。一方いっぽう、ドトールは17年度ねんどまで3年ねん連続れんぞくで1位いだったが、18年度ねんどに2位いに転落てんらくしてしまった。顧客こきゃく満足まんぞく度どでもコメダに勢いきおいがあり、ドトールは失速しっそくが鮮明せんめいとなっている。

　ドトールは成熟せいじゅく化かしているので、これ以上いじょうの大おおきな成長せいちょうは難むずかしいだろう。そこで、ドトール・日にちレスHDは高級こうきゅうコーヒー店てん「星乃ほしの珈琲こーひー店てん」で高こう価格かかく帯たい市場いちばを攻略こうりゃくする。一方いっぽう、コメダHDはコメダを主軸しゅじくに出店しゅってん攻勢こうせいをかけて中ちゅう価格かかく帯たい市場いちばの取とり込こみを狙ねらう。今期こんき（20年ねん2月がつ期き）はコメダだけで50～60店てんを出店しゅってんする。コッペパン専門せんもん店てん「やわらかシロコッペ」などを含ふくめて、19年ねん2月がつ期き末まつの860店てんから21年ねん2月がつ期きまでに1000店てんにしたい考かんがえだ。
（文ぶん＝佐藤さとう昌司しょうじ／店舗てんぽ経営けいえいコンサルタント）